ISO14001における汚染の予防とは具体的にどのようなもの？

ISO 14001の要求事項を読み解いて行くにあたって、分かりにくい用語というものが複数あると思います。環境 側面などはその代表例とも言えるでしょう。単純に考えれば、 汚染の予防 は「水質汚染や大気汚染を予防すること」と理解することができますが、果たしてそれで本当に正しく解釈できているといえるのでしょうか？

今回は、ISO14001における「汚染の予防」とは具体的にどのようなものなのかということについて解説していきたいと思います。

汚染の予防とは

汚染の予防は、ISO14000の要求事項（ISO14001）を日本語解釈したJIS Q 14001にて、以下のように定義されています。

有害な環境影響（3.2.4）を低減するために，様々な種類の汚染物質又は廃棄物の発生，排出又は放出を回避，低減又は管理するためのプロセス（3.3.5），操作，技法，材料，製品，サービス又はエネルギーを（個別に又は組み合わせて）使用すること。

これだけを見ると、汚染の予防とは、冒頭でも述べたように「大気汚染や水質汚染を予防すること」と理解することができます。——しかし、当サイト内で他のISO14001に関する記事でも述べている通り、「環境」とは必ずしも自然環境だけではありません。——ということは、汚染の予防に関しても私達が普段イメージするような環境とは異なる側面の意味合いを持っているのでしょうか。

結論から申し上げると、この汚染の予防に関しては「自然環境」を対象として言葉が定義されています。ISO14001の原文をチェックしてみても、汚染の予防は英語では「prevention of pollution」と記載されています。Pollutionは公害や汚染という意味を持った英単語であり、Preventionは「予防・事前に防ぐこと」という意味合いを持った英単語です。

つまり、汚染の予防という項目に関しては、自然環境に関する項目なのだと限定しても良いでしょう。

汚染の予防とは具体的に何をすることなのか？

汚染の予防とは、具体的には以下のようなものであると要求事項に記載されています。

汚染の予防には，発生源の低減若しくは排除，プロセス，製品若しくはサービスの変更，資源の効率的な使用，代替材料及び代替エネルギーの利用，再利用，回収，リサイクル，再生又は処理が含まれ得る。

つまり、環境影響評価（環境アセスメント）を行った結果有害な環境影響を持つ環境側面があったとして、その環境影響を低減もしくは0にするための方策のことが汚染の予防ということなのです。

汚染の予防は文書化を要求されていない

ただし、規格 は汚染の予防に関してその手順を定めて文書化することを要求していません。汚染の予防に関して規格が要求していることは、以下のようなことです。

環境保護へのコミットメントは，汚染の予防を通じて有害な環境影響を防止することだけでなく，組織の活動，製品及びサービスから生じる危害及び劣化から自然環境を保護することも意図している。組織が追求する固有のコミットメントは，近隣地域又は地方の環境状態 を含む，組織の状況に関連するものであることが望ましい。

つまり、汚染の予防は「環境目的・目標を設定する際に検討する必要があるが、汚染の予防に対してレビューを行ったり、文書化したりする必要はない」ということになります。

ISO14001では汚染の予防を目的としたEMSを構築する

——さて、では汚染の予防とは何のためにあるものなのでしょうか。それは、「環境方針」の項目をチェックするとなんとなくイメージすることができます。

トップマネジメントは，組織の環境マネジメントシステム の定められた 適用範囲 の中で，次の事項を満たす環境方針を確立し，実施し，維持しなければならない。
（中略）
汚染の予防，及び組織の状況に関連するその他の固有なコミットメントを含む，環境保護に対するコミットメントを含む。

つまり、汚染の予防とは最終的な目的であり、その予防方法を実行するためのマネジメントシステムこそISO14001が求める環境マネジメントシステムなのです。

汚染の予防（有害な環境影響の低減）という目的を達成するためには、その方法が正しいかどうかを模索していかなければなりません。PDCAサイクルを回し、より高い水準で汚染を予防していくためのマネジメントシステムがISO14001だと考えると分かりやすいのではないでしょうか？

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