ISO9001取得の目的と認証によって得られる効果とは？

ISO 9001といえば、一定以上の水準の製品やサービスを継続して提供していくことで顧客満足の維持・向上を目指すことを目的とした規格 です。

認証取得をすることで、不良品率の低下や品質 の向上などの効果が得られます。また、それ以外にも「信頼感や安心感の向上」「顧客満足度の向上」のマーケティング的な効果も存在します。

そこで、この記事ではISO9001規格の目的とマーケティング的な効果について詳しく解説します。

ISO9001規格の目的とは

そもそもISO9001とはどのようなものなのでしょうか。ISO9001の概要や目的について解説します。

ISO9001とは？

ISOとは国際標準化機構（International Organization for Standardization）のこと。この非営利団体が策定する規格のひとつにISO9001があります。

ISO9001とは、「品質マネジメントシステム （QMS）に関する規格」です。
製品やサービスの生産～提供における工程を管理することで、品質の維持・向上を目指します。

「規格」というとわかりにくいかもしれませんが、「規格」と「マネジメント（管理）システム」日本国によって定められる「法律」と会社のルールである「就業規則」のような関係にあります。
例えば、法律では「法定労働時間を超えての残業には、割増賃金を支払う必要がある」と決められているため、就業規則に「法定労働時間を超えても、残業代は支払わない」というルールを定めることはできません。

ISO9001でも、「こういうルールにしてください」と指定されており、ISO9001の取得を目指す企業はその規格に則ったマネジメントシステム（ルール）を策定する必要があります。

ISO9001の目的

ISO9001の最終的な目的は、「顧客満足度の向上」です。そのために、製品やサービスの品質向上が必要であるという考え方です。

ただしISO9001でいう品質とは、単純に高性能であることではなく、Q（quality：品質）C（cost：価格）D（delivery：納期）からなるQCDバランスを重視し、顧客要求事項 を満たすことが重視されています。

それは、機能性に優れ、高性能な製品であっても1000万円の製品であれば、「高すぎる」と感じて顧客満足度が低下する可能性があります。また、即日手に入ったとしても、品質が低すぎて使い物にならなければ同じく顧客満足度には悪影響となるでしょう。

そのため、ISO9001ではQCDバランスを重視して品質向上に取り組み、顧客満足度を高めることが求められています。

品質マネジメントシステム（QMS）とは

ここでは、品質マネジメントシステム（QMS）について解説します。

マネジメントシステムとは

そもそもマネジメントシステムとは、「目標を定め、達成するために組織を合理的に管理する仕組み」のことです。品質マネジメントシステムの場合には、品質向上に関する目標を定めて管理することが求められます。

例えば、「不良品率を前年比15％削減する」という目標を立てた際に、「掃除を徹底する」「ミスがないようにがんばる」などの属人的な力量に依存した曖昧なルールを設定すると目標達成できない可能性があります。

そこで「退勤前の15分間、作業員が割り振られた場所を掃除する」「検査機を導入し、検査は研修を受けた社員のみが実施できる」といった具体的な内容を設けることで、取り組み状況を管理できるようになります。
その後、「ルールを実際に運用する→不良品率の推移を確認する→問題があれば改善策を練る」というようにPDCAサイクルを回しながら改善していく仕組みが、マネジメントシステムなのです。

マネジメントシステムの構成要素や特徴については、以下の記事をご覧ください。

ISO9001と品質マネジメントシステムの関係性

ISO9001とは、「品質マネジメントシステムに関する国際規格」のことです。一方で品質マネジメントシステムとは、「製品・サービスの品質を維持・向上させる仕組み」のことです。

規格と仕組みで異なりますが、「ISO9001は品質マネジメントシステムを構築・運用する際のガイドライン」としても捉えられます。

その理由は、ISO9001には審査の認証基準となる「品質マネジメントシステムの構築・運用に関する要求事項」が設定されているためです。この要求事項に取り組むことで、品質向上に有効な品質マネジメントシステムの構築・運用につながるのです。

わかりやすくいうと、「今から品質マネジメントシステムを構築してください。」と急に指示を出されたとします。すると、多くの人は「どのように構築すれば良い？」「何から始めたら良い？」と、やるべきことがわからなくなってしまうでしょう。

その際に、「品質向上につながる品質マネジメントシステムを構築するためのやり方や必要事項」などを教えてくれるものがISO9001なのです。

ISO9001と品質マネジメントシステムのより詳しい解説や要求事項については、以下の記事をご覧ください。

企業がISO9001を取得する主な目的

ISO9001は世界的にも有名な規格であるため、日本だけでなく中国やアメリカのさまざまな組織がISO9001認証を取得しています。その取得目的は、以下のような理由が一般的です。

