• ISO9001認証を返上する企業の多くは、費用面や書類管理の負担などを理由に挙げている
  • ISO9001のメリットを受けるためには、要求事項をよく理解することが重要

ISO 9001を取得する企業が多くいる一方、取得後に更新することをやめて、認証 を返上する企業もあります。それは、ISO9001 規格 における 品質 マネジメントシステムを構築・運用することのデメリットの部分が強く感じられるためです。

そこで、この記事ではISO9001の取得・更新をやめた企業の理由や返上するメリット・デメリットを紹介します。また、企業がメリットを享受できない原因を解説したのち、対策となるポイントを解説します。

企業がISO9001を取得する目的・メリット

そもそも、なぜ企業はISO9001を取得するのでしょうか。ここでは、ISO9001を取得するおもな目的・メリットを紹介します。

自社製品・サービスの品質向上

製品・サービスの製造工程を管理することにより、ISO9001取得の目的でもある品質向上が期待できます。

ISO9001の要求事項 を満たすマネジメントシステムを構築・運用することで、PDCAサイクルを回しながら品質管理を継続的に改善していく仕組みを実現できるのです。

取引先の拡大・顧客からの信頼感の醸成

ISO9001は国際的な基準であるため、取得することで自社製品・サービスの品質を対外的にアピールできます。取引先からの要求で取得する企業もあったり、官公庁案件の入札条件になっていたりする場合もあるため、ISO9001を取得することで取引先の拡大につながるでしょう。

業務効率化

ISO9001の要求事項を満たすマネジメントシステムを構築する過程で、業務プロセスを可視化して整理する必要があります。そのため、これまでの作業にあったムダな工程や非効率な手順を発見することにつながり、改善していけるのです。

また、手順や方法が明確化され、標準化が進むことで属人的な要素を減らせるため、より業務効率化が進むでしょう。

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企業がISO9001取得によるメリットを受けられない原因


それでは、なぜISO9001を取得しても、思ったようなメリットを受けられない企業が出てくるのでしょうか。ここでは、企業がISO9001取得によるメリットを受けられないおもな原因を紹介します。

ISO取得を「やらされている」意識だから

ISO認証取得を導入する背景を伝えずにトップダウンでISOへの取り組みを落とし込むことで、メリットを受けられなくなる可能性があります。
そういった場合、従業員としては「面倒な作業が増えた」「いちいち基準が増えていく」というように、必要性を理解しないまま業務量がただ増えてしまうのです。ただ「やらされている」という意識が醸成されてしまうと、内部監査有効性 を失い、本来全社的な取り組みが必要なISO9001に非協力的になる傾向にあります。

「重いISO9001」を構築したから

「重いISO9001」とは、「やらされている」意識に通じるところがありますが、取得のために要求事項を満たすためだけのルールや文書化を行うことで発生します。

本来、製造プロセスにおける各工程の作業内容を明確化し、記録していくことは、合理的な経営判断につながります。しかし、そのために必要な情報を取捨選択せずに、ISO9001の要求事項を確実に満たすために、手当たり次第に情報を文書化し記録していくことで、運用が面倒になる「重いISO9001」になってしまうのです。ムダな書類や煩雑な環境が該当します。

「重いISO」の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO離れをする理由とは?重いISOが生まれる原因を解説します
関連マンガ:ISOって意味あるの!?内部監査員の悩み…形骸化した運用をスリム化!

改訂前のISO9001の名残があるから

ISO9001はもともと比較的大規模な製造業向けにつくられた規格でした。そのため、その他の業種や規模の企業が取得していた場合、実情に合わない管理が必要になることもあったため、ISO9001取得のメリットを感じられなかったケースがありました。
昔は「某自動車メーカーがやっていることをすれば、儲かるし会社は良くなる」と考えられていました。

しかし、2000年に大規模な改訂がされて以降、現在のISO9001:2015に至るまでその他の業種や規模においても運用しやすい品質マネジメントシステムに関する規格になっています。そのため、改訂前の古いISO9001の名残を残して維持運用している場合には、ISO9001の管理にムダな労力がかかっている可能性があります。

企業がISO9001を取得・更新をやめた理由

ISO9001認証を返上する代表的な理由について紹介します。

審査費用が負担になる

ISO9001認証は、取得時だけでなく取得後も毎年ISO認証機関による審査を受ける必要があります。1年ごとの維持審査(定期検査)、3年に1度の更新審査があり、企業の業種や規模によって異なりますが相場としては30万~100万円程度かかります。

こうした毎年の審査費用が負担になり、ISO9001を返上する組織があるのです。審査の詳細は以下の記事をご覧ください。

関連記事:審査機関による審査内容とコスト

手間がかかる

ISO9001の要求事項を満たすためだけに、今までなかったルールや文書作成を組み込んだ品質マネジメントシステムを構築した場合、現場との乖離や大量の文書管理を行わなければならないなど、運用が手間になってしまうことがあります。

毎年の審査の準備にも手間がかかり、従業員の負荷が肥大化したことで、ISO9001の返上につながります。

保有するメリットが感じられない

ISO9001を取得したものの、保有するメリットが感じられないというケースもあります。当初は、取引先からの要求や公共事業の入札のために取得をしたが、取引先からの要求がなくなったり、要求した取引先との取引がなくなったりなどした場合に、ISOの運用コストとの費用対効果が合わなくなり、返上に至ります。

そのような場合は、ただ返上するのではなく、自己適合宣言という方法もあります。以下の記事で詳しく書いていますのでご覧ください。

関連記事:【ISOをやめたい企業必見】ISO返上と自己適合宣言
関連マンガ:ISOを返上して自己適合宣言!形骸化したマネジメントシステムからの脱却
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企業がISO9001を返上するメリット


