• 監査には、第一者監査、第二者監査、第三者監査の3種類がある
  • 内部監査の目的は、現時点の評価だけではなく、改善方法の気づきや予防処置にもある

ISO 9001(品質 規格 )を取得するなら、内部監査の実施は避けては通れません。内部監査というのは社内の人間が行う監査であり、実際に ISO9001 (品質規格)の規格通りに社内業務が行われているかをチェックすることです。

内部監査は非常に重要なことであり、決しておろそかにしてはいけません。以下では内部監査の内容と手順、質問例について紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

ISO9001の内部監査とは?


ISO9001における内部監査は、構築・運用しているマネジメントシステム が継続的な改善をしていくために、要求事項に定められている工程のひとつです。
適切に実施することで、自社のマネジメントシステムはより成熟し、企業の内部統制が強化され、法規遵守が実現します。

内部監査では、マネジメントシステムの文書化された規定やマニュアルが正しく従業員に共有されているか、関連する法案を遵守できているか、運用している中で新たに見つかっているリスクや機会はないか、などの点を確認します。

内部監査は、運用しているマネジメントシステムを改めて見直せる機会であり、ISO9001を取得するうえで非常に重要な工程です。

ISO9001の内部監査の目的とは?


内部監査の目的は、構築・運用しているマネジメントシステムが、規格の要求事項に適合しているか、またマネジメントシステムが有効に機能しているかについて確認することです。

マネジメントシステムの適合性有効性 を適切に評価することで、マネジメントシステムの狙いである顧客満足度の向上につながります。

関連記事:ISO内部監査の目的とは?内部監査員資格や研修について解説
関連記事:ISO内部監査で知っておきたい「適合性」と「有効性」とは?
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ISO内部監査の実施手順

内部監査業務における手順を解説します。主に、以下のような手順で実施します。

  1. チェックリストを中心に、現場の責任者などに質問
  2. 監査結果が適合か不適合かを評価
  3. 評価した結果を報告書にまとめて、是正処置を依頼
  4. 是正した内容が適切かどうかをフォロー

事前に内部監査員がマニュアルをチェックし、監査で質問する項目を確認します。このときにチェックリストを作成しておきます。
チェックリストの作成方法は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:【サンプルあり】内部監査チェックリストの作成!確認しておきたいポイントを解説

監査実施当日、監査対象の現場担当者に質問する際にマニュアルに沿って行われているのか、是正した場合はそれが改善されているかをチェックしてください。

ISO9001内部監査の質問例


内部監査者が質問事項を作成する際には、以下の3つについてチェックできる質問になるよう注意することがおすすめです。

  1. ISO9001(品質規格)の要求事項に適合しているか、マニュアルは要求事項に沿っているか
  2. 組織のマニュアルは、その通りに運用されているか
  3. マネジメントは効果的に実施し維持されているか、マニュアルは使いやすく成果につながっているか

『作成したルールは役に立つか』、『他に良い方法はないか』などマニュアルそのものを審査します。『品質管理の観点ではどこに問題があるのか』、『問題を解決するにはどうすればいいか』という具体的な答えまで引き出すような質問を作成できると良いでしょう。

これらを意識しながら、質問は5W1Hの形で作成しましょう。以下に、ISO9001における内部監査の質問例を紹介しますので、参考にしてください。

  • 品質管理を確立するために、どのようなプロセスを取っていますか?
  • 影響のある法令や規制要求事項は、どのようなものがありますか?
  • 品質目標の測定はどのような方法で行っていますか?また、測定頻度はどの程度ですか?
  • 不適合品が発生した場合、どのように処理しますか?また、その記録はありますか?
  • どのようにOJTを管理・実施していますか?また、その記録はありますか?
  • 商品・サービスを販売する際に、お客様にどのような情報を提供しますか?
  • 販売は、どのような手順やルールになっていますか?
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ISO9001内部監査が失敗する理由

ISO9001内部監査を実施しているものの、役割を果たせずに品質マネジメントシステムの継続的改善につながっていないケースもあります。

ここでは、ISO9001の内部監査が失敗し、無意味になってしまう理由を解説します。

不適合が改善のチャンスにつながっていない

内部監査を実施した結果、不適合になるケースがあります。その場合は、マネジメントシステムを改善するチャンスといえます。ただちに是正処置を実施し、マネジメントシステムを改善することが重要です。

その際、「なぜ、不適合だったのか」という原因を追究・精査して意見を交わすことで、最適な基準のマニュアルを作成できます。

しかし、「内部監査で不合格なのでダメです。」というだけで、上辺だけの対策を実施してしまうとマネジメントシステムは改善できません。むしろ従業員の負担が増えるなどの改悪となり、失敗につながってしまうのです。

形式的な監査になっている

内部監査では、一般的に作成したチェックリストを活用しながら実施します。しかし、チェックリストの内容をただ確認するような形式的な監査を行ってしまうと、被監査部門の抱える課題に気づけない可能性があります。

内部監査の目的を理解できていない場合に陥りやすい失敗といえるでしょう。

文書の確認のみで終わっている

内部監査を行う際には、口頭での質問だけでなく、その裏打ちとなる文書もあわせて確認を行います。
例えば、製造工程の最終検査のときに日付・検査者を記録しているかどうかを確認したい場合には、従業員に質問するとともに、検査報告書などの文書を確認することが必要です。

しかし、文書の確認のみで内部監査を終えてしまったり、文書の確認を重視しすぎていたりする企業もあるでしょう。そうすると被監査部門の実情を把握できないため、内部監査を行う意味がなくなってしまうのです。

関連マンガ:ISOって意味あるの!?内部監査員の悩み…形骸化した運用をスリム化!

