国際標準化機構(ISO)とは?ISOの種類や取得メリットをわかりやすく解説
- 国際標準化機構(ISO)とは、貿易のやり取りをスムーズにするための標準化を推進する非営利法人
- ISO規格には、「モノ規格」や「マネジメントシステム規格」がある
「ISO の担当者になったけど、何をすればいいかよくわからない」。企業のISO担当者の中には、そんな悩みを抱えている方も多いかもしれません。ここでは、ISOに関する基本的な理解から、代表的なISO規格 の種類とそれぞれの目的、マネジメントシステム認証 制度の仕組みなどを紹介していきます。国際標準規格であるISOの目的や効果の基本を押さえ、組織の中で最適な活用方法のヒントに繋がればと思います。
目次
国際標準化機構(ISO)とは?
国際標準化機構とは「ISO(International Organization for Standardization)」というスイス・ジュネーヴに本部を置く非営利法人の和訳です。1946年に設立されたこの国際標準化機構の目的は、世界中の製品の「標準化 」、つまりISO規格による、安全・安心で信頼性の高い製品や食品・サービスを継続的に生産することです。
この規格の適用により、あらゆるものが同じの仕様、プロセスで動くことが可能です。また、ISO標準は認定 製品が国際的に設定された基準に準じていることを保証しているので、製品・サービスの消費者またはエンドユーザー保護の観点からも有効といえるでしょう。
JIS規格、IEC規格との違い
ISO規格の他にもいくつかの規格が存在しています。それぞれの規格との違いをまとめました。
- ISO規格:国際標準化機構が運用している国際的な基準となる国際規格
- IEC規格:電気・電子に関する技術における国際的な基準となる国際規格
- JIS規格:日本産業規格のことで、日本の産業製品・サービス・データなどにおける基準となる国家規格
IEC規格では、ISO規格には取り扱いのない電気・電子に関する規格を運用しています。情報技術全般の規格においては、両者の範囲が重複することから、ISO/IEC合同技術委員会を設立してISO/IEC規格として規格化するなど、協力してIT標準の開発・維持・促進を行っています。
また、ISO規格やIEC規格は原文が英語やフランス語であるため、翻訳した際のニュアンスのズレが発生することを防ぐため、JISが一律で翻訳しています。そのため、例えば、ISO規格について検索すると、「JIS Q 9000:2015(ISO 9000:2015)」というようにJISとISOが並列して記載されているのです。
国際規格ISOの種類
ISO規格には、さまざまな産業における種類があります。各規格は、以下の2つのタイプに分けられます。
製品自体を対象とした規格
ISO規格には2つのタイプがあり、その一つが「製品自体」を対象とした規格です。もともとISO規格は、ねじや製品の使用などに対して制定されたルールでした。日本製の小型ラジオにISO規格のねじが使用されたことで、世界中どこにいても修理や交換などができるようになったのです。
例えば、以下のような規格があります。
- ISO7001:ピクトグラム
- ISO7010:危険標識・警告標識・安全標識
- ISO/IEC7810:カードの形状(クレジットカードなど)
このように、私たちの生活において欠かせないものにも、ISO規格に沿ってつくられているものが多くあるのです。
マネジメントシステムを対象とした規格
また、ISO規格は会社などの企業活動に対するマネジメントシステム自体の質も担保しています。マネジメントシステムに対する代表的なものは、ISO9001やISO14001です。
会社として、一律に高品質
なものを提供するには、管理(マネジメント)が必要です。特に100人1000人と増えていくと必要不可欠となります。
そこでISOではマネジメントシステムを機能させるために、「責任」と「権限」を明確にし、各種「規定」や「手順」などをルール化します。それをもとにPDCAを回すことで、継続的に改善ができる仕組み、体制が作られます。
ISOマネジメントシステム規格認証を取得している企業は、継続的にPDCAを回し改善する仕組みを持ち、有効な運用ができる組織として対外的な評価を得ることができます。
マネジメントシステムを対象としたISO規格の種類
ISO規格にはさまざまな種類があり、目的と標準化する対象によって規格が異なりますが、ここでは代表的な4つの規格についてご紹介します。
ISO9001(QMS:品質マネジメントシステム)の目的
企業として品質の良い製品を作ることは当然ですが、ISO9001の目的は、単純に「良い製品を作る」だけでなく、「良い製品(サービス)を作るためのシステム自体の管理」です。そうしたシステムの構築・運用により、顧客満足度の向上を最終目標としています。
ルールを作り、PDCAを回し、継続的に品質(顧客満足度)を維持・向上させるシステムになります。
ISO14001(環境マネジメントシステム)の目的
ISO14001は、環境マネジメントシステムに関する規格です。ISO14001の目的は、事業活動における環境リスクを明らかにし、そのリスクを低減していく仕組みをつくることで、環境への取り組みを支援することです。そのため、組織に介在するすべてのヒトやモノ(水や空気など)に対して、組織が与えている影響を明確にすることが求められます。
有益な影響を増大させ、有害な影響を低減させるための対策を講じる仕組みが構築されていることが重要なポイントとなっています。
ISO22000(食品安全マネジメントシステム)の目的
ISO22000は、食品安全マネジメントシステムに関する規格です。ISO22000の目的は、食品を作り出す過程において、製品部門のみならず全社的な食品安全の仕組みづくりと食品安全管理手法を確立し、食品危害・事故を防ぐことです。
ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)の目的
ISO27001 は、情報セキュリティマネジメントシステムに関する規格です。ISO27001の目的は、情報セキュリティにおける三大要素である「機密性 」「完全性 」「可用性」の3つのバランスを高めることです。自社の保有する情報資産を守りつつ、情報を有効に活用するための組織の在り方を示します。
ISO規格が普及した背景とは?
