• マネジメントレビューとは、体制やシステムの見直しをする経営管理活動のことである
  • マネジメントレビューは基本的にトップマネジメントによって実施される
  • 定期的に経営判断を下していかなければ、時代についていけなくなる
  • マネジメントレビューにおけるインプットを行うことで限りなく正解に近い経営判断を下せる

企業が今まで実施してきたマネジメントについて振り返りを行い、マネジメントによって得られた成果や問題点、これから起こりうる懸念点などを考察する経営管理活動のことをマネジメントレビューと言います。

どの規格 にもマネジメントレビューの実施が求められており、マネジメントシステム の継続的な改善を行っていく上で非常に重要な役割を持ちます。そして、マネジメントレビューは基本的に、経営者を含む経営陣、つまりトップマネジメントによって実施されます。

この記事はマネジメントシステムを行う目的と役割、ISO規格ごとの実施例について詳しく解説していきます。

マネジメントレビューとは

マネジメントレビューとは、企業が行ってきた活動やマネジメントを振り返り、現状の課題の整理や問題点を考察し、体制やシステムの見直しをしていくという経営管理活動のことです。

ほとんどのマネジメントシステム認証 規格では、マネジメントレビューを行うことが要求事項として求められています。品質 、情報セキュリティ、 環境 マネジメント、食品安全、労働衛生などに代表されるようなISOのマネジメントシステム規格では、どの規格にもマネジメントレビューの実施が求められているのです。

マネジメントレビューの目的

マネジメントレビューの目的は、企業のマネジメントシステムを継続的により良いものに改善していくことです。

改善のための施策を推進する際に、施策の有効性を判断するためにマネジメントレビューは重要な役割を果たしています。

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マネジメントレビューと国際規格


マネジメントレビューは、国際標準化機構(ISO)が発行しているマネジメントシステム規格の要求事項でも求められています。ISOの目的は、モノゴトの基準となる規格を策定することで、国際間の取引をスムーズにし、国際貿易の発展を支援することです。そのため、さまざまな規格がありますが、その中でも代表的な規格について紹介します。

品質マネジメントシステム(ISO9001)

ISO9001 とは、組織が顧客に提供する商品・サービスの品質向上のための品質マネジメントシステムに関する規格です。ISO9001では、顧客の求める商品・サービスを提供することで、顧客満足度を高めることを目的にしています。
建設業や製造業といったモノをつくる業種の組織において、多く取得されている規格です。

ISO9001を取得することで、品質を高い水準に向上させつつ、一貫した商品・サービスの提供ができる品質マネジメントシステムの構築が可能です。そのため、商品・サービスの品質向上や生産性の向上といった内部体制の改善によるメリットや、取引先の拡大や顧客からの信頼獲得といった社会的価値の向上によるメリットを得られるでしょう。

関連記事:ISO9001とはなにか?導入企業や他の規格との違いを徹底解説!

環境マネジメントシステム(ISO14001)

ISO14001とは、環境に与えるリスクを低減する環境マネジメントシステムに関する規格です。ISO14001では、自然環境だけでなく、組織を取り巻くすべての要素を環境とし、環境パフォーマンスを向上させていくことを目的にしています。
建設業や製造業といった環境への影響が大きいと考えられる業種や、国際的な規則に対応するために商社の取得も増えてきています。

ISO14001を取得することで、自然環境だけでなく組織環境においても効果が見込める環境マネジメントシステムを構築できます。そのため、環境リスク回避による事業の長期継続や経費の削減、取引先の拡大、顧客からの信頼獲得といったメリットを得られるでしょう。

関連記事:ISO14001とはなにか?導入企業や他の規格との違いを徹底解説!

情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC 27001)

ISO27001 とは、組織が保有している情報資産を管理する情報セキュリティマネジメントシステムに関する規格です。ISO27001では、情報セキュリティを構成する「機密性 」「完全性 」「可用性」の3つの要素をバランスよく向上させることを目的にしています。
情報サービス業や人材派遣業、金融業といった個人情報や機密情報を多く取り扱っている業種において、取得する企業が増えています。

ISO27001を取得することで、不正アクセスやウイルス、システム障害などの情報セキュリティリスクを低減する情報マネジメントシステムを構築できます。そのため、情報セキュリティリスクの低減や従業員のモラル向上、対外的な信頼性向上、事業継続性の向上といったメリットを得られるでしょう。

関連記事:ISO27001とは?取得メリットやISMS・Pマークとの違いを徹底解説!

