ISO9001認証を取得する方法と流れを知ろう
これからISO 9001の認証取得を考える企業にとって、どのような流れで認証取得に向けて動くのか気になるポイントではないでしょうか?
この記事では、現役のISOコンサルタント監修のもと、ISO取得の流れをきめ細かくステップに分けてご紹介しております。各ステップで重要なポイントの解説はもちろん、全てのステップをどのくらいのスケジュールで進めるのかも解説をしていますので、ぜひ御覧ください。
目次
ISO9001を取得するための11の手順
ISO9001 の認証を取得するためには、マネジメントシステムを構築し、運用し、審査を受ける必要があります。具体的には以下のステップを踏むことでISO9001認証を取得することが可能になります。
- 品質方針、品質目標の作成
- 文書構築(マニュアル、手順書等)
- 帳票整備
- 運用+運用記録作成
- 内部監査
- マネジメントレビュー
- 是正処置
- 第一段階審査
- 第二段階審査
- 是正処置(該当する場合)
- 認証取得
また、ISO9001の認証取得後も認証を維持するために1年に1回~2回の維持審査(サーベイランス審査)、3年に1回の更新審査を受ける必要があります。以下では、認証取得後のステップも合わせて詳しく解説していきます。
1.品質方針、品質目標の作成
品質 方針とは、組織の品質に関する基本的な方針のことです。そして、品質目標とはその品質方針 と整合性のとれた具体的かつ計測可能な目標のことです。これらは品質マネジメントシステムの中でも中核となる文書となるため、組織の目的や内外の課題、組織の全体的な方針(経営理念や企業目的)と整合したものを作成するように心がけましょう。 ISO9001の品質目標・品質方針とは?現役コンサルが事例も解説 ISO9001規格のマネジメントシステムを構築するにあたっては、品質方針と品質目標というものを決定し、これを組織の構成員に対して伝達する必要があります。しかし、品質方針や品質目標をどのように決定すれば…
2.文書構築(マニュアル、手順書等)
ISO9001では、下記の事項を満たす文書を作成する必要があります。
- 4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定
- 4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス
- 5.2 品質方針
- 6.2 品質目標及び計画
- 8.1 運用の計画及び管理
一般的には上記の内容を含む文書をそれぞれ作成しますが、必ずしも品質方針は「品質方針」という文書として作成する必要があるわけではありません。ISO認証のための文書としてではなく、実際に本業で活用することができる形で文書化することが望ましいでしょう。(※ただし、手順書、マニュアルを作成することは規格は要求していません。)
3.帳票整備
帳票整備は軽視されがちですが非常に重要なステップです。このステップでは見積書や契約書、仕様書など現場で使用する帳票のフォーマットの整備や保管方法、変更の管理方法などを決定します。この帳票整備をしっかり行わないと審査時にフォーマットに指摘が入ったりすることでこの後の運用ステップで対応方法や記録の方法が変わってしまいます。以下の要求事項を満たせるようにしっかりと帳票整備を行いましょう。
- 必要なときに,必要なところで,入手可能かつ利用に適した状態である。
- 情報が十分に保護されている。
- 配付,アクセス,検索及び利用が可能である。
- 読みやすさが保たれ、保管及び保存されている。
- 変更の管理がされている
- 保持及び廃棄方法が適切である
4.運用+運用記録作成
帳票を整備することができたら品質目標の達成を確実にする品質計画を実行し、マネジメントシステムを運用していきます。運用フェーズはPDCAサイクルのD(実行)の部分に該当します。運用の記録や検証の結果を作成した帳票に記入し、後から振り返りができるようにしておきましょう。
5.内部監査
ある程度の機関運用して帳票も作成できたら、内部監査を行います。内部監査とは、組織内部の人間によってマネジメントシステムを評価する監査のことです。内部監査では内部監査員としての力量
を身に着けた数名が「マネジメントシステムが規格要求事項に合致しているか、ルール通り運用されているか(適合性)」ということと、「ルール通り運用していることが改善の役に立っているか(有効性)」を主に評価します。また、意図した通りにマネジメントシステムが現場で運用されているか(複雑すぎて形骸化していないか)についても確認しておくと良いでしょう。 【質問例あり】ISO9001内部監査とは?目的や手順を解説 ISO9001(品質規格)を取得するなら、内部監査の実施は避けては通れません。内部監査というのは社内の人間が行う監査であり、実際にISO9001(品質規格)の規格通りに社内業務が行われているかをチェッ…
6.マネジメントレビュー
