ISO9001の品質目標・品質方針とは?現役コンサルが事例も解説
ISO 9001規格 のマネジメントシステム を構築するにあたっては、品質 方針と品質目標というものを決定し、これを組織の構成員に対して伝達する必要があります。しかし、品質方針 や品質目標をどのように決定すれば良いのかわからない方も多いと思います。
そこで、今回は品質方針・品質目標とはどのようなもので、具体的にどのように決定すれば良いのかということを解説していきたいと思います。
品質方針とは
品質方針とは、品質マネジメントシステムであらゆる決定を下す時に全ての基準となる方向性のことです。JIS Q 9001によれば、品質方針は以下の項目を考慮した上で決定する必要があります。
- a) 組織の目的及び状況に対して適切であり,組織の戦略的な方向性を支援する。
- b) 品質目標の設定のための枠組みを与える。
- c) 適用される要求事項を満たすことへのコミットメントを含む。
- d) 品質マネジメントシステムの継続的改善へのコミットメントを含む。
JIS Q 9001
例えば、以下のような品質方針を掲げる企業があります。
わたしたちは、安全で心に響く商品・サービスをお届けし、お客様の夢と信頼に応え続けます
お客様から常に信頼され、喜ばれる商品を提供し続けます。
世界同一品質を達成しよう 品質を安定し、ユーザーを満足させる
「品質方針は必ずこうでなければならない」というものはなく、要求事項内で「考慮すべき」とされるものを含んでいればあとは組織の状況や経営方針などと合致したものであればどのようなものでも構いません。
ただし、品質方針の決定がマネジメントシステムの、ひいては組織が品質に対してどのように動くかということを決定づけるものであるほどに重要なものであることは理解しておきましょう。
品質目標とは
品質目標とは、品質方針と整合性のとれた、組織が品質に対して具体的に達成すべき目標のことです。JIS Q 9001によれば、品質目標は以下の項目を考慮する必要があるとされています。
- a) 品質方針と整合している。
- b) 測定可能である。
- c) 適用される要求事項を考慮に入れる。
- d) 製品及びサービスの適合,並びに顧客満足の向上に関連している。
- e) 監視する。
- f) 伝達する。
- g) 必要に応じて,更新する
JIS Q 9001
まず、品質目標は品質方針と整合性がとれたものである必要があります。つまり、品質方針を達成し得ない品質目標は望ましいものでありません。また、測定可能である点、必要に応じて更新するものである点も特に重要な項目です。
品質方針は一度決定すると簡単に変えるものではありませんが、品質目標は測定結果に応じて適宜チューニングを行い、改善していく必要があります。品質目標はPDCAサイクルのPの部分になるため、レビューの結果に基づいて再度計画が行われる必要があるからです。
測定可能であるということは、例えば「不良品率の10%低減」や「顧客満足度10%向上」といったように、客観的に伸びたのか、落ちたのかということが判断可能な状態のことです。このため、品質目標には数値が含まれていることがほとんどです。
品質方針と品質目標の関係性について
品質方針は、品質マネジメントシステムの基礎土台となるものです。組織の構成員は各自で判断が必要なモノゴトを品質方針に基づいて意思決定を行います。このため、「この品質方針を決定することによって、組織の構成員がどのように動くか」ということは意識して決定する必要があります。
一方の品質目標は、組織の構成員がその目標に向かって行動をするいわば使命のようなものです。営業マンに課せられる営業目標のようなものと親しいでしょう。この品質目標は、組織の構成員それを達成することで、品質方針の達成につながるかということを意識する必要があります。これは要求事項でも記述がある通りです。
当然のことながら、品質目標を設定しただけで終わっては意味がないため、具体的な取組方法を、決定しておきましょう。こちらも可能な限り定量化した内容が望ましく、実行できていない場合、是正しやすくなります。
【現役コンサルが解説】品質方針・品質目標の事例
本記事監修の石井です。ここでは私の過去の経験などを踏まえて品質方針と品質目標について解説していきます。
ISO9001 を認証取得された企業様の品質方針に内包されるキーワードは「お客様」「品質」「安心・安全」「信頼」「法規制の遵守」「継続的な改善」などが多く、方針を策定する段階ではコンサルタントなどに相談しながら進めれば、スムーズに策定できると思います。
もちろん、社長様の強い意向などがあれば、規格の要求事項に反しない限り、比較的自由に策定することは可能です。また、策定された方針は社内だけでなく、社外の利害関係者(顧客、協力企業など)が閲覧できる状態にするという要求事項があるため、ホームページに掲載されている企業様がほとんどです。つまり、「お客様に向けたメッセージ」であることも考慮に入れて方針を策定すると良いです。
品質方針に関する課題や問題点は策定段階よりも、その運用段階にあります。
- 品質方針が組織全体にうまく浸透出来ておらず、日々の業務に活かされていない
- 事務局(担当者)任せになっていて、経営層の理解が乏しい
- 品質方針の他に企業理念や経営理念があり、整合性がとれていない、もしくは同じような内容が二重に記載されている
このような課題・問題点はよく聞く相談です。経営層の方々の積極的な関与や従業員への効果的なコミュニケーション・教育などで、品質方針を組織の戦略と結び付けて、全社的な活動の羅針盤のような位置づけにしていきましょう。
品質目標は品質方針を実現するための具体的な施策と考えると理解しやすいかと思います。ISOの目標管理では、「測定可能である」という要求事項があるため、数値目標を設定するケースがほとんどです。「売上高〇%アップ」などを設定しても良いですが、売上高を伸ばすために何を実行しなければならないか?も考慮するべきです。
この場合は、「顧客満足度の向上」「製品の不良率削減」「適正価格の設定」「納期遵守率の改善」などです。
また、部署ごとに役割が違うと思いますので、全社目標を達成するために各部署の役割に応じた部署目標の設定も重要です。例えば、製造部門は「不良品率削減」、品質管理部門は「品質監査での指摘事項の削減」、営業部では「顧客満足度の向上」などを設定することです。
品質目標における課題・問題点は下記のようなものが挙げられます。
- 過度に高い目標を設定してしまい、従業員のモチベーションが低下
- 目標達成のためのリソース(人材、設備、予算など)不足
- 品質目標が組織全体に十分周知されておらず、現場の従業員は積極的に取組んでいない
- 市場動向など外部環境が変化しても目標が変更されない
マネジメントシステムにおける目標設定とその達成に向けた活動とレビューは最も重要な要素の一つだと思いますので、企業の成長に活かせるように取組みましょう。
まとめ
今回は、品質方針と品質目標について解説してきました。この2つは、品質マネジメントシステムの基幹部分であるといっても過言ではないため、トップマネジメントは慎重に決定するようにしましょう。
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