• ISO9001要求事項では、変更は計画的に管理することが求められている
  • 実施した変更は、有効性や適切性、妥当性といった観点においてレビューする

ISO 9001とは、品質 マネジメントシステムQMS)に関する国際規格 です。品質マネジメントシステムは、継続的改善活動により製品品質を向上させ、顧客の期待を上回る製品を提供して企業の利益拡大を目指すための仕組みですが、状況や方針の変化などにより、変更が発生する場合があります。

そして、ISO9001要求事項の中にも、変更における要項が設けられています。そこで、この記事ではISO9001における変更管理の概要や変更管理の流れについて解説します。

ISO要求事項における「製造やサービス提供における変更」とは

まず、ISO要求事項において「製造やサービス提供における変更」にはどのような変更があるのでしょうか。

製造やサービス提供における代表的な変更には、4Mが挙げられます。

  • Man(人):増員や異動、力量の違いなどによる人員の変更
  • Machine(機械):新規設備の導入や代替機の使用などによる機械の変更
  • Material(材料):新材料の導入などによる原材料の変更・購買先の変更
  • Method(方法):効率化や新規開発などによる作業工程の変更
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ISO9001要求事項で求められている変更管理とは

それでは、ISO9001では「変更の計画」「変更管理」についてどのように記載されているのでしょうか。以下に、ISO9001の要求事項を抜粋しました。

■6.3 変更の計画
組織が品質マネジメントシステムの変更の必要性を決定したとき,その変更は,計画的な方法で行わなければならない(4.4参照)。
組織は,次の事項を考慮しなければならない。

  • a) 変更の目的,及びそれによって起こり得る結果
  • b) 品質マネジメントシステムの“完全に整っている状態”(integrity)
  • c) 資源の利用可能性
  • d) 責任及び権限の割当て又は再割当て

■8.5.6 変更の管理
組織は、製造又はサービス提供に関する変更を、要求事項への継続的な適合を確実にするために必要な程度まで、レビューし、管理しなければならない。
組織は、変更のレビューの結果、変更を正式に許可した人(又は人々)及びレビューから生じた必要な処置を記載した、文書化した情報を保持しなければならない。
引用:ISO9001:2015要求事項

6.3 変更の計画

「6.3 変更の計画」では、変更が発生した場合には「計画的な方法で変更を行わなければならない」とあります。変更は突発的に発生するものではないことが多いため、事前に想定されるリスクを洗い出し、対策を検討・実施したうえで変更することが重要です。

ただし、急な作業員の欠席や機械の故障、材料の供給遅れなどの予測できなかった原因による変更もありえます。その場合にも、変更が発生した段階からスピーディーにリスクの洗い出しやリスク対応を実施することが必要です。

以下に、変更の計画を策定する際に考慮すべき事項として掲げられている要求事項a)~d)についてまとめました。

a)変更の目的,及びそれによって起こり得る結果

変更の目的や変更により起こる可能性がある結果のことです。例えば、目的が「業務効率化」であり、「生産にかかる時間が10%削減」「一時的な従業員の負担増加」などが起こり得る結果です。

b)品質マネジメントシステムの“完全に整っている状態”(integrity)

品質マネジメントシステムは、製造から物流までのプロセス(工程・方法など)は相互に関連していることから、一か所の変更が他のプロセスにも影響を及ぼすことが多くあります。
そのため、変更後においてもシステムが「完全に整っている状態」となるように、計画段階で影響を受けるプロセスにおいてもルールや手順などの変更を実施し、矛盾が発生しないように計画を立てることを要求しています。

c)資源の利用可能性

変更作業で必要な資源を確認しましょう。以下に、検討すべき資源の例をまとめています。

  • 建物及び関連するユーティリティ
  • ハードウェアおよびソフトウェアも含む設備
  • 輸送のための資源
  • 情報通信技術
  • 要員数・適任者

既存の資源で対応可能な場合や新規調達が必要な場合など考えられるため、事前に計画を耐えて実行しましょう。

d)責任及び権限の割当て又は再割当て

計画の変更に伴い、規模によっては組織変更が必要になる場合があります。
また管理責任者や担当者の設置、配置換え、責任権限の割り当てなども考慮することが必要です。

変更の管理

「8.5.6 変更の管理」では、変更を実施した場合に要求事項への適合性に影響を及ぼさないように、変更内容をレビューし、記録・管理することが求められています。

その際、「レビューの結果」「変更を正式に許可した責任者」「レビューから生まれた必要な処置」を文書化して保持することも必要です。

ISO9001要求事項を満たす変更管理の流れ

ISO9001要求事項を満たす変更管理の流れを解説します。

1.変更によるリスクの洗い出し

まずは変更に関する計画を立てることが必要です。その中でも、変更によるリスクの洗い出しと評価を実施しましょう。このとき、対応するかどうかは一旦置いておいて、漏れなくリスクを洗い出すことが大切です。

例えば、以下のようなリスクが考えられます。

  • 予算や経費の超過
  • 納期や期限の超過
  • 品質の低下
  • リソース不足
  • 顧客満足の低下

リスクを洗い出したら、それぞれのリスクについて評価を実施し、対応の優先度や緊急性について検討しましょう。

2.リスク対策を策定する

リスクの洗い出しや評価を行ったら、それぞれのリスクへの対策を策定しましょう。変更後に経過観察して対策を実施するか決めるものと、すぐに実施すべき対策もあるでしょう。

例えば、期限・納期の超過においては「変更後のスケジュール管理」はすぐに実施すべき対策であり、「遅延が発生した場合の原因追究と対処」については経過観察が必要です。

3.顧客へ通知する(任意)

変更の内容が顧客に提供する製品・サービスに影響を与える場合には、変更実施前に通知することも検討しましょう。契約段階で変更の事前申請が必要となる企業も増えているため、確認してください。

顧客への通知の際は、「なぜ変更するのか」「変更により予想される影響」「対策」の3点を含むことが一般的です。

4.変更の実施

リスクに関する対策や顧客への通知などの計画を策定できたら、計画通りに変更を実施します。

リスク管理や変更の管理・記録についても運用の中で忘れずに行いましょう。

5.実施状況をレビューする

変更を実施したら、変更の目的を達成できるように定期的に実施状況のレビューを行います。レビューの際は、「変更に要したリソースは適切だったか」「計画どおりに変更が進められたか」「計画どおりの効果を得られたか」といった観点から確認しましょう。

レビュー結果をもとに、変更内容を品質マネジメントシステムに取り入れるかどうかを決定するとともに、問題点の改善や是正に活用します。

6.変更内容を記録・管理する

変更内容はレビュー後も管理することが必要です。そのため、「レビューの結果」「変更を正式に許可した責任者」「レビューから生まれた必要な処置」を文書化して保持しましょう。

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まとめ

この記事では、ISO9001における変更管理の概要や流れについて解説しました。

経営活動を発展させていくためには、必ず既存のシステムから変更する機会がやってきます。その際には、ISO9001の要求事項に則って変更によるリスクや効果、変更にかかるリソースなどを明確化したうえで計画を立てることで、より高い効果の獲得につながります。

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