建設業でISO9001が普及した理由と取得を成功させるポイント
- 建設業ではISO9001取得が取引拡大に直結しやすい
- 建設業でISO9001運用を成功させるには、有効性の高いISOマネジメントシステムの構築が重要
もともとISO9001は、従来製造業向けの品質マネジメントシステムとして作られた規格です。そのため、建設業においてはそこまでマストな存在でもありませんでした。
世界的な共通規格であるため、海外との取引を持つ一部の会社においては取得されていましたが、その他の一般的な企業については、あまり縁のない存在と捉えられていました。しかし、ある時期を境に大きく広まり、建設業を営む上で不可欠な存在と認識されるようになりました。
この記事では、建設業においてISO9001取得が進んだ理由や取得業者が受けたメリット・デメリット、これから取得する建設業者がISO9001取得を成功させるポイントについて紹介します。
目次
建設業のISO9001取得が急増した理由
建設会社のISO9001取得が急増した経緯・理由について解説します。
そのためにまずは、建設業における特徴を紹介します。そもそも建設業では、入札でいかに成果を上げるかが会社存続にもかかわる重要な部分といえます。大きい案件をとる上で、入札成功は欠かせません。
そこでポイントとなるのが、建設企業それぞれの価値です。実績や技術力に加え、どれだけ信頼を感じられる企業であるかという点も重要といえるのです。
きっかけは「入札参加の必須条件」
建設業界において信頼性を高めることが重要である中、ISO9001が大きく普及したきっかけとして、以下の2つが挙げられます。
- 国土交通省によりISO9001取得が経営事項審査の加点対象となった
- 2000年からは取得を入札参加の必須条件とする試行を開始した
これにより、ISOの9001は海外との取引を持つ一部企業に留まらず、多くの会社が取得しておくべき、さらになくてはならない規格となったのです。
その結果、2004年3月の国外認定 を含まない認定数において、日本国内で9001認証を受けている会社約35,000社のうち、実に約13,000社を建設業が占めるといった調査結果が出されたそうです。
ISO9001 は製造業のための規格としてスタートしたにもかかわらず、これだけ普及したのは、国策の影響力の多大さがうかがえるといえるでしょう。
ISO9001を取得した建設業者が受けたメリット・デメリット
ISO9001が、建設業界全体で重要な存在となったことで、メリット・デメリット両面の影響が生じました。そこで、ここではISO9001を取得した建設業者が受けたメリット・デメリットについて解説します。
メリット
まず良い面としては、業界全体の水準を底上げする効果につながったという点です。
当初ISO9001は、品質マネジメントシステムです。そのため、この規格を導入することで、世界基準のシステムが数多くの建設企業に備わり、効率的かつ明確化された機能が実現できました。
さらに、「ISO9001取得」の文言は信頼できる建設企業の指標ともなり、最終的な目的である顧客満足へも役立てられています。
しかし、理想的な機能をうまく取り入れることができた企業は、ごく一部であったというのが実際のところでした。
デメリット
取得した建設業者のうち、デメリット面を重く感じたという企業が多くありました。
ISO9001は、そもそも製造業向けに作られた規格であったため、すべての面を有効活用できなかったのです。
また、純粋に企業品質を底上げするためでなく、「入札に参加するための条件」として、形式的に取得する企業が多くあったのです。品質向上できるかどうかではなく、要求事項を満たして取得することに焦点を当てたため、効果的に運用できない企業が続出しました。
このように、建設業を続ける上で、ISO9001を必須条件に近い存在へと変えた国策は、ISO9001取得企業数を大幅に普及させた反面、マイナスの影響も生み出す結果となったのでした。
しかし、2015年の改訂をきっかけに、サービス業なども含むあらゆる業種に対応できるよう変更されました。また、取得のためのマネジメントシステムの構築よりも、質の向上のためのマネジメントシステムの構築を目指す企業が増えています。
そのため、現在では建設業においても、後ほど紹介するポイントを注意することで、効果的なISO9001の取得・運用が可能になっています。
建設業のISO9001取得・運用を成功させるポイント
それでは、どのようにISO9001を取得・運用することで、メリットを受けられるのでしょうか。ここでは、成功させる2つのポイントを紹介します。
スリム化する
ISO9001を取得するために、膨大な量の文書や不必要な作業が増加する場合があります。その場合、情報を活用できなくなり、デメリットばかり感じる重いISOにつながるでしょう。
ISO9001の要求事項の意図を理解することで、余分な文書や作業の増加の防止につながります。例えば、「施工計画書」において、本業で使用している書類をISOのルールに当てはめ、無駄な工数を増やさないようにすることが挙げられます。
自社取得の場合、特に陥りやすい部分になるため、プロのコンサルティング業者に依頼し、スリム化を実現することがおすすめです。
スリム化の詳細については、以下の記事をご覧ください。
自社の実情にあったマネジメントシステムを構築する
理想的なルールやマニュアルを構築しても、自社の実情に適していなければ、運用する際に従業員の負担になる可能性があります。その結果、マネジメントシステムが形骸化し、有効性を保つことができないでしょう。
ISO9001の規格への理解を深めることは重要ですが、それだけでなく自社の現場をしっかりと理解することも大切です。どのようなルールやマニュアルであれば効率的な運用が可能になるのか、経営陣だけでなく現場の声を把握したうえで、作成しましょう。
実際に、建築業でISO9001取得・運用を成功させている企業の事例を下記で紹介しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
まとめ
もともとISO9001は製造業を対象とした規格でしたが、建設業においても、入札参加の必須条件にISO9001取得が課せられたことで、ISO9001取得業者が急増しました。
マネジメントシステムを構築したことで、経営活動においてもプラスに働いた企業もありましたが、マイナスな面が目立つ企業も多くありました。ISO9001を効果的に機能させるには、スリム化や自社の実情に合ったマネジメントシステムの構築が重要です。
ISO9001が機能すると、公共工事への入札参加だけでなく、顧客満足も期待できます。自社の状況とISO9001をしっかり理解したうえで、ISO9001取得を目指しましょう。
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