• 医療機関におけるISO規格では、安全性が重視される
  • ISO規格を取得することで、法規制遵守の強化や医療事故・ヒヤリハットの防止などのメリットが得られる

人の命や健康に関わる病院や医療機関においては、何よりも安全性が優先されます。そのため、さまざまな法令を遵守し、環境を整備することが求められます。

一つひとつの課題に対応していくには手間や労力がかかりますが、マネジメントシステムを導入して仕組み化することで、効率化が望めるでしょう。

マネジメントシステムの代表的な規格として、ISO規格が挙げられます。病院や医療機関向けのISO規格もありますが、よくわからないという医療関係者の方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では医療に関連するISO規格の種類やメリット、取得の流れを解説します。

ISOとは

ISOとは、スイスに本部を置く非営利法人「国際標準化機構のことです。
世界各国の国内標準化団体で構成されており、世界中の製品・サービスの標準化を目的に、1946年に設立されました。
そして、ISOが製品・サービスの標準化のために制定・運営しているものがISO規格です。

ISO規格は、世界的な共通基準として、国際間の貿易を円滑化する役割を果たしています。
というのも、各国が独自の基準を設けているため、それぞれの国の基準に則った製品・サービスを輸出入すると、形状や性能、安全性などに何かしらの不都合が発生する可能性があります。
そのため、ISO規格という国際的に共通の基準を設けることで、スムーズな輸出入につながるのです。

関連記事:【入門】ISOとは?規格の種類や認証制度をわかりやすく解説

ISO規格の2つの分類

ISO規格は、「モノ規格」と「マネジメントシステム規格」の2つに分類されています。ここでは、それぞれの概要をまとめました。

モノ規格
モノ規格とは、製品のサイズや形状といった製品自体に関する規格です。
わかりやすい例でいえば、クレジットカードのサイズや非常口のマーク、紙のサイズに関する規格が挙げられます。
マネジメントシステム規格
マネジメントシステム規格とは、組織の目標を達成するための仕組みに関する規格です。
例えば、製品・サービスの品質向上を目指す品質マネジメントシステムの規格、情報セキュリティリスクの低減を目指す情報セキュリティマネジメントシステムなどが挙げられます。

モノ規格やマネジメントシステム規格の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISOのマネジメントシステム規格の種類一覧!概要をわかりやすく解説

ISO規格と病院機能評価の違い

ISO規格の概要を確認すると、病院機能評価と似ていると感じる医療関係者の方もいるかもしれません。
両者は、どちらも病院の質を向上させることを目指していますが、以下のように評価の観点が異なります。

  • ISO規格:組織の目標に向かって、業務プロセスを継続的に改善する仕組みを構築・運用できているかが評価対象
  • 病院機能評価:病院における医療機能のレベルそのものが評価対象

また、病院機能評価は日本医療機能評価機構によって行われる国内基準であり、国際規格であるISO規格とは適用される範囲も異なります。

両者は、このように目的や適用範囲が異なるため、両方を取得する病院も多くあります。自院で強化したい点を明確にしたうえで、どの認証資格を取得するかを決定しましょう。

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医療に関連するISO規格の種類一覧

ここでは、医療に関連するISO規格の種類一覧を紹介します。

ISO9001(品質マネジメントシステム)

ISO9001とは、品質マネジメントシステムに関する規格です。
製品・サービスを品質向上する仕組みを構築・運用することで、顧客満足度の達成を目指します。

医療に直接関連する規格ではありませんが、業務プロセスを合理的に管理することで、患者に対する医療サービス品質の向上につながります。また、リスクマネジメントを行うことで、医療事故やクレームの低減も期待できるでしょう。

関連記事:【基本】ISO9001とは?概要や認証方法をわかりやすく解説

ISO14001(環境マネジメントシステム)

ISO14001とは、環境マネジメントシステムに関する規格です。
組織の活動における環境リスクを特定・分析し、リスクを低減する仕組みを構成・運用します。

ここでいう環境とは、自然環境だけでなく、地域社会や取引先・顧客、従業員などの組織を取り巻く環境すべてに対するリスクを検討することが必要です。

そのため、医療に直接関連する規格ではありませんが、「自然環境や地域社会、患者などが安心して利用できる医療機関」として感染性廃棄物や化学薬品の適切な処理の継続や法令遵守の強化、地域社会・患者への信頼獲得などにつながります。

関連記事:【初心者向け】ISO14001とは?導入企業や取得メリットをわかりやすく解説!

