ISO9001における外部・内部の課題を把握しよう

ISO 9001では、品質 マネジメントシステム を構築するにあたって、その品質マネジメントシステムの適用範囲となる組織の内外の課題を明確にする必要があります。――しかし、組織内外の課題と言われてピンと来ないかたもいらっしゃるのではないでしょうか？

今回は、内部の課題、外部の課題とは具体的にどのようなもので、それらが品質マネジメントシステムにどのような影響を与えるのかということについて解説していきたいと思います。

ISO9001における組織内外の課題とは

ISO9001 では、品質マネジメントシステムを構築する前に組織の状況を改めて見直す必要があります。JIS Q 9001 :2015の要求事項では、以下のようにあります。

組織は，組織の目的及び戦略的な方向性に関連し，かつ，その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える，外部及び内部の課題を明確にしなければならない。
組織は，これらの外部及び内部の課題に関する情報を監視し，レビューしなければならない。
JIS Q 9001:2015

品質を向上させるという目標を達成し、顧客満足を達成するためにはまずはその組織の課題を抽出する必要があります。どのような組織であっても品質に関する課題というものは生まれてきます。

そして、その課題を解決したとしても、今度は新たな課題というものが生まれてくるはずです。ISO9001における品質マネジメントシステムの最終目標は顧客満足の達成です。現状で顧客満足が100%であったとしても、顧客からは次の要求が生まれてくるはずだからです。

その顧客の要求に答えるためには、常に先回りして課題を抽出していく必要があるのです。もちろん、その課題が1年後、2年後になっても解消できていない可能性もありますが、ISO9001規格が最も重要視するものは、品質の継続的な改善です。このため、組織の内外の課題は定期的に見直し、レビューを行っていく必要があるのです。

――では、具体的に内部の課題、外部の課題とはどのようなものが当てはまるのでしょうか？いくつか例をあげながら解説していきたいと思います。

組織の内部の課題とは

組織の内部の課題とは、その組織の内部で起きている課題のことです。例えば、

• 組織内部の人間の入れ替わりが激しく、技術の継承が困難である
• 設備が古くなっている
• 新人の定着率が悪化しており、従業員の高齢化が進んでいる

こういったような課題が内部の課題に当てはまります。

組織の外部の課題とは

組織の外部の課題とは、例えば以下のようなものが当てはまります。

• 法改正によって、これまでの製造工程が運用できない
• AIのような革新的な技術開発によって、競争が激化している
• 異常気象が増加しており、品質を保つための要因が変化してきている

このような、組織の努力だけではどうしようもない課題が外部の課題として抽出されるべきものです。

課題はどのように抽出するべきなのか

私達は日常的に「課題」というと、「解決しなければならないが、解決できていないもの」や「取り組む必要性の高い問題」と認識してしまいがちですが、ISO9001における組織内外の課題とは、必ずしもそのような要素のものだけではありません。

では、ISO9001における課題とはどのようなものかというと、ズバリ、「品質マネジメントシステムに対して、何らかの影響を与えそうなもの」です。

その影響がマイナスなものであったとしても、プラスのものであったとしても、それは「課題」として抽出しても良いのです。

実際にISO9001には、以下のような注釈があります。

課題には，検討の対象となる，好ましい要因又は状態，及び好ましくない要因又は状態が含まれ得る。
JIS Q 9001:2015

つまり、ここで行うべきことは、「品質に影響がありそうな組織を取り巻く状況を整理すること」なのです。そして、ISO9001は「全ての課題を抽出しなければならない」ということは要求していません。先程も述べた通り、ISO9001はレビューや見直しを行うことで継続的な品質の改善を行っていくものですから、「現時点で組織がどの程度状況を把握できているか」ということは、そのマネジメントシステムの優劣を左右しないのです。

もちろん、適当に課題を抽出しても良いというわけではありませんが、このように考えると「組織の内外の課題」も抽出しやすいのではないでしょうか？

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