本稿では、ISO 9001:2015 要求事項「6.2 品質 目標及びそれを達成するための計画策定」について解説します。

以下に細分箇条6.2の要求事項について掲載します。

■ISO9001:2015 要求事項

6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定
6.2.1 組織は,品質 マネジメントシステム に必要な,関連する機能,階層及びプロセスにおいて,品質目標を確立しなければならない。
品質目標は,次の事項を満たさなければならない。

  • a) 品質方針と整合している。
  • b) 測定可能である。
  • c) 適用される要求事項を考慮に入れる。
  • d) 製品及びサービスの適合,並びに顧客満足の向上に関連している。
  • e) 監視する。
  • f) 伝達する。
  • g) 必要に応じて,更新する。

6.2.2 組織は,品質目標をどのように達成するかについて計画するとき,次の事項を決定しなければならない。

  • a) 実施事項
  • b) 必要な資源
  • c) 責任者

品質目標

ISO9001規格 要求事項「6.2」では、設定した品質目標を達成するための「計画」を作成するよう要求しています。それでは、早速「品質目標」について確認しましょう。

品質目標とは

品質目標(Quality objectives)とは、品質方針(quality policy)に基づいて設定される品質に対する指標であり、品質方針を達成するための目標です。品質方針を従業員・関係者に周知・説明することで、組織的な品質マネジメントシステムへの取り組み、各部門/部署において目標達成に向けて計画を遂行しやすくなります。

品質目標の重要性

組織にとって、自社が提供する製品・サービスの品質指標はとても重要です。安定した品質の製品・サービスを提供するためには「社内標準化」による品質管理が欠かせません。客観的な指標による品質評価を行い、評価結果に基づいた改善活動を継続的に実施することで活動成果を得ることができます。

品質目標の設定

品質目標を達成するための計画を策定するには、まず適切な品質目標を設定する必要がありますが、組織規模や組織の内部・外部の課題状況、各階層(組織全体、製品・サービス、プロジェクト、プロセスなど)によって設定目標は異なります。

品質目標の設定では、各部門/部署を縦軸に個々の目標が、相互関連プロセス(横軸)で整合性があり、組織全体(適用範囲 )をカバーする形で品質方針が達成されるようにします。最終的には顧客満足度の向上に繋がるよう、具体的に、達成可能な品質目標を設定します。また、中小企業など最初に設定した品質目標を使い続ける企業もありますが、品質目標は定期的に見直し、更新しましょう。

例えば、製造や品質管理関連の部門/部署では、顧客要求がある場合には優先的に顧客要求事項に従い、自社のオリジナル製品であればJIS規格や製品仕様などの品質要求事項 に適合しなければなりません。製造や品質管理関連の部門では、不適合発生率や納期遵守率などを指標にされている企業が多く見られます。

≪設定ポイント≫

  • a.前提条件として、各部門において、全体目標と行動指針が明示されていること
  • b.一般的には課ごとに全体目標や指針に基づいて具体的に目標を設定します。
  • c. 具体的な数字で表現され、目標の達成度が測定可能であること
  • d.製品・サービスであれば、製品仕様や社内品質要求事項、顧客要求事項などに適合していること
  • e.品質目標は、顧客満足度を高めるための取り組みに落とし込んであること

≪測定可能な数字≫

ISO9001規格-細分箇条6.2.1の要求事項では、目標達成度がわかるよう「測定可能」(数字表記)であることが要求されています。例えば、不良率(KPI①)押さえて生産性(KPI➁)を上げ、会社全体の売上(KGI)目標を達成します。目標達成度は、KPIやKGIなど客観的な数値や数量で把握できるようにします。

KGI(Key Goal Indicator)とは

重要目標達成指標のことで、「売上」「粗利益」「営業利益」など具体的な判断基準を設定して企業の最終目標の達成度合いを示します。

KPI(Key Performance Indicator)とは

重要業績評価指標のことで、最終的な目標を達成するための中間指標として利用します。

なお、中には数値化し難い、数値化できない定性的目標もあります。
例えば、「人的ミスを防止する仕組みを作る」「最短の動線で移動できる環境を作る」「就業時間内は極力作業場所を離れない体制を作る」といった抽象的な目標です。
このような定性的目標の達成度は「進捗度」などで管理するのではなく、目標や実施事項を細分化し、それぞれ数値目標を決めることで定量的な目標に設定できます。

≪品質指標の事例≫

よく利用される目標達成度の評価指標ついて、一部紹介します。

  • 工程内不良率/工程内手直し率/歩留まり率/廃棄率
  • 納期遵守率
  • 納入不良率
  • 市場クレーム件数
  • 社員定着率
  • 生産性上昇率
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品質目標を達成するための計画

計画

ISO9001規格要求事項「細分箇条6.2.2」についてです。
各部門/部署では品質目標が達成できるようPDCAサイクルに落とし込み回しますが、それには具体的な計画がなければ行動できません。計画で大切なことは、継続的に、確実に実施できる内容であることです。要求事項にあるように、計画には下記【計画内容】を含め、特に中小企業では業務を兼任されている方もおり、課業に追われて計画倒れにならないよう注意しましょう。

【計画内容】

  • 実施事項
  • 実施責任者
  • 実施期間
  • 計画の実施で必要となる資源(人、材料・用具等)
  • 計画の実施結果に対する評価方法

留意事項

目標の数値化は達成度を明確に把握できます。しかし、目標に固執するあまり、目標未達であった場合に従業員のモチベーションが低下して業務の効率が悪くなる、職場がギスギスして職場の雰囲気や人間関係が悪くなることのないよう配慮することも大切です。社内コミュニケーションの充実化を図りましょう。

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