ISMS認証(ISO27001)の取得費用はいくら?費用を抑える方法や投資対効果も解説

- ISMSは企業の情報資産を保護するための仕組みのこと
- ISMS認証を取得するには、ISO27001の要求事項に沿ったマネジメントシステムの構築・運用が必要となる
企業が保有する資産にはヒト、カネ、モノなどさまざまなものがありますが、その中でも個人情報や機密情報といった情報資産の重要性がこの情報化社会の中で高まってきています。
こうしたプライバシーの保護や情報漏洩を防ぐために、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格であるISMS 認証(ISO27001 )の取得の重要性が増しています。しかし、取得するには人件費や審査費用などを考えるとある程度まとまった費用が必要です。
そこで、今回はISMS認証(ISO27001)取得にかかる費用や費用をかけてでも取得されている理由や必要性について解説します。
目次
ISMS認証(ISO27001)取得費用の内訳・相場
ISMS認証の取得費用の内訳には、「人件費」や「コンサル依頼料」、「審査費用」、「ISMS構築にかかる費用」の4つがあります。ここでは、それぞれの費用概要や相場について解説します。
人件費
ここでいう人件費とは、「ISO27001を取得するために必要な工程を実施する社員に支払う賃金」のことです。一般的には社内で任命したISO事務局やISO担当者にかかる費用です。
例えば、以下の場合には月30万円×12か月で360万円の人件費がかかっているといえます。
- ISO担当者:1人(月30万円の給与)
- 1年間、本来の業務を行わずにISO27001に関する業務のみを担当した場合
通常時と変わらない人件費しか発生しないため、一見すると費用がかかっていないように感じられるかもしれません。
しかし、ISO担当者は本来の業務ができなくなるため、業務の効率や生産性が低下するといった「見えない損失」が発生するのです。ISMS認証取得にかかる人件費を抑えられるかどうかは、ISO担当者の経験やノウハウによって大きく変動するでしょう。
コンサル依頼料
ISMS認証取得には、「自社の社員のみで取得する自社取得」と「コンサルに取得サポートを依頼するコンサル取得」があります。
コンサルティング業者に依頼する場合には、50万~200万円が費用相場です。
ただし、コンサル依頼料は企業規模や認証範囲、取得支援の内容によって異なるため、見積もりを依頼すると良いでしょう。
登録審査費用
ISMS認証を取得するには、基本的に各国に一つだけ存在する認定機関からの認証を受けた審査機関(認証機関)の取得審査(認証審査)を受けることが必要です。
審査費用の相場は、審査機関や企業規模、業種によって異なりますが約50~150万円です。以下に、業種別の費用相場をまとめましたので、参考にしてください。
業種 | 1-20名 | 21-50名 | 51-100名 | 101名以上 |
---|---|---|---|---|
製造業・加工業 | 51万円 | 73万円 | 103万円 | 123万円 |
建築・建設業 | 51万円 | 71万円 | 97万円 | 129万円 |
ITサービス | 54万円 | 76万円 | 98万円 | 120万円 |
システム開発 | 53万円 | 74万円 | 97万円 | 120万円 |
WEB制作 | 55万円 | 81万円 | 97万円 | – |
卸売業・小売業 | 52万円 | 77万円 | 104万円 | 114万円 |
コンサル業 | 51万円 | 82万円 | 95万円 | 103万円 |
保険業 | 58万円 | – | 100万円 | 113万円 |
不動産 | 62万円 | – | 97万円 | 113万円 |
※2022年7月調査(ISOプロ調べ)。現在の費用と異なる可能性があるため詳しくはお問合せください。
また審査機関と自社までの距離が遠い場合には、別途ISO審査員の宿泊費がかかる場合があります。
ISMS構築にかかる費用
ISMS構築のために機器・設備を導入する場合には、費用が別途かかります。
