TQCとは?概要やメリット、TQMとの違いをわかりやすく解説
- TQCとは、総合的品質管理手法のこと
- TQCは製造現場に特化した品質管理手法
- TQCを発展させた管理手法にTQMがある
製造業や建設業などのモノづくりに携わる企業にとって、「品質管理」は自社の活動を継続するうえで重要な課題です。製造に関係する部門だけでなく、全社的に取り組まなければ期待する結果が得られないこともあるでしょう。
そのために、これまで多くの企業が取り組んできたのがTQCと呼ばれる品質管理方法です。しかし、TQCという名前は聞いたことがあっても内容がわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事ではTQCの概要や歴史、取得メリットなどをわかりやすく解説します。
目次
TQCとは
TQC(Total Quality Control)とは、「全社的品質管理」や「総合的品質管理」と呼ばれる品質管理活動のことです。
TQCの対象は主に製造業で、製品の製造工程だけでなく設計~アフターサービスまでに関わる各部門が、部門の垣根を越えて総合的に品質管理を行います。
品質管理とは
TQCは総合的品質管理のことであると紹介しましたが、そもそも品質管理とはどのような活動を指すのでしょうか。
品質管理とは、自社の製品・サービスの品質を一定以上の水準に保ち、向上させていくための取り組みのことです。具体的には主に以下の3つの活動が行われます。
工程管理
製造マニュアルや作業手順書などを作成し、製造工程における作業の標準化を行い、誰が担当しても一定水準以上の品質を保てる仕組みづくりのことです。
品質検証
製品・サービスの品質に問題がないか検査・検品することです。また、検査・検品するうえでの合格ラインの設定や見直しなども含まれます。
品質改善
不良品が発生した際に、その原因を解明したうえで改善策を実施することです。
こうした取り組みを行うことで、生産性の向上やムダなコスト削減、顧客満足度の向上などのメリットが見込めます。
TQCの歴史
TQCの歴史は、1950年代にアメリカのGE社の品質管理部長だったA・V・ファイゲンバウム(Armand Vallin Feigenbaum)が提唱したのがはじまりです。
日本では、製造部門のみにおける品質活動が行われていましたが、アメリカの統計学者デミング博士を招待して行った品質管理セミナーを発端に、1960年代にTQCが輸入されたといわれています。
アメリカのTQCの考え方を取り入れつつ、日本では独自のTQCが発展していきました。その代表的なものに「QCサークル活動」という作業員を小規模のグループに分けて、品質活動を行うボトムアップ型の活動があります。
トヨタ自動車の事例
日本においてTQCの代表的な取り組みを行ったのが、トヨタ自動車です。
もともとトヨタ自動車では1949年以降、品質管理(QC:Quality Control))の手法を実施し、日本における品質管理を実践していきました。
そして、1960年代には品質管理をより強固なものにするためにTQCを導入。全社的に品質管理の考え方を教育していくうちに、「品質は工程でつくりこむもの」という認識が生まれました。こうした取り組みを継続して行っていく過程で品質管理体制を確立し、高品質な自動車の製造に成功しているのです。
トヨタ自動車の時代に先駆けたTQCの活動手法は他の産業にも広がり、現代においても影響を与えています。
TQCに取り組むメリット
それではTQCを実施することでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、TQCに取り組む主なメリットを解説します。
取引先や顧客からの信頼獲得
TQCに取り組むことで、不良品率が低下し、一定水準以上の品質の製品・サービスを生産できるようになります。不良品率は、顧客満足度に大きく影響する要素といえます。
そのため、取引先や顧客から「〇〇の製品は安心して購入できる」という信頼を得られるでしょう。
従業員のモチベーション向上
TQCの特徴には、全社員が取り組むことが挙げられます。従業員が主体的に品質活動に取り組むことが求められるため、成果が見られれば従業員のモチベーション向上につながります。
また、品質管理において取り組む中で、従業員のスキルや知識も身につき、より一層従業員の意識が高まる可能性もあるでしょう。
業務効率化やコスト削減
