【業種別】ISOの取得費用や維持費用は?税務処理についても解説
- ISOとは国際的に通用する規格を制定している機関
- ISOの取得は信頼性の向上や組織のシステム構築・改善などのメリットがある
- 規格を理解したマネジメントシステムを構築したうえでISO審査機関による二段階の審査を経て取得する
ISO
規格を取得すると決めたときに、真っ先に気になるポイントはISO規格の認証取得の「費用」ではないでしょうか。ISO規格を認証取得するには、会社のマネジメントシステムを構築したうえで、審査登録機関(認証機関)による審査を受ける必要があります。
そのため、ISO取得費用は大きく2種類に分けられます。「マネジメントシステムを構築する費用」と「ISO審査機関に支払うISO審査費用」です。
この記事では、ISO取得にかかる審査費用の業種別・規格別・規模別の相場やランニングコスト、ISO認証取得におけるトータルコストについて解説します。
目次
ISOの取得に必要な費用とは
ISOマネジメントシステム規格を認証取得するには、「マネジメントシステムを構築する費用」と「ISO審査機関に支払うISO審査費用」がかかります。ここでは、「マネジメントシステムを構築する費用」として、自社でマネジメントシステムを構築した場合と、ISOコンサルタントがマネジメントシステムを構築した場合の費用について解説します。
自社取得した場合
自社取得する場合には、自社の社員からISO事務局などISOの担当社員を選出し、マネジメントシステムを構築します。そのため必要な費用は、基本的に社員に支払う人件費です。
自社取得する場合には、「人件費×マネジメントシステムの構築・運用にかかる期間」です。自社にISO規格に精通した人材がいる場合とはじめて取り組む場合では、かかる期間は異なります。
自社取得の場合、1年以上の期間がかかることが一般的です。たとえば、月給40万の社員が月に80%の工数でISO業務を行ったとすると、単純計算で月32万円のコストがかかります。仮に14カ月間かかった場合の費用は448万円です。
ISOコンサルタントに依頼した場合
ISOのコンサル会社やコンサルタントにマネジメントシステムを構築してもらう方法です。この方法の場合、マネジメントシステムの構築にかかる主な費用はコンサルティング依頼料です。
コンサルティング依頼料は、業種や事業規模、支援内容などにより異なりますが、ISO9001やISO27001などのメジャーな規格であれば、費用相場は年間でおよそ45~150万円程度となっています。
自社取得とコンサルはどちらがお得?
ほとんどの場合、コンサルに依頼した方がお得にISO認証を取得できます。
というのも、自社取得の場合にはもともとの経費の他に必要になる経費はありません。しかし、ISO担当者となった従業員は本来の業務に割く時間が減る傾向にあるため、得られていたはずの売上や利益を知らず知らずの内に損失(目に見えない損失)する可能性があるためです。
また、「目に見えづらいコスト」として、人件費も挙げられます。
先ほど紹介した例でいうと、月給40万の社員が月に80%工数でISO業務を行った場合、単純計算で月32万円のコストがISO業務に発生することになります。担当者が2名以上の場合は単純に倍のコストがかかります。ただISOにどのくらいの工数をかけているかを厳密に算出することは難しいため、費用対効果も測りづらく人材の評価もしづらくなりやすいでしょう。
そのため、2つの問題を解決するには、コンサルティング業者への依頼がおすすめです。コンサルタント費用として目に見えるコストとなり、ISOにかかっている費用が明確になります。また従業員の工数も大幅に減るケースも多く、本業に集中できるため売上のための活動を維持できるでしょう。
以下の記事で、自社取得とコンサルに依頼した場合の比較をしています。ぜひ参考にしてください。
審査費用相場(ISO規格×業種×人数規模別)
金額目安はお伝えしましたが、ここではより具体的に審査費用をイメージできるように、各ISOの新規取得時の審査費用を業種と適用範囲の人数規模別でまとめました。
実際にISOプロで取得した見積もりをもとにしているため、実数値により近いデータとなっていますのでぜひ参考にしてください。
下表の数値は1規格の料金となり、複数規格の場合は金額が変わります。
