施工体制台帳とは?書き方や作成義務をわかりやすく解説
- 施工体制台帳は、工事施工を請け負う業者名や施工範囲、責任者などを記載した台帳のこと
- 施工体制台帳の作成目的は、施工上の安全性の確保や建設業法違反の発生防止などが挙げられる
工事現場では、さまざまな建設業者が協力して施工します。安全かつスムーズに工事計画を進行するには、複数の会社が担当する工事内容や責任者などを把握することが必要です。
そのために用いられるのが安全書類(グリーンファイル)の一つである施工体制台帳です。施工体制台帳を適正に作成することが工事によっては義務付けられているため、しっかりと作成方法を押さえておきたいところ。
そこで、この記事では施工体制台帳の概要や目的、書き方などを解説します。
目次
施工体制台帳とは
施工体制台帳とは、現場の施工体制をまとめた安全書類(グリーンファイル)のことです。
基本的には、発注者から建設工事を直接請け負った元請業者が作成します。のちほど詳しく解説しますが、主に以下の内容を記載しています。
- 工事を請け負う業者名
- 発注者との契約内容
- 各業者の施工範囲・内容
- 工期
- 主任技術者・監理技術者名
施工体制台帳の目的
施工体制台帳を作成する目的は、主に以下の4つが挙げられます。
- 施工の安全や品質の担保
- 建設業法違反の発生や不適格業者の参入などのトラブル防止
- 工期や工程における遅延・トラブルの防止
- 不要な重層下請による生産性低下の防止
つまり、施工における情報を明らかにすることで、トラブルを防止することが大きな目的といえるでしょう。
施工体制台帳の作成義務
施工体制台帳の作成は、民間工事の場合には建設業法第24条8によって以下の場合に義務付けられています。
- 発注者から直接請け負った建設工事に関して締結した下請契約の総額が4,500万円(建築一式工事では7,000万円)以上の場合、作成しなければならない
- 発注者から要求されたときは、施工体制台帳を発注者の閲覧に供しなければならない
- 施工体系図を、工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所に掲げなければならない
また、公共工事の場合には特別法である「公共工事入札契約適正化法第15条」によって以下のように義務付けられています。
- 発注者から直接請け負った建設工事に関して締結した下請契約の金額に関わらず、下請を使った工事は全て作成しなければならない
- 施工体制台帳の写しは発注者へ必ず提出しなければならない
- 施工体系図を、工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所に掲げなければならない
必ず法律に則って施工体制台帳は作成・運用するようにしてください。
施工体制台帳の書き方
それでは、施工体制台帳はどのように記入すれば良いのでしょうか。ここでは、施工体制台帳の書き方を、施工台帳の左側(元請業者に関する情報)→右側(一次下請業者に関する情報)の順に解説します。
1.事業者に関する内容
まずは事業者に関する以下の項目を記載します。
- 会社名・事業者ID
- 事業所名・現場ID
- 建設業の許可
元請業者の会社・CCUS(建設キャリアップシステム)に登録している場合は事業者IDを記入します。
工事を実施する現場事業所名・CCUSに登録している場合は事業者IDを記入します。
元請業者が取得している建設業許可の業種・許可番号・許可(年月日)を記入します。2つの記入欄があるため、「特定建設業許可」「一般建設業許可」を分けましょう。
2.工事に関する内容
工事に関する以下の項目を記入します。
- 工事名称及び工事内容
- 発注者名および住所
- 工期・契約日
工事内容には、建築物の構造や延べ面積などを記入します。
工期の「自」欄には工事開始日を、「至」欄には工事終了日を記入します。また、契約日は、発注者と元請業者が契約した日付を記入します。
3.契約営業所に関する内容
契約営業所の項目には、元請契約と下請契約について記入します。
- 元請契約
- 下請契約
工事請負契約を交わした営業所の名称と住所を記入します。
下請負契約を交わした営業所の名称と住所を記入します。
4.発注者の監督員名などの内容
発注者の監督員や現場代理人、管理技術者・主任技術者などの以下の項目を記入します。
- 発注者の監督員名・権限及び意見申出方法
- 監督員名・権限及び意見申出方法
- 現場代理人名・権限及び意見申出方法
- 監理技術者・主任技術者名
- 建設業法「技術検定」
- 建築士法「建築士試験」
- 技術士法「技術士試験」
- 電気工事士法「電気工事士試験」
- 電気事業法「電気主任技術者国家試験等」
- 消防法「消防設備士試験」
- 職業能力開発促進法「技能検定」
- 監理技術者補佐名
- 一級施工管理技士補
- 一級施工管理技士等の国家資格者
- 学歴や実務経験により監理技術者の資格を有する者
- 専門技術者名
権限及び意見申出方法は、工事請負契約書に記載された内容を記入します。例えば、「請負契約書類第〇条掲載のとおり」「文書による(契約書類〇条のとおり)」などです。
