今回のテーマは「ISO内部監査に必要な切り力」です。
ISO運用で監査の指針となるISO 19011 規格 があり、本テーマでは当規格を参考にISO内部 監査員 が監査を実施するために必要とする 力量 ・資質について解説していきます。

内部監査員に必要な知識や技能は、教育訓練や業務・内部監査の経験を積むことによって習得することはできますが、幅広い知識や深い業務経験など専門家として求められるレベルに達するには数年かかります。ISO規格では特に内部監査員の資格について要求事項はありませんが、自組織で内部監査員の資格認定 基準を決め、計画的に適切な教育・訓練を実施し、監査員としての適格な力量を有するよう指導・育成することはとても重要です。最近では、オンラインセミナーによる内部監査員の外部研修を実施している育成・研修サービスもあります。費用や時間等、自社の取り入れやすい形で、内部監査員の教育・訓練を実施すると良いでしょう。

内部監査結果やそのプロセスを信頼できるものにするために、ISO規格では監査員の資質・力量管理についてどのような要求があるかご紹介します。

内部監査員に求められる資質

監査は「箇条4.監査の原則」(「JISQ19011:2019 マネジメントシステム監査のための指針」)に準拠し、監査員が互いに独立して監査を行った場合、同じような状況に置かれれば同じような結論が出ることが望ましい。JIS19011の「7.2.2 個人の行動」で、監査の原則に従って活動するために必要な専門家としての個人的「特質」について定義しています。

■JISQ19011:2019 マネジメントシステム監査のための指針
 【箇条4.監査の原則】

  • a) 高潔さ:専門家であることの基礎
  • b) 公正な報告:ありのままに,かつ,正確に報告する義務
  • c) 専門家としての正当な注意:監査の際の広範な注意及び判断
  • d) 機密保持:情報のセキュリティ
  • e) 独立性:監査の公平性及び監査結論の客観性の基礎
  • f) 証拠に基づくアプローチ:体系的な監査プロセスにおいて,信頼性及び再現性のある監査結論に到達するための合理的な方法
  • g) リスクに基づくアプローチ:リスク及び機会を考慮する監査アプローチ
  • ■JISQ19011:2019 マネジメントシステム監査のための指針
    7.監査員の力量及び評価
    7.1 一般
    7.2監査員の力量の決定

     7.2.2 個人の行動

    • a)倫理的である。すなわち、公正である、信用できる、誠実である、正直である、そして分別がある。
    • b)心が広い。すなわち、別の考え方又は視点を進んで考慮する。
    • c)外交的である。すなわち、目的を達成するように人と上手に接する。
    • d)観察力がある。すなわち、物理的な周囲の状況及び活動を積極的に意識する。
    • e)知覚が鋭い。すなわち、状況を直感的に認知し、理解できる。
    • f)適応性がある。すなわち、異なる状況に容易に合わせることができる。
    • g)粘り強い。すなわち、根気があり、目的の達成に集中する。
    • h)決断力がある。すなわち、論理的な理由及び分析に基づいて、時宜を得た結論に到達することができる。
    • i)自立的である。すなわち、他の人々と有効なやりとりをしながらも独立して活動し、役割を果たすことができる。
    • j) 不屈の精神をもって活動できる。すなわち、その活動がときには受け入れられず、意見の相違又は対立をもたらすことがあっても、責任をもち、倫理的に活動することができる。
    • k) 改善に対して前向きである。すなわち、進んで状況から学ぶ。
    • l) 文化に対して敏感である。すなわち、被監査者の文化を観察し、尊重する。
    • m) 協力的である。すなわち、監査チームメンバー及び被監査者の要員を含む他の人々とともに有効に活動する。
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    内部監査員に求められる力量

    内部監査員の力量、知識・技能に関しては、JIS19011の「7.2.3 知識及び技能」で定義されていますが、意図した監査結果を達成するためには、監査員共通の知識・技能や、分野/業種固有の知識・技能が必要になる場合もあります。監査では、一貫性のある体系的な監査を確実に実施できるよう、「監査の原則、プロセス及び方法」について理解しましょう。

    a) 監査の原則,プロセス及び方法:

    • − 監査実施に付随するリスク及び機会のタイプ並びに監査実施へのリスクに基づくアプローチの原則を理解する。
    • − 有効に作業を計画し,必要な手配をする。
    • − 合意したタイムスケジュール内で監査を行う。
    • − 重要事項を優先し,重点的に取り組む。
    • − 口頭及び書面で有効にコミュニケーションを取る(自身で,又は通訳の利用を通じて)。
    • − 有効なインタビュー,聞き取り,観察,並びに記録及びデータを含む文書化した情報のレビューによって,情報を収集する。
    • − 監査のためにサンプリング技法を使用することの適切性及びそれによる結果を理解する。
    • − 技術専門家の意見を理解し,考慮する。
    • − 該当する場合,他のプロセス及び異なる機能との相互関係を含めて,プロセスを最初から最後まで監査する。
    • − 収集した情報の関連性及び正確さを検証する。
    • − 監査所見及び監査結論の根拠とするために,監査証拠が十分かつ適切であることを確認する。
    • − 監査所見及び監査結論の信頼性に影響するかもしれない要因を評価する。
    • − 監査活動及び監査所見を文書化し,報告書を作成する。
    • − 情報の機密保持及びセキュリティを維持する。

    b) マネジメントシステム規格及びその他の基準文書:

    監査員は、監査範囲 を理解し、自社の品質マニュアル (またはそれに代わる文書)や社内規定等が監査基準 (自社の基準文書)となるためISO規格に適合しているか適切に評価します。
    意図した監査結果を達成するために、まずは監査員がこれら文書の重要性や内容を正しく理解することから始まります。

    • − 監査基準又は監査方法の確立に用いるマネジメントシステム規格又は他の規準文書若しくは手引・支援文書
    • − 被監査者及び他の組織によるマネジメントシステム規格の適用
    • − マネジメントシステムのプロセス間の関係及び相互作用
    • − 複数の規格又は基準文書の重要性及び優先順位の理解
    • − 様々な監査の位置づけへの規格又は基準文書の適用

    c) 組織及び組織の状況:

    監査では、被監査者の組織構造、目的及びマネジメントシステムの運用状況等、以下の点についての理解も必要になります。

    • − マネジメントシステムに影響を及ぼす,関連する利害関係者のニーズ及び期待
    • − 組織のタイプ:統治,規模,構造,機能及び関係
    • − 全般的な事業及びそのマネジメントの概念、プロセス及び関係する用語。
      (計画,予算化及び人事管理を含む)
    • − 被監査者の文化的及び社会的側面

    d) その他

    組織の要求事項を確認し、その枠内で監査業務を行う必要があります。
    また、適用される法令・規制要求事項や、被監査者の活動、プロセス・製品(サービス)についても確認しておきましょう。

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