【具体例あり】マネジメントレビューとは?やり方や注意点を解説

- マネジメントレビューとは、体制やシステムの見直しをする経営管理活動のことである
- マネジメントレビューは基本的にトップマネジメントによって実施される
- 定期的に経営判断を下していかなければ、時代についていけなくなる
- マネジメントレビューにおけるインプットを行うことで限りなく正解に近い経営判断を下せる
マネジメントレビューにおけるインプットを行うことで限りなく正解に近い経営判断を下せる
企業が今まで実施してきたマネジメントについて振り返りを行い、マネジメントによって得られた成果や問題点、これから起こりうる懸念点などを考察する経営管理活動のことをマネジメントレビューといいます。
どのマネジメントシステム規格であってもマネジメントレビューの実施が求められており、マネジメントシステムの継続的な改善を行っていくうえで非常に重要な役割をもっています。
この記事はマネジメントシステムを行う目的と役割、ISO規格ごとの実施例について詳しく解説します。
目次
マネジメントレビューとは
マネジメントレビューとは、企業が行ってきた活動やマネジメントを振り返り、現状の課題の整理や問題点を考察し、体制やシステムの見直しを行う経営管理活動のことです。なお、一般的には経営者や経営陣といったトップマネジメントが実施します。
ほとんどのマネジメントシステム認証規格では、マネジメントレビューを行うことが要求事項として求められています。品質、情報セキュリティ、環境、食品安全、労働安全衛生などに代表されるようなISOのマネジメントシステム規格では、どの規格にもマネジメントレビューの実施が求められているのです。
マネジメントレビューの目的
マネジメントレビューの目的は、企業のマネジメントシステムを継続的により良いものに改善していくことです。
改善のための施策を推進する際に、施策の有効性を判断するためにマネジメントレビューは重要な役割を果たしています。

マネジメントレビューのメリット
次にマネジメントレビューを行うことで得られるメリットを紹介します。
組織内部に影響するリスクや課題の共有
マネジメントレビューを行い、現状の課題を共有し、体制やシステムの見直しを図ります。その課題には、内部環境に影響しかねない潜在的なリスクや顕在化しているリスクも含まれます。例えば、世界情勢や社会的なニーズ、法令要求などの外的要因は日々変化していくでしょう。
マネジメントレビューを行うことで、こういったリスクになりえる要因を共有し、経営計画において対応の有無を判断していく機会となります。
経営判断の材料になる
経営計画を立てていくうえで、現在の状況を明確に把握することが重要になります。事業環境から、業務プロセス、外部要因といった多角的な面を把握し分析することで、有効な改善策の策定につながります。そのため、現在の状況をインプットすることが非常に重要です。
詳しくは後述しますが、マネジメントレビューにより、顧客のフィードバックや組織活動の実施状況、内部・外部監査結果などの具体的な材料となるインプットが可能になります。そのため、その時点において適切な経営判断を下すことにつながるのです。
マネジメントシステムの質を維持・向上できる
ISO規格の認証を受けるためには、基本的にその規格の対象となっているマネジメントシステムを構築することが必要です。その中で、マネジメントシステムの要求事項には、マネジメントレビューをすることが求められています。
そのため、ISO規格を取得すると、自社のマネジメントシステムが第三者機関に認定されるのです。マネジメントレビューを行うことで、マネジメントシステムの質を高い水準で保てるでしょう。
マネジメントレビューのインプット・アウトプット
各規格の規格要求事項ではどのようなマネジメントレビューが求められているのでしょうか。ここでは例としてISO9001のマネジメントレビューについて記載します。要求事項の中で、マネジメントレビュー項目は以下のように記されています。
9.3 マネジメントレビュー
9.3.1 一般
トップマネジメントは,組織の品質マネジメントシステムが,引き続き,適切,妥当かつ有効で更に組織の戦略的な方向性と一致していることを確実にするために,あらかじめ定めた間隔で,品質マネジメントシステムをレビューしなければならない。9.3.2 マネジメントレビューへのインプット
マネジメントレビューは,次の事項を考慮して計画し,実施しなければならない。
a) 前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況