内部監査が完了したら、内部監査の結果に基づいてマネジメントレビューを実施します。マネジメントレビューとは、トップマネジメントによって行われる品質マネジメントシステムの評価のことです。マネジメントレビューでは、内部監査の結果や品質目標と品質計画の乖離、利害関係者
からのフィードバックをもとに、「改善の機会」および「品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性」、「資源の必要性」についてアウトプットします。また、マネジメントレビューの記録についても残しておくようにしましょう。 専門家が教える!マネジメントレビューの方法を徹底解説 マネジメントレビューとは企業が今まで行ってきた活動やマネジメント体制を“次”に活かすために振り返り懸念点や問題点を洗い出すことです。基本的にマネジメントレビューの判断は経営陣などのトップマネジメントが…
7.是正処置
内部監査やマネジメントレビューの結果、是正処置が必要な場合(不適合があった場合)は是正処置を行います。是正処理とは不適合があった場合に原因を除去し、再発を防止するために行うことです。ここで注意しておきたいことは、取り急ぎ不適合を回避するための「修正」と是正処理を混同しないようにすることです。有効な是正処置を行えるようにすることも内部監査員の重要な役割です。
8.第一段階審査
是正処置まで完了して、マネジメントシステムを3ヶ月~半年程度運用できたら、いよいよ審査機関に審査を依頼します。第一段階審査(一次審査)は文書審査とも言われており、マニュアルや手順書が要求事項を満たしているかどうかが確認されます。 内部監査員が教えるISO審査機関の一次審査のポイントとは ISO規格の認証を新規取得する場合、マネジメントシステム構築後3ケ月~半年程度運用して実績を作り、内部監査実施後、初回審査(一次審査・二次審査)を受けます。本稿では、「一次審査」を受けるための準備とし…
9.第二段階審査
一次審査の結果、文書類が要求事項を満たしていると判断された場合に二次審査に移行します。二次審査では一次審査で提出した文書類をもとに現地審査が行われます。現地審査ではISOの担当者やトップマネジメントだけでなく、現場の作業員や品質責任者にも質問がされるため、想定される質問に対して適切に答えられるように準備をしておきましょう。 内部監査員から見たISO審査員による二次審査のチェックポイント 今回のテーマは、「二次審査」(初回審査)です。一次審査について詳しく知りたい方はこちら。
一次審査は主に書類審査で、ISO規格要求を正しく理解していること、自社で作成したマニュアルがISO要求事…
10.是正処置(該当する場合)
第一段階審査、第二段階審査後に発生する是正処置は、審査機関の審査で不適合があった場合に是正処置を行います。指摘箇所に対して有効な是正処置を行うことで、認証取得を行うことができます。
11.認証取得
二次審査の結果、品質マネジメントシステムがISO9001規格要求事項を満たしていると判断された場合、認証が発行されます。二次審査から一ヶ月程度で認証が発行されます。不適合があった場合は是正処置を行う必要があり、認証取得予定日もずれ込んでしまうため注意が必要です。
ISO9001を取得する前に必要な準備はあるの?
ISO9001を取得するには、長期間にわたって認証に向けて取り組むことが必要ですが、スムーズな実施開始に向けて、事前に決めておきたいことがいくつかあります。
取得目的を明確にしておく
自社がISO9001を取得する目的を明確にしておく必要があります。マネジメントシステムの構築・運用において取り組むべき方向性が明確になるだけでなく、目的を従業員にきちんと共有することで、従業員の積極的な参加につながるでしょう。
参考として、以下の目的からISO9001を取得する企業が多い傾向があります。
- 取引先からの要求・公共工事の入札加点のため
- 自社商品やサービスの品質を見直すため
- 業務効率化や生産性の向上
- 顧客満足度向上
- 内部統制の強化
経営理念の実現や自社の課題を解決するツールとして、経営活動を積極的に行うための目的であることが望ましいでしょう。
その他決めておきたいこと
目的以外に、以下のようなことを決めておきましょう。
規格の適用範囲
全社単位で取得するのか、必要な部署だけで取得するのかなどを決めましょう。
審査機関
審査機関は多く存在します。それぞれで金額や得意な業種、審査できる規格なども異なるため、自社にマッチした審査機関を選びましょう。 ISO審査機関(認証機関)の選び方と押さえるべき3つのポイント ISO審査機関は各企業が構築したマネジメントシステムを審査する機関です。日本には約70社以上あると言われており、審査機関によって対応できる規格を始め、審査の質や審査費用の違いなどがあります。
この中…
取得予定時期
