• 建設業許可の取消は大きく分けて「手続き上の取消」と「不利益処分による取消」の2パターンがある
  • 「不利益処分による取消」の場合には、5年間は建設業許可の再取得ができなくなる

建設業者が事業活動を行ううえで欠かせないのが建設業許可です。小規模な工事であれば請け負うことは可能ですが、許可を取得することで業務の幅を広げられるようになります。

しかし、自社の体制を管理できていないと、許可を取り消されてしまう場合もあります。すぐに再取得できる場合もあれば、5年間再取得ができない場合もあります。

そこで、この記事では建設業許可の取消になるケースをわかりやすく解説。また、コンプライアンスの強化におすすめの方法についても紹介します。

建設業許可の取消とは

建設業許可には、一般建設業と特定建設業があります。
一般建設業は、500万円以上(原材料費含む・税込)の工事を請け負う場合に必要な許可です。多くの企業が得ている許可制度です。
一方、特定建設業は、発注者から直接工事を請け負った際、1件の建設工事につき税込4,500万円以上(建築一式工事の場合は税込7,000万円以上)を下請けする場合に必要な許可です。

関連記事:一般建設業と特定建設業とは?違いや許可要件を解説

建設業の多くは、どちらかの建設業許可を取得して事業を営んでいます。しかし、許可が取り消されてしまうこともあります。建設業許可が取り消されてしまうと、最悪の場合には5年間再取得できないこともあるため、自社の事業の継続が難しくなるでしょう。

そのため、建設業者は建設業許可を維持できるように事業体制を管理していくことが大切です。

取消処分は、建設業法に違反した場合の制裁の一つ

建設業法に違反した場合、罰則と監督処分の2つの制裁を受けることになります。

罰則とは、裁判所から科せられる懲役などの刑罰や科料のことです。
一方、監督処分とは、行政機関が発する命令のことです。監督処分には、指示処分や営業処分、そして今回取り上げる許可取消処分の3つがあります。

建設業許可の取消処分は、建設業法に違反した場合の制裁のうち、最も重い処分です。

建設業法に違反した際の制裁の詳細や処分事例は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:建設業法に違反するとどうなる?処分事例をわかりやすく解説

建設業許可の取消になった事業者数

建設業許可の取消になる事業者はどの程度あるのでしょうか。
実は国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」では事業者の過去に受けた行政処分歴などを検索できるようになっています。
2020年は96事業者、2021年は203事業者、2022年は106事業者が許可取消となりました。全体の建設業者数から考えれば小さな数字ではありますが、万が一、自社が許可取消処分を受けてしまえば事業を継続できなくなります。
毎年のように100~200事業者が営業できなくなっている事態があることを留意し、自社の管理体制を高めておくことが大切です。

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建設業許可の取消になる2つのケースとは


それでは、建設業許可の取消処分になるのはどのようなときなのでしょうか。ここでは、建設業許可の取消になる2つのケースを紹介します。

手続き上の取消

手続き上の取消とは、建設業許可の要件を満たせなくなった場合に取り消されるケースです。このケースでは、自ら事務手続きを行い、届出を提出して許可を取り消すことが一般的です。

法規制に違反したわけではないため、取り消されても再度要件を満たせば許可を取得できます。

手続き上の取消の場合には、廃業届と届出書を管轄の行政庁か国土交通大臣に提出してください。廃業届は提出したものの届出書を提出しないと、虚偽申請に該当してしまう可能性があるためです。というのも、建設業許可を維持できなくなったことを報告していないことになってしまうためです。
虚偽申請になると、6か月以上の懲役または100万円の罰金が科されるうえ、罰則が科されてから5年間は建設業許可の再取得ができなくなります。

法律違反などの不利益処分による取消

不利益処分による取消とは、法律違反があった場合に取り消されるケースです。このケースでは、法人だけでなく役員や政令使用人(支店長)、株主なども対象になるため、注意が必要です。

