ISO14001の取得方法や流れ、費用相場を徹底解説

- ISO14001とは、環境リスクを低減する仕組みを構築・運用する環境マネジメントシステムの国際認証規格
- ISO14001の取得には、要求事項を満たす環境マネジメントシステムを構築・運用し、審査を通過することが必要
これからISO14001の認証取得を考える企業にとって、認証取得までの流れは気になるポイントではないでしょうか?自社取得の場合には1年以上、コンサルに依頼しても半年以上かかることが一般的であることから、認証取得までの流れや費用相場といった全体像を理解しておくことは大切です。
そこで、この記事では現役のISOコンサルタント監修のもと、ISO14001の概要や取得の流れや費用相場をきめ細かく解説します。
目次
ISO14001認証取得にかかる費用
ここでは、ISO14001認証取得にかかる費用について解説します。
審査料・ISO登録料
審査料・ISO登録料は、ISO14001を取得する際に必ずかかる費用です。
審査料は、その名のとおり取得審査にかかる金額です。審査機関や審査を受ける組織の規模、拠点数などによって左右されます。
ISOプロが取得した見積もりをもとに、ISO14001の審査費用相場を以下にまとめました。
業種 | 1-20名 | 21-50名 | 51-100名 | 101名以上 |
---|---|---|---|---|
製造業・加工業 | 40万円 | 61万円 | 64万円 | 72万円 |
建築・建設業 | 41万円 | 64万円 | 59万円 | – |
ITサービス | 36万円 | – | 64万円 | 88万円 |
卸売業・小売業 | 42万円 | 60万円 | 66万円 | 118万円 |
コンサル業 | 41万円 | – | 70万円 | 108万円 |
保険業 | 42万円 | 43万円 | – | – |
※2022年7月調査(ISOプロ調べ)。現在の費用と異なる可能性があるため詳しくはお問合せください。
またISO登録料は、登録にかかる金額です。審査料に含まれる場合もあります。
審査員の交通費・宿泊費
実地審査では、審査はISO14001の適用範囲になっている場所(本社や工場など)で行われます。そのため、審査員が審査機関から現地まで向かう際にかかる交通費が請求されます。
遠方の審査機関に依頼すると、宿泊費も負担することになるため、見積もりを依頼する際に交通費・宿泊費についても確認しましょう。
人件費
人件費は新たに支払う費用ではないものの、「見えにくいコスト」として意識することが大切です。
自社の社員がISO14001関連の業務に取り組むことで、本来行うはずだった業務が行えなくなるためです。自社取得した場合、事業者自身ですべての工程を行う必要があるため、「取得期間×携わった人数×給与」の人件費がかかることは忘れないでおきましょう。
コンサル依頼料
ISO認証取得コンサルティング会社に取得サポートを依頼する場合、コンサル依頼料がかかります。コンサル依頼料はかかるものの、月額料金で多くの工数をアウトソーシングでき、人件費を抑えることが可能です。
またコンサルティング費用は、会社や適用範囲、サポート内容により異なります。そのため見積もりを取って確認しましょう。
設備投資費
ISO14001の要求事項では、設備投資費については特に記載ありません。
ただし、環境マネジメントシステムを構築する際に自社で必要だと判断した場合や審査の際に指摘された場合、設備投資費がかかる可能性もあります。

ISO14001取得費用を抑えるポイント
ここでは、ISO14001の取得費用を抑えるポイントを解説します。
自社に合ったコンサルに依頼する
基本的に、自社の人材でISO14001取得に関するノウハウや経験が十分にある場合以外は、コンサルにサポート依頼することがおすすめです。
ISO14001取得にかかる工数の80%程度を委任できることや自社取得よりも短期間で取得できるため、大幅に人件費を抑えられます。
また予算を抑えたい場合にも、サポート内容をカスタマイズできるコンサルに依頼できれば、必要最低限の費用で済むでしょう。自社に合ったコンサルを見つけることが大切です。
複数の審査会社から検討する
審査機関によって審査料が異なるため、複数の審査会社に見積もりを取って確認することが大切です。
また得意な分野や業種、審査の特徴なども審査機関によるため、自社に適した審査会社を選ぶことでコスパを高められるでしょう。
「自社に適した審査会社がわからない」という場合には、コンサルに依頼することで、自社に適した審査会社を提案してくれます。
設備投資費を見極める
先ほども解説しましたが、基本的に設備投資費は要求されていません。
しかし、自社の業務プロセスや管理体制を見直す中で、設備投資を実施する場合もあります。その際、気にある部分すべての設備や機器、ソフトウェアなどを変更すると、多額な費用になってしまう可能性もあるでしょう。
現場の状況やデータ、従業員の声などをもとに、本当に必要な設備投資なのかどうかを見極めることが大切です。
ISO14001を取得するための11の手順
ISO14001取得には、コンサルに依頼した場合で半年~1年程度、自社取得の場合には1年以上の時間がかかるといわれています。それだけ長期にわたって取り組むプロジェクトになるため、ISO14001取得の流れを理解することは大切です。
そこで、ここでは環境マネジメントシステムの構築・運用から認証取得完了までの手順を詳しく解説します。
1.環境方針、環境目標の作成
まず、要求事項に取り組む際には自社の環境方針、環境目標を定める必要があります。
- 環境方針:組織の環境に関する基本的な方針
- 環境目標:環境方針と整合性の取れた具体的かつ計測可能な目標
これらは、環境マネジメントシステムの中でも中核となる文書となるため、組織の目的や内外の課題、組織の全体的な方針(経営理念や企業目的)と整合したものを作成するように心がけましょう。