• 取引先から認証取得を求められたため
• 官公庁案件の入札加点となるため
• 新規取引先開拓のため
• 品質活動の抜本的な見直しのため
• 作業効率化、生産性向上
• 顧客満足度向上のため
• 品質に関連するリスクの抽出と低減のため

そこで、ここでは実際にISO9001を取得した企業の取得理由について紹介します。

実際にISO9001を取得した企業の取得理由

2023年にISO認証取得企業の経営者・経営幹部である約300人にアンケート調査を実施しました。

その結果、「取得したISO規格」はISO9001が58.2%で最も多く、取得理由については以下のような回答が得られました。

1. 「社会的信用の向上（44.4％）」
2. 「管理体制の強化（37.9％）」
3. 「取引先からの要求（36.9％）」
4. 「業務効率化（26.8%）」
5. 「公共事業の入札（20.3%）」

このように企業の取得理由の多くは「対外的な理由」であることがわかります。さらに、ISOプロが取得サポートを行った企業の事例も紹介します。

サンコウ設備工業株式会社

サンコウ設備工業株式会社は、自動車系のプラント設備の保全を中心に請け負っている建設業の会社です。会社の規模や仕事量が拡大してきたことにより、管理の重要性を再認識され、ISO9001を取得しました。

その主な取得理由には、以下の3つが挙げられます。

• 仕事の標準化による生産性の向上
• 対外的な信用力の強化
• 安全性の向上

取得後には、「書類作成をはじめとした凡事も徹底でき、運営や業績の向上につながった」と効果を実感されています。

サンコウ設備工業株式会社の取得事例は、以下の記事をご覧ください。

株式会社イー・エスサポート

株式会社イー・エスサポートは、地域密着型でお客様に寄り添うことを目指している金融業・保険業の会社です。お客様の要望をよりしっかり汲み取るために、ISO9001を取得しました。

その主な取得理由には、以下の2つが挙げられます。

• 業務品質の向上
• コンプライアンスの徹底

取得後には、「組織としての情報共有や連携が高まり、社員の意識が向上した」と効果を実感されています。

株式会社イー・エスサポートの取得事例は、以下の記事をご覧ください。

ISO9001の取得メリット

ここまでISO9001を取得する目的について解説してきましたが、取得後にはどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、ISO9001の取得メリットを解説します。

新しい取引先・新規顧客の拡大

ISO9001の取得が、取引条件や公共工事における入札の加点対象になっている場合があります。こうした場合には、ISO9001を取得することで取引先や顧客候補との契約を優位に進められる可能性があります。

ISO規格は国際規格であるため、特に海外展開を検討している場合には顧客獲得につながる可能性を向上できるでしょう。

実際に新規顧客との契約で効果を実感できたという事例は、以下の記事をご覧ください。

信頼感や安心感の向上

ISO9001を取得している企業はISOが定めるマネジメントシステムを導入していることになります。つまり、「品質を高めるためにしっかりルールを構築していますよ」という証明ができるのです。

例えば外食をした場合、「保健所が定めるルールに基づいて食の安全を保っています」と公表するレストランと、「うちの店独自の方法で食の安全を守ります」と公表するレストランでは、前者のほうが安心できるでしょう。
同様に「ISOが認めているのであれば信頼できる」というブランディングにもつながります。

顧客満足度の向上

ISO9001に限らずISOのマネジメントシステムに対する規格というのは、PDCAサイクルを回し、継続的な改善を実施していくという特徴があります。このため、ISO9001を取得していると「この会社の製品・サービスは安心できる」とみなされるのです。

継続的に品質を改善していくことは顧客満足の向上にもつながりますし、それがISOによって約束されているというのは顧客からの期待感にもつながります。

製品・サービスの品質向上

品質の維持・向上にかかる取り組みを実施するため、もちろん製品・サービスの品質向上に効果的です。
ISO9001は「品質マネジメントシステムの構築・運用に関するガイドライン」として活用できますが、その内容は柔軟性に富んでいることからさまざまな業種の企業に合わせることが可能です。
そのため、「製造業や建築業のイメージがある」という企業も多いかもしれませんが、最近ではIT業や情報処理業、保険業などにおいても品質向上のためにISO9001の取得が進んでいます。

実際に製品・サービスの品質向上の効果を実感できたという事例は、以下の記事をご覧ください。

まとめ

今回は、ISO9001の規格としての目的から見た時の認証取得の効果についてご紹介してきました。実は今回ご紹介した効果以外にも、マネジメントシステムを見なおすことで作業手順が明確になり、生産性がアップするなどの効果もあるのですが、それはまた別のページでご紹介していければと思います。

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