品質管理を行う過程で、製造工程における作業内容も見直すことになります。そのため、現状の手法におけるムダや改善点を発見し、改善することが可能です。
また、不要な製造工程を削減したり、システムや設備を導入したりすることで、コストの削減も期待できるでしょう。
TQC活動を実施する方法
TQC活動を実施するためには、主に以下の方法が挙げられます。ここでは、それぞれの方法について解説します。
- QCサークル活動
- 4M分析
- 5S
QCサークル活動
QCサークル活動とは、製造現場で働く従業員を10人程度の少人数グループに分けたうえで、それぞれのサークルが品質管理の改善に取り組む活動のことです。
QCサークル活動は、「QCストーリー」という品質管理上にある問題解決のための手法に則って活動することが一般的です。問題解決型・施策実行型・課題達成型の3つのタイプがあるため、事前にどのタイプで進めるかを選択したうえで活動をはじめます。
最もスタンダードな手法である問題解決型の場合、以下のような手順で活動を進めます。
- 改善すべきテーマを選定する
- 現状を調査する
- 問題解決に適した目標を設定する
- 達成までのスケジュールを立てる
- 把握した現状をもとに原因を追究する
- 対策を実行する
- 効果測定を行う
- 効果が得られた場合、標準化して現場に落とし込む
また、QCサークル活動を実施する際に、以下のQC7つ道具と呼ばれるツールを利用することで、より効果的な品質改善 につながる可能性があります。
管理図
問題となる事象が、偶然発生したバラつきなのか、異常によって発生したバラつきなのかを区別するために用いられる折れ線グラフ
パレート図
不良項目や問題点のうち、「どの項目の改善活動に取り組むべきか」を把握できる複合グラフ
特性要因図
「結果」に至った「原因」がどのように関係しているのかを可視化した図
ヒストグラム
データのバラつき方を一目で確認することが可能であり、異常値を発見できる棒グラフ
散布図
2種類のデータの関係性を調べることが可能な図
グラフ
棒グラフや円グラフ、折れ線グラフなどデータを視覚的に表したグラフ
チェックシート
あらかじめ項目名やデータ記入欄を用意し、データ収集をしやすくした表
ツールは、現状を正確に把握し、問題点をより具体的にするうえで欠かせないものです。使用する目的を明確にし、品質管理に役立てていくと良いでしょう。
QCストーリーのより詳しい進め方、QC7つ道具は、以下の記事をご覧ください。
4M分析
4M分析とは、以下の4つの要素から製造現場の問題点を分析・評価することで、品質改善を行う手法です。
Man(人)
製造現場に限ったことではありませんが、経営活動において最も基本的で大切な要素が「人」です。製造現場において、人について分析する際には、配置する人数や配置場所、組織の成り立ち、指示の仕方などの分析・評価を行うことが挙げられます。
従業員が安全かつ効率的に作業できるような労働環境を整えることで、より高い作業効率につながる可能性もあるでしょう。
Machine(機械)
製造現場においては、人とともに機械も欠かせない要素の一つです。機械の故障の有無や機械の作業効率などを分析します。
それぞれの機器が効果的に稼働しているかどうかを把握する際には、Method(方法)についても併せて検討することが必要です。というのも、生産方式を整備することにより、必要となる機械も異なる可能性があるためです。
Material(材料)
一定以上の品質基準の材料や部品を安定して仕入れることで、自社製品の品質が改善する可能性があります。
そのためには、サプライチェーンを構築することが必要です。各サプライヤーとの関係性があるため、すぐに解決できない点は留意しましょう。
Method(方法)
生産における手順やルール・マニュアルなどを分析し、評価します。各生産ラインにおいてムダがないか、より効率的な方法はないかなどを検討します。
5S
5Sとは、以下の5つの項目に沿って職場環境を整理整頓することで、品質管理を促進する手法です。
整理
作業に必要なものと不要なものを区分し、ムダなものを処分することです。
整頓
作業に必要なものの配置を決めることです。使用頻度や作業手順を考慮したうえで位置を決めることで、使用するまでの時間や手間を省けるようになります。
清掃
製造現場の清掃やメンテナンスを行うことです。現場が汚れてしまうと、ケガにつながることもあるため、安全性や作業効率の向上に寄与します。
