【ISO9001・ISO14001サンプル付】ISOマニュアルの作り方・ポイントを解説!

- ISO規格ではマニュアル作成は必須ではない
- 業務における共通理解を促進するため、ほとんどの企業がマニュアルを作成している
ISO9001やISO14001の取得を検討している企業では、マニュアル作成の必要性について疑問を感じることも多いでしょう。
マニュアル作成には、業務がスムーズに進行する側面もあれば、反対に管理に負担がかかる側面もあります。そのため、マニュアル作成のポイントを押さえることが大切です。
この記事ではISO9001やISO14001におけるマニュアル作成の必要性やポイントを解説します。また最後にサンプルも紹介しますので、作成時の参考にしてください。
目次
ISOマニュアルは必須?規格上の位置づけ
ISO認証を取得する際、よく話題になるのが「ISOマニュアルは必ず作らなければならないのか」という点です。結論からいうと、ISO規格を取得するうえで、マニュアル作成は必須ではありません。しかし、多くの企業はマニュアルを作成しています。
ここでは、ISOマニュアルの役割や作成メリット、ISO規格上の位置づけについて解説します。
ISOマニュアルの役割と作成メリット
ISO9001とISO14001においてマニュアル作成は必須ではないものの、事業活動のスムーズな進行においてマニュアルは非常に重要です。マネジメントシステムを運用する従業員に、企業の方針・目標や組織構造、業務プロセスなどの共通認識を与える役割をもっています。
以下に、具体的な作成メリットをまとめました。
業務フローや責任範囲の明確化
誰がどの業務を担当し、どの手順で進めるかが整理されるため、社員全員が理解しやすくなります。
教育や研修に活用できる
新入社員や異動者への教育資料として使えるため、ISOの運用理解を効率的に広げられます。
審査対応の効率化
ISO認証審査の際に、運用状況や体制を示す文書として活用でき、説明がスムーズになります。
ISO規格上の位置づけ
最新のISO9001:2015では、要求事項に記載されていた「品質マニュアル」の規定は削除されました。つまり、マニュアルそのものを必ず作る義務はありません。
しかし、実際には組織が規格の要求事項を正しく理解・運用するために、マニュアルにまとめておくことが有効です。つまり、規格上は必須ではなくても、ISOマニュアルは組織運用の効率化や審査対応を考えると、実質的に必要な文書といえます。
なお、ISO9001:2015の要求事項には、代わりに「プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持する」ことが要求事項に盛り込まれており、完全にマニュアル作成が企業に委ねられたという状況ではないことも現状です。

ISOマニュアルの記載事項
ISO規格のマニュアルを作成する際、具体的にはどのような内容を記載すれば良いのでしょうか。
ISO規格の要求事項を満たすために、企業が取り組むことについて記載します。具体的には、以下のように要求事項の構成に沿って作成することがおすすめです。
1.適用範囲 | ISOマネジメントシステムを適用する事業所や工場などを記載する。 |
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2.適用規格 | 自社に適用する規格(ISO9001:2015など)を記載する。 |
3.用語の定義 | 自社に適用する規格と同様の定義を適用することを記載する |
4.組織の状況 | 会社内外の課題や利害関係者からのニーズを明確化し、適用範囲を決める旨を記載する |
5.リーダーシップ |
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6.計画 |
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7.支援 |
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8.運用 | 品質目標や環境目標を達成するための日々の業務の運用についてのルールを記載する |
9.パフォーマンス評価 |
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10.改善 | 不適合における是正処置の手順やマネジメントシステムの継続的改善について記載する |
ただし、規格の構成どおりに作成すると、専門用語の多さや内容が細かく分類されることにより、マニュアルが分厚くなってしまうでしょう。
そのまま現場に配布したとしても、「よくわからない」という声が出ることも多くあります。規格の要求事項になぞらえるだけのマニュアルは、実際の現場で運用したとしても、使いやすさの点では期待できないため、注意が必要です。
ISOマニュアル作成でよくある失敗例
ここでは、ISOマニュアル作成でよくある失敗例を解説します。
現場で使われないマニュアルになる
マニュアルを作る際に、規格条文をそのまま書き写すだけで、現場の業務フローや具体的手順を反映しないケースがあります。
この場合、実務担当者がマニュアルを読んでも「自分の仕事にどう関係するのか分からない」と感じ、結果としてマニュアルが使われなくなって要因になりかねないため、注意が必要です。
更新が止まり形骸化する
ISOマニュアルは作成して終わりではなく、業務の変化や規格改訂に合わせて更新する必要があります。
しかし、更新ルールが曖昧だったり、マニュアル更新の責任者が決まっていなかったりすると、作ったマニュアルが古いまま放置されるケースがよくあります。実際の業務と乖離していると、現場で使われることがなくなり、形骸化してしまう要因になります。

