ISO9001の取得・更新をやめた企業の理由は?効果を得るポイントを解説

- ISO9001認証を返上する企業の多くは、費用面や書類管理の負担などを理由に挙げている
- ISO9001のメリットを受けるためには、要求事項をよく理解することが重要
ISO 9001を取得する企業が多くいる一方、取得後に更新することをやめて、認証 を返上する企業もあります。それは、ISO9001 規格 における 品質 マネジメントシステムを構築・運用することのデメリットの部分が強く感じられるためです。
そこで、この記事ではISO9001の取得・更新をやめた企業の理由を紹介します。そして、企業がメリットを享受できない原因を解説したのち、その対策となるポイントを解説します。
目次
企業がISO9001を取得・更新をやめた理由
ISO9001認証を返上する代表的な理由について紹介します。
審査費用が負担になる
ISO9001認証は、取得時だけでなく取得後も毎年認証機関による審査を受ける必要があります。1年ごとの維持審査(定期検査)、3年に1度の更新審査があり、企業の業種や規模によって異なりますが相場としては30万~100万円程度かかります。
こうした毎年の審査費用が負担になり、ISO9001を返上する組織があるのです。審査の詳細は以下の記事をご覧ください。
手間がかかる
ISO9001の要求事項を満たすためだけに、いままでなかったルールや文書作成を組み込んだ品質マネジメントシステムを構築した場合、現場との乖離や大量の文書管理を行わなければならなかったりと、運用が手間になってしまうことがあります。
毎年の審査の準備にも手間がかかり、従業員の負荷が肥大化したことで、ISO9001の返上につながります。
保有するメリットが感じられない
ISO9001を取得したものの、保有するメリットが感じられないというケースもあります。当初は、取引先からの要求や公共事業の入札のために取得をしたが、取引先からの要求がなくなったり、要求した取引先との取引がなくなったりなどした場合に、ISOの運用コストとの費用対効果が合わなくなり、返上に至ります。
そのような場合は、ただ返上するのではなく、自己適合宣言という方法もあります。以下の記事で詳しく書いていますのでご覧ください。

企業がISO9001を取得する目的・メリット
そもそも、なぜ企業はISO9001を取得するのでしょうか。ここでは、ISO9001を取得するおもな目的・メリットを紹介します。
自社製品・サービスの品質向上
製品・サービスの製造工程を管理することにより、ISO9001取得の目的でもある品質向上が期待できます。
ISO9001の要求事項を満たすマネジメントシステムを構築・運用することで、PDCAサイクルを回しながら品質管理を継続的に改善していく仕組みを実現できるのです。
取引先の拡大・顧客からの信頼感の醸成
ISO9001は国際的な基準であるため、取得することで自社製品・サービスの品質を対外的にアピールできます。取引先からの要求で取得する企業もあったり、官公庁案件の入札条件になっていたりする場合もあるため、ISO9001を取得することで取引先の拡大につながるでしょう。
業務効率化
ISO9001の要求事項を満たすマネジメントシステムを構築する過程で、業務プロセスを可視化して整理する必要があります。そのため、これまでの作業にあったムダな工程や非効率な手順を発見することにつながり、改善していくことができるのです。
また、手順や方法が明確化され、標準化が進むことで属人的な要素を減らせるため、より業務効率化が進むでしょう。
企業がISO9001取得によるメリットを受けられない原因
それでは、なぜISO9001を取得しても、思ったようなメリットを受けられない企業が出てくるのでしょうか。ここでは、企業がISO9001取得によるメリットを受けられないおもな原因を紹介します。
ISO取得を「やらされている」意識だから
ISO導入の背景を伝えずにトップダウンでISOへの取り組みを落とし込むことで、メリットを受けられなくなる可能性があります。
そういった場合、従業員としては「面倒な作業が増えた」「いちいち基準が増えていく」というように、必要性を理解しないまま業務量がただ増える格好となります。ただ「やらされている」という意識が醸成されてしまい、本来全社的な取り組みが必要なISO9001に非協力的になる傾向にあります。
「重いISO9001」を構築したから
「重いISO9001」とは、「やらされている」意識に通じるところがありますが、取得のために要求事項を満たすためだけのルールや文書化を行うことで発生します。
本来、製造プロセスにおける各工程の作業内容を明確化し、記録していくことは、合理的な経営判断につながります。しかし、そのために必要な情報を取捨選択せずに、ISO9001の要求事項を確実に満たすために、手当たり次第に情報を文書化し記録していくことで、運用が面倒になる「重いISO9001」になってしまうのです。無駄な書類がそれに該当してくるかと思います。
「重いISO」の詳細は、以下の記事をご覧ください。
改訂前のISO9001の名残があるから
ISO9001はもともと比較的大規模な製造業向けにつくられた規格でした。そのため、その他の業種や規模の企業が取得していた場合、実情に合わない管理が必要になることもあったため、ISO9001取得のメリットを感じられなかったケースがありました。
昔は「某自動車メーカーがやっていることをすれば、儲かるし会社は良くなる」と考えられていました。
しかし、2000年に大規模な改訂がされて以降、現在のISO9001:2015に至るまでその他の業種や規模においても運用しやすい品質マネジメントシステムに関する規格になっています。そのため、改訂前の古いISO9001の名残を残して維持運用している場合には、ISO9001の管理にムダな労力がかかっている可能性があります。

