【基本】統合マネジメントシステムとは?メリットや進め方を解説
- 統合マネジメントシステムとは、複数のマネジメントシステムの整合性を高めること
- マネジメントシステムを統合すると、管理・指揮系統が統一化され、スピーディーな意思決定や企業体制の強化、工数・コスト削減につながる
最近では、業務効率化や内部統制の強化などのために、さまざまな企業が複数のマネジメントシステムの構築・運用に取り組んでいます。
しかし、複数のマネジメントシステムを別々に運用する中で、手間を感じる企業もいるでしょう。その場合、パフォーマンスの向上やコスト削減のためには統合マネジメントシステムに取り組むことがおすすめです。
そこで、この記事ではISO統合マネジメントシステムの概要やメリット、考え方、統合の進め方を解説します。
目次
ISO統合マネジメントシステムとは
統合マネジメントシステムとは、複数のマネジメントシステム間の整合性を高め、規定や手順などを統一化することです。
ISO統合マネジメントシステムと呼ばれる場合は、複数のISOマネジメントシステム規格を取得し、運用している場合を指します。
ISO規格とは、国際標準化機構(ISO)が発行・運営している国際規格のことです。さまざまなモノやマネジメントシステムに関する国際的な基準となる規格を提供しています。
代表的なISOマネジメントシステム規格
ここでは、代表的なISOマネジメントシステム規格を解説します。
ISO9001(品質マネジメントシステム:QMS)
ISO9001 とは、自社製品・サービスの品質 を継続的に改善し、顧客満足の達成を目指す規格です。モノづくりを営む製造業や建設業で多く取得されています。
ISO14001(環境マネジメントシステム:EMS)
ISO14001とは、自然環境をはじめとした自社を取り巻く環境のリスク低減を目的とした規格です。自然環境への負担が大きい製造業や建設業で多く取得されています。
ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム:ISMS)
ISO27001とは、自社が保有する情報資産を適切に管理し、サイバー攻撃や不正アクセスなどのセキュリティリスクからの保護を目指した規格です。IT企業をはじめ、金融業、人材派遣業などで多く取得されています。
ISO22000(食品安全マネジメントシステム:FSMS)
ISO22000とは、ISO9001と食品衛生管理手法のHACCPをベースとし、食品安全性の向上を目指した規格です。食品製造業や食品流通業などの食品に関わる業種で多く取得されています。
ISO45001(労働安全マネジメントシステム:OHSMS)
ISO45001とは、労働災害などの危険源 排除を目指し、安全で健康な職場提供の実現を目指す規格です。危険な場所での作業が多い建設業や製造業などで多く取得されています。
マネジメントシステム統合化の背景
複数のISOマネジメントシステムの統合化が推進されてきたのは、「複数のマネジメントシステム運用による非効率さ解消のため」が大きな理由です。
異なるマネジメントシステムであっても、すべてISO規格であることから共通化されている部分があります。そのため、別々にマネジメントシステムを運用すると、同じ作業を重複して行わなければならない場面が出てきます。
こうした非効率さを解消し、さらなる業務効率化やパフォーマンス向上のために、マネジメントシステム統合化の動きが進められています。
ISOマネジメントシステムを統合するメリット
ここでは、ISOマネジメントシステムを統合するメリットを解説します。
管理・指揮系統の一元化
ISOマネジメントシステムを統合することで、それぞれのマネジメントシステムの管理体制を統一できるため、管理系統を一元化できます。
そのため、各マネジメントシステムを運用している多角的な視点から、スピーディーな指揮につながります。
企業体質の強化
各マネジメントシステムにおける目標の設定や見直しなどの管理を統合するとともに、多角的な視点から問題点や課題改善を洗い出し、現場における事業計画の活動を一本化できます。
その結果、収益改善や生産性向上などにつながり、企業体質の強化が見込めます。
コスト・工数の削減
ISOマネジメントシステム規格では、要求事項 に文書管理や内部監査などの実施が求められています。そのため、複数のマネジメントシステムを運用していると、こうした業務の重複が発生します。
またISO規格は取得後も、維持審査や更新審査を受ける必要がありますが、複数のマネジメントシステムを統合した場合、審査工数が減ることで維持費用を削減できます。
このように、統合することでコスト・工数の削減につながります。
ISO統合マネジメントシステムの考え方
複数のマネジメントシステムを統合するうえで理解しておきたい基本的な考え方を解説します。
附属書SLによる共通化
まずそもそもISOマネジメントシステム規格の統合化が可能である大きな要因の一つに、附属書SL(Annex SL)が採用されたことが挙げられます。
附属書SLとは、規格の策定者向けのルールブックで、マネジメントシステムの枠組みを定義しています。その中で、各マネジメントシステム規格において用語やHLS(High Level Structure:上位構造)と呼ばれる要求事項の骨組みを共通化したのです。
各規格の要求事項は、「共通要求事項+個別要求事項」で成立することとなり、多くが共通化されました。そのため、重複部分を大幅に削減できるようになったのです。
PDCAサイクルによる運用
各規格の要求事項は、以下の全10項目で構成されることとなり、各項目を順序だてて行うことで、PDCAサイクルによる運用を実施できるようになりました。
- 適用範囲
- 引用規格
- 用語及び定義
- 組織の状況
- リーダーシップ
- 計画
- 支援
- 運用
- パフォーマンス評価
- 改善
「1.適用範囲~3.用語及び定義」は規格の説明に関する部分であるため、実際に取り組むのは「4.組織の状況~10.改善」までです。各項目は、以下のようにPDCAサイクルに分類されています。
- P(PLAN:計画):「4.組織の状況~7.支援」
- D(DO:実行):「8.運用」
- C(CHECK:評価):「9.パフォーマンス評価」
- A(ACTION:改善):「10.改善」
そのため、各マネジメントシステムを統合する際にも、PDCAサイクルで継続的な改善が求められます。
ISOマネジメントシステムの統合プロセス
最後にISOマネジメントシステムの統合プロセスを、以下にまとめました。
- 現在の業務内容や文書、運用記録などから問題点を明確にする。
- 各マネジメントシステムに対応しているマニュアルをそれぞれ見直し、統合マニュアルを作成する。不要なものは廃止したり、簡略化したりして、スリム化する。
- 統合マニュアルをもとに、手順書・規程などを改定する。
- 各マネジメントシステムにおける目的や目標を統合し、実行計画書を一元管理できるようにする。
- 内部監査やマネジメントレビューを実施し、統合システムの運用状況を確認する。
マニュアルを統合するだけでなく、システム全体を統合できるように取り組むことが必要です。必要に応じて、内部監査員に外部セミナーを受講させたり、ISOコンサルに依頼したりして、統合化のサポートを受けることがおすすめです。
まとめ
この記事では、ISO統合マネジメントシステムの概要やメリット、考え方、統合の進め方を解説しました。
複数のマネジメントシステムを構築・運用することで、重複部分が発生し、思ったような効果を得られないことがあります。その場合には統合マネジメントシステムを構築することで、事業体制の強化や工数・コストの削減につながるでしょう。
はじめて統合マネジメントシステムを構築する場合、プロのコンサルに統合マネジメントシステムについて相談することがおすすめです。
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