不利益処分による取消を受けた場合には、取消後5年間は再取得できません。非常に重い処分となっています。

手続き上の取消にあたる事例

それでは、手続き上の取消になるのはどのようなときでしょうか。ここでは、手続き上の取消にあたる事例を紹介します。

欠格要件に該当

欠格要件に該当すると、建設業許可を受ける資格を失います。欠格要件の対象は、個人事業主と法人で異なります。

個人事業主 法人
  • 個人事業主本人
  • 支配人
  • 支店長などの政令使用人
  • 取締役(執行役員や監査役は除く)
  • 顧問や相談主
  • 議決権を5%以上保有する株主
  • 支店長などの政令使用人

欠格要件は建設業法に決められています。以下に一部を抜粋しました。

  • 破産者で復権を得ていない者
  • 建設業許可を不正な方法で取得したことなどにより、建設業の許可を取り消された日から5年を経過していない者
  • 禁錮刑以上の刑に処されて、その刑の執行の終了日または執行を受けることが無くなった日から5年以上経過していない者
  • 暴力団員または暴力団員ではなくなった日から5年を経過していない者

資格要件を満たせなくなった

建設業許可を受ける際には、建設業許可基準を満たすことが必要になります。しかし、許可取得後、何らかの事情により建設業許可基準を継続できなくなってしまう場合があります。

建設業許可基準とは、以下の4つのことです。

  • 経営業務管理責任者が常勤していること
  • 専任技術者が営業所に常駐していること
  • 財産的基礎があること
  • 契約履行に対する誠実性があること

それぞれに厳しい要件が設定されていますが、特に許可取消になることが多いのは、「経営業務管理責任者が常勤していること」「専任技術者が営業所に常駐していること」の2つが満たせなくなる事例です。退職などの理由により不在になり、代替要員を確保できなくなったという事例が多くあります。
というのも、経営御意有無管理責任者や専任技術者には経験や一定の資格、立場が求められるためです。例えば特定建設業許可の経営業務管理責任者であれば、法人の場合には役員、個人事業主の場合には本人または支配人でなければなりません。また、建設業に関係する5年以上の経営業務の管理責任者としての経験があるなどの多くの要件が設定されています。

許可換え

建設業許可は、都道府県知事許可と国交省大臣許可の2つに分かれています。許可換えとは、許可の種類を変更することです。

許可換えには、「知事許可→知事許可」、「知事許可→大臣許可」、「大臣許可→知事許可」の3つのパターンがあり、営業所の移転や新たに設置する際に必要になる手続きです。

上記の手続きを怠った場合には、許可が取り消されます。

1年以上の営業実態がない

建設業許可を取得したものの、営業実態がない場合には許可が取り消されます。具体的に以下の2つのパターンがあります。

  • 建設業許可を受けてから1年以内に営業開始しない場合
  • 建設業許可を受けたのち、継続して1年以上営業しない場合

ただし、「営業実態がない」ことと「受注がない」ことは異なります。そのため、1年間売上がなかったとしても、営業活動を行っていれば取消処分はされません。

廃業届を提出

営業の継続が難しくなった場合や事業者の意思により廃業される場合など、廃業届を提出することで、建設業許可が取り消されます。以下の場合に陥り、廃業する場合には30日以内に廃業届を提出します。

  • 個人事業主が亡くなった場合
  • 法人が合併により消滅した場合
  • 法人が破産した場合
  • 法人が合併・破産以外の理由で解散した場合
  • 許可を受けた建設業を廃止した場合
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不利益処分による取消にあたる事例

不利益処分による取消にあたる事例を紹介します。5年間は建設業許可の再取得はできなくなります。

不正に許可を取得した

建設業許可を申請する際に、「建設業許可要件を満たしていない」または「欠格要件に該当している」のにもかかわらず、虚偽や不正の報告をして許可申請を行った場合に、不利益処分による取消が適用されます。この場合、建設業法に違反していることになります。