ただし、自社で必要と判断した場合にかかる費用であるため、必ずかかる費用ではありません。必要かどうか迷う機器がある場合には、自社の情報セキュリティ方針に沿って、導入すべきかどうかを決めましょう。

ISMS認証(ISO27001)取得後にかかる費用相場
ISMS認証は、認証取得後も定期審査や更新審査を受ける必要があり、定期的に経費が発生します。
ここでは、ISMS認証(ISO27001)を取得後、維持・更新にかかる費用を解説します。
維持審査の費用相場
維持審査(定期審査)とは、1年ごとにISMSが有効に機能しているかを確認する審査です。
審査工程や審査費用は、取得審査の1/3程度です。例えば、取得審査が100万円だった場合には、30万円程度がかかります。
更新審査の費用相場
更新審査とは、ISMS認証の有効期限が切れる3年おきに、認証を更新するために実施する審査です。
取得審査と同程度の工数がかかる一方、費用相場は取得審査の2/3程度です。例えば、取得審査が100万円だった場合には、60万円程度がかかるでしょう。
そのほかのISO認証取得にかかる費用の詳細は、以下の記事をご覧ください。
ISMS認証(ISO27001)取得・維持にかかる費用
ここまで、ISMS認証(ISO27001)の新規取得にかかる費用や取得後の維持にかかる費用を解説しました。
しかし、「結局、ISMS認証(ISO27001)を取得し、維持するのにいくら必要なの?」と感じる方も多いでしょう。
そこで、以下にISMS認証(ISO27001)の取得・維持にかかる費用をまとめました。実際の金額は、企業の規模や業種、審査機関の条件などにより異なるため、おおよその目安として参考にしてください。
費用区分 | 1年目 | 2・3年目 | 4年目 |
---|---|---|---|
審査費用 | 約50~80万円(登録) | 約15~35万円(維持) | 約30~70万円(更新) |
登録料 | 約3~5万円 | – | 約3~5万円 |
人件費 | 企業による | 企業による | 企業による |
コンサル費用(任意) | 約90万円~ | 約90万円~ | 約90万円~ |
ISMS構築にかかる費用やマネジメントシステムの設備・機器の維持/管理費 | 企業による | 企業による | 企業による |
※従業員50名未満の企業を想定した場合の概算です。
また、ISO認証の登録審査費用については、アンケート調査の結果も参考になるでしょう。
実際にISO認証を取得した企業の経営者・経営幹部約300人に、「ISO認証を取得した際の審査費用」について尋ねると、以下のような回答が得られました。
- 30万円未満(25.2%)
- 100万円以上(21.9%)
- 50万~80万円未満(20.3%)
- 30万~50万円未満(18.6%)
- 80万~100万円未満(14.0%)
この結果から、業種や従業員数などによって、登録審査費用は大きく異なることがわかります。本アンケート調査は、以下のプレスリリースをご覧ください。

ISMS認証(ISO27001)の取得費用を抑えるポイント
ISMS認証(ISO27001)の取得費用を抑えるポイントを解説します。
複数の審査機関に見積もりを取ったうえで選定する
審査費用は、審査機関が設定しているものなので審査機関によって異なります。企業規模や業種によって左右する場合が多いため、複数の審査機関に見積もりを依頼することで、最もコストパフォーマンスに優れた審査機関を見つけられるでしょう。
また実地審査は、基本的にISMS認証を取得する現地で実施されるため、審査機関から現地までの交通費がかかります。遠距離で宿泊が必要な場合には宿泊費がかかる可能性もあります。
こうした点も留意して、なるべく近場の審査機関を選ぶことも費用の低減につながります。
自社に合ったコンサルを選ぶ
費用を直接抑えられる方法ではありませんが、コストパフォーマンスを高める方法に自社に合ったコンサルを選ぶことが挙げられます。自社に合ったコンサルを選ぶには、以下のような観点から複数のコンサルを比較検討することが求められます。
- コンサルタントの経験・実績が豊富か
- 自社に適した審査機関の提案が可能か
- 自社の実情に合ったISMS構築の提案が可能か
- サポート体制は充実しているか