b) 品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化
c) 次に示す傾向を含めた,品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報
1) 顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック
2) 品質目標が満たされている程度
3) プロセスのパフォーマンス,並びに製品及びサービスの適合
4) 不適合及び是正処置
5) 監視及び測定の結果
6) 監査結果
7) 外部提供者のパフォーマンス
d) 資源の妥当性
e) リスク及び機会への取組みの有効性(6.1参照)
f) 改善の機会9.3.3 マネジメントレビューからのアウトプット
マネジメントレビューからのアウトプットには,次の事項に関する決定及び処置を含めなければならない。a)改善の機会
b)品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性
c)資源の必要性
組織は,マネジメントレビューの結果の証拠として,文書化した情報を保持しなければならない。
引用:JIS Q 9001:2015 (ISO9001:2015)
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記述自体は多くありますが、まとめるとISO9001マネジメントレビューでは以下の3つの章を実施するように求めています。
- 9.3.1一般:あらかじめ定めた間隔でマネジメントレビューを行うこと
- 9.3.2マネジメントレビューへのインプット(現状の報告)
- 9.3.3マネジメントレビューからのアウトプット(指示)
インプット
マネジメントレビューにおけるインプットとは、「経営的な判断を下すための材料になるもの」のことです。
これまでの日本企業の多くは、「経験と勘」による経営判断を下す傾向にありましたが、現代ではデータや統計を活用した経営が主流になっています。というのも、IT技術の進歩や市場の変化、社会変動などにより、「経験と勘」による経営では予測できない事態が発生することが多くなってきているためです。
データや統計を活用する場合に、重要になるのが「インプット」です。
- 内部・外部監査結果
- 顧客のフィードバック
- 組織活動の実施状況(プロセスの成果含む)とサービス・製品の適合性
- 予防・是正処置の状況
- 前回のマネジメントレビュー結果に対するフォロー
- 組織変更、関連法令の変更により、影響が生じる事項
このようなインプットを行うことで、より的確な経営判断を下せるようになるため、中長期的に企業が成長していくうえでマネジメントレビューは非常に重要な役割を担うことになるのです。
アウトプット
アウトプットとは、「正確なインプットで得た情報をもとに、課題や問題点を考察し、体制やシステムの見直しなどを決定すること」です。具体的には、以下の3点についてアウトプットすることが求められています。
- マネジメントシステムやプロセスの有効性における改善の決定
- 改善の機会の決定
- 資源の必要性の決定
現状を改善するのかについて経営陣が判断し、具体的にどのように改善していくかといった内容を組み立てていきます。先ほどの3点について決定していくことで、処置内容が明確になっていきます。
方針を立てていくために、マネジメントレビューからのアウトプットは非常に重要な役割を担っています。企業方針にも照らし合わせながらアウトプットを行うことで、よりその効果は高まるでしょう。

マネジメントレビューの流れ
マネジメントレビューの主な流れは以下のとおりです。一般的には組織の内外から得た監査の結果や顧客からのフィードバック、組織活動の定量的な結果をもとに成果の見直しを行います。
- トップマネジメントにインプットする情報を整理して、報告する
- トップマネジメントからアウトプットを実施する
- アウトプットの内容を受けて、行動計画を設定する
- 3で行った結果を、次回のマネジメントレビューのインプットとして整理する
企業や組織の体制、マネジメントシステムの分野によって、マネジメントレビューのやり方の細かい部分は異なります。そこで、ここではISO9001のマネジメントレビューの流れを詳しく紹介します。
【例】ISO9001のマネジメントレビューの流れ
ISO9001のマネジメントレビューの流れの一例を紹介します。マネジメントレビューを実施する際に参考にしてください。
1.参加者・会議日程を調整する
経営陣や品質管理担当者、管理監督者などのマネジメントレビュー参加者や会議日程を調整・決定します。
2.マネジメントレビューの事前準備を行う
