【初心者向け】ISO9001とは?メリットや要求事項を徹底解説
- ISO9001は品質マネジメントシステムを構築するためのガイドラインのようなもの
- ISO9001認証取得は対外的アピールや社内改善に効果を発揮
- ISO9001規格が最終目標とするのは、品質の向上による顧客満足
商品やサービスの品質
に関わるISO
規格
として「
ISO9001
」があります。工場の看板や名刺などで見かけたことがある人は多いのではないでしょうか。
ISO9001認証の取得は、企業の商品やサービスが国際基準レベルの品質管理の仕組みで提供されている証となり、取引先やお客さまからの信用を得られるだけでなく、取引に活かすこともできます。
ここでは、ISO9001認証取得を目指す担当者の方向けに、ISO9001の概要、認証取得のプロセスなどをわかりやすく解説します。
目次
品質の規格「ISO9001」とは
ISO9001とは、会社や組織が提供する“商品やサービス”の品質向上を目的とした品質マネジメントシステム に関する国際規格です。そもそもISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)という非営利法人の名称で、この組織が定めた規格を「ISO規格」と呼んでいます。
ISO9001の最終目標は「顧客満足の達成」であり、継続的に製造及びサービス提供プロセスを改善する仕組みを運用することで、より良い商品やサービスをお客さまに提供し続けることができるのです。
そのためには品質だけではなく、Q(quality)C(cost)D(delivery)、つまり品質・価格・納期のQCDバランスを重視し、顧客要求事項
を満たすことが重要です。
どれだけ高品質なものを安く購入できたとしても、納期が10年先では事業が成り立ちません。反対に即日手に入ったとしても、品質が低すぎて使い物にならなければ意味ありません。
このようにISO9001では、QCDのバランスが顧客満足の向上につながると考えています。
品質マネジメントシステム(QMS)とは
品質マネジメントシステムとは、商品やサービスをお客さまに提供するまでのプロセスを管理する仕組みのことです。品質を継続的に改善していくために、PDCAサイクルを回していくことが求められています。
例えばお菓子工場で高品質な商品を作るためには、どのようにプロセスを管理できるでしょうか。
「良い材料を使う」「砂糖を100g使う」というだけでは人それぞれ基準が異なるため、品質(味)にバラつきが出てしまいます。そこで、「国産の砂糖を、計量器を使用して100g使う」というルールを設けることで、品質を管理できるようになります。
また、ルールどおりの運用をしても稀に不良品は出てくるでしょう。その際、同じ理由で不良品が出ないように、調理プロセスを見直し改善して、不良品の発生を低減することにも努めます。
このように、目標や目的を定め、その目標や目的を達成するためにルールを設け、継続的に改善していくことが「マネジメントシステムを構築・運用する」ことです。
ISO9001では品質マネジメントシステムを構築するためには、まず品質目標や組織の方針を定め、どのように自社が品質を改善していくかの指標を明らかにします。目標や方針の最終目標が顧客満足に向いていることが重要です。
ISO9001は、製品やサービスの品質改善により顧客満足度を高めていこうという国際規格です。取引やブランディング、社内改善に活かせるメリットを求め、取得している企業が多く存在します。
ISOプロでは、ISO9001を分かりやすくまとめたコンサルタント監修の資料をご用意しています。ISO9001とは?の基本から、取得方法、取得コスト、審査機関についてまとめています。
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他のISO規格との違いとは?