ISO9001の審査費用相場(業種&人数規模別)
業種 | 1-20名 | 21-50名 | 51-100名 | 101名以上 |
---|---|---|---|---|
製造業・加工業 | 36万円 | 46万円 | 66万円 | 96万円 |
建築・建設業 | 35万円 | 52万円 | 74万円 | 100万円 |
ITサービス | 32万円 | 49万円 | 72万円 | 82万円 |
システム開発 | 32万円 | 48万円 | 73万円 | 88万円 |
WEB制作 | 32万円 | 76万円 | 79万円 | 104万円 |
卸売業・小売業 | 36万円 | 44万円 | 68万円 | 97万円 |
コンサル業 | 35万円 | 57万円 | 79万円 | 94万円 |
保険業 | 41万円 | 47万円 | 70万円 | – |
不動産 | 43万円 | 48万円 | 70万円 | – |
ISO14001の審査費用相場(業種&人数規模別)
業種 | 1-20名 | 21-50名 | 51-100名 | 101名以上 |
---|---|---|---|---|
製造業・加工業 | 40万円 | 61万円 | 64万円 | 72万円 |
建築・建設業 | 41万円 | 64万円 | 59万円 | – |
ITサービス | 36万円 | – | 64万円 | 88万円 |
卸売業・小売業 | 42万円 | 60万円 | 66万円 | 118万円 |
コンサル業 | 41万円 | – | 70万円 | 108万円 |
保険業 | 42万円 | 43万円 | – | – |
ISO27001の審査費用相場(業種&人数規模別)
業種 | 1-20名 | 21-50名 | 51-100名 | 101名以上 |
---|---|---|---|---|
製造業・加工業 | 51万円 | 73万円 | 103万円 | 123万円 |
建築・建設業 | 51万円 | 71万円 | 97万円 | 129万円 |
ITサービス | 54万円 | 76万円 | 98万円 | 120万円 |
システム開発 | 53万円 | 74万円 | 97万円 | 120万円 |
WEB制作 | 55万円 | 81万円 | 97万円 | – |
卸売業・小売業 | 52万円 | 77万円 | 104万円 | 114万円 |
コンサル業 | 51万円 | 82万円 | 95万円 | 103万円 |
保険業 | 58万円 | – | 100万円 | 113万円 |
不動産 | 62万円 | – | 97万円 | 113万円 |
※2022年7月調査(ISOプロ調べ)。現在の費用と異なる可能性があるため詳しくはお問合せください。
ISO規格を新規取得した場合の費用相場
ISO規格を新規取得した場合の費用相場をまとめました。
今回はコンサルに取得依頼した場合で算出していますが、コンサル業者や取得企業の業種などによっても異なります。
また、この記事では取り上げませんが、マネジメントシステムを構築・運用するために設備投資などの諸経費がかかることもあります。そのため、あくまで目安として参考にしてください。
40名規模の建築業がISO9001を取得した場合
40名規模の建設業を営む会社が、8カ月でISO9001を取得した場合の費用相場は、以下のとおりです。
内訳 | 費用相場の目安 |
---|---|
コンサル依頼料 | 月額8万円×8カ月=約64万円 |
審査費用 | 52万円 |
合計 | 約116万円 |
60名規模の製造業がISO14001を取得した場合
60名規模の製造業を営む会社が、8カ月でISO14001を取得した場合の費用相場は、以下のとおりです。
内訳 | 費用相場の目安 |
---|---|
コンサル依頼料 | 月額7万5,000円×8カ月=約60万円 |
審査費用 | 64万円 |
合計 | 約124万円 |
10名規模のITサービス業がISO27001を取得した場合
10名規模のITサービス業を営む会社が、8カ月でISO27001を取得した場合の費用相場は、以下のとおりです。
内訳 | 費用相場の目安 |
---|---|
コンサル依頼料 | 月額5万円×8カ月=約40万円 |
審査費用 | 54万円 |
合計 | 約94万円 |