清潔
整理・整頓・清掃を適時行い、作業環境を維持することです。
しつけ
上記4S活動におけるルール・マニュアルを作成し、職場環境を管理することです。従業員の職場環境改善のための意識を高めたり、5S活動を定着させたりする意図があります。
TQC活動を成功させるポイント
TQC活動を成功させるには、PDCAサイクルを回して継続的に活動することが大切です。
「P(計画)→D(実行)→C(評価)→A(改善)」のことで、繰り返し行うことで、持続的な品質改善につながります。
一度の活動で改善できる点もあれば、できない点もあります。繰り返し実施することで、製造現場にある問題点を一つひとつ解消していけるでしょう。
また、技術の進化や社会的なニーズの変化などにより、生産現場においても求められるものは日々変わっていきます。PDCAサイクルで品質活動を行うことで、そうした変化にもスピーディーに対応できるでしょう。
TQCとTQMの違い
TQCとよく似た言葉に、TQMがあります。ここでは、TQCとTQMの違いを解説します。
TQM(Total Quality Management:総合的品質管理)とは、製品・サービスの品質や質を向上させるための手法を経営戦略に適用したものです。
TQCとの大きな違いは、その対象にあります。
TQMの主な対象が製造業であるのに対し、TQMは人的サービスも含めた幅広い業種が対象となっています。そのため、TQCをより発展させたものがTQMであると捉えておくと良いでしょう。
TQMの詳細は、以下の記事をご覧ください。
継続的な品質改善を目指すならISO9001取得がおすすめ
品質管理の手法としてTQCについて解説してきましたが、継続的な品質改善を目指す場合にはISO
9001取得がおすすめです。
ここでは、ISO9001の概要と継続的な品質改善を目指す組織にISO9001をおすすめする理由を解説します。
ISO9001とは
ISO9001とは、品質マネジメントシステムに関する国際規格
です。
製品・サービスの品質管理を行うことで品質向上を目指しますが、最終的には顧客満足度の向上を目的としています。
製造業や建築業での取得が多いものの、教育や医療・福祉関係といった人的サービス業などの業種においてもISO9001の取得が進められています。
ISO9001取得がおすすめの理由
TQM活動は自社で活動内容を自由に決められる一方、活動範囲や内容などが曖昧になりやすいという懸念もあります。「本当に品質改善につながっているのか不安」「今よりも効果的に品質改善できる方法があるのではないか」と疑問を抱えている企業も多いでしょう。
ISO9001であれば、取得するためには要求事項を満たす仕組みを構築し、実際に運用することが必要です。もちろん、具体的な方法は企業の規模や業務内容などに応じて柔軟に決められますが、取り組むべき内容は明確化されています。
そのため、取得に向けて取り組む過程で、品質改善につながるでしょう。
また、取得できれば自社の品質管理体制が国際的な基準に達していると認証されるため、取引先や顧客などへのアピールも期待できます。
このような理由から、TQM活動を推進したい組織にはISO9001の取得がおすすめです。ISO9001の詳細は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、TQCの概要や歴史、取得メリットなどを解説しました。
TQCは日本製品の品質の高さへの信頼を獲得する際に貢献した品質管理活動です。製造における結果だけでなく、工程に目を向けたことでより合理的な管理が可能になりました。
ただし、より継続的かつ総合的に品質管理を行うために、最近ではTQCをより発展させたTQMが推進されるようになっています。
その際にはISO9001を取得することで、自社の製品・サービスの品質改善につながります。自社の品質管理にお悩みの組織の方は、一度ISO9001の取得を検討することがおすすめです。
ISOプロでは月額4万円から御社に合わせたISO運用を実施中
ISOプロではISO各種の認証取得から運用まで幅広くサポートしております。
また、マニュアル作成など御社に合わせたムダのない運用を心がけており、既に認証を取得しているお客様においてもご提案しております。
サポート料金においても新プランを用意し、業界最安級の月額4万円からご利用いただけます。
こんな方に読んでほしい