労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)

ISO45001とは、労働者の負傷や疾病といった労働災害を防止する労働安全衛生マネジメントシステムに関する規格です。労務中にある危険源を明らかにし、排除することを目的にしています。
製造業や建築業など、労働者のケガや病気のリスクが特に高い業種において、取得企業が増えています。

ISO45001を取得することで、労働環境を向上させる仕組みを構築・運用できるとともに、企業の対外的な評価向上が期待できます。また、そうした仕組みを継続することで従業員満足度や事業継続性の向上にもつながるでしょう。

関連記事:【初心者向け】ISO45001とは?取得企業数や要求事項をわかりやすく解説

食品安全マネジメントシステム(ISO22000)

ISO22000とは、食品事故の防止や再発防止を目指す食品安全マネジメントシステムに関する規格です。消費者に安全な食品を届けることを目的にしています。
食品の安全に絶対はないことから、フードチェーンを監視するために一次生産から販売までに関わるあらゆる食品事業者にISO22000の取得を求められることがあるのです。そのため、食品製造業だけでなく、農業や食品流通業など食品に関するあらゆる業種で取得されています。

ISO22000を取得することで、取引先からの取得要請に応えられるようになるため、顧客の拡大や競合との差別化が期待できます。

関連記事:ISO22000とは?認証取得のキホンと規格要求事項を徹底解説

マネジメントレビューのメリット

先述の通りISO規格を取得するにあたって、マネジメントレビューを行うことが必要になります。そのため、次にマネジメントレビューを行うことで得られるメリットについて紹介します。

組織内部に影響するリスクや課題の共有

マネジメントレビューを行い、現状の課題を共有し、体制やシステムの見直しを図ります。その課題には、内部環境に影響しかねない潜在的なリスクや顕在化しているリスクも含まれます。例えば、世界情勢や社会的なニーズ、法令要求などの外的要因は日々変化していくでしょう。
マネジメントレビューを行うことで、こういったリスクになりえる要因を共有し、経営計画において対応の有無を判断していく機会となります。

経営判断の材料になる

経営計画を立てていくうえで、現在の状況を明確に把握することが重要になります。事業環境から、業務プロセス、外部要因といった多角的な面を把握し分析することで、有効な改善策の策定につながります。そのため、現在の状況をインプットすることが非常に重要です。

詳しくは後述しますが、マネジメントレビューにより、顧客のフィードバックや組織活動の実施状況、内部・外部監査結果などの具体的な材料となるインプットを行うことができます。そのため、その時点において適切な経営判断を下すことにつながるのです。

マネジメントシステムの質を保つことができる

ISO規格の認証を受けるためには、基本的にその規格の対象となっているマネジメントシステムを構築することが必要です。その中で、マネジメントシステムの要求事項には、マネジメントレビューをすることが求められています。

そのため、ISO規格を取得することで、マネジメントレビューを実施しており、その活動を第三者機関に認定されていることになるのです。マネジメントレビューを行うことで、マネジメントシステムの質を高い水準で保つことができるでしょう。

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マネジメントレビューはどのように行うのか?

マネジメントレビューは経営者を含む経営陣、つまりトップマネジメントによって実施されます。
企業や組織の体制、マネジメントシステムの分野によって、どのようにマネジメントレビューを行っていくのかという細かい部分は異なりますが、一般的には組織の内外から得た監査の結果や顧客からのフィードバック、組織活動の定量的な結果をもとに成果の見直しを行います。

マネジメントレビューへのインプット

マネジメントレビューには「インプット」を行う必要があります。マネジメントレビューにおけるインプットとは、経営的な判断を下すための材料になるものを指しますが、これまでの日本企業の多くは、「経験と勘」による経営判断を下す傾向にありました。しかし、時代はデータや統計を活用した経営が主流になっています。

時代の流れが早いことも相まって、これまでのように「経験と勘」による経営では予測できない事態が発生することが多くなってきているのです。ここで重要になってくるのが「インプット」です。

  • 内部・外部監査結果
  • 顧客のフィードバック
  • 組織活動の実施状況(プロセスの成果含む)とサービス・製品の適合性
  • 予防・是正処置の状況
  • 前回のマネジメントレビュー結果に対するフォロー
  • 組織変更、関連法令の変更により、影響が生じる事項