ISO9001内部監査を成功させるポイント


内部監査が失敗する要因を解説しましたが、反対に有効な内部監査にするにはどのようなポイントを意識すべきなのでしょうか。ここでは、内部監査を成功させるポイントを解説します。

公平性を保ちつつ、評価を行うこと

内部監査を行う監査員は、公平性を保ちつつ評価を行うことが重要です。
社内から監査員を選出している場合、評価が甘くなる傾向にあります。私情を挟めないように、規定やチェックリストを作成し、実施の手順や内容を明確にしておきましょう。客観的な監査を行えるように、事前準備をすることが必要です。

また、内部監査を行う部署や工場などには、事前にその目的を共有しておきましょう。内部監査を受ける側が、内部監査の目的を把握していないと、あら探しのようなマイナスなイメージをもってしまう可能性があるためです。

内部監査員の力量を高める

内部監査を成功させるには「内部監査員の力量」が重要なポイントの一つです。
例えば、以下のようなスキルがあるかどうかで、内部監査の質が大きく左右されるでしょう。

  • 規格の要求事項について理解している
  • 品質管理のための手順書やチェックリストを自分で作れる
  • どのようにして質問事項にすべきか考える
  • 品質管理に向けての是正処置を評価できる

自社のISO内部監査員の力量が不足している場合には、内部監査員養成講座や内部監査員研修などを受講して内部監査員資格を取得するか、プロのコンサルティング業者に依頼することがおすすめです。

ISO内部監査員の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO内部監査の目的とは?内部監査員資格や研修について解説
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【現役コンサルが解説】内部監査の課題と効率的な実施方法

本記事監修の石井です。ここでは私の過去の経験などを踏まえて内部監査を効果的に実施する方法について解説していきます。

内部監査の課題と問題点

まずは、内部監査における課題や問題点についてです。

毎回、同じ質問が繰り返されていて、形骸化している。

 例えば、「品質方針は周知されていますか?」という質問はISOの導入段階や認証 取得後あたりでは、有効な質問です。
事務所内に掲示したり、グループウェアなどで共有されていれば、ある程度時間が過ぎると「当たり前」の質問になってしまいます。

質問の内容は徐々にレベルアップしていきましょう。

経営層のサポート不足

 基本的に内部監査は各部署から選任された監査員が他部署の監査を実施するわけですが、これは同じ会社に勤務する社員が被監査部署の問題点を探して指摘することであり、強い信頼関係が無いと社員同士の不和につながりかねません。

経営層や部署間を統括する責任者が内部監査の意図を理解し、事前に目的を共有しておくことが重要です。

監査目的の理解不足

 監査員の心情として、被監査部署の人から「嫌われたくない」と思い、質問項目が甘くなる傾向があります。
本来、監査の目的は第三者の目から見て被監査部署のリスクや改善点を伝え、トラブルを未然に防いだり、業務の効率化を図ることにあります。

監査の主催者(事務局)や監査員はこのことを念頭に置いて計画を策定したり、監査を実施することを心がけましょう。

効率的で有効な内部監査の実施方法

次に内部監査を効率的かつ有効に実施する方法です。

実施時期について

 監査の頻度は年1回の企業様がほとんどだと思います。その場合、お勧めする監査のタイミングはISO外部審査の前に指摘の対応が完了する時期です(例えば、1~2カ月前)。内部監査を「ISO外部審査の予行練習」と考えて実施するということです。社内の監査員が認証機関の審査員と同等レベルの質問が出来れば、外部審査に自信を持って対応することが出来るでしょう。

ISO規格の教育の一環として位置付ける

 ISOのマネジメントシステムの全体像を把握し、各項番の要求事項を理解するためにはある程度の時間を要します。内部監査では社員同士とはいえ、ある程度の緊張感を持ちながら監査の時間を過ごすことになります。

これを繰り返すことによって規格の要求事項を徐々に浸透させることが出来るでしょう。

顧客満足度の向上に役立てる

 「うちの会社は、何年も品質トラブルは起きてないし、価格も競争力があり、顧客満足度には問題が無い!」と言い切れる企業様は別ですが、このような分野で課題や問題点を認識されている場合は、内部監査によって改善を図ることは可能です。

ISOの外部審査でも規格の要求事項に基づいて組織の課題・問題点を指摘して改善を促すことになりますが、本来、組織内の課題や問題点については、常に一緒に業務に携わっている社員(=監査員)の方が理解されているのではないでしょうか?

内部監査という機会を利用して社内の課題・問題点について社員同士で話し合い、上司や経営層に報告・相談するなどして根本的な解決策を見出し、顧客満足度の向上に活用しましょう。

まとめ

ISO9001は商品・サービスの品質向上する仕組みを構築・運用し、最終的には顧客満足度向上を目指している規格です。内部監査を実施する際には、顧客満足につながるかどうかを念頭に置いて実施する必要があります。

内部監査ではマネジメントシステムの適合性や有効性を確認するため、監査チェックリストを用いるなど工夫して実施してください。あら探しをするのではなく、マネジメントシステムの発展を目指し、是正処置を行い、確認することが大切です。

内部監査を適切に実施し、自社のマネジメントシステムの継続発展に役立てましょう。

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