ISO9001(QMS)の適用範囲とは?決め方を要求事項から解説
- 適用範囲とは「マネジメントシステムが有効に機能する範囲」のこと
- ISO9001の場合、「顧客満足の達成」を実現するための範囲を適用範囲とすることが一般的
ISO のマネジメントシステム 認証 を取得するにあたって、どのような 規格 であってもまずはそのマネジメントシステムの適用範囲 を決定する必要があります。ISOのマネジメントシステム規格はPマークのように規格要求事項で適用範囲を定められておらず、事業者の規模や状況に応じて自由に決定することが可能です。
しかし、適用範囲を自由に決定できるといっても、決定には「一定の合理性」が必要になります。では、適用範囲はどのように決定すれば良いのでしょうか。
そこで、この記事ではISO9001 (QMS)を例にISOマネジメントシステムの適用範囲の決め方について解説します。
適用範囲とは
ISOのマネジメントシステム認証における適用範囲とは、そのマネジメントシステムが有効に機能する範囲を指します。
例えばISO9001認証の場合は、品質マネジメントシステムがどこからどこまで有効に機能するものなのかを決定することです。
個人情報保護に関する国内規格であるPマークの適用範囲は、「全社」と定められていますが、ISOのマネジメントシステム規格における適用範囲は、規格要求事項内で明確に定められていません。代わりに「事業者はISOのマネジメントシステム認証を得るためには適用範囲を決定する必要がある」と記載されています。
組織は,品質マネジメントシステムの適用範囲を定めるために,その境界及び適用可能性を決定しなければならない。
引用:JIS Q 9001:2015
要求事項にある境界には、「組織の本社や事務所、工場などといった物理的な境界」と、「業務内容や業務プロセスに関する境界」の2つが含まれています。
ISO9001(QMS)の要求事項で求められている適用範囲
ISO9001要求事項で求められている適用範囲について解説します。
適用範囲の決め方
適用範囲の決め方について、ISO9001の要求事項では以下のように記されています。
この適用範囲を決定するとき,組織は,次の事項を考慮しなければならない。
a)4.1に規定する外部及び内部の課題
b)4.2に規定する、密接に関連する利害関係者の要求事項
c)組織の製品及びサービス
引用:JIS Q 9001:2015
つまり、「4.1組織及びその状況の理解」「4.2利害関係者のニーズ及び期待の理解」「自社製品・サービス」の3つについて把握したうえで、適用範囲を決定することが必要です。
適用範囲は組織が柔軟に決定できるものの、自社の都合だけで決定するのではなく、組織内外の課題やニーズを把握したうえで、正当な理由をもって適用範囲を決定することが求められます。
適用除外が可能
適用範囲を決定したら、基本的にはISO9001の要求事項をすべて適用することが必要です。しかし要求事項には、適用除外が可能である点についても記載されています。
決定した品質マネジメントシステムの適用範囲内でこの規格の要求事項が適用可能ならば,組織は,これらを全て適用しなければならない。
(中略)
適用範囲では,対象となる製品及びサービスの種類を明確に記載し,組織が自らの品質マネジメントシステムの適用範囲への適用が不可能であることを決定したこの規格の要求事項全てについて,その正当性を示さなければならない。適用不可能なことを決定した要求事項が、組織の製品及びサービスの適合並びに顧客満足の向上を確実にする組織の能力又は責任に影響を及ぼさない場合に限り、この規格への適合を表明してよい。
引用:JIS Q 9001:2015
つまり、要求事項の適用が不可能な場合に限り、正当な理由を説明することで適用除外が可能です。
例えば、顧客の設計による図面に基づく部品加工を行う組織では、設計開発の業務が存在しないことから、「8.3 製品及びサービスの設計・開発」の要求事項を満たすことは不可能であるため、適用除外を決定できます。
文書化が必須
決定した要求事項を文書化することも、要求事項内に定められています。
組織の品質マネジメントシステムの適用範囲は、文書化した情報として利用可能な状態にし、維持しなければならない。
引用:JIS Q 9001:2015
文書化が必要な情報は、適用すると決定した製品・サービスの種類を明確に記載します。また適用除外する部分がある場合にも、正当性を示す理由とともに記載します。
ISO9001(QMS)の適用範囲を絞る正当な理由とは
ここでは適用範囲の決定にあたり、マネジメントシステムの適用範囲からある部門を除外する際の正当な理由について、さらに深掘りします。
適用範囲を絞るということは、「マネジメントシステムが最終的に達成しようとする目標」と、「適用範囲」を照らし合わせたときにニーズが合致しない場合が挙げられます。
例えば品質マネジメントシステムにおいて、製造部門が品質と密接な関わりがあるため、製造部門を適用範囲としてマネジメントシステムを構築しようとしたとします。
しかし、ISO9001規格が求める品質マネジメントの最終目標は「顧客満足」です。顧客満足を達成するためには、顧客と密接な関わりがある営業部門や製造部門が連携する方が有効に働くことが多いでしょう。
つまり、ほとんどの場合「営業部門を除外する」という正当な理由はあり得ないのです。
このように、基本的にどのようなマネジメントシステムであっても適用範囲は全社とするのが王道です。なぜなら、ある部門を適用範囲から除外する正当な理由がほとんどの場合存在しないためです。
ただし、「自社の場合は、どう考えても適用範囲を絞ったほうが有効にマネジメントシステムは機能する」ということもあるでしょう。そのような場合には多角的な視点から考え、適用範囲を絞った正当な理由をどの方面からも説明できるように文書化することが必要です。
まとめ
この記事では、ISOマネジメント認証における適用範囲の概要や決め方、適用除外の考え方についてISO9001(QMS)をもとに解説しました。
ISO9001において適用範囲を決定する際は、QMSの最終目標が顧客満足度の達成であることから、全社で適用することが一般的です。しかし組織の業種や事業に応じて柔軟な対応が可能であるため、正当性を示すことで適用除外も可能となっています。
自社にとって適切な適用除外を決定するには、要求事項をよく理解したうえで自社内外の状況や顧客満足度の達成などと照らし合わせたうえで検討しましょう。
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