ISOマニュアルを作成するポイント
ここでは、ISOマニュアルを作成するポイントを解説します。
リスク管理のための対策になっているか
ISO規格において、リスク管理はその規格の目的を達成するうえで非常に重要です。
例えば、ISO9001においては「不良品の発生」「品質の低下」など、ISO14001では「環境汚染」「資源枯渇」などのリスクが考えられます。
こうしたリスクに基づいたアプローチをマニュアルに取り入れることで、組織の目標達成につながります。そのため、潜在的なリスク要因を洗い出したうえで、その対策となる取り組みについてマニュアルを作成しましょう。
マニュアルの管理方法は適切か
作成したマニュアルを適切に管理することは、マニュアルの形骸化、ひいてはマネジメントシステムの形骸化を防ぐために重要です。
例えば、「最新バージョンがどのファイルかわからない」「最終更新者が誰かわからない」といった状態になると、マニュアルの役割である認識の共有が難しくなります。
そのため、バージョン管理や管理責任者の設定、アクセス権限の制御などを行うことが欠かせません。
わかりやすい文章・内容になっているか
マニュアルが従業員にとってわかりやすい内容になっているかどうかは、マニュアルの効果を高めるとともに形骸化リスクを低減するために重要です。
新入社員やベテラン社員、他部署の関係者であっても、マニュアルを読めば業務プロセスがわかるような内容を目指しましょう。
そのためには、専門用語はなるべく避け、一文の長さはなるべく短くすることを意識してください。また図やフローチャート、チェックリストなどを活用することで、直感的な理解を促進できます。
画像、音声、動画マニュアルと併用する
ISO9001マニュアルにおける文書化された情報とは、「テキストで書かれた紙文書」だけを指すものではありません。情報を必要とする人が理解しやすいように、画像や動画、音声などから適切な形式を選べます。
例えば、製造業やサービス業などの現場では、文書だけの手順書では伝わりにくい場面があるでしょう。写真やイラストを用いれば作業内容を直感的に理解でき、動画を組み合わせることで手順や動作の流れをより正確に共有しやすくなります。
また、画像・動画を活用したマニュアルは、新入社員や外国人スタッフなど、多様な人材が理解しやすいという利点もあります。
テキストに限定せず、利用者にとって理解しやすい形式を柔軟に組み合わせることが、マニュアル作成における大切なポイントといえます。
外部コンサルにサポート依頼する
ISOマニュアルを自社だけで作成すると時間と労力が大きくかかり、担当者への負担となります。また、はじめてISO9001認証を目指す企業の場合、「どこまで文書化すべきか」「規格要求事項をどう反映させるか」といった判断が難しく、過剰に分厚いマニュアルを作ってしまうケースも少なくありません。
そこで、多くの企業がISOコンサルタントにサポートを依頼しています。
ISOコンサルタントに依頼することで、文書作成にかかる時間や労力を大幅に削減できるだけでなく、自社の業務プロセスに即したシンプルかつ実用的なマニュアル作成が可能になります。
「自社のノウハウが不足している」「マニュアル作成にかかる負担を軽減したい」といった場合には、まずISOコンサルタントに相談することがおすすめです。
【サンプル】ISO9001・ISO14001マニュアルの具体例
それでは、最後にISO9001・ISO14001マニュアルのサンプルとして、一部分を紹介します。マニュアル作成時の参考にしてください。
ISO9001
ISO9001マニュアルのサンプルとして、「4.組織の状況」に関して紹介します。
4.組織の状況
4.1組織及びその状況の理解
当社は、組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する当社の能力に影響を与える、外部及び内部の課題をISO事務局の議論により明確し、経営計画書で文書化にする。
当社は、これらの外部及び内部に関する情報をISO事務局で監視し、経営会議でレビューを実施する。4.2利害関係者のニーズおよび期待の理解
当社は、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する組織の能力に影響又は潜在的影響を与えるため、以下の事項を経営計画書で明確にする。
- 品質マネジメントシステムに関連する利害関係者
- 品質マネジメントシステムに関連する利害関係者の要求事項
また、これらの利害関係者及びその関連する要求事項に関する情報をISO事務局で監視し、レビューを実施する。
4.3品質マネジメントシステムの適用範囲の決定
当社は、品質マネジメントシステムの適用範囲を決定するために、以下の事項を考慮して、適用範囲を決定する。
- 4.1に規定する外部及び内部の課題
- 4.2に規定する、密接に関連する利害関係者の要求事項
- 組織の製品及びサービス
また、決定した適用範囲は、「品質マニュアル」に明記し、利用可能な状態に維持する。
4.4品質マネジメントシステム及びそのプロセス
当社は、ISO9001:2015の要求事項に従って、必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む、品質マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、かつ、継続的に改善を行う。当社は、品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織全体にわたる適用を品質マニュアルで決定し、以下の事項を実施する。
- プロセスに必要なインプット、及びこれらのプロセスから期待されるアウトプットを明確にする。
- プロセスの順序及び相互関係を明確にする。
- プロセスの効果的な運用及び管理を確実にするために必要な判断基準及び方法(監視、測定及び関連するパフォーマンス指標を含む。)を経営計画書で決定し、適用する。
- プロセスに必要な資源を明確にし、及びそれが利用できることを確実にする。
- プロセスに関する責任及び権限を経営計画書で割り当てる。
- 6.1の要求事項に従って決定したとおりにリスク及び機会に取り組む。
- プロセスを内部監査や経営会議で評価し、これらのプロセスの意図した結果の達成を確実にするために必要な変更を実施する。
- プロセス及び品質マネジメントシステムを改善する。
ISO14001
ISO14001マニュアルのサンプルとして、「1.適用範囲」に関して紹介します。
1.適用範囲
当社は「環境マネジメントシステム要求事項」に準拠した環境マネジメントシステムを構築する
本マニュアルは、当社の環境マネジメントシステムの確立、導入、運用、監視、見直し、維持および改善の枠組みを規定する(1)運用事業
・産業機械の部品製作および組み立て
・取付具、金型の製作設計(2)適用組織
別紙、組織図で示す組織(3)適用事務所
事務所名:株式会社サンプル製作所
事務所所在地:東京都港区芝浦○丁目○番○号XXXXビル