代表的なISO規格のうち、ISO9001とともに取得されることもある規格を紹介します。
ISO14001(環境マネジメントシステム)
ISO14001は、組織の活動によって人・自然・ステークホルダーなどに悪影響になるリスクを低減・改善するマネジメントシステムに関する規格です。
ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)
ISO27001は、組織の保持する情報資産を管理するマネジメントシステムに関する規格です。主な取得業種は、情報サービス業や人材派遣業、金融業などが挙げられます。
ISO9001認証取得のメリット、デメリット
ここではISO9001のメリットとデメリットについて解説します。
メリット
ISO9001認証取得の主なメリットを以下にまとめました。
- 公共事業の入札加点や参加条件を満たせる
- 取引先や顧客からの信頼を得られる
- 取引先や顧客への対外的なアピールができる
- 企業内ルールの明確化と改善ができる
- 従業員の意識が向上する
「ISO9001認証取得=国際基準で品質を管理している」という証であり、取引の条件を満たすだけではなく、取引先や顧客の安心感にもつながります。さらに対外的アピールとしてマーケティング的なメリットも含んでいます。
また組織体制の仕組み化の過程で業務の整理・効率化を行い、全社的に取り組むことで従業員の意識も変化するでしょう。
このようにISO認証取得の取り組みは、組織の内外で効果を発揮するのです。
デメリット
ISO9001認証取得の主なデメリットを、以下にまとめました。
- 取得と維持にコストが掛かる
- 新ルールを従業員が覚える必要がある
- 従業員の負担が大きくなる場合がある
ISO9001は取得の時だけでなく、維持・更新のために毎年審査を受ける必要があり、そのたびに費用が掛かる点はデメリットと言えます。
また、自社の実情に合わないマネジメントシステムの構築は、ISOのためだけの業務が本業に加わるため従業員への負担が大きなものとなります。新ルールを従業員が覚える工数も加味すると、覚える手間や時間も必要です。こうしたデメリットにより、ISOの返上に至る企業も少なくありません。
ISO9001は、製品やサービスの品質改善により顧客満足度を高めていこうという国際規格です。取引やブランディング、社内改善に活かせるメリットを求め、取得している企業が多く存在します。
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ISO9001を上手く活用するには、自社の実情に合ったマネジメントシステムを構築するに尽きます。基本的に全社的な取り組みとなるISO9001は、従業員への浸透が重要課題となります。実情に合わせることで従業員が取り組みやすいマネジメントシステムとなり、浸透しやすい環境を作ることができるでしょう。
ISO9001の規格要求事項とは
企業がISO9001を取得するには、要求事項を満たす必要があります。ここでは、ISO9001の要求事項について解説します。
- 適用範囲
- 引用規格
- 用語及び定義
- 組織の状況
- リーダーシップ
- 計画
- 支援
- 運用
- パフォーマンス評価
- 改善
1.適用範囲~3.用語及び定義
「1.適用範囲」~「3.用語及び定義」は、ISO9001の概要について解説しています。具体的な要件を述べているのは「4.組織の状況」以降です。
4.組織の状況
「4.組織の状況」では、組織の現状や利害関係者のニーズを理解したうえで、適用範囲を決め、品質マネジメントシステムの具体的な組織体制を構築すべきと規定しています。
組織の現状を把握し、組織の強み・弱みを洗い出す方法として、一般的にはSWOT分析が用いられます。自社で対策できることとできないことを洗い出して、課題として認識することが必要です。
5.リーダーシップ
「5.リーダーシップ」では、品質マネジメントシステムの構築には、組織の全員が積極的に取り組む環境を作り出すトップマネジメントが必要だと要求しています。
トップが方向性を示さないと、従業員もどの方向に向かって取り組めば良いのかわかりません。そのため、方針を策定して周知する必要があるのです。
6.計画
「6.計画」では、品質目標と目標を達成するために計画策定をすることが必要です。
組織内外の状況を踏まえて、リスクと機会にどう取り組むかを決めます。トップが方向性を示していても、抽象的な方針である場合が多いため、具体的な取り組み目標を決めることも求められています。
7.支援
「7.支援」では、品質マネジメントシステムを運用するために、必要となる経営資源を明確にし、管理することが求められています。
業務をスムーズに進めるための確実な情報共有の方法や、文書管理の方法もここで決定します。
8.運用
「8.運用」では、ここまで構築してきたマネジメントシステムを、計画どおりに運用することが求められています。
製品やサービスに顧客から何が求められているかを明確にして、運用・管理していきます。
9.パフォーマンス評価~10.改善
「9.パフォーマンス評価」および「10.改善」は、計画・運用した品質マネジメントシステムをどのように評価し、改善していくかに関する要件です。
内部監査 を実施し、マネジメントシステムが要求事項に適合しているか、有効に機能しているかを自社でチェックします。そして、その結果をもとに、トップによるマネジメントレビューを実施。マネジメントシステムを改善するための施策を指示し、取り組みます。
ISO9001認証の取得方法
ISO9001認証を取得する方法と流れを知ろう これからISO 9001の認証取得を考える企業にとって、どのような流れで認証取得に向けて動くのか気になるポイントではないでしょうか?