ISO9001取得でメリットを得るポイント
ISO9001取得により、期待したようなメリットを得るためのポイントを紹介します。
「継続的発展」を理解する
ISO9001のそもそもの目的は製品・サービスの継続的な品質管理を実施することで、品質を向上させていき、顧客満足度を満たすことにあります。ISO9001はそのためのマネジメントシステムを構築・運用するためのフレームワークであることを理解しましょう。
ISO9001の要求事項は、会社規模や事業内容などによって対応が変えられるように、自由度が高くなっています。そのため、きちんとISO9001の要求事項を理解し、自社の実情を把握して取り組むことで、有効なマネジメントシステムを構築できるでしょう。
PDCAサイクルを回していき、継続的な発展を続けることで自社に合った仕組みがつくりあげられて、徐々にISO9001のメリットを実感できるようになっていきます。
文書管理・ルールをスリム化する
「重いISO」にならないためには、「組織の状況に合わせてマネジメントシステムを構築すること」が重要です。そのためには、特に問題となりやすい文書管理・ルールをスリム化していくことがおすすめです。
規格が要求するから文書管理を実施するという視点ではなく、「経営の効率を上げるために必要かどうか」という視点で文書化やルール・マニュアルを作成していきましょう。また、組織の状況に合わせるためには、現場の意見を反映することが大切です。実際に運用する社員の意見も取り入れ、有効なマネジメントシステムを構築しましょう。
ISO規格のスリム化の詳細は、以下の記事をご覧ください。
経験豊富なコンサルティング業者に依頼する
ここまで解説した内容を自社だけで実施するには、十分にISO規格への知識があり、マネジメントシステムを構築した経験がある人材がいないことには難しいでしょう。
また、例え先述のとおりにスリム化を実施したとしても、ISOの審査会社や審査員に拠ってはその内容を認めない方もいます。指摘を受けた際に、的確な回答ができず、言われるがままにもとの運用しづらいISOでの運用を余儀なくされるケースもあるのです。
そのため、おすすめは経験豊富なコンサルティング業者に依頼することです。客観的な第三者としてプロの意見を取り入れていくことで、有効性を保ったマネジメントシステムを構築できるでしょう。
コンサルティング業者への依頼の詳細は、以下の記事をご覧ください。
また、コンサルティング業者に依頼し、ISO9001取得によるメリットを受けられた事例があります。以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【インタビュー】ハイキス株式会社「あいまいなルールを明確化!取得過程を教育にも活用したハイキス」
まとめ
ISO9001を取得しても、思ったような効果が得られずに認証を返上する企業が一定数います。返上にいたる理由の多くは、ISO規格や自社の実情を深く理解できていないことで発生しているのです。
ISO9001規格の要求事項を理解したうえで、自社に適した品質マネジメントシステムを構築することで、期待したとおりの取得につながります。
自社に適した品質マネジメントシステムを構築・運用し、メリットを十分に享受するためには、プロのコンサルティング業者に依頼することがおすすめです。

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