ISO9001品質マニュアルの作り方
ここでは、ISO9001品質マニュアルの作成方法について解説します。ISO9001品質マニュアルを作成するには、いきなり業務や作業に関するルールを書きこむのではなく、事業活動の全体像を整理したうえで、誰でも理解できる形に文書として落とし込むことがおすすめです。
一般的なISO9001品質マニュアルの作成方法を、以下にまとめました。
1.品質方針や経営目標の確認
ISOマニュアルは組織の品質方針や経営目標と整合している必要があります。まずは品質方針や経営目標の内容を把握し、品質マニュアルの基本的なコンセプトを固めます。
2.ニュアルの対象範囲・構成の設計
マニュアルでどの範囲をカバーするか(製品・サービスなど)を決めて、章立てや構成を設計します。ISOの規格要求事項をもとに、全体の流れを整理しましょう。
3.要求事項の洗い出し
規格に基づいて、マニュアルに盛り込むべき要求事項を整理します。規格の条文をそのまま書くのではなく、自社の運用に合わせて具体的に落とし込みます。
4.自社独自の工程・手順を追加
規格の要求事項に加えて、自社固有の業務フローや手順、注意点を加えます。現場で実際に運用される内容を含めることで、実用的なマニュアルになります。
5.マニュアルの下書き作成・レビュー
内容を整理したら下書きを作成し、関係者によるレビューを行います。理解しやすい表現か、漏れや重複はないかを確認しましょう。
6.運用
作成したマニュアルを社内で共有し、日々の業務に沿って運用します。運用時に問題点や改善点が見つかることもあるため、実務と連動させることが重要です。
7.定期的に見直し、更新
品質マニュアルは一度作ったら終わりではありません。規格改訂や業務変更、改善活動に応じて、定期的に見直し・更新を行い、最新の運用状況を反映させましょう。
まとめ
この記事では、ISO9001・ISO14001のマニュアル作成のポイントを解説し、サンプルを紹介しました。
ISO規格では、マニュアルの作成は義務ではないものの、従業員が共通認識をもつことが可能であることから、ほとんどの企業がマニュアルを作成しています。現場が使いやすいマニュアルを意識することで、形骸化を防ぎ、業務の進行やマネジメントシステムの運用をサポートしてくれる存在になるでしょう。

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ISOコンサルタントの仕事で特に意識していることは、3つの「メ」です。 1つ目の「目」は、大まかな概要を的確に捉えること。お客様は忙しいからこそ、私たちのようなアウトソーシングに依頼をしています。したがって、短時間的に業務概要を掴むことは非常に重要なのです。 2つ目の「眼」は着眼点。企業にとってどの部分のISOを軽くし、どの部分を充実させるのか。これによって成果物の質が変わってきます。 そして3つ目の「芽」は未来です。ISOを構築するだけではプロとは言えません。未来志向の目標設定。成長の「芽」が出る取り組みを織り込むことを重視しています。
特に外部審査時の説明資料としての役割も果たすため、形式にとらわれず有効活用することが望ましいです。