ISO9001の取得後、ここまでに紹介した理由から返上する企業もあります。そうした企業がISO9001を返上することで得られるメリットを解説します。

経費の削減

認証を継続するには、取得費用だけでなく、毎年の審査費用が必要です。そのため返上すると、約30~100万円の審査費用を削減できるため年間経費を低減できます。

また、ISO9001の改訂があった際に、対応に必要な人件費やコンサルティング依頼料がかかることもなくなります。

本業にリソースを集中できる

認証を継続するには、ISO9001の要求事項を満たして運用し続けることが必要です。たとえば、審査や改訂の度に書類を作成したり、審査対応を行ったりとリソースを割くことが求められます。

こうした時間がなくなるため、リソースを本業の経営に集中させられます。

企業がISO9001を返上するデメリット


ISO9001を返上するメリットがあれば、デメリットも存在します。ここでは、企業がISO9001を返上するデメリットを解説します。

取引条件を満たせない

ISO9001を取得する大きな理由に、「取引先からの要求を満たすため」「取引先の取引条件になっているため」といった取引の契約に必要であることが挙げられます。

そのため、ISO9001を返上すると取引先の要求を満たせなくなり、取引に影響が出る可能性もあるでしょう。事前に、取引条件やISO9001の必要性の有無を整理しましょう。

競争力・信頼性の低下

ISO9001は、国際的な品質基準を満たしているため、自社の競争力・信頼性を高める「看板」の一つになりえます。「ISO9001を取得しているなら安心できる」という取引先や消費者もいるかもしれないのです。

そのため、たとえ自己適合宣言(自社のマネジメントシステムが、ISO規格に適合していることを宣言すること)をしていても競争力・信頼性の低下につながるおそれがあります。

再取得時に工数・負担がかかる

ISO9001を返上してしまうと、再取得する際にはもう一度構築・運用し直すことが必要です。

しかし、社内で一度「不要」と結論を出したものに再度取り組むには、社員のモチベーションを高め、方針を整備するのに苦労する企業も多くあります。工数がかかるだけでなく、会社全体の負担になることも多くあることを理解しておきましょう。

QMSの有効性が失われる可能性がある

ISO9001を取得し、外部による審査を毎年受けるメリットに、「自社のQMSが機能しているかをチェックできる機会があること」が挙げられます。外部の目があれば、それだけでQMSの運用を主体的に行うことにつながるでしょう。

しかし、ISO9001を返上することでこうした機会が失われます。その結果、「ルールを守る意味がない」、「チェックされないから楽なやり方で実施しよう」などのモチベーションの低下から、QMSの有効性が失われる可能性があるのです。

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ISO9001をやめずにメリットを得るポイント


ISO9001取得により、期待したようなメリットを得るためのポイントを紹介します。

「継続的発展」を理解する

ISO9001のそもそもの目的は製品・サービスの継続的な品質管理を実施することで、品質を向上させていき、顧客満足度を満たすことにあります。ISO9001はそのためのマネジメントシステムを構築・運用するためのフレームワークであることを理解しましょう。

ISO9001の要求事項は、会社規模や事業内容などによって対応が変えられるように、自由度が高くなっています。そのため、きちんとISO9001の要求事項を理解し、自社の実情を把握して取り組むことで、有効なマネジメントシステムを構築できるでしょう。

PDCAサイクルを回していき、継続的な発展を続けることで自社に合った仕組みがつくりあげられて、徐々にISO9001のメリットを実感できるようになっていきます。

文書管理・ルールをスリム化する

「重いISO」にならないためには、「組織の状況に合わせてマネジメントシステムを構築すること」が重要です。そのためには、特に問題となりやすい文書管理・ルールをスリム化していくことがおすすめです。

規格が要求するから文書管理を実施するという視点ではなく、「経営の効率を上げるために必要かどうか」という視点で文書化やルール・マニュアルを作成していきましょう。また、組織の状況に合わせるためには、現場の意見を反映することが大切です。実際に運用する社員の意見も取り入れ、有効なマネジメントシステムを構築しましょう。

ISO規格のスリム化の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISOのスリム化で抑えておきたい重要なポイント

経験豊富なコンサルティング業者に依頼する

ここまで解説した内容を自社だけで実施するには、十分にISO規格への知識があり、マネジメントシステムを構築した経験がある人材がいないことには難しいでしょう。
また、例え先述のとおりにスリム化を実施したとしても、ISOの審査会社や審査員に拠ってはその内容を認めない方もいます。指摘を受けた際に的確な回答ができず、言われるがままに、もとの運用しづらいISOでの運用を余儀なくされるケースもあるのです。

そのため、おすすめは経験豊富なコンサルティング業者に依頼することです。客観的な第三者としてプロの意見を取り入れていくことで、有効性を保ったマネジメントシステムを構築できるでしょう。

ISO取得コンサルタントへの依頼の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISOコンサルタントの選び方と押さえるべき3つのポイント

また、コンサルティング業者に依頼し、ISO9001取得によるメリットを受けられた事例があります。以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:【インタビュー】株式会社三浦組紐工場「運用にプロの手を!業界トップの三浦組紐工場が狙うISOのスリム化」
関連記事:【インタビュー】ハイキス株式会社「あいまいなルールを明確化!取得過程を教育にも活用したハイキス」

まとめ

ISO9001を取得しても、思ったような効果が得られずに認証を返上する企業が一定数います。返上にいたる理由の多くは、ISO規格や自社の実情を深く理解できていないことで発生しているのです。

ISO9001規格の要求事項を理解したうえで、自社に適した品質マネジメントシステムを構築することで、期待したとおりの取得につながります。

自社に適した品質マネジメントシステムを構築・運用し、メリットを十分に享受するためには、プロのコンサルティング業者に依頼することがおすすめです。

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