ISO事務局とは?組織における役割や業務内容とは?
ISO のマネジメントシステム 認証 を取得するためには、要求事項に沿ったマネジメントシステムを構築していく必要があります。この構築を円滑に行う役割を持つのがISO事務局と呼ばれるものでありますが、実際のところどのような人員で構成し、何名程度の規模の事務局を設立すれば良いのでしょうか?
今回は、ISO事務局について詳しく解説していきたいと思います。
目次
ISO事務局とは
ISO事務局とは、マネジメントシステムの構築や維持の支援を行い、ISOが求めるマネジメントシステムに適合できるように内部監査を行ったり各組織との調整を行ったりする組織内部の事務局のことをいいます。
ISOにおけるマネジメントシステムでは、基本的にマネジメントシステムを主体的に先導していくのはトップマネジメントである必要があります。また、品質 管理や労働安全も各部門が組織内部にあることも多いでしょう。どのようなマネジメントシステムにおいても、「認証を取得すること」が目的となってはいけませんから、ISO事務局は組織のマネジメントシステムにおいて中心的な活動は決して行いません。しかし、認証を維持するために支援やマネジメントシステムの 有効性 を維持し、マネジメントシステムの 適合性 を維持し、マネジメントシステムを改善していくいわゆる補助的な役割を担っています。
ISO事務局の構成員とは?
ISO事務局は、組織の規模や体制によってどのような構成員によって組織されるのかは変わってきます。また、事務局の構成員は組織内部の人間だけによって構成される必要はありません。例えばコンサルタントにISO認証取得の支援を依頼しているのであれば、コンサルタントをISO事務局の構成員として招き入れてもなんら問題がないのです。
ISO事務局は必要なものなのか?
そもそもですが、ISO事務局とは名付けられているものの、ISOのどの規格 においても「事務局を設立すること」は要求事項の中で明確に求められていません。例えば品質マネジメントシステムであるISO9001 では、品質に関する工程を整理したり、様々なものを文書化したりすることを規格は要求していますが、「こういった組織でなくてはならない」といった内容の要求は行っていないのです。
2008年版では、管理責任者の設置を要求されていましたが、現在では必須とはされていません。
ISOが組織に対して求める「組織に関する要素」はトップマネジメントがリーダーシップを発揮し、組織の構成員が積極的にマネジメントシステムの方針や目標を理解し、参加することのみなのです。
ISO事務局があることのメリットとは?
では、なんのためにISO事務局というものは存在するのでしょうか?それは、ISOの認証を取得するために必要な要求事項を満たすために効率的なマネジメントシステムの構築を行ったり、客観的な視点を取り入れてより有効性の高いマネジメントシステムの構築・運用をするためにあるのです。
マネジメントシステムの構築そのものは、例えば品質マネジメントシステムであれば品質管理責任者が中心となって行うのが多くの組織では通常でしょう。ISO9001を取得するために品質管理部門がISO事務局を兼任して活動するという場合も少なくはありません。
しかし、組織内部の人間のみによって構成された組織というのは、どうしても客観的な視点を見失ってしまいがちです。自分たちの仕事を自分たちで監査はできません。そのため、第三者的な立ち位置で、客観的な視点で内部監査を実施することができるメリットもあります
ISO取得時の業務内容とは?
ISOを取得するためには、計画の立案から1年程度の期間がかかります。その期間に、ISO事務局は多くの業務を実施する必要があるのです。実際にどのような業務が行われるのかについて、紹介します。
ISO規格におけるマネジメントシステムの構築
まず、ISO規格の認証取得のための計画を立てることが必要不可欠です。構築・運用をどのように進めていくかについて、トップや各部署の管理者を交えて協議しましょう。
ISOの認証取得には、管理者から現場の従業員までの積極的な参入が欠かせないため、それぞれの段階における計画を関係者とともにコミュニケーションを図りながら詰めていくことが重要です。
また、認証審査を受けるための審査登録機関を選定します。
認定範囲を確認したうえで、いくつかの審査登録機関に資料請求や見積もりを依頼しましょう。金額やサービス内容だけでなく、実績や評判を確認することも重要です。トップや管理者と協議し、審査登録機関を決定してください。
その後、ISOの要求事項で求められている文書を作成します。そのためには、現在、自社で文書化されているものとそうでないものを把握し、要求事項で求められている文書との相違を確認しましょう。
ISO規格におけるマネジメントシステムの運用
ISO事務局の業務としては、目標に対しての改善活動の進捗を記録し、管理することが必要です。計画時に立てた目標が、実現できる見込みがあるのか、見直しが必要なのか、設定したルール通りに運用がされているかを内部監査などでしっかり確認する必要があります。
また、実際の業務の中で運用すると、構築してきた文書の内容が適合していないことも出てくるでしょう。その場合には、文書内容の改訂が必要ですが、ISO規格の要求事項から逸脱しないように注意してください。
初回認証審査の対応
ISO規格の初回認証審査は、文書レビュー、第1段階審査、第2段階審査と3段階に分けて実施されます。
それぞれの段階で、構築・運用してきたマネジメントシステムがISO規格の要求事項に適合しているかを審査されます。不適合があった場合には、次の審査までに是正を行い、その報告を行わなければなりません。このように、登録審査機関や審査員との綿密なコミュニケーションが求められます。
ISO事務局に求められる能力は?
ISO事務局に求められる主な3つの能力について解説します。
- 取得予定のISO規格要求事項の知識
- 必要な法令規制の知識
- 内部監査の知識
ISO規格の要求事項に沿ったマネジメントシステムを構築・運用し、有効に機能し続けるためには、ISO規格の要求事項の知識や法令規制の知識が必要不可欠です。要求事項や法令規制については、改訂される可能性もあるため、最新の情報を常に確認し、知識をアップデートしていくことも大切になります。
また、構築・運用しているマネジメントシステムがきちんとISO規格の要求事項に適合しているかを確認するためには、内部監査における知識をもち、適切に実施する能力が求められます。必要に応じて外部研修を利用するなどして取り組みながら、ISO事務局としての能力を高めていきましょう。
ISO事務局を設置するなら役割を明確にしておこう
どのような組織であっても、ある部門の役割と責任は明確にしておかなければ、責任のなすりつけ合いが発生したり、部門横断的な業務が円滑に進まなかったりするものです。これはISO事務局にも共通して言えることです。
ですので、ISO事務局を設置する場合はその事務局の役割を明確にし、「どのような場合にどのような責任を負うのか」ということを管理部門と切り分けておく必要があります。また、こういった役割や責任の所在については文書化して誰が見ても明らかなようにしておくことが望ましいでしょう。
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