TQM(総合的品質管理)とは?目的や方法、TQCとの違いをわかりやすく解説
- TQM(総合的品質管理)は、全社的に品質向上に向けて活動することを指す
- TQCが製造業を中心とした活動である一方、TQMはサービス業まで幅広い業種が含まれる
自社の商品・サービスの品質 を高め、顧客満足度をさらに向上させたいと考えている企業は多いでしょう。しかし、品質を高めるといっても「どのような方法があるのかわからない」とお悩みの企業もあるのではないでしょうか。
製造業であればTQC活動について知っている方もいるかもしれませんが、サービス業にも当てはまるTQM(総合的品質管理)という考え方が最近では主流になっています。
そこで、この記事ではTQMの概要や目的、TQC活動との違い、手法についてわかりやすく解説します。
目次
TQMとは
TQM(Total Quality Management:総合的品質管理)とは、製品・サービスの「品質・質」を向上させるための考え方や手法、方法論などを経営戦略に適用したものです。
TQMの「Total」という言葉にあるように、部門の垣根を越えて全社的に品質・質の改善に取り組むとともに、組織のあらゆる業務を向上させることを指しています。
TQMの目的
TQMの目的は、以下の2つにあります。
- 顧客や社会のニーズを満たす製品・サービスの提供
- 従業員満足を通した組織の長期的な成功
つまり、ただ「品質・質」が高いだけでなく、顧客や社会のニーズを満たしていることも求められます。この2つの目的を達成させるために、製品・サービスの提供までのプロセスやシステムの維持向上、改善・革新を行うのがTQMです。
TQMの歴史
TQMの由来は、米国の製造業を中心に始まったQC(Quality Control:品質管理)が挙げられます。
当初は、出来上がった製品を評価するものでしたが、より質を向上するために製造プロセスを改善することが重視されるようになりました。もともとは製造ラインに関わっている部門のみが取り組むものという認識でしたが、より高い品質・質の向上が求められるようになるにつれ、継続的な取り組みが必要となっていきました。
そこで、製造部門だけでなく経営陣も含めて総合的に品質改善に取り組むTQMが生まれたのです。
TQMとTQCとの違い
TQMとよく似た言葉に、TQC(Total Quality Control:総合的品質管理手法)があります。TQCもTQMと同様に全社的に品質管理を行う手法です。
TQMとTQCとの違いは、対象となる業種の範囲にあります。
- TQM:介護や福祉、医療などの人的なサービス業も含めた幅広い業種が対象
- TQC:主に製造業が対象
ただし、両者の境界は曖昧であり、同義語として使用されることがあることも覚えておきましょう。
TQM活動の手法
それでは、実際にTQMにおいてどのように品質・質を向上させるのでしょうか。
TQM活動を進めるには、QCサークル活動(品質向上に取り組む部門ごとの小規模グループ)が採用されることが一般的です。
ここでは、QCサークルによる一般的な品質管理活動の進め方として、QCストーリーを紹介します。
1.テーマ選定
まずは品質改善の取り組みを行うべき問題点を選定します。これが活動テーマとなります。
活動テーマは、TQM活動を行ううえで重要な工程です。テーマ選定が曖昧であったり、品質改善につながらなかったりすると、結果が得られずに従業員のモチベーションも低下してしまうでしょう。
そのため、テーマ選定を行う際には、目的を明確にするとともにテーマとして適切かどうかを見極めるために客観的なデータを確認したり、現場スタッフにヒアリングしたりして確認しましょう。
2.現状把握
テーマを選定したら、現状について詳しく把握するために調査・分析を実施します。データがある場合には、具体的な数値や事実を収集することで、客観性を担保できるでしょう。
現状を正しく把握することで、TQM活動を行ったあとの成果を正確に評価できるようになります。そのため、現場スタッフにヒアリングした際には、主観的な意見を裏付けるデータまで調査することがおすすめです。
3.目標の設定・スケジュール計画
把握した現状をもとに、TQM活動の目標を設定します。目標を設定するときも、数値化することで活動後に正しく評価できます。
また、目標を設定する際には実現可能かどうかという点も見極めるようにしてください。高望みしすぎた結果、まったく目標を達成できなくなってしまうと、従業員のモチベーション低下につながるおそれがあります。心配であれば、目標設定の際に第三者や管理責任者から意見をもらっても良いでしょう。
また、目標を設定したら、TQM活動の具体的なスケジュール計画を立てます。ガントチャートを用いて、原因追究から対策の実行、運用などのステップごとに期限を設けてください。
4.原因追究・対策の立案と実行
スケジュールを立てたら、TQM活動においても重要な原因追究・対策の立案と実行を行います。
「2.現状把握」のステップにて、発生している問題点を明らかにしているので、このステップでは問題点の原因追究を行います。例えば、「不良品率が高い製品」がある場合に、「なぜ不良品率が高いのか」を突き止めるステップです。
原因が追究できたら、対策を立案して実行します。
QCサークルのメンバー全員で取り組むことを意識し、コミュニケーションをしっかり取りながら進行してください。
5.効果の確認・標準化
TQM活動による効果を確認し、評価します。「2.現状把握」のステップと同様の条件で再度データを測定し、対策前後のデータを比較しましょう。
対策が有効であった場合には、現場に浸透させるために標準化を推進します。マニュアルや手順書を更新し、必要であれば研修を実施することで、新しい手法を統一できるでしょう。
QCサークルやQCストーリーの詳細は、以下の記事をご覧ください。
TQMを推進するなら、ISO9001取得がおすすめ
TQMを推進するなら、ISO
9001取得がおすすめです。ここでは、ISO9001の概要とTQMを推進する組織におすすめする理由を解説します。
ISO9001とは
ISO9001とは、品質マネジメントシステムに関する国際規格
のことです。
製品・サービスの品質向上を目指しており、製造やサービス提供プロセスを継続的に改善する仕組みづくりを行います。そして、最終的には顧客満足の達成を目標としています。
製造業や建設業などのモノづくりに関わる企業の取得が多いものの、医療や教育など人的サービス業も含めた幅広い業種で取得が進められています。
ISO9001取得がおすすめの理由
TQM活動は、自社で活動を決められる一方、活動の範囲や内容などが曖昧になりやすい傾向にあります。そのため、「品質改善につながっているのかわからない」「より効果的に品質改善できる方法があるのではないか」と疑問を抱えている企業も多いでしょう。
ISO9001は、取得するために要求事項を満たす仕組みづくりを行い、実際に運用することが必要です。やり方自体は企業の規模や業務内容などに合わせて柔軟に決められますが、取り組むべき内容は明確に定められています。そのため、取得に向けて取り組む過程で、品質改善につながるでしょう。
また、取得できれば自社の品質マネジメントシステムが国際的な基準をクリアしていると認証されるため、対外的なアピールにもつながります。
このような理由から、TQM活動を推進したい組織にはISO9001の取得がおすすめなのです。ISO9001の詳細は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、TQMの概要や目的、TQCとの違い、活動の手法について解説しました。
全社的な品質向上を行う活動であるため、製造業だけでなくサービス業も含めた幅広い業種が「質」を高めることによる顧客満足度の向上を目指しています。
そのため、TQM活動を推進するうえでISO9001との相性が良く、取得することで自社のTQM体制を対外的にアピールできるでしょう。
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