【基本】GMP三原則とは?対象や具体的な取り組みを解説
- GMPとは、世界的に法令として定められている「適正製造規範」のこと
- GMPの対象は、医薬品・化粧品・食品製造が該当する
私たちが生活するのに欠かせない製品の多くは、安全性や品質についての議論を重ねたうえで市場に提供されています。その中でも特に安全性や品質に注意しなければならないものに医療機器や食品、化粧品といった身体に直接影響を与える製品が挙げられます。
そうした製品において遵守すべき基準が、GMPです。そのため、これから医療機器や食品、化粧品製造に携わる企業はGMPについて理解することが重要です。
そこで、この記事ではGMPの概要や三原則、対象となる分野、具体的な取り組みについて解説します。
目次
GMPとは
GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)とは、「すべての製造工程における製造管理や品質管理の基準」のことです。人の健康や安全に直接関係する製品の製造において、安全性や品質を確保するために制定されました。
1960年代にアメリカで生まれた考え方で、医療品や食品の製造に関わる事業者に対して法的にGMPの採用を義務付ける州も多くあります。その考え方は現在、世界中で導入されており日本においてもGMPを採用する事業者が増えています。
GMPの対象
GMPの対象となっている分野は、医療機器・化粧品・食品にかかる業種です。以下に主なGMPの種類についてまとめました。
GMPの種類 | 概要 |
---|---|
医薬品GMP | GMP省令により、製造管理や品質管理に関する基準が明文化、法令により義務化されている |
医薬部外品GMP | 医薬品GMPと同様に明文化、法令により義務化されている |
化粧品GMP | 国際規格ISO22716に基づいた日本化粧品工業連合会の自主基準 |
健康食品GMP | 厚生労働省の「健康食品GMPガイドライン」に基づき、民間団体の第三者機関が審査を実施している |
日本では、医薬品GMPと医薬部外品GMPが法令化されています。そのため、医薬品と医薬部外品においてはGMPを遵守しなければ製品を販売できません。
また化粧品GMPにおいても法令化こそされていませんが、国際規格であるISO 22716に適合しているため、化粧品業界のスタンダードな基準として定着しています。
このようにGMPは日本においても注目を集めている基準であり、さまざまな認証や考え方のもとGMPが取り入れられています。
GMPの三原則と具体的な取り組み例
ここでは、GMPの三原則である「人為的な誤りを最小限にすること」「汚染及び品質低下を防止すること」「高い品質を保証するシステムを設計すること」について解説します。三原則を遵守することで、質の高い製品の製造につながります。
人為的な誤りを最小限にすること
製品製造においては人の手が必ず必要になることから、人為的なミスをゼロにすることは難しいでしょう。しかし品質管理において、人為的な誤りを最小限に留めるように対策をすることは非常に重要です。
具体的な取り組み例
人為的な誤りを最小限にするには、「業務に関わる従業員に関する教育」「業務に関わる管理体制」「業務に関わる機器・設備」といった面から検討することが大切です。
例えば、業務に関わる従業員には製造手順や品質管理規程などの理解を深めるように教育訓練を実施することが必要です。管理体制においては、属人化により品質にバラつきが出ないように作業手順書や作業指示書などによる標準化することやチェック体制の構築、責任者の明確化などが考えられます。
汚染及び品質低下を防止すること
製造工程で製品が汚染していたり、品質が低下したりすると、完成品の安全性や品質を確保できません。そのため、汚染や品質低下の原因を除去することは非常に重要です。
具体的な取り組み例
汚染及び品質低下を防止するには、「衛生教育の徹底」「セキュリティ体制や衛生管理体制」「機器・設備」といった面から検討することが大切です。
例えば、作業員における衛生教育や日々の衛生管理(清掃や消毒)の徹底、品質低下を防ぐためにアクセス制限を設ける、衛生管理手順の作成、作業室を専用化することなどが挙げられます。
高い品質を保証するシステムを設計すること
高品質な製品を製造するには、設備や従業員の教育などの取り組みを一つずつ行うのではなく、すべての取り組みを包括的に管理するシステムを設計することが欠かせません。ここでいうシステムとはソフトウェアのことではなく「品質管理システム」「品質マネジメントシステム」のことです。
具体的な取り組み例
高い品質を保証するシステムの設計には、品質部門と製造部門を分離させる、品質方針 ・品質目標の策定、品質マニュアル ・ルール、手順書の 文書化 、構造設備の合理的な配置などが挙げられます。
