• プロセスアプローチとは、製品やサービスを提供するための各プロセスをシステムとしてみなし、運用すること
  • プロセスアプローチでは、工程と工程を組み合わせ、相互作用させることを意識する

品質 マネジメントシステムでは、仕事はプロセス(業務)のつながりとみなします。組織内において、個々が決められた通りに業務を遂行し、次のプロセスへ引き継いでいく……そんな業務の流れの見方をすることで、マネジメントシステムはより効率的に、効果的に機能します。

ここで重要になってくるのが、品質マネジメント7原則にもある「プロセスアプローチ」です。今回は、この「プロセスアプローチ」の概要や目的、ISO 9001における位置づけ、具体例について解説していきます。

プロセスアプローチとは

プロセスアプローチとは
プロセスアプローチとは、仕事のプロセスを明確にし、各プロセスの相互関係を把握し、一連のプロセスをシステムとして運営する活動です。それぞれの工程において手順や基準を設けて管理していきます。簡単に言うと伝言ゲームを正確に行うことができるように調整するようなものです。

品質マネジメント7原則では、経営資源と業務が一つのプロセスとして管理された場合には、望ましい結果が達成されると考えられています。

プロセスアプローチの目的

プロセスアプローチの目的は、品質マネジメントシステムを改善し、顧客満足度の向上に貢献することです。

プロセスアプローチを実施することで、それぞれの工程における品質を高め、不良を発生させないようにします。一つ一つの工程において不適合品や不良品をなくしていけば、差し直しが発生しなくなるため、最終的なメリットとしては顧客のもとに不良品が届けられる確率を低減させられます。

プロセスアプローチの構成要素

プロセスアプローチは、以下の7つの要素から構成されています。

1.プロセスの内容

その工程において実施する作業内容と範囲、管理責任者やリーダー、担当部門を明らかにします。

2.インプット

その工程を実施するために必要な素材について明らかにします。例えば、製品の原材料、前工程から受け取った製品、文書、情報、顧客のニーズなどが挙げられます。

3.アウトプット

その工程を実施したことで生み出されるものについて明らかにします。例えば、次工程に渡す製品、文書、情報、実績などが挙げられます。

4.物的資源

その工程を実施するために必要な物的資源について明らかにします。例えば、使用する設備やソフトウェア、メンテナンスの記録といった情報が挙げられます。

5.人的資源

その工程を実施するための人的資源について明らかにします。例えば、携わる社員と資格、必要な訓練などが挙げられます。

6.実施手順

その工程を実施するための手順や方法について定めます。その際にはマニュアルや手順書を準備することで、適切な進行管理が可能になります。

7.評価指標

その工程で生み出されたアウトプットを評価するために、指標や基準を定める必要があります。次の工程に流すための合格基準となる品質について明らかにしましょう。

プロセスアプローチの運用方法

プロセスアプローチの要点は、以下の4つです。

  1. プロセスを明確にする
  2. プロセスを相互作用させる
  3. プロセスを運営管理する
  4. プロセスをシステムとして適用する

プロセスとは、「インプット をアウトプットに変換する一連の流れ」です。のちほど、「ハンバーガーをつくる」という例で整理していますので、あわせてご覧ください。

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ISO9001におけるプロセスアプローチの位置付け


ISO9001では、プロセスアプローチの採用を推奨しています。ここでは、ISO9001の概要やプロセスアプローチの位置づけについて解説します。

ISO9001とは

ISO9001とは、企業の製品やサービスの品質向上を目的とした品質マネジメントシステムに関する規格 です。最終的に「顧客満足度の達成」を掲げているため、単純に品質を高めていくだけでなく価格や納期といった顧客要求事項 を満たすことが必要です。

ISO9001の要求事項を満たすことで、継続的に製品やサービスの提供におけるプロセスを改善していく仕組みを構築・運用することにつながります。そのため、ISO9001は品質管理を改善するためのフレームワークともいえるのです。

ISO9001の詳細は以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO9001とはなにか?導入企業や他の規格との違いを徹底解説!