例えば、経営業務管理責任者や専任技術者の経験年数を水増ししたり、専任技術者が営業所に常駐していないのに常駐していると記載したりといったことが挙げられます。

こうした虚偽や不正による取消件数は意外と多くあります。絶対にやめましょう。

指示処分や営業停止処分に違反した

建設業法に違反した場合、建設業許可の取消以外にも営業停止処分や指示処分などの制裁があります。

例えば、営業停止処分を受けているのに営業を行った場合や、指示処分に従わなかった場合に建設業許可の取消が科されることがあります。

また、建設業法において重大な違反があった場合には、営業停止処分や指示処分を経ることなく、すぐに建設業許可の取消処分になることもあります。

建設業の事業継続性を高めるにはISO規格の取得がおすすめ


建設業許可の取消は、事業存続が難しくなる処分です。特に不利益処分による取消の場合には、5年間は再取得できなくなるため、避けなければなりません。

そのためには法令を遵守する体制づくりが重要です。一つひとつの法令に適時対応していくのは手間や労力がかかり、大変です。そこで、多くの建設業の企業はISO 規格を取得することで、法令を遵守するための「仕組み」を構築しています。

そこで、最後に建設業者におすすめのISO規格としてISO14001とISO9001について解説します。

おすすめの規格①:ISO14001

ISO14001は、環境 マネジメントシステムに関する国際規格です。自社の事業活動が環境に与える影響を分析し、悪い影響を低減し、良い影響は伸ばしていくような仕組みを構築・運用することを目指します。

環境といっても自然環境の保護だけではないのがISO14001の特徴の一つです。ISO14001の対象は、「自社を取り巻くすべてのモノゴト」です。具体的には、国・地方自治体や取引先、従業員なども自社が考えなければならない対象に含まれています。

そのため、国・地方自治体が発行している法規制を順守することも、ISO14001を取得する要件に含まれています。特にISO14001では法規制遵守の強化が求められており、事業継続性を高めることにつながります。
最近では、国や地方自治体が自然環境への取り組みを厳格化しています。今後の新しい法規制への対応や改正への動きにも対応できるようになります。
また、建設業では顧客以外の周辺住民との関係性の構築も欠かせません。ISO14001ではこうした幅広い対象に対して、好印象を与えられるように体制を強化できるでしょう。

ISO14001の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:【初心者向け】ISO14001とは?導入企業や取得メリットをわかりやすく解説!

おすすめの規格②:ISO9001

ISO9001は、品質 マネジメントシステムに関する国際規格です。自社製品・サービスの品質を向上する仕組みをつくることで、最終的には顧客満足の達成を目的にしています。

ISO9001もコンプライアンスの強化は要求事項の一つに含まれています。また、建設業であれば、品質の向上はそのまま経営活動の強化につながることも嬉しいメリットといえるでしょう。以前は建設業の公共工事の入札参加条件として設定していたこともあり、現在も経審の加点や主観点の向上になる場合もあります。
取引先に自社の建設の品質をアピールできることにもつながるため、ISO規格の中でも相乗効果が高い相性の良い規格といえるでしょう。

ISO9001の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO9001とはなにか?導入企業や他の規格との違いを徹底解説!
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まとめ

建設業許可の取消になるケースや事例について解説しました。建設業許可は建設業法に違反した際の制裁のうち、最も重い処分の一つです。建設業許可が取り消されると、廃業になるリスクも大いに考えられます。特に、不利益処分による取消の場合には再取得できるまで5年の歳月が必要です。

意図的な虚偽や不正をしないことはもちろんのこと、過失さえも絶対に避けなければなりません。そのため、普段から自社のコンプライアンスを強化し、違反しない体制づくりをすることが大切です。

そこでおすすめなのが、国際規格であるISO9001やISO14001の取得です。建設業者の多くはISO規格を取得し、自社の体制を社外にアピールしています。公共工事の入札への参加を検討している場合、ISO規格の取得を検討することがおすすめです。

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