• ISO9001取得は、商品・サービスの質向上だけでなく、顧客満足度の向上が最終目標となっている
  • ISO9001取得により、取引先の拡大や品質の継続的な改善などのメリットを受けられる

ISO 9001は品質 マネジメントシステム の国際規格 であり、企業や組織が提供する商品やサービスの品質を向上させ、最終的に顧客満足度を高めることを目的としています。企業が ISO9001 を取得する主な理由は「取引先からの要求」や「官公庁案件への参加」などが挙げられます。それ以外にも「企業としての信頼」はもちろん、「業務フローの統一・ 標準化 」などいくつものメリットがあります。

この記事では、ISO9001の概要やISO9001を取得するメリット・デメリット、認証取得の流れを解説します。また、取得事例も紹介しますので、取得時の参考にしてください。

ISO9001とは


ISO規格とは、国際標準化機構(ISO)が発行している国際規格のことです。統一した基準をつくり、国際貿易において一定の品質や安全性、信頼性の担保に貢献しています。

ISO規格認証の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISOとは?ISOをわかりやすく解説【図解】

ISO9001とは、品質マネジメントシステムに関する規格です。
自社製品・サービスの品質向上を目的としており、そのために自社製品・サービスの製造や提供プロセスを継続的に改善できる仕組みを構築・運用します。ただし、最終的には顧客満足度の達成を掲げているため、品質だけでなく、価格や納期といった顧客要求事項 を満たすことが大切です。

ISO9001の詳しい概要や他の規格との違いについては、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO9001とはなにか?導入企業や他の規格との違いを徹底解説!

ISO14001との違い

ISO9001では品質マネジメントシステム(QMS :Quality Management System)構築・運用しますが、よく混同されるものにISO14001で構築・運用する環境 マネジメントシステム(EMS:Environmental Management System)があります。

ISO9001では商品・サービスの品質向上による顧客満足度の向上に取り組む一方、ISO14001は自然環境をはじめとする自社を取り巻く環境におけるリスクの低減や改善に取り組みます。

最近では世界中でSDGsが推進されているため、ISO9001とISO14001の両方を取得する企業もありますが、目的や要求事項は異なるものであるということは理解しておきましょう。

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ISO9001認証取得のメリット

ISO9001メリット
なぜ、世界中でISO9001認証を取得する企業が多いのでしょうか。ここでは、ISO9001認証取得のメリットを解説します。

企業の安心感・信頼感の醸成

ISO9001を取得するメリットの最も代表的なものが「企業の安心感・信頼性の醸成」です。
ISO9001を取得することで、品質の国際基準をクリアした製品やサービスなどを提供できると、取引先やお客様にアピールできます。

そのため、自社のホームページや製品のパンフレット、製品の製造工場の入口などにISO取得ロゴマークを記載している企業が多く見られます。このように、自社の販促活動に積極的に活用することがおすすめです。

作業手順の効率化・生産性向上

マネジメントシステムを構築する過程で、従来の作業で発生していたムダな工程や作業を発見でき、効率的な作業手順の策定につながります。

合理的な管理により製品やサービスの品質維持につながり、業務効率や生産性の向上が期待できるでしょう。また、作業工程の曖昧な部分をなくすことも可能であることから、業務の標準化が見込めます。

従業員教育の効率化

マネジメントシステムを構築することで、業務そのものだけでなく、従業員への教育内容も効率化できるようになります。例えば「2人の先輩に仕事を教わったけど、それぞれやり方が違う。どっちの方法を実施すれば良いか分からない」という事態も解消されるでしょう。

また、一つひとつの作業工程が整備されることで、現場の統一感が増し、社員のモチベーション向上にもつながります。

品質の継続的な改善

ISO9001の要求事項には、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(確認)のPDCAサイクルを回しながら現場の仕事を進めていくことが求められています。

そのため、製品製造の工程で問題が発生した場合は問題を確認し修正を行います。これを繰り返すことで、製品の品質(顧客満足)を継続的に改善していく流れを構築できます。

取引先の拡大・新規顧客の獲得

ISO9001認証を取得することで、製品・サービスの品質が高められます。それにより、「この企業ならこの仕事を依頼できる!」という安心感が生まれ、取引先の拡大につながるでしょう。
ISO9001の取得を取引条件にしている企業もあるため、同業他社と比較された際に自社の強みになる場合もあります。さらに官公庁案件の入札条件や入札に必要な経営事項審査の加点にもなる場合もあるため、更なる市場開拓も目指せます。

また高品質であることは消費者の購買意欲にもプラスに作用するため、新規顧客の獲得も期待できます。

ISO9001認証取得のメリットは実感できるもの?