最初のISOマネジメントシステムの認証規格は、製品やサービスの品質を向上させる体制をつくる規格であるISO9001でした。
ISO9001が求められるようになった背景には、産業革命以降に大量生産が可能になったことが挙げられます。効率的に大量生産を可能にしつつ、不良品が発生する可能性や生産コストを下げるツールとして、品質管理や品質保証は急速に普及しました。
また、各国ごとに異なる規格を使用していたため、国際的な輸出入においての障害となったことで、世界的に統一した規格が求められるようになりました。
こうした背景のもと、マネジメントシステムの認証制度は普及していきましたが、徐々に国内の顧客への信頼を獲得したり、社内業務の効率化などを図ったりする目的で取得する組織が増え、社会的に普及したのです。
ISOのマネジメントシステム認証制度の仕組み
ISOマネジメントシステム規格を取得するには、「要求事項
」という基準をクリアしなければなりません。当該組織が要求事項を満たしているか厳正に精査し、認証を受けるに相応しいと判断された場合、認証取得となります。
この一連の流れを「マネジメントシステム認証制度」といい、企業は自社のマネジメントシステムをこの規格に則って構築・文書化
し、安定的に運用することで審査後承認されます。
認証を行うのは、「日本適合性認定協会 (JAB)」等の認定機関 から認定を受けた、日本に50社以上存在する「認証機関」です。
こうした認定機関は日本だけでなく世界各国に存在しており、各国の認定機関が相互認定するという形式が取られています。そのため、どの認証機関から認証を受けた場合でも世界中でレベルの差がないものと認識されています。
ISO認証取得のメリット
ISO認証取得の効果は様々です。
社会的信用を獲得できる
代表的なものとして、第三者の証明による「社会的信用」が挙げられます。
利害関係の存在しない中立的な認定機関からマネジメントシステムの認証を得ることで、そのシステムの堅牢さや標準性の証明になります。この認定は社会的信頼につながり、エンドユーザーへのブランディングや事業間のビジネス推進に大きなメリットをもたらすでしょう。
売上が向上する
社会的な信用が増すことで、消費者や顧客から支持され、売上の向上につながる可能性があります。また、入札条件にISO規格の取得が挙げられている場合があるため、取引先の拡大が期待できるでしょう。
さらに、マネジメントシステムを構築する過程で、自社の業務プロセスや仕組みの最適化を目指していきます。その結果、業務効率が改善し、生産性向上につながり、収益の拡大につながる可能性も見込めます。
無駄な費用・工程を削減できる
マネジメントシステムの構築する過程で、業務プロセスの見直しが行われるため、無駄な工程があった場合には是正につながります。また、ルールやマニュアルが明確になることで、個々の従業員のスキルやノウハウによらない標準化が実現できるようになります。
従業員の教育においても、手順が明確化されて所要時間が短縮されることによって無駄な工程を低減できるでしょう。
こうした無駄な工程を削減することにより、かかる人件費や作業費の削減も期待できます。
マネジメントシステムの継続的改善が見込める
第三者の視点が入ることによって「問題点が発見しやすくなる」という点があります。第三者機関である認証機関が審査する際、審査員は組織が要求事項を満たしているかチェックします。仮に、要求事項を満たしておらず、「不適合」となった場合は、組織が是正措置を講じることで、マネジメントシステムが改善されていくわけです。
そもそも、ルールを文書化して運用するため、業務改善や業務最適化という側面もあります。そのため、属人的な作業が減少し、「誰でも標準的で安全な製品を作る」ことが可能になるのです。ルール化することで、定期的な審査によるマネジメントシステムの継続的な改善が期待できる点も、メリットといえるでしょう。
また、認証を維持するために毎年審査を受けることになるので、一時的なものではない、継続的な品質改善が期待できます。
ISO認証に求められるPDCAサイクル
ISO認証には、マネジメントシステムの構築だけでなく、継続的なPDCAサイクルの回転が求められます。PDCAとは、「計画・方策(Plan)」「実施(Do)」「見直し(Check)」「改善(Act)」の頭文字をつなげた略称で、マネジメントシステム運用においても、継続的な改善を行っていくことが要求事項として定められているのです。
具体的には、まず管理対象の問題点を整理し、リスクの大きさに応じて優先順位を決めます。
その後、問題解決のための「計画・方策(Plan)」を策定し、ルール化・文書化して「実施(Do)」します。
さらに、実施した結果が適切に課題解決に繋がったか「見直し(Check)」それを基に既存のルールや実施方法を改変するなどの「改善(Act)」を行うという流れです。
この流れは、あらゆるISOマネジメントシステム規格の運用においても同様になります。
組織が置かれている状況は、業種や会社の規模によって異なるため、構築するマネジメントシステムは同一のものでなく、改善のためのPDCAサイクルも組織に応じた独自のものが求められます。
リスクが高く、優先度の高いものから順に対処していくことで、「ISO認証の取得」だけではない、有効性が高く実際に現場で機能するマネジメントシステムが構築されていくのです。
まとめ
今回は、国際標準化機構(ISO)についてご紹介しました。
国際標準化機構は、「モノ規格」や「マネジメントシステム規格」などのISO規格を発行する機関です。この期間のおかげで、今日国家間の取引がスムーズに行われていると言っても過言ではないでしょう。
ネジのサイズが統一されていなければ、カードのサイズが、紙のサイズが、非常口のマークが……考えただけで恐ろしいですね。
「モノ規格」以外にも、マネジメントシステム規格の認証を取ることで、対象の企業活動における管理の仕組みが国際レベルでできている、という証となるので、取引や企業イメージに良い効果を与えます。企業拡大を目指す方は、取得をご検討してみてはいかがでしょう。
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