• ISO39001とは、道路交通安全マネジメントシステムに関する国際規格
  • ISO39001は、道路交通に関わる幅広い業種の組織が取得可能

日本国内では、道路交通の安全性を高めるために国や行政、企業がさまざまな取り組みを実施しています。

ISO 39001は組織の道路交通安全に関する体制が、国際的な基準を満たしているかどうかを認証する国際規格 です。しかし、すでに交通安全が高いレベルにある日本において、ISO39001の取得メリットがわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事ではISO39001の概要や対象範囲、要求事項、取得企業の事例を解説します。

ISO39001とは

ISO39001とは、道路交通安全マネジメントシステム(RTSMS)に関する国際規格です。道路交通安全に継続的に管理する体制を構築・運用することにより、道路交通事故の発生による死者や重傷者の撲滅を目的としています。

2012年に制定された比較的新しい規格であるため、親しみのない方も多いかもしれません。しかし、日本においても道路交通安全に対する社会的なニーズは非常に高いため、道路交通に関わる組織であれば、知っておくべき規格といえるでしょう。

世界中の年間の道路交通事故による死者数は135万人以上、負傷者数は5,000万人以上といわれており、国際的な課題とされてきました。2020年には国連が「第2期道路交通安全のための行動の10年(2021~2030)」を発表するなど各国が道路交通事故の撲滅に向けて注力しています。

道路交通安全マネジメントシステム(RTSMS)とは

それでは、道路交通安全マネジメントシステム(RTSMS:Road Traffic Safety Management System)とはどのような仕組みなのでしょうか。

そもそもマネジメントシステムとは、組織の定めた方針・目標を達成するために、組織内の業務手順や内容などを管理する仕組みのことです。

道路交通安全マネジメントシステムの場合には、「道路交通安全に関する仕組み」を構築・運用することといえます。そのため、マネジメントシステムの方針・目標は「死亡・重症事故を0にする」といった内容が定められます。

しかし、「死亡・重症事故を0にする」ためにはどのような取り組みができるのでしょうか。
例えば、「個々のドライバーが法令を遵守する」とすると、個人の力量や交通安全への意識の高さなどによって左右されてしまうでしょう。こうした要素に依存すると、組織として「死亡・重症事故を0にする」ことを管理できません。

そのため、例えば「ドライブレコーダーの運行データを分析し、月1回講習会を実施する」「1週間ごとに発生したヒヤリハットの内容を調査・分析し、朝礼で社員にシェアする」などの取り組みは、組織として管理できる取り組みです。こうした取り組みを継続的に行うことで、ドライバーの運転技術や安全運転に対するモチベーションが高まるでしょう。

このように、道路交通安全マネジメントシステムとは、「死亡・重症事故を0にすること」を目指して、社内に「道路交通安全に関する仕組み」をつくることで業務内容や手順などを管理することなのです。

マネジメントシステムの詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:マネジメントシステムとは?わかりやすく解説

ISO39001の対象範囲

ISO39001の対象範囲は、道路交通に関連する以下の業種で導入可能です。

  1. 乗客・貨物運送にかかわる組織(バス、タクシー、トラック輸送、レンタカーなど)
  2. 物流・営業・通勤で自動車を使用する組織(工場、倉庫、流通サービス、金融サービス業など)
  3. 自動車・自動車部品の設計・製造・保守・検査にかかわる組織(自動車メーカー、部品メーカー、整備工場など)
  4. 輸送ニーズが発生する施設の運営にかかわる組織(駐車場設計・管理会社など)
  5. 救急救命医療の準備にかかわる組織(救急医療機関、病院など)
  6. 道路の設計・施工・運用・保守にかかわる組織(道路運営・管理会社)
  7. 道路交通関連法規の制定・規制にかかわる組織(国、自治体)

引用:日本品質 保証機構「ISO 39001(道路交通安全)」

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ISO39001の取得メリット


それでは、ISO39001を取得することで、組織にはどのような利点があるのでしょうか。ここでは、ISO39001の取得メリットを解説します。

交通事故減少に伴うコスト削減

交通事故が発生すると、事故後の対応に多くの時間や手間、コストがかかります。そのため、交通事故が減少すれば、組織全体のコストの削減につながります。

ISO39001の運用にも費用はかかるものの、道路交通安全マネジメントシステムが機能して交通事故を減少すればコスト以上の売上も期待できるでしょう。

取引先や顧客からの信頼獲得

ISO 39001の認証を取得できれば、国際的な基準を満たしている体制を構築・運用ができていることの証明につながります。そのため、組織のブランド価値やイメージが向上し、交通安全を推進している取引先や顧客からの信頼も獲得できるでしょう。

