本稿は、ISO 9001:2015要求事項 箇条5.3「組織の役割,責任及び権限」についての解説です。

組織には様々な業種がありますが、各々の組織では業務の効率化を目的とする何かしらの仕組みを導入・運用しています。品質 マネジメントシステムに限らず、組織で新しい仕組みを導入する場合、まず管理責任者や担当者、担当業務(役割)、責任及び付与する権限について明確にし、運用の準備が進められます。

◇新しい仕組みの導入フロー

  1. 仕組みの役割を確認し、管理責任者と実務担当者を最低限決めます。(兼任の場合もあり) 
  2. 仕組みを利用する業務内容や担当業務(役割)を決め、適任者検討/担当者を決定します。
  3. 必要に応じて業務データの操作権限を明確にし、情報セキュリティ対策を講じます。
  4. 運用開始後、適切に仕組みが運用されているか監視します。
  5. 随時、仕組みの運用改善を継続的に実施します。

※仕組み自体の構築プロセスについては省略します

≪考慮する点≫
その仕組みがどのような機能を持ちどのような業務データを扱うのか、情報セキュリティ的な問題点や導入・運用目的、仕組みの仕様等について考慮し、担当者のスキル・経験や人柄等も評価して責任範囲・付与する権限の内容を決定します。

品質マネジメントシステムの導入・運用でも同様で、「5.3 組織の役割,責任及び権限」では、品質マネジメントシステムを効果的に運用するための役割や管理責任者・その他要員の責任・権限について明確化するよう要求しています。実際にISO9001:2015でどのように規定されているのか確認できるようISO規格 -要求事項について以下に掲載します。

●JIS Q 9001:2015 (ISO 9001:2015)要求事項
5.3 組織の役割,責任及び権限
トップマネジメントは,関連する役割に対して,責任及び権限が割り当てられ,組織内に伝達され,理解されることを確実にしなければならない。

トップマネジメントは,次の事項に対して,責任及び権限を割り当てなければならない。

  • a)品質マネジメントシステムが,この規格の要求事項に適合することを確実にする。
  • b)プロセスが,意図したアウトプットを生み出すことを確実にする。
  • c)品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び改善(10.1 参照)の機会を特にトップマネジメントに報告する。
  • d)組織全体にわたって,顧客重視を促進することを確実にする。
  • e)品質マネジメントシステムへの変更を計画し,実施する場合には,品質マネジメントシステムを完全に整っている状態 (integrity)に維持することを確実にする。


【出典】JIS Q9001:2015 (5.3組織の役割,責任及び権限)

要求事項の箇条解説

「a)品質マネジメントシステムが,この規格の要求事項に適合することを確実にする。」

トップマネジメントは、社内・社外問わず利害関係者に有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求事項への適合の重要性を伝達し、体制を確立するために指揮しなければなりません。品質マネジメントシステムを効果的に運用するための役割を支援し、必要に応じて部門や要員へ権限を委譲し責任を割り当てます。

◇品質マネジメントシステムの推進に関連する部門及び要員-例

  • 品質マネジメントシステム推進事務局(実務担当者含む)
  • コンプライアンス委員会(法令や規制要求事項管理部門含む)
  • 人事部門など従業員の教育や研修に関する担当者等
  • 品質マネジメントシステムの内部監査員(責任者・事務局含む)
  • 品質マネジメントシステム関連の文書発行や保管維持管理者

また、トップマネジメントは、すべての従業員が各自の役割及び責任、自らの行動が組織の目標の達成にどのように貢献するか理解できるよう、必要とする技能・訓練・教育などのスキルを修得できる組織だった体制を促進します。

「b)プロセスが,意図したアウトプットを生み出すことを確実にする。」

品質マネジメントシステムの運用目的は「顧客満足度の向上」です。顧客要求をインプット として、顧客に満足していただく製品・サービスが アウトプット 「意図した成果」になります。
組織は意図した成果を得るために PDCA を適切に回して課題や問題点を洗い出し、改善します。そのプロセスを維持・継続できるよう、トップマネジメントは品質マネジメントシステムの推進活動を支援し、 プロセスアプローチ 及びリスクに基づく考え方の利用を促進します。

「c)品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び改善(10.1 参照)の機会を特にトップマネジメントに報告する。」

品質マネジメントシステムのパフォーマンスとは、「実施状況又は成果を含む実施状況」と訳されており、業務の実績・状況、問題点等について、また顧客満足を向上させるための改善への取り組みや改善状況についてトップマネジメントに報告し、指示を仰ぐことが大切です。

「d)組織全体にわたって,顧客重視を促進することを確実にする。」

顧客満足向上の重視を維持及び促進するため、以下事項に取り組む必要があります。

  • 顧客要求事項に適用すると共に、適用される法令・規制要求事項を理解し確実に遵守しなければなりません。
  • 製品及びサービスの適合並びに顧客満足を向上させる能力に影響を与え得るリスク及び機会を決定し,リスクマネジメント及び改善の機会として取り組む必要があります。

「e)品質マネジメントシステムへの変更を計画し,実施する場合には,品質マネジメントシステムを完全に整っている状態 (integrity)に維持することを確実にする。

「品質マネジメントシステムへの変更」とは、何かしらのシステムを品質マネジメントシステムに変更するという意味合いになりますので、例えばISO27001やISO14001から品質マネジメントシステムに変更する場合は、品質マネジメントシステムにおける管理責任者・各自担当の役割、責任や権限を割り当て、明確にすることが必要ということです。

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