
ISOコンサルタントへISO認証取得を依頼するにあたって「そもそも何をしてくれるのか」、「どのように選べばいいのか」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
ISOコンサルタントはISO認証取得を目指す企業や組織の代わりに文書・帳票類の作成やマネジメントシステムの構築、審査前準備などの支援を行うISOの専門家です。
個人、法人含め数多く存在し、その中から“良いコンサルタント”を見つけるのは至難の技です。価格が安いという理由だけで決めたことでトラブルに巻き込まれ、後悔したというお声も多く聞きます。
“良いコンサルタント”を選ぶためには「コンサルタントの質」「サポート範囲」「過去の実績」の3つを抑えることが重要です。
この記事では、ISOコンサルタントの業務内容やISOコンサルタント選びで抑えておきたいポイントについて詳しく解説していきます。
目次
ISOコンサルタントは何をしてくれる?
ISOコンサルタントとはクライアント企業の代わりにISOマネジメントシステムの構築を行ったり、構築方法をレクチャーする職業です。
具体的な支援内容としては下記が挙げられます。
- マニュアルや帳票類の作成
- 内部監査やマネジメントレビューのサポート
- 審査前の準備や審査時の指摘に対する是正処置
ISOのコンサルタントは個人から法人まで数多く存在し、それぞれでサポート内容や価格はさまざまです。予備知識なしで自社にとって最適なコンサルタントと巡り合うのは簡単ではありません。
ISOコンサルタント会社の4つのタイプとは?
ISOコンサルタント会社には、事務局型、代行型、指導型、ツール型の4つのタイプがあります。ここでは4つのタイプのコンサルタントの特徴を解説します。
事務局型
事務局型は、クライアント企業のISO事務局機能を担い、実務に沿ったISO構築業務や取得・運用のサポートを行うタイプです。
企業側の負担が軽く、企業の事業フェーズや要望に合わせた柔軟な運用設計が可能となります。
費用は月額4万円程度からが目安となり、ISO担当者がいない企業や運用で負担を減らしたい企業に向いています。
代行型
代行型は、クライアント企業のISO業務の大部分を代行し、テンプレート化された仕組みで短期間の構築を実現するタイプです。
企業側の負担が軽く、費用が月額3万円程度~と比較的安価です。
ただし、企業の独自要件の反映が難しく、実態に合わない文書ができる可能性があります。
指導型
指導型は、クライアント企業のISO事務局員へ構築方法をレクチャーし、企業自身が運用を作り上げるのをサポートするタイプです。
企業側の工数は大きいものの、ISOへの理解が深まる点はメリットといえます。
一方で、過去の大企業レベルのISOを当てはめることで、文書過多になりやすい事例もあるため、選定時には注意が必要です。
ツール型
ツール型は、クラウド上でISOの文書管理や運用管理ができるサービスで、必要に応じてコンサルティングがオプションになるタイプです。
自社運用が中心となるため工数は増えますが、ISOの構築・運用状況を可視化できる点はメリットです。
ただし、ツールの導入や習熟にかかる負荷やフォーマットに沿って構築するため、実態に合わないISOのためだけの文書が生まれやすい点は注意が必要となります。
コンサルタントの選定前に整理すべきポイントとは?
ISOコンサルタントを探すうえで最も重要なことは「なぜISOを取得するのか」「自社はどのような支援を求めているのか」を明確にしておくことです。この事前準備が不十分な場合、コンサルタントのミスマッチが生じやすくなります。
ここでは、コンサルタントの選定前に整理しておくべきことと、選定時の注意点を解説します。
ISO認証を取得する目的を整理する
予備知識がない状態や自社の基準が不明確な状態で選ぶことにはリスクがあります。「費用が安いから」と依頼したものの、結果として目的と合わずに失敗したという相談がISOプロにも多く寄せられます。
こうしたミスマッチを防ぐためにも、まずは自社がなぜISOを取得するのか、その目的を明確にしておく必要があります。目的がはっきりしていれば、それがISOコンサルタントを選ぶ際の判断基準になります。
目的と相性の良いコンサルタントの一例は次の通りです。
| 目的 | マッチするタイプ |
|---|---|
| 取引先から求められている | スピード対応に強いコンサルタント |
| 業務効率化や内部統制を強化したい | 経験豊富で実務理解のあるコンサルタント |
たとえば「内部統制をしたい」という目的に対して「とにかく安いところ」ではミスマッチになりやすいでしょう。
まずは取得理由を明確にし、自社が求める支援内容や要望の優先順位を整理することが、最適なISOコンサルタント選びの第一歩となります。
安さが最優先の場合の注意点
コンサルティング費用は、一般的にそのコンサルタントが確保できる工数やサポート範囲に比例します。費用が安い場合、その分提供できるサポートが限られる可能性がある点は理解しておきたいポイントです。
一定以上のサポートや手厚い支援を求める場合は、「なぜ安いのか」という理由が明確でない限り、慎重に検討することをおすすめします。
安さを重視すると、代行型や指導型の個人コンサルタントを選ぶケースが多く、ISOプロにも以下のような相談が寄せられることがあります。
【代行型】- 担当者によっては経験が浅く、質問への回答に時間がかかることがある
- 担当変更の頻度が高く、その都度イチから説明しないといけない
- 変更したい点があったが、応じてもらえなかった
代行型はテンプレート化された仕組みを用いることで、安価に短期間で構築できるメリットですが、担当者の経験が浅い場合に上記のようなことが起きるケースがあるようです。
