環境マネジメントシステム(EMS)とは? わかりやすく解説
- 環境マネジメントシステムとは、企業活動を行う中で与えてしまう環境影響を低減するための仕組み
- 環境マネジメントシステムは、製造業や建築・建設業に限らず全ての事業者にとって有用なもの
- 環境マネジメントシステムの規格には、ISO14001やエコアクション21というものがある
EMSとも呼ばれる環境
マネジメントシステム
とは、組織を取り巻く人やモノに対して、組織が与えている
環境影響
を明確化し、リスク及び機会に対応するためのマネジメントシステムのことを言います。
では、組織に関連する「リスク及び機会」とは何なのか、またリスク及び機会に対応するマネジメントシステムとはどのようなものなのでしょうか? 今回は、環境マネジメントシステムについて初めての方でもわかりやすいように解説していきます。
目次
環境マネジメントシステム(EMS)とは
環境マネジメントシステムとは、英語では「Environmental Management System」と言います。これを略して「EMS」と呼ばれることがありますが、要するに環境に対するマネジメントシステムのことを指します。
環境マネジメントシステム(EMS)の目的
企業は顧客に対してサービスを提供したり、製品を製造したりする際に様々な影響を人やモノ——つまり環境に対して与えています。それは良い影響を与えることもあれば、悪い影響を与えることもあるはずです。例えばガソリンを販売しようとした場合、それによって人々は自動車などを動かすことができるという良い影響を与えることになりますが、同時に排気ガスによって地球に悪影響を与えることになってしまうかもしれません。
環境マネジメントシステムは、このような環境へのリスク及び機会に対して、「企業や組織がどのような取り組みを行い、環境に対する良い影響を増大させ、悪い影響を減少させるか」ということを計画・実行し、その成果を検証・改善していくための仕組みのことを指します。
ISO14001を取得するにあたって必要な環境マネジメントシステム(EMS)。構築するには自社を取り巻く、環境リスクの洗い出しなどが必要ですが、皆様苦労されるポイントでもあります。
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環境マネジメントシステム(EMS)のPDCAサイクル
「環境に悪影響を与えない仕組み」とは、「ゴミを分別する」とか「リサイクル製品を多く利用する」といったものではありません。マネジメントシステムとは、ある目標を達成するために、「計画の策定(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」といったPDCAサイクルを回す「組織を動かす仕組み」のことを指します。
つまり環境マネジメントシステムとは、「環境に対する良い影響を増大させ、悪い影響を減少させる」という目的のもと、その環境目標を達成するために計画→実行→評価→改善をしていく一連のプロセスのことを言うのです。
例えば、「紙の使用量を5%減らす」という環境目標があったとして、その目標を達成するために「会議用の資料はメールにて配布する」という計画を立て、それを全社で実行していきます。その計画を実行した結果、紙の使用量が前年比でどれくらい減ったのかを検証し、もし減っていなかった場合は「何が原因で紙が使用されていたのか」ということを究明し、それを次回の施策に反映していく必要があります。
こういった一連のPDCAサイクルをうまく回すためには、「紙の使用量を記録する」とか「実際にメールで配布されているかどうかを監視する」ということが必要になってきますが、これこそが仕組み——つまり環境マネジメントシステムというわけです。
環境マネジメントシステム(EMS)と国際規格ISO14001の関係性
ここでは、環境マネジメントシステムとセットで解説されることも多い国際規格ISO
14001との関係性について解説していきます。
国際規格ISO14001とは
まず、国際規格ISOとは、スイスに本部を置いている非営利法人の国際標準化機構が定めている国際的な基準を示した規格のことです。ISO14001は、数あるISO規格のなかでも、環境マネジメントシステム規格のことを指します。
ISO14001の詳細については、以下の記事をご覧ください。
ISO14001の要求事項
ISO14001においては、環境マネジメントシステムを有効に機能させ、環境に関する法令遵守にも取り組むために、要求事項を定めています。そのうえで、まず、組織が構築・運用する環境マネジメントシステムにおける環境方針 と 環境目的 を決定する必要があります。
自社の企業活動における環境負荷を明らかにし、環境管理しつつ、自社の経営を発展させていく計画を策定・運用していきます。
ISO14001の要求事項の詳細は、以下の記事をご覧ください。