GMPの三原則を遵守するためのハード・ソフトの例
GMPの三原則を遵守するための取り組みを考えるときには、「ハード(構造設備)」と「ソフト(管理体制や工程・品質管理)」の両面から考えることが大切です。
ここでは、医薬品GMP・食品GMP・化粧品GMPにおける「ハード」と「ソフト」の例を紹介します。
医薬品GMP
医薬品GMPにおけるハード・ソフトの例を以下にまとめました。
ハード(構造設備) |
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ソフト(管理体制や工程・品質管理) |
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食品GMP
食品GMPにおける取り組み例を以下にまとめました。
ハード(構造設備) |
|
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ソフト(管理体制や工程・品質管理) |
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化粧品GMP
化粧品GMPにおける取り組み例を以下にまとめました。
ハード(構造設備) |
|
---|---|
ソフト(管理体制や工程・品質管理) |
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品質向上にはISO規格の取得がおすすめ
製品の品質向上には、GMPの遵守だけでなくISO規格の取得がおすすめです。ISO規格とは、ISO(国際標準化機構)が運営している国際規格のことです。
医薬品GMPにおいてはISO規格に準拠した内容に改訂されていたり、食品GMPにおいてはGMPの考え方がISO規格に取り入れられていたりするため、ISO規格を取得することでGMPの遵守につながります。
ISO13485(医薬品)
ISO13485とは、「医療機器に関する品質マネジメントシステムの国際規格」です。
この規格ならではの特徴には、「世界の医療機器法令規制の整合性を促進することが規格の目的」や「安全性を最優先するために法令を遵守したマネジメントシステムの構築が求められていること」が挙げられます。
ISO13485の取得が取引条件である場合や欧米などの国やエリアにおいては輸出する際の必須条件となっている場合があるため、特に海外展開を検討している場合にはISO13485の取得がおすすめです。
ISO13485の詳細は、以下の記事をご覧ください。
ISO22000(食品)
ISO22000とは、「食品安全マネジメントシステムに関する国際規格」です。
品質マネジメントシステムの規格であるISO9001
や食品安全管理のガイドラインであるHACCPの考え方が取り入れられています。食品事故の発生リスクを低減し、消費者に安全な食品を提供することを目的としています。
食品に対する安全性を求める社会の声が増大しているため、取引先からISO22000の取得要請を受ける事例も散見されています。取引先や消費者からの信頼度獲得のために、ISO22000の取得はおすすめです。
ISO22000の詳細は、以下の記事をご覧ください。
ISO22716(化粧品GMP)
ISO22716とは、「化粧品の製造に関する品質管理・安全性に関する国際規格」です。
製品管理の過程における不具合を防ぎ、市場回収を防止するために、原材料の調達~出荷における製造工程すべてに関わる管理基準となっています。
日本化粧品工業連合会が「適正製造規範(化粧品GMP)」の自主基準に採用しているため、日本におけるスタンダードな基準として機能しています。
また世界的にもISO22716に考慮した基準が設けられているため、取得することで自社製品の品質や製造体制を取引先や消費者にアピールできます。
ISO22716の詳細は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、GMP三原則やその具体的な取り組み例について解説しました。
自社におけるハード・ソフトをGMP三原則の観点から見直すことで、各業界における製品の安全性や品質を向上させられます。GMP三原則を遵守できる体制を目指して、品質管理に取り組むと良いでしょう。
またGMPに関連したISO規格を取得することで、GMPの遵守にもつながります。国際規格でもあるため、海外進出を検討している場合にはより強力なアピールポイントになります。GMP遵守のための取り組みを実施する際には、自社の業種に適したISO規格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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