• 品質目標とは、組織が達成すべき、品質方針と整合した、計測可能で具体的な目標である。
  • 品質目標は定期的に見直しを行いレビューする必要がある。
  • 品質目標は組織内部に伝達され、その目標の達成に向かって組織が進んでいるかを監視する必要がある。

ISO 9001を取得するにあたって、トップマネジメント品質目標を設定し、組織内部にそれが伝達されるように努める必要があります。

ISO9001 を取得しようとする企業は、どうしても認証取得が目的となってしまい、「規格 のためのマネジメントシステム構築」を行ってしまいがちですが、より良いマネジメントシステムを構築して高い顧客満足を目指すためには品質目標の設定を決して軽んじてはいけません。

この記事では、ISO9001における品質目標の概要や役割、具体例、達成するための計画の立て方についてわかりやすく解説します。

ISO9001における品質目標とは

品質目標とは

ここでは、まずISO9001における品質目標の概要や目的、品質方針との違いといった基本的な情報について解説します。

品質目標の定義・目的

品質目標とは、「自社の提供する製品やサービスの品質に対して掲げる、経営理念や品質方針と整合した測定可能な目標」のことです。あるいは、「大目標である顧客満足の達成を実現するための具体的な目標」とも言えるでしょう。

組織が品質管理を効果的に行うためには、品質目標の設定が欠かせません。品質目標を設定することで、組織全体が継続的に品質改善に取り組むための指針が明確になり、品質管理の取り組みによって得られる顧客満足度向上という成果も可視化されます。

また、達成状況を測定・評価することで、次の改善策を導き出すことが可能になり、日々の業務の中で何に注力すべきかが明確になります。

品質方針との違い

品質方針は、「組織の全体的な品質に対する考え方や方向性を示したもの」です。一方、品質目標は、その方針を実行可能な形に落とし込み、具体的な達成指標として設定するものです。

つまり、品質方針は「目指す方向」を示したもので、品質目標は「その方向に向かうための具体的なステップ」であるといえます。

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ISO9001で求められている品質目標

ISO9001で求められている品質目標

品質マネジメントシステムに関する国際規格であるISO9001においても、品質目標の設定が求められています。

関連記事:ISO9001とはなにか?導入企業や他の規格との違いを徹底解説!

ISO9001の要求事項では、以下のように「品質目標の定義」について定めています。

a)品質方針と整合している。
b)測定可能である。
c)適用される要求事項を考慮に入れる。
d)製品及びサービスの適合,並びに顧客満足の向上に関連している。
e)監視する。
f)伝達する。
g)必要に応じて,更新する。

これら一つひとつの項目について、品質目標の役割とともに解説していきます。

品質方針と整合している

品質方針と品質目標の間には、ズレがなく整合性が取れていることが求められます。目標はあくまで方針を達成するために設定されるものであるため、方針と関係のない目標は、取り組みの方向を誤らせてしまうリスクがあります。

例えば、野球チームが「一番強いチームになる」という方針を掲げている中で、その目標が「観客動員数を昨対比150%にする」では整合性が取れているとはいえません。この場合、目標達成はチームの強さ向上には直結せず、方針の実現から遠ざかることになります。

つまり、品質方針が「目的」であるなら、品質目標はその目的に向かう「道しるべ」といえます。
そのため、品質目標を立てる際には、必ず品質方針と整合性が取れていることを確認してください。正しい目標を設定することで、組織全体が方針の達成に向けて効率的に取り組むことができ、無駄のない改善活動につながります。

品質方針の詳細については、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO9001の品質目標・品質方針とは?