【指導型】- 電話やメールの返事がなく、他に連絡手段がなく困った
- コンサルタントと相性が合わず、別の会社を改めて探すことになった
- 別のコンサルタント会社に再依頼した際に、ISO構築をイチからする必要があり、いままでの時間とお金が無駄になった
個人コンサルタントは、低価格で柔軟な対応にメリットがありますが、個人であるがために「担当者変更ができない」点が、良くも悪くも影響する場合があります。
どちらの場合も、極端に安価なサービスを検討する際は、「なぜ安いのか?」と「サービス内容・範囲」を確認し、自社のISO取得の目的や求めるサポート内容と照らし合わせて判断することで、ミスマッチを防ぎやすくなります。
ISOコンサルタントを選ぶ3つのポイント
ISOコンサルタントを選ぶ際に押さえたいポイントは、「コンサルタントの質」「サポート内容」「実績」の3つです。
ここでは、それぞれをどのように確認すべきかを解説します。
コンサルタントの質
ISOコンサルタントを選ぶうえで、コンサルタントの「質」、つまり「どれだけお客さまに寄り沿って対応してくれるか」は非常に重要なポイントです。
とはいえ、契約前には見えにくい部分でもあります。そこで事前に判断するための材料として参考になるのが「価格」です。
コンサルタント会社は企業である以上、売上に対して確保できる工数には上限があります。「1社あたりにどれだけ工数を掛けられるか」という観点で価格を質の指標として確認することは有効です。
低価格で提供する場合は、1人のコンサルタントが複数社を担当せざるを得ず、1社ごとに割ける時間が限られます。その結果、返信の遅延や進捗の停滞など、初めてISO取得に取り組む企業にとっては不安につながりやすい状況が生じることもあります。
もちろん価格が安いこと自体が悪いことではありません。「なぜ安いのか?」を確認することで、サービスの質やサポート体制が見えてくるでしょう。
サポート内容
2つ目は「サポート内容」です。
ISOコンサルタントが「どこまでサポートしてくれるか」は多くの企業が気になる点でしょう。
文書や帳票作成、内部監査、審査対応は、どこまでどのように対応してくれるのか、またコンサルタントのタイプがどれに当てはまるのかは事前に確認したいポイントです。
それ以外にも、ISOについて不明点があった際に気軽に質問できるのか、訪問回数に制限があるのか、取得スケジュールに沿って進行を管理してくれるのか、取得後も継続してサポートしてくれるのか、といったコンサルタント側のサポート体制も重要です。
ISO取得に取り組む企業にとっては、「どこまで任せていいのか」「どこまで任せられるのか」が分からないことも少なくありません。そのため「具体的なサポート内容や体制」を確認しておくで、ミスマッチを防ぐことに繋がります。
コンサルタントの実績
3つ目は「コンサルタントの実績」です。
相見積もりの段階で、メールや電話、対面での打ち合わせの機会があれば、過去に自社と同じ業種や規模の企業をサポートした実績があるかを確認しましょう。
またコンサルタント会社のホームページに掲載されている「○○社サポートの実績」でもある程度把握することができます。特に、クライアント企業名が明記されたお客さまインタビューは信頼性の高い情報といえるでしょう。
こうした情報を公開している企業を優先的に検討することで、コンサルタント選定をより効率に進めることができます。
ISOプロでは、お客様の声や導入事例を掲載しています。コンサルタント選びの参考として、ぜひ実際のクライアント企業の声をご覧ください。
ISOコンサルタント選びで本当に避けたい失敗とは?
ISOコンサルタント選びの失敗とは、業務改善に繋がらない「形骸化したISO」や従業員の負荷だけが増える「重いISO」になることです。
これは、要求事項を満たすことだけを目的にし、自社の実情に合わない文書やルールが構築されることで生じやすくなります。
「ISO認証が取得できないこと」も失敗ではありますが、実際にはどのコンサルタントのタイプであっても、取得自体は可能なケースがほとんどです。
特に、過去のISOの考え方からアップデートできずに、必要以上に文書を作成するコンサルタントには注意が必要です。現在のISOでは、必ずしもすべてを文書化することは求めておらず、自社の業務実態にあった柔軟な運用が重視されています。
「改善に繋がるISO」であること、「従業員の負担が最低限」であることの2点を意識したISO構築が事業成長に繋がります。
現役コンサルタントが伝授!コンサルタントの見極め方
ここでは現役コンサルタントが伝授するISOコンサルタントの見分け方を解説します。ヒアリングの段階で下記のような質問を行い、その返答でどんなコンサルタントか見極めるのにご活用いただけますので、ぜひご確認ください。
まとめ
ISOは取得して終わりではなく、継続的に運用しつづけるものです。つまりISOコンサルタントとも長い付き合いとなります。
そのため、「コンサルタントの質」「サポート内容」「実績」の3つのポイントを踏まえ、自社の状況に合ったISOコンサルタント会社を選ぶことが重要です。
その判断材料として複数社から見積もりを取ることをお勧めします。
見積もりを集める中で、3つのポイント以外にも、レスポンスの速さや営業担当の人柄など各社の違いが見えてきます。特にレスポンスの速さは重要です。問い合わせへの返事や見積もりの提出のスピードなどは、今後のやり取りのスムーズさを測る指標になります。
各社とのやり取りを通じて、自社の取得目的とバランスの取れたISOコンサルタントを選ぶことで、“良いコンサルタント”に出会える可能性が高まります。