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2.文書構築(マニュアル、手順書等)
ISO14001では、下記の事項を満たす文書を作成する必要があります。
- 4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定
- 4.4 環境マネジメントシステム及びそのプロセス
- 5.2 環境方針
- 6.2 環境目標及び計画
- 8.1 運用の計画及び管理
一般的には上記の内容を含む文書をそれぞれ作成しますが、必ずしも環境方針は「環境方針」という文書として作成する必要はありません。
ISO認証のための文書としてではなく、実際に本業で活用できる形で文書化することが望ましいでしょう。(※ただし、手順書、環境マニュアルを作成することを規格は要求していません。)
3.帳票整備
帳票整備は軽視されがちですが非常に重要なステップです。
このステップでは見積書や契約書、仕様書など現場で使用する帳票のフォーマットの整備や保管方法、変更の管理方法などを決定します。この帳票整備をしっかり行わないと審査時にフォーマットへ指摘が入り、この後の運用ステップで対応方法や記録の方法が変わってしまいます。
以下の要求事項を満たせるようにしっかりと帳票整備を行いましょう。
- 必要なときに,必要なところで,入手可能かつ利用に適した状態である。
- 情報が十分に保護されている。
- 配付,アクセス,検索及び利用が可能である。
- 読みやすさが保たれ,保管及び保存されている。
- 変更の管理がされている
- 保持及び廃棄方法が適切である
4.運用+運用記録作成
帳票を整備できたら環境目標の達成を確実にする環境計画を実行し、マネジメントシステムを運用します。
運用フェーズはPDCAサイクルのD(実行)の部分に該当します。運用の記録や検証の結果を作成した帳票に記入し、後から振り返りができるようにしておきましょう。
5.内部監査
ある程度の期間、運用して帳票も作成したのちに内部監査を行います。内部監査とは、組織内部の人間によってマネジメントシステムを評価する監査のことです。
内部監査では内部監査員としての力量を身に着けた数名が「マネジメントシステムが規格要求事項に合致しているか、ルール通り運用されているか(適合性)」と「ルール通り運用していることが改善の役に立っているか(有効性)」を主に評価します。
また、意図した通りにマネジメントシステムが現場で運用されているか(複雑すぎて形骸化していないか)についても確認しておくと良いでしょう。 ISO内部監査のまとめ 初めてISO担当者となった場合、何からはじめればよいか不安になることも多いでしょう。ISOの規定を読み込んだり管理文書をまとめたりしているとその業務の負荷が大きく、それまで抱えていた業務が進まず大変な…
6.マネジメントレビュー
内部監査が完了したら、内部監査の結果に基づいてマネジメントレビューを実施します。マネジメントレビューとは、トップマネジメントによって行われる環境マネジメントシステムの評価のことです。
マネジメントレビューでは、内部監査の結果や環境目標と環境計画の乖離、利害関係者からのフィードバックをもとに、「改善の機会」および「環境マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性」、「資源の必要性」についてアウトプットします。また、マネジメントレビューの記録についても残しておくようにしましょう。

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7.是正処置
内部監査やマネジメントレビューの結果、不適合があった場合は是正処置を行います。是正処置とは、不適合があった場合に原因を除去し、再発を防止するために行う処置のことです。
ここで注意しておきたいことは、取り急ぎ不適合を回避するための「修正」と是正処置を混同しないようにすることです。有効な是正処置を行えるようにすることも内部監査員の重要な役割です。
8.第一段階審査
是正処置まで完了して、マネジメントシステムを3ヶ月~半年程度運用できたら、いよいよ審査機関に審査を依頼します。
第一段階審査(一次審査)は文書審査とも言われており、マニュアルや手順書が要求事項を満たしているかどうかが確認されます。

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9.第二段階審査
一次審査の結果、文書類が要求事項を満たしていると判断された場合に二次審査に移行します。二次審査では一次審査で提出した文書類をもとに現地審査が行われます。
現地審査ではISOの担当者やトップマネジメントだけでなく、現場の作業員や環境責任者にも質問されるため、想定される質問に対して適切に答えられるように準備をしておきましょう。