測定可能である

品質目標の内容は、目標達成できたかどうかを把握できるように、測定可能なものであることが求められます。そのため、数値を用いた目標にすることが一般的です。

例えば、「不良品をできるだけ少なくする」という目標よりも「不良品率を1%以内に抑える」という具体的な目標であれば、達成状況をはっきり判断できます。数値で目標を設定することで、目標に対する現状のギャップや課題が見えやすくなり、改善策を考える際の指針にもなります。

このように、品質目標は定量的で測定可能な形で設定することが望ましく、組織全体の取り組みをより確実に成果へとつなげるための重要な手段となります。

適用される要求事項を考慮する

ISO9001は品質マネジメントシステムに対する規格であり、審査に合格するためには規格の要求事項を満たすことが不可欠です。そのため、品質目標を設定する際には、これらの要求事項をしっかりと考慮することが求められます。

具体的には、顧客要求事項や法規制、業界基準などで求められることを明らかにしたうえで、反映させる必要があります。

顧客満足向上に関連させる

ISO9001における品質マネジメントシステムの最終的な目的は、「顧客満足の達成」です。そのため、品質目標や品質方針は、必ず顧客満足につながる内容にする必要があります。

品質目標を顧客満足に関連付けることで、日々の業務改善や製品・サービスの品質向上が、直接的に顧客の信頼や満足度向上につながるのです。

目標を監視・伝達する仕組みを設ける

品質目標を達成するには、トップマネジメントだけが認識しているのではなく、組織のすべてのメンバーの協力が不可欠です。明確に共有し、各構成員が自分の役割を理解できるよう落とし込む必要があります。
さらに、伝達するだけでなく、目標に向かって組織が正しい方向で取り組んでいるかを監視する仕組みづくりも重要です。

こうした伝達と監視のプロセスを組み込むことで、品質目標が組織全体で共有され、計画的かつ着実に成果へ結びつくようになります。

必要に応じて更新する

時代の変化は非常に速く、顧客の要求や市場の状況も常に変化しています。そのため、「顧客満足」を達成するためには、品質目標を必要に応じて見直すことが重要です。

長期にわたって同じ品質目標を掲げていると、変化した顧客のニーズや市場環境から取り残されることになり、組織の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、世界的な不況やパンデミックなど、自社だけでは制御できない外的要因によって市場が変化する場合にも、目標を変更することで、従業員が柔軟に対応できる体制づくりにつながります。

もちろん、品質目標を頻繁に変更することが望ましいわけではありません。しかし、状況に応じて適切に更新することは、現代の変化の速い環境では不可欠であり、組織の持続的な成長と顧客満足の維持につながります。

ISO9001品質目標を達成する計画の立て方

品質目標を達成する計画の立て方

ISO9001では、品質目標を「設定」するだけでなく、それを実際に「達成」するための具体的な計画を策定することが求められています。

ISO9001の規格では、計画に以下の項目を含めることが必要です。

1実施事項目標達成のために具体的に行う業務や取り組み
2実施責任者計画を実行する責任者や担当部門
3実施期間いつまでに、どのタイミングで実施するか
4計画の実施で必要となる資源人員や材料、用具、設備など計画を実行するために必要なリソース
5計画の実施結果に対する評価方法計画の実施結果をどのように測定・評価するか
  • 実施事項
  • 実施責任者
  • 実施期間
  • 計画の実施で必要となる資源(人、材料・用具等)
  • 計画の実施結果に対する評価方法

計画を立てる際の重要なポイントは、「組織の実情に即しているか」と「具体性があるか」です。

組織の現場に適した計画であれば、無理なく継続的に実行することができ、計画倒れのリスクを大幅に減らせます。
また、計画が具体的で明確であれば、従業員一人ひとりが自分の役割を理解し、日々の業務に落とし込むことが容易になります。

関連記事:ISO9001における品質目標と達成するための計画策定
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【業種別】ISO9001品質目標の具体例

ISO9001における品質マネジメントシステムの目的は「顧客満足」につながるものであるため、顧客満足度を高めるQCDS(品質・価格・納期・サービス)の観点から、自社の商品やサービスが顧客にどのように評価されるかを意識することが重要です。

ここでは、業種別に品質目標の具体例を紹介します。

製造業の品質目標例

製造業では、品質目標を数値化することで、製品の安定性や顧客満足度を向上させることが可能です。また、工程改善や手順の標準化などの内部施策を組み合わせることで、組織全体で継続的な品質向上を目指すことができます。