ISO9001で構築する品質マネジメントシステムとは

ISO9001で構築する品質マネジメントシステムとは、製品やサービスの品質を管理するためのシステムです。製品・サービスの品質を継続的に改善していくためには、製品・サービスの各工程における管理を強化していく必要があります。

その際にプロセスアプローチを実施していくことで、ISO9001で求められているPDCAサイクルを円滑に構築できるのです。そのため、ISO9001にとって、プロセスアプローチの実施は重要な位置づけとなっています。

ISO9001で構築する品質マネジメントシステムの詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO9001の要求事項とは?品質マネジメントシステム(QMS)を解説

【わかりやすい】プロセスアプローチの具体例

ハンバーガーをつくるためには、「パンを焼く」ことと、「ハンバーグを焼く」ことが必要になります。この2つのプロセスに分けて「ハンバーグをつくる」という目標達成に向けて、プロセスアプローチをしてみましょう。

1.プロセスを明確にする

タートル図
まずは、製造におけるプロセスを明らかにします。その際にはプロセスアプローチの7つの構成要素をピックアップしていきましょう。また、タートル図を用いると整理しやすくなるため、利用することがおすすめです。

プロセスA(パンを焼く)
  • インプット:パン
  • アウトプット:焼けたパン
  • 利用する資源:トースト、電力、作業をする人

プロセスAの詳細:

  1. パンが必要な枚数を決める
  2. パンを適切な大きさにカットする
  3. トースターを電源につなぐ
  4. トースターの適切な時間をセットする
  5. トースターにパンを入れる
  6. パンが焼ける
プロセスB(ハンバーグをつくる)
  • インプット:ひき肉、玉ねぎ、油、パン粉、調味料、ガス
  • アウトプット:焼けたハンバーグ

プロセスBの詳細:

  1. 玉ねぎをみじん切りする
  2. 玉ねぎを炒める
  3. 炒めた玉ねぎとひき肉とパン粉を混ぜる
  4. ハンバーグの形に整形する
  5. 整形したものを焼く
  6. ハンバーグができる

2.プロセスを相互作用させる

この2つのプロセスを組み合わせて、ハンバーガーが完成するのです。つまり、プロセスAとプロセスBが相互作用することで、ハンバーガーが完成しているわけです。

――さて、ではこのハンバーガーの品質を高めるためにはどうすれば良いでしょうか? 上記で例に挙げたハンバーグを「おいしく作る」ためにプロセスを運営管理してみましょう。

3.プロセスを運営管理する

ハンバーガーをおいしくするためには、複数の方法があります。例えば、「良い素材を調達する」というのも方法の一つですし、「適切な火加減でハンバーグを焼く」ということも方法の一つです。もしかすると、パンをどれくらいの大きさにカットするのかによっても品質が変わってくるかもしれません。

上記の工程を「どの素材を仕入れるのか」「どれくらい焼くのか」「どのくらいの大きさにカットするのか」ということを、結果を見ながら最適化していくことで、継続的に品質を高めていくことが可能になるのです。

4.プロセスをシステムとして適用する

単に「ハンバーガーをつくる」というだけでも、資金や設備には限界があります。例えば毎回ハンバーガーを作るたびに最高級の牛肉を用意することはできません。予算300円でハンバーガーをつくる場合には、調達できる材料は限られますし、「自宅で」という条件が加われば、「自宅にある設備で」という条件が課せられることになります。

各プロセスの相互作用を考慮した上で、人、金、情報、設備を割当てて、システムとして適用する必要があるのです。

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まとめ

今回はプロセスアプローチの概要や目的、ISO9001での位置づけについて解説しました。プロセスアプローチとは、各プロセスが何のためにあるのかを明確にして、課題を整理し、効果的に管理できるようにシステムとして組織に適用させていく流れのことです。

組織に適用させるためには、職人の経験と勘だけではうまく活用できません。そのためにレシピを用意するなど、誰が見ても同じように作業できるようにしなければなりません。ISO9001においても推奨されている考え方であるため、理解して取り組むことがおすすめです。

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