ISO返上から再取得へ~穂高電子が目指した「会社のためのISO」~
クライアントプロフィール
- 穂高電子株式会社
- 取締役/管理部部長 石田宏志 様
- 課題
- 自社取得の際にマネジメントシステムにムダな工数が発生し、運用しづらい「重いISO」になってしまった
- 業種
- 卸売業
- 規模
- 51~100名以下
- 規格
- ISO14001
50年以上に渡り、商社として技術立国である日本の発展に寄与してきた穂高電子様。現在では全国に9拠点、海外に2拠点と幅広く展開しています。
穂高電子様は過去にISO14001を自社取得した経験があり、ISO認証なくとも環境活動が全社員に定着したことから返上。そして今回、お客様から認証取得が求められてISOを再取得したという経緯があります。
今回のISOプロが訊くは、穂高電子様の取締役であり、管理部部長でもある石田様にお話を聞いてきました。
穂高電子様はISO14001(環境)を取得しており、今回はISOにまつわる「自社取得」、「返上」、「コンサルを起用した再取得」の3つのテーマにどのようなことを語るのでしょうか。
穂高電子について
--穂高電子様は電子計測器の販売会社とのことですが、具体的にどのような事業をされているのでしょうか。
石田様:
穂高電子は1967年に横浜に設立した電子計測器販売商社です。電子計測器と聞くとピンとこないかもしれませんが、業務用の騒音・振動測定器や電波測定器、周波数測定器などを扱っています。温度を測定するサーモグラフィと言えばイメージしやすいかもしれません。
電子計測器以外にもコンピューター関連機器やノートパソコンなどの耐久性を調べる試験機など一般の方が目にしない産業用電子機器を取り扱っています
--海外にも拠点があるようですが、電子計測器などの商品は海外でも需要がありそうですね。海外展開についても伺いたいです。
石田様:
はい、中国やタイなどのアジア方面向けに商品を展開して10年以上が経過しています。主に日本メーカーが製造拠点を海外にシフトしていた時期に現地でも国内同様の品質とスピードで製品提供をする目的で海外進出をいたしました。
自社取得と返上
--商社の穂高電子様がISO14001(環境)を取得する目的はやはりグリーン調達でしょうか?
石田様:
そうですね。弊社は商社なのでお客様に商品を納品しないといけません。お客様側から環境に配慮した商品提供、及びサプライヤーである当社自身への環境配慮経営が求められていましたので、環境マネジメントシステムいわゆるISO14001の導入は必須でした。
※グリーン調達:企業がサプライヤーから原材料や部品、商品などを仕入れる際に環境負荷を考慮したものを優先的に仕入れる取り組みのことです。今回の穂高電子様はサプライヤーという立ち位置から納入先企業に商品を納めており、納入先企業が考える環境負荷の低減に合わせてグリーン調達を目的にISO14001を取得しています。
--穂高電子様は、過去にISO14001を自社取得していたそうですね。この時のお話をお聞かせください。
石田様:
最初にISO14001を取得したのは2000年でした。当時は環境に対する社会的責任も踏まえ、会社で環境を大切にしていこうという流れで取得し、約15年以上継続していました。この時のISO14001は自社取得で運用まで行っていました。
しかし、自社取得したISO14001は運用がしづらいISOになっていました。会社にとって不必要な業務が多く含まれていたことが原因だったのかなと。ISO取得を優先するあまり、要求事項に沿わせた無難なマネジメントシステムになっていたのだと思います。
また、この時に2015年度版が登場しており、構築したマネジメントシステムの修正が必要でした。修正を行うことでどのような弊害が出てしまうのか、影響範囲も不透明な部分が多くありました。
取引先のお客様からも「ISO14001じゃなくても“エコアクション21”や“自己宣言形式”でもいいよ」と言われており、社内でもISO14001の考え方が浸透していましたので、ISO14001を返上しました。
再取得とISOコンサルタントの利用で変わったこと
--ISO14001を返上した後、今度はISOコンサルタントサービスを利用して再取得に至っていますが、再取得にあたってどのような状況の変化があったのでしょうか?
