ISO9001におけるリスク及び機会とは

- リスクとは、品質マネジメントシステムにおいて、将来の不確実性の高い出来事のこと
- 機会とは、時間や状況、新たな技術革新などが相互に作用し、ある程度予想できる方向へ向かっていく可能性のこと
ISO 9001では「リスク及び機会」というフレーズが頻繁に出てきます。このリスク及び機会とはどういう意味を持つものなのでしょうか?また、具体的にはどのような取り組みを行わなければならないのでしょうか?
リスク及び機会とは?
リスク及び機会とは、ISO9000 シリーズの要求事項であるISO9001 に頻繁に出てくる言葉のことです。リスク及び機会について、要求事項には以下のようにあります。
品質 マネジメントシステムの計画を策定するとき,組織は,4.1 に規定する課題及び 4.2 に規定する要求事項を考慮し,次の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を決定しなければならない。
- a)品質マネジメントシステムが,その意図した結果を達成できるという確信を与える。
- b)望ましい影響を増大する。
- c)望ましくない影響を防止又は低減する。
- d)改善を達成する。
これだけ見ても、さっぱりわからないという方も多いかもしれません。以下では、リスクと機会というものについて分解して考えてみましょう。
リスクとは?
リスクとは、品質マネジメントシステムにおいて、将来の不確実性の高い出来事のことを指します。不適合のような良くないとされることだけでなく、特需による売上の大幅な向上などもリスクとして捉えることができます。
では、そのリスクへの取り組みとはどのようなことなのでしょうか?ISO9001の序文には、以下のようにあります。
リスクに基づく考え方の概念は,例えば,起こり得る不適合を除去するための予防処置を実施する,発生したあらゆる不適合を分析する,及び不適合の影響に対して適切な,再発防止のための取り組みを行うということを含めて,この規格 の旧版に含まれていた。
つまり、不適合を発生させないように予防処置を実施し、万が一発生した場合においてもそのリスクを分析し、再発防止の取り組みを行うことがリスクへの取り組みということになります。また、良い影響が起こる可能性についても、その時が来た際に迅速に対応できるよう、事前に備えておく必要があります。
一般的には、リスク=危険といった意味合いで解釈されることが多いですが、ISO9001では、リスク=不確実性といった意味で使用されています。ファイナンスや経済学の世界と同じような意味合いで使用されている用語のため、危険といった意味合いでリスクを捉えてしまうと、偏ったマネジメントシステムとなってしまい、効果を最大化することができなくなるかもしれません。
機会とは?
機会については、ISO9001で明確に定義がされていないものの、以下のような記述があります。
機会は,新たな慣行の採用,新製品の発売,新市場の開拓,新たな顧客への取り組み,パートナーシップの構築,新たな技術の使用,及び組織のニーズ又は顧客のニーズに取り組むためのその他の望ましくかつ実行可能な可能性につながり得る。
つまり、機会とは時間や状況、新たな技術革新などが相互に作用し、ある程度予想できる方向へ向かっていく可能性のことを指します。
では、機会に対する取り組みとはどのようなものでしょうか?それは、機会が更に好意的な方向に進んでいくように、計画を行いそれを実行していくということです。

改めて、リスク及び機会への取り組みとは
簡単に言ってしまえば、リスク及び機会への取り組みとは、「望ましくない影響に対しては、何らかの対策を取り、その影響を低減していき、望ましい影響に対してはその影響が更に大きくなるように計画していく」ということになります。
ISO9001というフィールドにもう少し近づけて言うと、「顧客満足」という目標を達成する上で望ましくない影響(品質低下や不適合製品の増加)を低減していき、「顧客満足」というという目標を達成する上で有利に働く状況を分析し、品質マネジメントシステムに取り込んでいくということです。
まとめ
今回は、ISO9001の中でもリスク及び機会への取り組みという考え方について解説してきました。この他にもISO9001には規格内では明確に定義されていないが、分かりにくいキーワードというものがよく出てきます。これらのニュアンスを正しく理解して、よりよい品質マネジメントシステムの構築に役立ててください。

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