以下のようなインプット情報を整理します。
- 前回のマネジメントレビュー結果
- 顧客満足度の調査結果
- 品質目標の達成度
- 品質マネジメントシステムの外部・内部における課題の変化
- 利害関係者からのフィードバックなど
マネジメントレビュー報告書を作成し、事前に配布しておくことで、会議当日の進行がスムーズになるでしょう。
3.マネジメントレビュー会議当日
インプットを受けた参加者は、継続的改善の機会や品質マネジメントシステムの変更の必要性などについてアウトプットします。
4.マネジメントレビューの結果を文書化し、社内に共有する
マネジメントレビュー終了後、議事録を作成して文書化を実施します。内容の確認が取れ次第、関連部署に共有します。
【具体例】国際規格におけるマネジメントレビュー
ここでは、各ISO規格のマネジメントレビューにおけるインプット・アウトプットの具体例を紹介します。
品質マネジメントシステム(ISO9001)
ISO9001とは、組織が顧客に提供する商品・サービスの品質向上のための品質マネジメントシステムに関する規格です。ISO9001では、顧客の求める商品・サービスを提供することで、顧客満足度を高めることを目的にしています。
建設業や製造業といったモノをつくる業種の組織において、多く取得されている規格です。
マネジメントレビューの実施例
品質マネジメントシステムにおけるマネジメントレビューとしては、以下のような実施例が挙げられます。
インプット例 | 顧客からの品質に関するフィードバック(製品の不具合報告や、お客様からのアンケート結果) |
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アウトプット例 | 製品の不具合発生率の低下を目指すための方針・計画を立てる |
環境マネジメントシステム(ISO14001)
ISO14001とは、環境に与えるリスクを低減する環境マネジメントシステムに関する規格です。ISO14001では、自然環境だけでなく、組織を取り巻くすべての要素を環境とし、環境パフォーマンスを向上させていくことを目的にしています。
建設業や製造業といった環境への影響が大きいと考えられる業種や、国際的な規則に対応するために商社の取得も増えてきています。
マネジメントレビューの実施例
環境マネジメントシステムにおけるマネジメントレビューとしては、以下のような実施例が挙げられます。
インプット例 | 環境目標の達成状況(従来の電気から太陽光発電を取り入れた際の、太陽光発電量や電気使用量の違い、廃棄物の量などの測定結果から算出) |
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アウトプット例 | 環境目標を達成するための新たな方針・計画を立てる |
情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC27001)
ISO27001とは、組織が保有している情報資産を管理する情報セキュリティマネジメントシステムに関する規格です。ISO27001では、情報セキュリティを構成する「機密性」「完全性」「可用性」の3つの要素のバランスを保ち、適切な管理によって情報セキュリティリスクを低減することを目的としています。
情報サービス業や人材派遣業、金融業といった個人情報や機密情報を多く取り扱っている業種において、取得する企業が増えています。
マネジメントレビューの実施例
情報マネジメントシステムにおけるマネジメントレビューとしては、以下のような実施例が挙げられます。
インプット例 | リスクアセスメントを行った部分の結果や情報を取り扱う取引先、従業員の声 |
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アウトプット例 | 新たに発生したリスクへの改善点の対応や現状の体制の改善 |
労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)
ISO45001とは、労働者の負傷や疾病といった労働災害を防止する労働安全衛生マネジメントシステムに関する規格です。労務中にある危険源を明らかにし、排除することを目的にしています。
製造業や建築業など、労働者のケガや病気のリスクが特に高い業種において、取得企業が増えています。
マネジメントレビューの実施例
労働安全衛生マネジメントシステムにおけるマネジメントレビューとしては、以下のような実施例が挙げられます。
インプット例 | 日々の運用の中で、改善すべきヒヤリハットや労務における従業員の声 |