ここまで紹介したISO9001認証取得のメリットは、本当に実感できるものなのでしょうか。

従業員数300人以下の中小企業経営者を対象にした「課題解決におけるISO認証取得の有効性」に関するアンケート調査から、実際の声を紹介します。

まず、課題解決のためにシステムの導入や認証取得している企業の割合について質問したところ、以下のような結果となりました。

Q.「課題に対して、システムの導入や認証取得といった対策を行っていますか?」
A.「はい」と答えた経営者:30.5%

Q.「導入しているシステム(または認証を取得)があったら教えてください。」
A.「ISO認証」と答えた経営者:41.4%

課題解決のために、システムの導入や認証取得といった対策を取ることは、中小企業に浸透した考え方とはいえません。しかし、導入しているシステム(または認証を取得)で最も多かったものが「ISO認証」であることから、中小企業においてもISO認証の知名度が高いことがうかがえます。

また、これらのシステムを導入している企業に、「それらのシステムを導入(または認証を取得)したことで、どのくらい成果が出ていますか?」と質問したところ、『とても成果が出ている(27.2%)』『ある程度は成果が出ている(51.8%)』と回答した方を合わせて、およそ8割の方が『成果が出ている』と回答しました。

ここまでをまとめると、中小企業において課題解決のために「システムの導入や認証取得すること」は一般的な対策としてまだ浸透していないものの、導入した企業の多くが成果を実感できているといえそうです。

このアンケート調査の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:約7割の経営者が“「ヒト」に関する課題を抱えている”と回答!自社に足りていない点が原因で発生したトラブルとは?(外部リンク)
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ISO9001認証取得のデメリット


続いて、ISO9001認証取得のデメリットを解説します。

管理者への負担

ISO9001を取得するためには、ISO事務局を設立するなど自社内におけるISOの取得やその後の運用を管理する管理者を設けることが重要です。ISO管理者に選ばれた社員は通常業務と兼任でISO9001の管理を行っている場合が多いため、大きい負担を抱える可能性があります。

関連記事:ISO事務局とは?組織における役割や業務内容とは?

ISO管理者は、計画の策定から運用の管理、文書の更新・管理、内部監査 、審査の立ち会いなどさまざまな業務の中心となって対応することが求められます。
このときに作成したマニュアルやルールなどの書類は、社内に正しく共有できるような形式で管理しなければなりません。また、常にマネジメントシステムの有効性を保つために、会社の実情に沿った最新版に更新し続ける必要があります。
そのために、一般的には1年に数回程度、マネジメントレビュー を行います。ISO管理者がフィードバックや運用の結果をもとに集められた是正すべき課題を整理し、マネジメントシステムの見直しを行います。

経験豊富なISO規格取得コンサルタントの支援を受けると、このようなISO管理者の負担は軽減できるでしょう。

関連記事:知っておきたいマネジメントレビューの重要性と役割

コストや手間がかかる

ISO9001を取得するには、約6ヶ月~1年半ほどの期間が必要です。
その間、従業員には文書構築、運用記録の作成、内部監査などのさまざまな業務が発生します。また、会社の規模や対象範囲によっては、その影響は大きくなるでしょう。

日常業務や本業にかけられる時間が減り、集中できなくなることで、生産性が低下する可能性もあります。
取得まで長期間かかる影響を考慮し、事前にISO9001取得に向けて人手を確保しておくなどの対策を練ることが求められるでしょう。また、手間を削減し、確実にISOを取得するために、多くの企業が専門のコンサルタントに依頼しています。

また、コストについては取得時に審査費用が発生するだけでなく、取得後にも毎年審査を受ける必要があり、その都度費用が必要になります。コンサルタントに依頼する場合には、コンサルタント費用もかかってきます。
費用がかかることで取得に消極的になる企業もあるかもしれません。しかし、こうした費用をかけてISO9001を取得することによって、ISO9001の取得が入札条件になっている新規案件の獲得や、消費者からの信頼度アップにつながり、売上の向上が期待できます。つまり、ISO9001を取得・運用することで、より高い費用対効果が見込めるでしょう。

運用の継続が負担になる

ISOは企業や組織の業務効率化につながるものですが、誤ったISOの構築をすると「重いISO」になり、業務効率化のためにISOを取得したのに返って業務効率化を妨げる要因になってしまいがちです。

ISOを構築する際に“ISO9001を取得することを目的”に要求事項を満たすためだけの文書を作成することで、この状況に陥りやすいです。ISO9001はあくまでも“製品やサービスを継続的改善するためのガイドライン”であり、各企業が自社の実情に合わせて構築できるように自由度も高くなっています。
ISOのためだけの文書類はなるべく省いていきましょう。

自社取得を行う場合はISO構築の必要不必要の判断が難しいため、ISOの専門家であるISOコンサルティング会社に頼るのも一つの手段です。「重いISO」を運用し続けると従業員負荷が増え、企業体力を無駄に浪費してしまうことになり、最終的にISOが形骸化し、返上としてしまうケースも少なくありません。

これからISOを取得する場合は、このようなデメリットもあることを前提に考えていきましょう。

関連記事:ISO離れをする理由とは?重いISOが生まれる原因を解説します

ISO9001認証取得の流れ

ISO9001取得までの流れは、以下の3つのフェーズに分けられます。

1.品質マネジメントシステム構築

まずはISO9001の要求事項に則って、マネジメントシステムを構築します。要求事項は、以下の10項目から成り立っています。

  1. 適用範囲
  2. 引用規格
  3. 用語及び定義
  4. 組織の状況
  5. リーダーシップ
  6. 計画
  7. 支援
  8. 運用
  9. パフォーマンス評価
  10. 改善
関連記事:ISO9001の要求事項とは?品質マネジメントシステム(QMS)を解説