【品質目標の例】
  • 製品の不良率を1%以下に抑える
  • 納期遵守率を95%以上に維持する
  • 顧客からのクレーム件数を前年比20%削減する
  • 製造工程の改善計画を全工程で実施する
  • 作業手順の標準化を全ラインで完了する
  • チョコ停回数を10%減にする

建設業の品質目標例

建設業においては、工期遵守や安全管理、材料検査など、現場における正確な実行が品質向上の鍵となります。目標を定めることで、施工の安定性や顧客信頼を高めるだけでなく、組織全体の業務効率向上にもつながります。

【品質目標の例】
  • 年間のクレーム数を0件にする
  • 利益率を前年比20%向上する
  • 建築物の欠陥報告件数を前年より10%削減する
  • 公共工事における工事成績評定を80点以上にする
  • 施工現場での手順遵守率を100%にする

サービス業の品質目標例

サービス業では、顧客対応や従業員教育を通じて、顧客満足度の向上を直接的に目指すことが重要です。目標を明確に設定することで、組織全体が同じ方向を向き、サービス品質の安定化や改善に取り組みやすくなります。

【品質目標の例】
  • 顧客満足度調査で90点以上を達成する
  • 問い合わせ対応の平均処理時間を24時間以内に短縮する
  • 従業員教育の実施率を100%にする
  • 顧客からのリピート率を70%以上にする
  • 顧客からのフィードバック反映率を50%以上に高める
関連記事:【サンプルあり】内部監査チェックリストの作成!確認しておきたいポイントを解説

ISO9001品質目標の失敗例と対処法

ISO9001における品質目標は、組織の品質向上や顧客満足に直結する重要な指標です。しかし、目標の設定や運用が不十分だと、かえって組織の混乱や改善の停滞を招くことがあります。

ここでは、ISO9001品質目標の代表的な失敗例とその対処法を解説します。

品質目標が具体的でなく曖昧

品質目標が「顧客満足度を高める」「不良品を減らす」といった漠然とした表現になっている場合、目標の達成状況を評価することが困難になります。

例えば、「不良品をできるだけ減らす」という表現では、どの程度減らせば成功と判断できるのか明確ではありません。このような曖昧な目標では、従業員が具体的にどの行動を取るべきか迷う原因となります。

【対処法】
目標はできる限り数値化・定量化し、測定可能な形で設定します。「不良品率を1%以下に抑える」「顧客アンケートで90点以上を達成する」など、具体的な基準を示すことが重要です。

品質目標達成の改善策が不明瞭

品質目標を設定したものの、目標達成のための具体的な改善策や行動計画が示されていない場合、目標の達成にはつながりません。

例えば、「顧客満足度を高める」という目標だけ掲げても、「どのプロセスを」「どのように改善するか」といったことが不明瞭であれば、従業員も何に取り組めば良いのかわかりません。

【対処法】
まずは、品質目標は「設定」するものではなく、「達成」するものであることを理解しましょう。目標達成に必要な改善策や手順を具体的に定め、責任者や期限を明示します。PDCAサイクルに沿って定期的に進捗を確認することで、実際の業務改善につながります。

品質目標の監視に莫大な工数が発生している

目標は定量的で具体的であることが重要ですが、複雑な指標を目標として設定すると、進捗管理やデータ収集に多大な工数がかかり、業務効率を圧迫してしまいます。

その結果、目標管理自体が負担になり、実務に支障をきたすことがあります。

【対処法】
監視や評価の方法を現実的に設計し、必要なデータだけを収集するようにします。自動化ツールや管理システムを活用することで、工数を低減することもおすすめです。

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まとめ

今回は、品質目標の重要性について解説してきました。品質目標は、組織が品質の向上を目指し、顧客満足を得て持続的な事業の継続の助けとなる重要なツールです。

しっかりと品質目標を設定した上で、その目標を正しく運用することができるように、マネジメントシステムに組み込んでいきましょう。

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