自社に適したコンサルを選ぶことで、「マネジメントシステムが改善し、生産性向上につながった」「スムーズな認証取得につながった」というような費用以上の効果を得られるでしょう。
ISOコンサルの主なサポート内容や選ぶポイントは、以下の記事で解説しています。
ISMS認証(27001)取得にかかる費用の投資対効果とは
ここまでISMS認証(27001)の取得にかかる費用感について解説してきました。
初年度であれば100万円を超える場合もあり、維持費用も継続的に発生することから、「ここまで費用をかけてまで、ISMS認証を取得する意味はあるのだろうか」と疑問に感じる方もいるかもしれません。
しかし、ISMS認証(27001)は単なる「取得のための形式的な取り組み」ではなく、情報セキュリティ体制を強化し、企業の信用力や競争力を高めるための戦略的投資といえます。
以下に、ISMS取得にかかる費用の投資対効果について、3つの観点から解説します。
取引機会の拡大
ISMS認証の取得は、取引先や顧客に対し「情報セキュリティの管理体制が国際基準を満たしている」ことの証明となります。特に大手企業や官公庁との取引においては、ISMS認証の有無が入札や選定条件になっていることもあります。
実際に、従業員数300人以下のIT系中小企業経営者を対象にしたアンケート調査から、ISMS認証の取得が取引機会に与える影響について見てみましょう。
「ISO27001取得により、取引先や顧客からセキュリティに関する信頼を得られると思いますか?」という質問に、8割以上が「はい(84.3%)」と回答しました。
また、「実際にISO27001などの認証を取得していないことで契約に至らなかったことはありましたか?」と質問したところ、「はい(65.2%)」と回答した人が6割以上にのぼりました。
この結果からも、ISMS認証(ISO27001)の取得が、取引機会の拡大につながることがわかります。もちろん、ISMS認証に沿って、情報セキュリティの管理体制が整備されていることが前提となりますが、それだけの社会的信頼を得られるのです。
アンケート調査の詳細は、以下の記事をご覧ください。
情報漏洩・事故のリスク低減による損失の防止
情報漏洩やサイバー攻撃が原因で発生する損害賠償、業務停止、社会的信用の失墜は、企業にとって大きな損失をもたらします。
ISMS認証(ISO27001)を取得する過程で、情報セキュリティリスクを特定・評価し、リスク低減のための仕組みと運用体制を整備する必要があるため、リスク低減につながります。
また、万一インシデントが発生した場合の適切な対応が取れるようになり、発生する損害の軽減も見込めるでしょう。
業務効率の向上
ISMSの導入は、単に情報セキュリティ対策を講じるだけでなく、組織全体の業務プロセスを「見える化」し、効率化を促進する効果も期待できます。
例えば、情報資産の棚卸しでは、各部門の業務プロセスや作業内容、関係性を洗い出す必要があります。その過程で、複雑化・属人化した業務内容や非効率な業務プロセス、重複作業などが明らかになり、改善のきっかけを得ることができます。
また責任者や担当者の明確化を通じて、情報の所在や権限のあいまいさが解消され、組織としての統制力も向上します。
こうした取り組みの結果、現場で行われていた非効率な業務プロセスや曖昧な責任分担が明らかになり、業務効率化につながります。

まとめ
ISO27001(ISMS認証)を取得するためには、決して少なくない時間や費用が必要になります。しかし、情報セキュリティに関してしっかりと取り組みを行っていくことが昨今の情報化社会では求められています。そのため、たった一度の情報漏洩によって会社が倒産してしまうというような事態は決して珍しい話ではありません。
しっかりと規格に沿った情報セキュリティを構築・運用し、定期的に第三者機関の審査を受けることで、セキュリティリスクを大幅に低減できるでしょう。
企業の未来を守っていくためにも、個人情報や顧客の機密情報などを扱うような業務であれば、一度ISMSの導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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