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10.是正処置(該当する場合)
第一段階審査、第二段階審査後に発生する是正処置は、審査機関の審査で不適合があった場合に是正処置を行います。指摘箇所に対して有効な是正処置を行うことで、認証取得できます。
11.認証取得
二次審査の結果、環境マネジメントシステムがISO14001規格要求事項を満たしていると判断された場合、認証が発行されます。二次審査から1ヶ月程度で認証が発行されます。
不適合があった場合は是正処置を行う必要があり、認証取得予定日もずれ込んでしまうため注意が必要です。

ISO14001の要求事項を満たすポイント
ISO14001の要求事項を満たすポイントを解説します。環境マネジメントシステムを構築する際に、参考にしてください。
環境側面を正確に洗い出す
環境側面とは、自社の活動や製品・サービスが、組織を取り巻く環境に与える影響のある側面のことです。
そのうち、環境保全活動において負の影響を与えるものを環境負荷と呼びます。例えば、普段利用しているパソコンであれば、使用している電力は環境側面として洗い出します。
自社の環境方針や環境目標を決める際には「自社の活動における環境への悪影響を減らすこと」を盛り込む必要があります。そのため、環境側面を正確に洗い出すことは、自社の方向性の策定においても重要な工程なのです。
洗い出した環境側面は、環境アセスメント(環境影響評価)を実施して重要度や優先度を明確化します。
環境側面については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
順守義務・順守評価を徹底する
ISO14001を取得するには、法律や条例、規則を順守することが必要です。
環境に関する法律や条例は、年々厳格化してきています。身近な例では、ゴミの分別や家電リサイクル法などが挙げられます。
順守評価では以下の2つを行うことで、法律や条例、規則を遵守します。
- 法律や条例、規則を遵守するうえで必要な知識を把握し、理解すること
- 法令順守のために必要な処置を取ること
緊急事態への取り組みも実施する
平時における環境側面を洗い出すだけでなく、緊急事態においても同様に対策を取ることが必要です。例えば、火事や地震といった天災や業務中の不慮の事故、危険物の盗難などが挙げられます。
緊急事態への取り組みには、緊急事態そのものの発生を防止する取り組みと、発生した際の影響を低減する取り組みがあります。
PDCAサイクルを回す
ISO規格では、PDCAサイクルを回してマネジメントシステムの継続的な改善を行うことが求められています。
環境マネジメントシステムは一度構築したら完成ではなく、より自社に適したものや時代に合ったものに進化させていくことが大切です。そのためには、PDCAサイクルを回すことで定期的にマネジメントシステムを評価し、改善点を把握し、対策を講じましょう。
ノウハウがない場合、コンサルに依頼する
自社にISO14001取得のノウハウや経験をもった人材がいない場合や、はじめてISO規格取得を目指す場合には、プロのISOコンサルに依頼することがおすすめです。
十分なノウハウをもっていない場合、ISO14001の要求事項を満たすことに注視しすぎて、自社の実情に適していない体制を構築してしまうリスクがあります。そうした場合、運用する際に従業員の負担になり形骸化してしまう可能性が高いのです。
プロのコンサルに依頼すれば、要求事項を満たしつつ、自社に適したマネジメントシステムの構築・運用をサポートしてくれます。また、コンサルティング業者に依頼したほうが安く、早く取得できるケースが多くあります。
これまでの実績や経験を確認し、信頼できるコンサルティング業者に依頼しましょう。
コンサルティング業者に依頼した場合と自社取得した場合の違いについては以下の記事をご覧ください。

ISO取得の流れを「自社取得」と「コンサル取得」を徹底比較
ISOの認証取得は、自社取得とコンサル経由の取得と比較した場合、基本的にやる工程に大きな違いはありませんが、その工程を自社の人間がやるのか、ISOの専門家であるコンサルタントの人間がやるのかで、工数に…
ISO14001の取得に関してのQ&A
スケジュールにあるキックオフ宣言とはなんですか?
キックオフ宣言とは、企業のトップマネジメントが社員に対してISOを取得することを宣言することです。宣言をすることで全社員の指揮を高め目的達成のために行動します。
ISO14001を取得するメリットはどのようなものですか?
ISO14001の考え方には環境の見直しがあります。企業環境であれば、組織運用における課題の発見や今後の組織運用などに繋がります。自然環境に対しては環境保全をすることで取引先からの信用などを得ることも可能です。
ISO14001は一部の部署のみでも取得可能なのでしょうか?
ISO14001は、工場のみ、本社のみなど対応可能です。全社で取得する場合はグループ会社内で同一のルールで運用することになるので、全社で運用できる統一された仕組みを構築することになります。

まとめ
この記事ではISO14001認証取得の具体的な方法やスケジュールなどについて解説しました。
環境への取り組みが重視されるようになって以降、ISO14001の必要性が高まっています。競合他社との差別化の手段としてISO14001を活用することで、事業体制の強化も見込めます。そのためには、自社に適した環境マネジメントシステムを構築・運用することが欠かせません。
PDCAサイクルで継続的な改善を目指すことはもちろん、信頼できるコンサルティング業者に依頼することで、自社に合った体制を構築できるでしょう。

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