この記事では、現役のISOコンサルタント監修のもと、ISO取得の…
では、次に認証取得までの流れを3つのステップに分けて解説していきます。これからISO9001認証取得を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
検討・準備
ISO9001認証の取得を決めたら、必要な体制を整えていきます。ここでは以下の3つを実行しましょう。
ISO担当者を決定する
まずはISO担当者を決めましょう。担当者を主体にISO構築をすることとなります。できれば2名は確保したいところです。
要求事項を入手する
要求事項をベースにマネジメントシステムを構築するため、日本規格協会グループが販売している要求事項を購入しましょう。また分かりやすくまとめられた本も書店などで購入できるので、そちらも検討してみましょう。 ISO9001の要求事項とは?品質マネジメントシステム(QMS)を解説 これからISO9001の取得を考えている人は、その情報の多さから何をどのように理解し、どのように進めればよいのかわからないと感じる方は多いのではないでしょうか?企業がISO9001を取得する理由として…
ISO9001を取得する範囲を決める
全社単位でなくても、事業所や部門単位でも取得できるため、認証を必要とする範囲を踏まえて決めましょう。
マネジメントシステムの構築・運用
準備ができたら、ISO9001の要求事項に沿ってマネジメントシステムの構築と必要に応じて文書化を行います。構築したマネジメントシステムを運用し、マネジメントレビューや内部監査なとの評価・改善を実施してPDCAを実行しましょう。
審査
PDCAサイクルを回したあとに、ISO審査機関による取得審査を受けます。ISO9001の要求事項に適合していると認められれば、ISO9001認証取得となります。
取得審査には、以下の2つの審査があります。
一次審査(文書審査)
一次審査では、品質マネジメントシステムの構築・運用において作成された文書や運用記録などを確認し、マネジメントシステムの構築・運用の実態を確認します。
二次審査(現地審査)
二次審査では、審査員が取得を希望している組織に訪れ、経営者などの対象者と面談して要求事項との適合性を確認します。
これら2つの審査を通過することで、ISO9001を認証取得できるのです。ただし、要求事項に対して自社の品質マネジメントシステムが重大な不適合と判断された場合には、是正処置を行ったのち、再審査が行われることになります。
運用
ISO9001は、取得したら完了ではなく、取得後もPDCAサイクルで品質マネジメントシステムを運用するとともに、定期的に以下の2つの審査を受けることが必要です。
維持審査
維持審査とは、毎年受けることが必要な審査で、サーベイランス審査または定期審査とも呼ばれています。ただし、更新審査を受ける年は、維持審査は不要です。
基本的に、問題なく品質マネジメントシステムが運用できているかの確認であるため、審査工数や期間は取得審査や更新審査に比べて少ないことが多いです。
更新審査
更新審査とは、取得から3年おきに行われる審査のことで、再認証審査とも呼ばれています。更新審査は、ISOの登録を更新するために実施されます。
前回受けた更新審査以降の3年分の運用状況を確認し、ISO9001の基準を満たしているかを再確認するため、審査工数や期間は維持審査よりも多くなる傾向にあります。
ISO9001認証取得にかかる期間と費用相場
最後に、ISO9001認証取得にかかる主な期間と費用相場について紹介します。ただし、ISO9001を取得する組織の規模や適用範囲、自社取得かコンサルティング会社に依頼するかで大きく変動するため、目安として参考にしてください。
期間
ISO9001認証取得にかかる主な期間は、従業員50名の企業が自主取得を目指した場合、6ヵ月~数年ほどかかるでしょう。その内訳は、ISO9001の構築に2~8ヵ月程度、運用は都度発生する課題を是正していくため1カ月~数年と大きく変動する可能性があります。
ただし、マネジメントシステムの構築・運用におけるスキルやノウハウのある人材がいない場合には、当初計画していたよりも長期間かかる可能性があるため、注意が必要です。
信頼できるコンサルティング会社を利用すると、取得にかかる期間の短縮が見込めるでしょう。
そのため、自社取得よりもコンサルティング会社に依頼して取得することが一般的です。
費用相場
ISO9001を取得するためには、必ず審査費用が必要です。以下に、ISO9001の審査費用をまとめました。
ISO9001の審査費用相場(業種&人数規模別)
業種 | 1-20名 | 21-50名 | 51-100名 | 101名以上 |
---|---|---|---|---|
製造業・加工業 | 36万円 | 46万円 | 66万円 | 96万円 |
建築・建設業 | 35万円 | 52万円 | 74万円 | 100万円 |
ITサービス | 32万円 | 49万円 | 72万円 | 82万円 |