このようなインプットを行うことで、限りなく正解に近い経営判断を下せるようになるため、中長期的に企業が成長していく上でマネジメントレビューは非常に重要な役割を担うことになるのです。

マネジメントレビューからのアウトプット

正確なインプットで得た情報をもとに、課題や問題点を考察し、体制やシステムの見直しといった「アウトプット」を行うことが必要です。具体的には、以下の3点についてアウトプットすることが求められています。

  • マネジメントシステムやプロセスの有効性における改善の決定
  • 改善の機会の決定
  • 資源の必要性の決定

現状を改善するのかについて経営陣が判断し、具体的にどのように改善していくかといった内容を組み立てていきます。先ほどの3点について決定していくことで、処置内容が明確になっていきます。
方針を立てていくためには、マネジメントレビューからのアウトプットは非常に重要な役割を担っています。企業方針にも照らし合わせながらアウトプットを行うことで、よりその効果は高まるでしょう。

各国際規格におけるマネジメントレビューの実施例


各規格において、どのようにマネジメントレビューが行われているのかについて解説します。

品質マネジメントシステム(ISO9001)

品質マネジメントシステムにおけるマネジメントレビューとしては、以下のような実施例が挙げられます。
インプット例:顧客からの品質に関するフィードバック(製品の不具合報告や、お客様からのアンケート結果)
アウトプット例:製品の不具合発生率の低下を目指すための方針・計画を立てる

環境マネジメントシステム(ISO14001)

環境マネジメントシステムにおけるマネジメントレビューとしては、以下のような実施例が挙げられます。
インプット例:環境目標の達成状況(従来の電気から太陽光発電を取り入れた際の、太陽光発電量や電気使用量の違い、廃棄物の量などの測定結果から算出)
アウトプット例:環境目標を達成するための新たな方針・計画を立てる

情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC27001)

情報マネジメントシステムにおけるマネジメントレビューとしては、以下のような実施例が挙げられます。
インプット例:リスクアセスメントを行った部分の結果や情報を取り扱う取引先、従業員の声
アウトプット例:新たに発生したリスクへの改善点の対応や現状の体制の改善

労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)

労働安全衛生マネジメントシステムにおけるマネジメントレビューとしては、以下のような実施例が挙げられます。
インプット例:日々の運用の中で、改善すべきヒヤリハットや労務における従業員の声
アウトプット例:ヒヤリハットが発生した原因と対策を立てる指示や必要なリソースの支援

食品安全マネジメントシステム(ISO22000)

食品安全マネジメントシステムにおけるマネジメントレビューとしては、以下のような実施例が挙げられます。
インプット例:食品リスクを抑えるための製造手順を実施した運用記録
アウトプット例:食品の安全性の保証や必要な設備、従業員の不足がないかを検討し、対策を指示

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マネジメントレビューで注意するべき点

マネジメントレビューを行う際に、注意すべき点をご紹介します。

なぜ行うのか目的を明確にする

マネジメントレビューを実施するうえで、欠かせないのが「インプット」と「アウトプット」です。経営目標を達成し、より適切な経営判断を下すためにマネジメントレビューが必要であることを考えると、その2つの要素においては、正確さや有効性が重要となります。

そのため、マネジメントレビューを行う目的を明確にすることで、ただ報告するだけという形骸化を防ぐことにつながります。何のために行うのかを明確にしておくことで、現状の課題を洗い出し、マネジメントシステムの継続的な改善につながります。
また、目的の明確化を意識的に行っていくことで、インプットとアウトプットがより洗練されていくでしょう。

チェックシートを活用する

取得するISO規格の要求事項にあわせてチェックシートを準備しておくことがおすすめです。聞くべき情報を漏れなく収集できるため、より正確なインプットにつながります。

ただし、チェックシートをただなぞるだけにならないよう、目的を明確にしたうえで取り組むようにしてください。

まとめ

マネジメントレビューは企業が中長期的にビジネスを行っていく上で、非常に重要な役割を持っています。マネジメントレビューに取り組む際には、「マネジメントシステムの認証規格を得る」という目的のためだけにマネジメントレビューを行うのではなく、「マネジメントシステムを継続的に改善する」、「柔軟で適合性のある企業を構築していく」という目的についても意識すると良いでしょう。

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