石田様:
取引先のお客様に外部監査が入った際に、商品の仕入先としてサプライヤーの弊社にも監査が入りました。その時にISOの取得の話となり自己宣言だけではダメだと言われ、ISO14001の再取得に至った次第です。各メーカーがグリーン調達に配慮しているのに調達元である弊社だけがISO14001を取得していない状況はよくないと考えました。
しかし過去に自分たちの力でISO14001を取得した経験がありましたので、ISO14001に対する知見はもちろん、ISOを取得する大変さも理解していました。そのため今回はISOプロさんにISO取得のサポートに入っていただき、自社負担を減らそうと考えたわけです。
--ISOプロに依頼してみて自社取得の時と比べるとどのような違いがありましたか?
石田様:
大きな変化としては、自分たちの工数やコストが劇的に減ったことですね。自社取得の時は、社長も含め他部署の人間と7名ぐらいのISO事務局を作り、本業と兼務しながら進めていました。ISO認証取得後もマネジメントシステム運用のため、月に1回の打ち合わせなど行っていました。部長クラスなども含めて打ち合わせに参加していたので、打ち合わせだけでも多くのコストが掛かっていたと思います。
いざ、ISOプロさんにコンサルタントの依頼をしたところ、工数とコストが大幅に削減できました。私の工数も当時と比べると10分の1にまで減っています。
審査の際には各部署の責任者も交えますが、ISO事務局も基本的に私1人で動かしており、ISO業務も月に1時間やるかやらないかといった感じです。
--審査機関についても自社取得の時と今回のISOプロとでは異なるかと思いますがいかがでしょうか?
石田様:
自社取得の時は審査機関と会社との相性の問題から1度変更した経験があります。その時は、審査機関の審査時の対応がお役所仕事だったり、審査員に振り回されたりと相性のミスマッチが発生していました。
今回、ISOプロさんのコンサルタントの方から助言を頂き、弊社と相性がピッタリな審査機関で審査を受けました。弊社のニーズとマッチしていましたので以前のような課題はなくなりました。
--構築したマネジメントシステムについてはいかがでしょうか。
石田様:
無難を意識しすぎて無駄な要素をマニュアル化していた以前のマネジメントシステムの構築と比べると、ISO専門家の視点を取り入れた今回のマネジメントシステムはかなりスリム化できていると思います。
--最後に今回のISO取得についていかがでしたでしょうか?
石田様:
今回のISO取得はISOプロさんのコンサルタントの方の対応が非常によく、ISOのスリム化、運用以外にさまざまなアドバイスを頂きましたので良かったと思います。
まとめ
今回の穂高電子様のお話は「自社取得」、「返上」、「コンサルを起用した再取得」の3つをテーマに伺いました。その話から見えてきたのは『ISO認証取得のためのISO構築』と『会社のためのISO構築』でした。
穂高電子様は自社取得で『ISO認証取得のためのISO構築』をしたために“重いISO”に悩まされ、規格改訂を契機に「返上」することとなります。
その後、お客様からの要望を受けて「コンサルを起用した再取得」を行い『会社のためのISO構築』を決めます。
再取得のとき、以前のように取得を優先することもできたはずですが、『会社のためのISO構築』という中長期的な視野での判断をしています。『ISO認証取得のためのISO構築』が相当な負担になっていたことが垣間見えます。
結果的にその判断はハマり、返上した自社取得の時と比べ、ムダのないスリムな構築を実現しています。
ISO認証の取得を手段としてではなく、目的におき“重いISO”になってしまう企業も少なくありません。新規にISO認証取得を考えている方や重いISOに悩みを抱える企業様は『会社のためのISO構築』を考えてみても良いのではないでしょうか。
会社情報
社名 | 穂高電子株式会社 |
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設立 | 1967年3月 |
資本金 | 7,500万円 |
所在地 | 横浜市港北区新横浜2-12-12 新横浜IKビル |
URL | https://www.hodaka.co.jp/ |
記事掲載日:2023年08月24日