監督員名は、元請業者が選任した監督員のフルネームを記入します。
権限及び意見申出方法は、下請業者との施工に関する意見の申出に関する方法を記入します。例えば、「請負契約書類第〇条掲載のとおり」「文書による(契約書類〇条のとおり)」などです。
現場代理人名は、元請業者に所属する現場代理人のフルネームを記入します。
権限及び意見申出方法は、現場の管理業務と発注者への意見の申出に関する方法を記入します。例えば、「請負契約書類第〇条掲載のとおり」「文書による(契約書類〇条のとおり)」などです。
資格名は、監理技術者・主任技術者に必要な資格を記入します。
資格名は、監理技術者補佐に必要な資格を記入します。
元請業者が配置する場合には、資格内容・担当する工事内容について記入します。※専門技術者は主任技術者の条件を満たすことが必要であるため、資格名には、主任技術者に必要な資格を記入します。
5.外国人建設就労者の従事に関する内容
外国人建設就労者の従事に関する以下の項目を記入します。
- 一号特定技能外国人の従事の状況
- 外国人建設就労者の従事の状況
- 外国人技能実習生の従事の状況
元請契約に一号特定技能外国人(特定産業分野に関する知識または経験をもつ在留資格を保有する外国人)が従事している場合には「有」に〇を、従事の予定がない場合には「無」に〇をつけます。
元請契約に外国人建設就労者が従事している場合には「有」に〇を、従事の予定がない場合には「無」に〇をつけます。
元請契約に外国人技能実習生(建設技能の取得のために来日している外国人)が従事している場合には「有」に〇を、従事の予定がない場合には「無」に〇をつけます。
6.健康保険などの加入状況
健康保険などの加入状況に関する項目をそれぞれ記入します。
- 保険加入の有無
- 事業所整理記号等
「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」における加入状況を選択します。
「営業所の名称」:請負契約にかかる営業所の名称を記入します。
「健康保険」「厚生年金保険」:事業所整理記号及び整理番号を記入します。
「雇用保険」:労働保険番号を記入します。
7.下請負人に関する内容
施工体制台帳の右側は、一次請負業者に関する情報を記入します。左側で記入した内容とほぼ同じ項目となっており、書き方もほぼ変わりません。
施工体制台帳作成時の注意点
施工体制台帳を作成する際には、以下の2つの点に注意が必要です。
一次請負業者別に作成する必要がある
施工体制台帳には、施工業者ごとに担当する工事の範囲を明確にする役割があります。そのため、1つの工事であっても複数の下請業者に依頼する場合には、一次請負業者別に施工体制台帳を作成することが必要です。
複数の一次請負業者がいる場合には、1つの施工体制台帳に記載できないことを覚えておきましょう。
二次請負業者以下がいる場合、再下請通知書の添付が必要
工事によっては一次請負業者だけでなく、二次請負業者が工事の一部を担うことになるケースもあります。
その場合、施工体制台帳には二次請負業者以下の業者は記載できません。代わりに、二次請負業者の情報は、再下請通知書に記載することが必要です。再下請通知書の作成は一次請負業者が行います。
作成後、一次請負業者から元請業者に再下請通知書が提出されるため、元請業者は施工体制台帳に添付してください。
施工体制台帳に添付が必要な書類
施工体制台帳に添付が必要な書類を以下にまとめました。施工体制台帳を作成する際に併せて準備してください。
- 発注者との契約書の写し
- 下請負人が注文者との間で締結した契約書の写し(注文・請書及び基本契約書又は約款等の写し)
- 民間工事の場合で、作成建設業者が注文者となる下請契約以外の下請契約については、請負代金額を除いたもの(元請⇔一次間の契約書には請負代金額の記載が必要)
- 元請負人の配置技術者が監理技術者資格を有することを証する書面(※現場配置の専任を要する工事のときは、監理技術者資格者証の写しに限る)
- 監理技術者補佐を置くときは、監理技術者補佐資格を有することを証する書面
- 専門技術者を置いた場合は、その者の資格を証明できるものの写し(国家資格等の技術検定合格証明書等の写し)
- 監理技術者、監理技術者補佐及び専門技術者の雇用関係を証明できるものの写し(健康保険証等の写し)
施工体制台帳に添付する書類は種類が多く、管理が煩雑になりやすい点に気をつけなければなりません。必要であれば、添付書類の電子化を検討しても良いでしょう。
まとめ
この記事では、施工体制台帳の概要や目的、作成義務のある事業者の条件、書き方について解説しました。
施行体制台帳は「建設業法などの一部分を改正する法律」や「入札契約適正化法」で、公共工事や下請契約の請負代金の総額によっては作成が義務化されています。
この記事で紹介した書き方を参考にして、施工体制台帳を適切に作成、提出してください。
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