上記のコンサル依頼料については、数多くの組織のISO認証取得をサポートしているISOプロのコンサル料金の単純な月額料金をもとにしています。事業内容や適用範囲、契約プランによってもことなりますので、詳しくは下記をご覧ください。
ISO認証取得後にかかるランニングコストとは
ISO認証は取得したら終わりではありません。取得したISOのマネジメントシステムを持続的に動かしていくために「運用」していく必要があるのです。ここでは、運用にかかる費用についてご紹介します。
ISO認証取得後の審査費用
ISO認証には3年間の有効期限があり、取得してから1年目と2年目に持続的に運用しているかをチェックする「定期審査(維持審査)」と3年目に「更新審査」が行われます。
定期審査の費用の目安は、取得審査の1/3ほどの金額です。また、更新審査はISO認証の更新に必要な審査費用です。費用の目安としては取得審査の2/3ほどの金額になります。
ただし、各種審査費用は組織の規模、業種によって金額は大幅に変わるため、複数の審査機関から見積もりを取得してください。
ISOは基本的にこの3年間を1サイクルとし、この1サイクルを繰り返しながらISOを持続させていくため、毎年、審査費用がかかってきます。その他にも、自社で行う内部監査、検査機のメンテナンスに監査時に修正すべき是正処置や予防処置などの対応も必要になってきます。
ISO認証取得後のISOコンサルにかかる費用
認証取得コンサルタントのサポートが完了しても、引き続き継続して運用に関する支援をしてもらうことが可能です。
運用改善を支援してもらうことで、自社のマネジメントシステムをより効果的な仕組みに発展させられるでしょう。また、定期審査や更新審査のサポートだけでなく、文書のスリム化や経営コンサルティングなどのオプションが可能な場合もあります。
費用は企業規模やサポート内容にもよりますが、月額5万円程度~をひとつ目安にしてもいいかもしれません。
ISO費用の税務上の扱いと経費処理方法
ISO取得や審査における費用は、どのような処理が必要なのでしょうか。最後に、税務上の扱いや経費処理方法について解説します。
ISOにかかる費用の税務上の扱い
ISO認証取得や取得後にかかる審査費用における税務上の扱いは、支出時の損金として処理するとされています。
国税庁では、ISO9001取得にあたり、以下のように見解がなされています。
- 法的な権利はないため、工業所有権に該当しない
- 譲渡負荷であることや、超過収益力を生じるものではないことから、営業権に該当しない
- 不特定多数に対して広告宣伝効果があるため、損金性が認められる
- 損金算入時期は、その支出の日が属する事業年度とすることが相応とされている
ISO費用の勘定科目
ISOにかかる費用の勘定科目について紹介します。ISO費用における勘定科目は定められていないため、「ISO費用」「ISO関連費用」など、わかるように処理している企業もあります。
■登録審査前のコンサルティング費用
研修費、支払手数料、支払報酬、雑費など
■審査登録費用
支払手数料、会費、雑費など
■登録後の維持更新費用
支払手数料、会費、雑費など
まとめ
ISO認証取得を費用コストで考えたとき、「コンサルタントを利用しての取得」よりも「自社取得」の方が安いと考えてしまいがちです。ISOに詳しい人間が自社取得を担当すれば問題はないですが、ISOに詳しくない人間が自社取得をした場合、勉強しながらISO業務を行うので、取得スケジュールが長くなってしまったり、素人がマネジメントシステム構築すると無駄な工程が多くなってしまったりと逆にコストが高くなってしまう場合があります。
特に人件費は長期的になればなるほど膨大な金額になってしまうので、最も注意しておきたい存在ではないでしょうか。
ISOを取得するためにどれくらいの金額をかけるのか、どれくらいの価値があるのかについては、皆さんの社内を見渡してみて試算しましょう。
ISOプロでは月額4万円から御社に合わせたISO運用を実施中
ISOプロではISO各種の認証取得から運用まで幅広くサポートしております。
また、マニュアル作成など御社に合わせたムダのない運用を心がけており、既に認証を取得しているお客様においてもご提案しております。
サポート料金においても新プランを用意し、業界最安級の月額4万円からご利用いただけます。
こんな方に読んでほしい