システム開発 | 32万円 | 48万円 | 73万円 | 88万円 |
WEB制作 | 32万円 | 76万円 | 79万円 | 104万円 |
卸売業・小売業 | 36万円 | 44万円 | 68万円 | 97万円 |
コンサル業 | 35万円 | 57万円 | 79万円 | 94万円 |
保険業 | 41万円 | 47万円 | 70万円 | – |
不動産 | 43万円 | 48万円 | 70万円 | – |
※2022年7月調査(ISOプロ調べ)。現在の費用と異なる可能性があるため詳しくはお問合せください。
審査費用は、認証を受ける範囲や認証機関によって異なりますが、30~100万円程度が費用相場となっています。それ以外には、設備保全にかかる費用も必要になる可能性もあるでしょう。
またコンサルティング会社に依頼すると、コンサルティング料もかかります。
ただし、信頼できるコンサルタントに依頼することで、従業員の作業工数や時間を低減でき、本業に従事する時間を確保できるでしょう。その結果、ISO9001取得にかかる人件費が減り、自社取得よりもコンサルティング会社に依頼した方がコストを安く抑えられる可能性があります。
ISO9001認証の取得企業数
日本国内のISO9001認証の取得企業数は、公益財団法人日本適合性認定 協会(JAB)のホームページにある「適合組織検索」から確認できます。(※JABから認定を受けた審査機関が審査し認証発行した企業のみ)また、組織の国籍や産業分類ごとに検索できるため、競合他社の取得状況の把握にも役立てられるでしょう。
2024年7月23日時点では、ISO9001取得企業数は、22,548件です。モノづくりを中心とした建設業や製造業などの業種において、積極的に取得が進められています。
ただし、ISO9001の要求事項では、すべての産業分野において応用できるものになっています。そのため、顧客満足度を向上させたいという企業は、ISO9001の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
ISO9001認証の取得事例
最後に、ISO9001認証の取得事例を紹介します。
コニカミノルタジャパン株式会社
コニカミノルタジャパン株式会社は、オフィスに設置している複合機や、業務用のプリンター、ヘルスケアの分野では医用画像情報機器などを展開している会社です。
以下にISO9001を取得した理由や成果についてまとめました。
ISO9001を取得した理由 | ISO9001認証取得済であることが、顧客からの要件や入札条件となる場合が多くなっており、提案・受注機会損失を防ぐため。 |
---|---|
取得前の課題 | 品質に対する“進め方”や“周知の仕方”に課題があった。 |
取得後の成果 |
|
株式会社おおぞら保険
株式会社おおぞら保険は、総合保険代理業を営む会社です。
以下にISO9001を取得した理由や成果についてまとめました。
ISO9001を取得した理由 | 昨今は「品質向上」に重きを置くところが増えてきており、保険の元請け会社から「品質向上」と「体制整備」を求められたため。 |
---|---|
取得前の課題 | 対応方法が属人的で、人によって対応品質が異なっていた。 |
取得後の成果 | 高い対応品質水準での均一化に向けて取り組めるようになった。 |
株式会社野崎造園
株式会社野崎造園は、会社設立時は二次下請けとして造園業を営んでいましたが、元請けへ方向転換し、公園や街路樹の設計などから携わっている会社です。
以下にISO9001を取得した理由や成果についてまとめました。
ISO9001を取得した理由 | 現場の進行具合、書類の内容などにバラツキがあることで属人的な仕事になっており、管理できる仕組みを築く必要があったため。 |
---|---|
取得前の課題 | 元請けとして会社が変わっていく中で、内部統制が整備できなくなってきた。 |
取得後の成果 | 社内のルールづくりができ、内部統制の統一に向けて進むことができた。 |
まとめ
今回は初心者の方向けに“ISO9001とは”についてポイントを押さえて解説しました。
ISO9001を「対外的アピールができる」というマーケティング的な理由から認証取得を目指している企業もあれば、「社内改善に活かせる」有効なツールとして導入を目指している企業もいます。その反面、会社の実情に合わないマネジメントシステムを構築したことから“従業員の負担”へと繋がり、「ISOの返上」をする企業も少なくありません。
これからISO9001を取得する方には会社の実情に合わせたマネジメントシステムを構築し、取得のメリットを最大限に享受してほしいと考えています。今後の取得の取り組みに向けて、下記もぜひ参考にしてください。
より具体的なISO9001を知りたい方は下記の「ISO9001入門」のページもご一読のほどよろしくお願い致します。
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