ISO13485(医療機器・体外診断用医薬品に関するマネジメントシステム)

ISO13485とは、医療機器に関する品質マネジメントシステムの規格です。
他の規格とは異なり、世界の医療機器法令規制の整合性の促進を目的として制定されています。

ISO13485が対象としている製品は以下の3つです。

  • 医薬品医療機器等法(薬機法)で指定されている医療機器や体外診断用医薬品(埋め込み医療機器を含む)
  • 他国で指定されている医療機器や体外診断用医薬品(埋め込み医療機器を含む)
  • 上記製品に使用されている部品・材料・素材

これら製品の設計・製造・据付、その他サービスを行う医療機器業界に関与する組織は、ISO13485を取得することで、法令遵守や国際的な輸出などのビジネスチャンスの拡大などにつながります。

関連記事:【基本】ISO13485とは?メリットや要求事項をわかりやすく解説

ISO14971(医療機器へのリスクマネジメント)

ISO14971とは、医療機器へのリスクマネジメントに関する規格です。
医療機器の設計・開発、製造、使用、保守、廃棄といったライフサイクル全体にわたって、リスクを特定し、分析・評価、管理します。

主に医療機器メーカーを対象としており、医療機器に関連するリスクを管理することで、リスク発生の低減、医療機器の安全性の向上につながります。

ISO15189(臨床検査室の認定)

ISO15189とは、臨床検査室における品質マネジメントシステムや臨床検査の技術・能力に関する規格です。
臨床検査室に特化しており、技術・能力そのものだけでなく、技術・能力を管理する仕組みを整備します。

ISO15189の取得により、臨床検査に関する事故やヒヤリハット発生の防止、診療報酬の加算につながります。

医療に関連するISO規格を取得するメリット

ここでは、医療に関連するISO規格を取得するメリットを解説します。

業務の効率化

ISO認証を取得する際に、業務プロセスを可視化したうえでムダな作業や非効率な作業がないかどうかを見直します。またスタッフの役割・責任を明確にすることで、不明瞭だった作業プロセスがなくなり、責任の所在も明らかになります。

こうした取り組みの結果、業務効率化につながります。業務が効率化することで、スタッフは患者やその家族への対応に注力できるようになり、さらなる業務の質の向上が期待できるでしょう。

法規制遵守の強化

医療機関においては、患者の命に直接関わる活動を行うため、安全性が重視されます。そのため、特に医療に関連するISO規格では、何よりも法規制を遵守することを目的としています。

ISO規格を取得する過程で、組織が遵守すべき法規制を明らかにして、業務プロセスやマニュアルに落とし込んでいきます。こうした取り組みの過程で、法規制遵守がさらに強化されるでしょう。

医療事故・ヒヤリハットの回避

ISO規格は、「取得したら取り組みが完了する」ものではなく、「取得後も運用を継続し、組織の体制を継続的に改善する」ことを求めています。

そのため、ヒヤリハットやインシデントが発生した場合には、その原因を追究して同じ事象が発生しないように改善しなければなりません。こうした取り組みを継続することで、ヒヤリハットやインシデント、医療事故の回避につながります。

患者や家族からの信頼度の向上

ISO規格は国際的に普及している規格であることから、取得したことをアピールすることで患者やその家族からの信頼度の向上につながります。

また患者やその家族がISO規格を知らなかったとしても、ISO規格を取得する過程で医療サービスの質が向上することで、顧客満足度の向上が期待できます。

医療スタッフの働きやすさ向上

業務プロセスが標準化されることで、属人的な仕事が減り、誰であっても同じ品質の仕事ができるようになります。ムダな作業や非効率な作業が見直されることで、残業の削減や精神ストレスの低減も期待できるでしょう。