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アウトプット例 | ヒヤリハットが発生した原因と対策を立てる指示や必要なリソースの支援 |
食品安全マネジメントシステム(ISO22000)
ISO22000とは、食品事故の防止や再発防止を目指す食品安全マネジメントシステムに関する規格です。消費者に安全な食品を届けるために、食品安全リスクの低減を目的にしています。
食品の安全を守るために、フードチェーンに連なるあらゆる食品事業者がISO22000の取得が可能です。そのため、食品製造業だけでなく、農業や食品流通業などの業種でも取得されています。
マネジメントレビューの実施例
食品安全マネジメントシステムにおけるマネジメントレビューとしては、以下のような実施例が挙げられます。
インプット例 | 食品リスクを抑えるための製造手順を実施した運用記録 |
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アウトプット例 | 食品の安全性の保証や必要な設備、従業員の不足がないかを検討し、対策を指示 |

マネジメントレビューで注意するべき点
マネジメントレビューを行う際に、注意すべき点をご紹介します。
目的を明確にする
マネジメントレビューを実施するうえで、欠かせないのが「インプット」と「アウトプット」です。経営目標を達成し、より適切な経営判断を下すためにマネジメントレビューが必要であることを考えると、その2つの要素においては、正確さや有効性が重要となります。
そのため、マネジメントレビューを行う目的を明確にすることで、ただ報告するだけという形骸化を防ぐことになります。何のために行うのかを明確にしておくことで、現状の課題を洗い出し、マネジメントシステムの継続的な改善につながります。
また、目的の明確化を意識的に行っていくことで、インプットとアウトプットがより洗練されていくでしょう。
チェックシートを活用する
取得するISO規格の要求事項に合わせてチェックシートを準備しておくことがおすすめです。聞くべき情報を漏れなく収集できるため、より正確なインプットにつながります。
ただし、チェックシートをただなぞるだけにならないよう、目的を明確にしたうえで取り組むようにしてください。
【現役コンサルが解説】マネジメントレビューの実態と有効な運用法
本記事監修の石井です。ここでは私の過去の経験などを踏まえてマネジメントレビューについて解説していきます。
先ず、ISOの要求事項「9.3マネジメントレビュー」では、マネジメントレビューの実施者はトップマネジメント(社長もしくは経営層)となっていますが、実際のところ、ISOの事務局が主体となって実施している企業様が多いのでは?と思います。
審査機関による審査では、事務局主体であっても指摘になることは、まず無いですが、このやり方でISOを企業の成長に活かせるかという点では、疑念が残ります。
具体的な例ですと、ISOのマネジメントレビューの他に、「経営会議」や「幹部会議」など社内の管理職以上が集まる会議が定期的に開催されていて、更にマネジメントレビューを実施すると報告内容(組織の内外の課題、目標の達成度、品質トラブルの内容など)が重複してしまい、どちらかと言えば、マネジメントレビューの方が、形骸化や無駄な会議というイメージになってしまいます。
ここで考慮していただきたいのが、5.1リーダーシップ及びコミットメントの「組織の事業プロセスへのISOマネジメントシステム要求事項の統合を確実にする」という項目です。
同じような内容の報告や議論を「経営会議」と「マネジメントレビュー」で二重に行っているとすれば、事業プロセスにISOを統合しているとは言えません。
トップマネジメントの皆様は、このような観点を踏まえて会議体の整合性や効率化を考える必要があると思います。
このケースでは経営会議の中にマネジメントレビューで要求されている項目(組織の内外の課題の変化、顧客からのフィードバック、目標の達成度など)を組み入れてしまうのが、マネジメントレビューの効率的で有効な運用方法だと考えられます。

まとめ
マネジメントレビューは企業が中長期的にビジネスを行っていくうえで、非常に重要な役割をもっています。マネジメントレビューに取り組む際には、「マネジメントシステムの認証規格を得る」という目的のためだけにマネジメントレビューを行うのではなく、「マネジメントシステムを継続的に改善する」、「柔軟で適合性のある企業を構築していく」という目的についても意識すると良いでしょう。

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