いつまでに取得している必要があるか、したいかを明確にすることで、ゴールから逆算して進めることができるようになります。自社だけでなく、コンサルタントや審査機関に相談する際も話を進めやすいでしょう。
自社取得かコンサルタントに依頼するか
自社のリソースだけで取得することもできます。取得したい時期や掛けられる人件費、社内の力量を踏まえて自社で取得するかコンサルタントに依頼するか検討しましょう。 ISO取得の流れを「自社取得」と「コンサル取得」を徹底比較 ISOの認証取得は、自社取得とコンサル経由の取得と比較した場合、基本的にやる工程に大きな違いはありませんが、その工程を自社の人間がやるのか、ISOの専門家であるコンサルタントの人間がやるのかで、工数に…
ISOへの知見があまりなく、はじめてISO取得を目指す場合には、上記に挙げた内容も信頼できるコンサルタントに依頼し、相談しながら決めていくことをおすすめします。 ISO認証取得にかかるISOコンサルタント業者の費用と選ぶポイント これからISOコンサルタント業者を使って、ISO認証取得を考えている企業は、「どれくらい予算を確保すればよいのか?」が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。
インターネットでコンサルタント業者を調…
認証取得までのスケジュール
ISO9001の認証を取得するまでの期間は、会社規模や適用範囲、自社で取得するかコンサルタントを入れるかで、大きく異なります。
適用範囲が広ければ、その構築や審査に時間を要しますが、一般的には6カ月~数年程度の期間で取得することができます。
その内訳としては、マネジメントシステムの構築におよそ2~8カ月程度かかります。要求事項を満たすべく、品質方針や品質目標を設定し、マニュアルや手順書を作成します。
次に、構築したマネジメントシステムを実際に運用していきますが、運用にはおよそ数カ月~数年単位の時間が必要です。運用記録を取り、内部監査を行い、運用の中で発見された新たな課題の是正処置を実施していきます。
こうして運用実績を積み重ねたのち、審査を受けることになります。審査は1カ月以内で完了し、無事に通過すると認証を取得できます。
STEP1 | 品質方針、品質目標の作成 | 1日 |
---|---|---|
STEP2 | 文書構築(マニュアル、手順書等) | 1~4カ月 |
STEP3 | 帳票整備 | 1~4カ月 |
STEP4 | 運用+運用記録作成 | 常時 |
STEP5 | 内部監査 | 1日~1週間 |
STEP6 | マネジメントレビュー | 1日 |
STEP7 | 是正処置 | 1日~数カ月、数年 |
STEP8 | 第一段階審査 | 1~5日 |
STEP9 | 第二段階審査 | 1~10日 |
STEP10 | 是正処置(該当する場合) | 1日~2週間 |
STEP11 | 認証取得 | 完了 |
※従業員50名程度の企業における、コンサルタントが関与せずに自社取得する場合の一例です。
※規模の大きな企業では「プロジェクトチームの結成」「キックオフ宣言」に1カ月ほど掛かることもあります。
※「運用+運用記録作成」は常時行います。
経験の多いコンサルタントへ依頼することで、経験のない自社で構築するよりも早いという違いも出てきます。取得したい時期や費用感などを踏まえて、最適な選択をする必要があります。
取得後の運用・審査も意識しておこう
ISOは認証を取得してからも運用する必要があり、また年に1回~2回行われるサーベイランス審査、3年に1回行われる更新審査にも備える必要があります。運用や更新審査が負担にならないよう、構築時からスリム化した運用を行うことで、低コストで認証を維持できるようになります。
ISO9001の取得に関してのQ&A
- Q:ISO9001とJIS Q9001は何が違いますか?
- A:ISO9001は、国際標準化機構が定めた国際規格です。そのため、原文は英文で書かれており、私達、日本人が理解するためには日本語に翻訳する必要があります。そこで、JIS(日本規格協会)が翻訳したISO9001が、JIS Q:9001となります。
- Q:スケジュールにあるキックオフ宣言とはなんですか?
- A:キックオフ宣言とは、企業のトップマネジメントが社員に対してISOを取得することを宣言することです。宣言をすることで全社員の指揮を高め目的達成のために行動します。
- Q:ISO9001を取得するにあたってハードルは高いものでしょうか?
- A:ISO9001の取得には、ISOに対してどれだけの時間をとることができるのか、どれだけの予算が組めるのかなどの問題があります。文書作成、業務文書との紐づけなどの構築をいかにスムーズに進められるかが重要です。ハードルの高さは、構築のレベルから直結し、構築に携わる方(コンサルタントや自社担当者様)により異なります。裏を返すと、うまくやれれば低めにも調整できます。
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