また法規制遵守が強化される過程で、職場の衛生面や安全面も整備され、安心して仕事に取り組める職場づくりにつながります。

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医療に関連するISO規格を取得する流れ

ここでは、医療に関連するISO規格を取得する流れを解説します。

1.ISO規格取得の事前準備を行う

ISO規格を取得することを決めたら、事前準備として以下の点について検討しましょう。

  • どのISO規格を取得するか
  • ISOコンサルに取得サポートを依頼するか
  • ISO担当者の選定
  • 審査機関の選定

ISO規格の取得がはじめてでどのように進めたら良いかわからない場合には、まずISOコンサルにサポート依頼を行いましょう。組織の方針や要望などを伝えることで、「どの規格の取得が適しているか」「どの審査機関がおすすめか」などを提案してくれます。

そのため、多くの組織がISO規格を取得する際にコンサルティング会社を利用しています。ISOコンサルの詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO取得の流れを「自社取得」と「コンサル取得」を徹底比較

2.マネジメントシステムを構築する

事前準備を行ったら、実際にISO規格の取得のためのステップに入ります。
各ISO規格には、組織が達成すべき要件を「要求事項」としてまとめています。要求事項をよく理解し、その要求事項のとおりにマネジメントシステムを構築してください。

ISO9001やISO14001は、以下のように共通化された要求事項の構成が用いられています。

  1. 適用範囲
  2. 引用規格
  3. 用語及び定義
  4. 組織の状況
  5. リーダーシップ
  6. 計画
  7. 支援
  8. 運用
  9. パフォーマンス評価
  10. 改善

このうち「1.適用範囲~3.用語及び定義」は、規格の説明であるため、実際のマネジメントシステムの構築に関する要求事項は「4.組織の状況~7.支援」です。

ただし、ISO13485やISO14971、ISO15189は対象が限定されていることから、要求事項も特化した内容になっています。そのため、ISOコンサルのサポートを受けながら取り組むことがおすすめです。

ISO9001やISO14001といった基本的なマネジメントシステム構築の流れは、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO規格のマネジメントシステム構築の流れについて

3.マネジメントシステムを運用する

マネジメントシステムの運用に関する要求事項は、先ほどの要求事項の項番のうち「8.運用~改善」の部分です。
構築したマネジメントシステムを実際に運用して、「本当にマネジメントシステムが要求事項に適合しているか」「マネジメントシステムが有効に機能するか」を確認・評価する部分です。問題点があれば、改善案を検討し、対策を実施します。

このように、ISO規格ではPDCAサイクルを回すことで、より良いマネジメントシステムへと改善していきます。

4.登録審査を受ける

認証機関(審査機関)に依頼して、登録審査を受けます。登録審査は、以下の2つの段階に分けられています。

  • 一次審査(書類審査):マネジメントシステムに関する書類を確認する段階
  • 二次審査(実地審査):現地に審査員が訪問し、トップマネジメントや幹部、管理者、担当者などへのヒアリング、現地の視察により、マネジメントシステムの適合性を確認する段階

両方の審査に合格することで、ISO規格を取得できます。

なお、ISO規格の有効期限は3年で、取得後も維持審査や更新審査を受ける必要があります。継続して運用を継続し、マネジメントシステムの改善を目指しましょう。

関連記事:ISOの審査とは?審査の流れや認証機関などをわかりやすく解説

まとめ

この記事では、医療に関連するISO規格の種類やメリット、取得の流れを解説しました。

医療機関がISO規格を取得することで、法規制遵守の強化やヒヤリハット・医療事故の防止などさまざまなメリットが受けられます。組織体制を強化できるため、病院機能評価の取得とともに取り組むことが効果的です。病院・医療関係の方は、ISO規格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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