品質マネジメントシステムを適用する範囲を決め、品質目標品質方針 を定めましょう。その後、品質目標・品質方針を達成するための計画を立て、 文書化 やマニュアル・手順書の作成などをISO9001の要求事項に則って実施します。

2.品質マネジメントシステム運用

次に、構築した品質マネジメントシステムを実際に運用する段階です。
策定したルールにもとづいて業務を実際に行い、運用記録を取ります。内部監査を実施し、マネジメントシステムを評価・改善しながらPDCAサイクルを回し、マネジメントシステムをより効果的なものへと洗練させていきます。

3.認証取得

ISO審査機関(ISO認証機関)に登録審査を依頼し、審査員による取得審査を受けます。問題なかった場合、登録証が発行されます。

4.システム運用・認証維持

1年ごとに定期審査・3年ごとに更新審査を実施。構築・運用しているマネジメントシステムの有効性や適合性を確認し、継続的発展を目指します。
ISO9001認証の取得方法と流れの詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO9001認証を取得する方法と流れを知ろう
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ISO9001の取得企業数


メリット・デメリットのあるISO9001ですが、実際にはどのくらいの組織が取得しているのでしょうか。

日本国内のISO9001認証数は、公益財団法人日本適合性認定 協会(JAB)のホームページから確認できます。2024年7月23日現在では、22,548件が認証されています。

ISO9001の取得が多い業種

ISO9001の取得が多い業種は以下のように、自社製品・サービスの品質管理が必要なものづくりに関する業種で多く取得されています。

  • 製造業(基礎金属・加工金属製品や電気的及び光学的装置など)
  • 建築業

ISO9001の取得企業の詳細は以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO9001の取得企業数は?取得のメリットも解説

ISO9001を取得すべき会社の特徴

ISO9001を取得することで、紹介したようなさまざまなメリットが受けられます。そのため、メリットを受けることで自社の経営活動をより発展させられる場合には、取得すべきといえるでしょう。

その中でも、特に取得がおすすめの会社の特徴としては、海外進出を狙っている企業や公共事業の入札参加を目指す企業などが挙げられます。
というのも、海外進出を狙っている場合には、ISO9001をもっていれば、国際的な自社の知名度がなくても品質を担保できるため、スムーズな取引につながる可能性があります。また、公共事業に参加したいと考えている場合、ISO認証取得していると入札条件となることが多くあります。

こうした特徴のある企業においては、ISO9001の取得を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

ISO9001の取得事例


実際にISO9001を取得し、メリットを実感している取得事例を紹介します。

株式会社ジェイテクト

株式会社ジェイテクト(旧豊ハイテック株式会社)は、トヨタ・ジェイテクトグループの一員として、機械設計や工作機械事業、ITシステムなど自動車産業と深い事業を展開しています。

業種 製造業
企業規模 301~400名以下
取得規格 ISO9001、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム規格)
ISO9001の取得理由 事業拡大に伴い、公共事業へ参入するためにISOの取得が必要になった。
ISO9001を取得した結果 取得に伴い、入札できる公共事業の幅が広がった。また、社員間のセキュリティ意識も、取得をきっかけにさらに高まった。

まず4拠点のうち、公共事業にかかわっている部門のみに絞ってISO9001を取得されました。ミニマムスタートしたことで、工数を最小限に抑えることに成功。その他の拠点においても、今後取得範囲を広げていくとのことでした。

豊ハイテック株式会社の取得に関するインタビューは、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO成功のカギ「部門認証」でコンパクトに取得!公共事業参入に向けて

株式会社ピンポイントサービス

株式会社ピンポイントサービスは、主に製造業や官公庁に向けた情報システムの開発を手掛ける会社です。

業種 製造業
企業規模 21~50名以下
取得規格 ISO9001、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム規格)
ISO9001の取得理由
  • 競争力を高めて他社との差別化を図りたかったため
  • 会社基盤の強化を図りたかったため
ISO9001を取得した結果 これまで以上に多くのシステム開発の入札に参加可能となった。

ISO規格を取得したことで、今までは参加できなかった入札に参加できるようになり、営業面での利点を特に実感されていました。システム開発において、品質を担保できるISO9001を今後も活用し続けたいとのことでした。

株式会社ピンポイントサービスの取得に関するインタビューは、以下の記事をご覧ください。

関連記事:審査はリモートで実施!柔軟に進化するシステム開発会社の2規格認証
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まとめ

ISO9001認証取得をメリットとデメリットに分けて解説しました。
ISO9001を取得すれば取引先様やお客様の信頼につながり、自社の経営活動をより成長させられる可能性があります。
しかし、自社取得をした場合はISO担当者に対する負担が大きくなる傾向にあるため、ISOコンサルティング業者にサポートを依頼することがおすすめです。ISO9001取得にかかる費用や労力を抑えながら、自社に適した品質マネジメントシステムの構築が期待できます。

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