環境マネジメントシステム(EMS)とISO14001の関係性
環境マネジメントシステムとISO14001の関係性を一言で説明するならば、環境マネジメントシステムは、「仕組み」であり、ISO14001は環境マネジメントシステムにおける基準となる「国際規格」のことです。そのため、両者は異なるものではありますが、深い関係性をもっています。
ISO14001は、自社において環境マネジメントシステムをどのように構築・運用すれば、有効に機能するかを示したガイドラインと覚えておくとわかりやすいでしょう。
環境マネジメントシステム(EMS)が有効な業種
環境マネジメントシステムが有効な業種には、環境負担が大きくなりやすい建築業や製造業が挙げられます。しかし、環境マネジメントシステムは製造業以外の企業組織も対象としています。
例えば、IT企業であったとしても電力や紙を消費し、廃棄物を出すことがあります。こういった企業は製造業に比べれば環境へ与えている影響は小さいかもしれませんが、環境マネジメントシステムは「どの程度環境へ影響を与えたか」という結果よりもむしろ、過程を重視します。
また、最近ではサステナビリティが重視されることから、環境対応や環境保全をしつつ、経済価値を創出しようとする環境経営に積極的な姿勢を示す企業も多くあります。このため、環境マネジメントシステムは製造業や建設業のみを対象としたものではなく、多くの企業が取得する価値があるのです。
環境マネジメントシステム(EMS)の具体例
それでは、どのような企業が環境マネジメントシステムを構築・運用しているのでしょうか。ここでは、環境マネジメントシステムを実践している具体例として2つの企業をご紹介します。
富士通株式会社
富士通グループでは、国内外の子会社においてISO14001を取得し、「サステナビリティ経営委員会」を設置しました。そして、環境マネジメントシステムを運用するにあたり、環境行動計画において目標を定め、環境目標達成状況を確認しつつ、活動の審議を行っているのです。
体系的な管理を実現していることで、多岐にわたる商品・サービスの販売における環境負荷の低減を推進しています。
アスクル株式会社
アスクル株式会社では、本社だけでなく、各物流センターにおいてもISO14001を取得しており、環境マネジメントシステムの構築・運用を行っています。「アスクル環境方針」をもとに、独自の目標を立てながら、従業員への環境教育や法令遵守、環境内部監査などを実施しています。
環境マネジメントシステムに対する認証規格とは
環境マネジメントシステムには、品質マネジメントシステムや情報セキュリティマネジメントシステム同様にそのマネジメントシステムを評価する規格が存在します。
こういった規格を取得する企業は、第三者から「環境への影響を管理する取り組みを行っている」とみなされるため、様々なメリットを受けることができます。企業の中には、サプライヤーに対して環境マネジメントシステム認証の取得を求めるところもあるくらいです。
では、環境マネジメントシステム規格にはどのようなものがあるのでしょうか。
ISO14001
ISO14001は国際標準化機構(ISO)による環境マネジメントシステムの国際規格です。主に官公庁の入札などで評価基準となるため、製造業や建設業でISO9001
とセットで取得されることが多いですが、商社など、一見関係なさそうに見える企業での取得も非常に多いです。
ISO14001を取得するにあたって必要な環境マネジメントシステム(EMS)。構築するには自社を取り巻く、環境リスクの洗い出しなどが必要ですが、皆様苦労されるポイントでもあります。
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エコアクション21
エコアクション21は、日本独自の環境マネジメントシステム認証規格です。日本独自ということもあり、日本の環境関連の法令に則った形で規格が構成されています。自治体によってはエコアクション21の認証取得を行う場合にその費用の一部を負担する補助金制度もあるため、国内では徐々に広がりを見せています。
まとめ
この記事では、EMS(環境マネジメントシステム)について解説しました。環境に対する企業の責任が求められ、企業が積極的に環境負荷に対する取り組みが行われるようになっている最近では、EMSの構築とISO14001の取得が注目されています。
具体的な環境目標を定め、自社の経営活動の発展に結びつけていくことで、自社ならではの強みとなる可能性もあるでしょう。EMSの構築・運用を目指している企業は、ISO14001の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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