ビジネス機会損失の低減

重大な交通事故を発生させてしまうと、取引先や顧客をはじめとしたステークホルダーからの信用を失う可能性があります。交通事故が多いイメージがついてしまうと、取引そのものがなくなるなどビジネスの機会損失につながってしまうでしょう。

ISO 39001を取得することで、ビジネスの機会損失のリスクを排除することが期待できます。

ISO39001の要求事項

ISO39001の要求事項と概要を以下にまとめました。

  • 道路交通安全にかかわる資源を明らかにして、管理する
  • 従業員の教育訓練の計画、実施、評価、改善を行う
  • 管理が必要な情報の文書化を行い、適切に管理する
1.適用範囲
2.引用規格
3.用語及び定義
4.組織の状況 自社の状況や利害関係者のニーズや期待などを考慮して、道路交通安全マネジメントシステムの適用範囲を決定する
5.リーダーシップ
  • 社員が積極的に参加する状況を作り出すために、トップがリーダーシップを発揮することを求めている
  • 道路交通安全マネジメントシステムの方針を策定する
6.計画 交通事故につながるリスクを洗いだして評価するするリスクアセスメントを実施する
7.支援
8.運用 道路交通安全マネジメントシステムを計画通りに運用する
9.パフォーマンス評価 内部監査やマネジメントレビューを実施する
10.改善 パフォーマンス評価により見つかった是正点を改善し、継続的改善を行う

要求事項をよく理解することが、ISO39001の確実かつスムーズな取得につながります。不安がある場合には、信頼できるプロのコンサルティング業者に依頼することがおすすめです。

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ISO39001の取得企業の特徴


自動車事故対策機構が集計したデータによると、ISO39001の取得企業数は2018年3月時点で166社です。
それでは、実際にはどのような企業がISO39001を取得しているのでしょうか。ここでは、2016年に自動車事故対策機構が行ったアンケート結果から、ISO39001の取得企業の特徴を紹介します。

取得するか悩んだ理由

「ISO39001を取得するかどうか悩んだ理由」として、当てはまるものをすべて選んでもらったところ、票が多かった項目は以下のようになりました。

  1. 「認証取得にお金がかかる」及び「効果が得られるかわからない」12件(50.0%)
  2. 「人材が不足」9件(37.5%)
  3. 「維持にお金がかかる」4件(16.7%)

取得するメリットの期待度

「ISO39001を取得する前に、取得するメリットとしてどのようなことを期待していたか」という質問をしたところ、票が多かった項目は以下のようになりました。

  1. 「交通事故による死傷者を減少させる」77.9%
  2. 「交通安全への取り組みの見える化が図られる」74.0%
  3. 「企業イメージ、ブランドイメージを向上させる」68.8%
  4. 「社会から信頼が得られる」66.2%
  5. 「取引先の信頼が得られる」64.9%

取得後の効果

「ISO39001取得前に期待していたことは、取得後にどの程度効果があったか」を比較してもらったところ、以下のような結果になりました。

期待していた効果 期待以上の効果 期待通りの効果 期待した効果がない/まだわからない
交通事故による死傷者を減少させる 10.4% 62.3% 26.0%
交通安全への取組の見える化が図られる 31.2% 57.1% 9.1%
企業イメージ、ブランドイメージを向上させる 28.6% 54.5% 14.3%
社会から信頼が得られる 13.0% 59.7% 24.7%
取引先の信頼が得られる 13.0% 57.1% 28.6%
関連ページ:自動車事故対策機構(外部リンク)
関連ページ:2016年に自動車事故対策機構が行ったアンケート結果(外部リンク)

認証取得した多くの企業がISO39001を取得することは、道路交通安全に向けた体制構築において「有効」と認識していると確認できる結果となっていることがわかります。取得を検討している企業は、こうしたアンケート結果も参考にしてみると良いでしょう。

まとめ

この記事では、ISO39001の概要や対象範囲、要求事項、取得企業の事例を解説しました。

誰でも遭遇する可能性のある交通事故のリスクを減らす取り組みとして、ISO39001を取得することで、取引先に自社の姿勢を提示できます。顧客からの信頼を高めるとともに、自社のコスト削減やビジネスチャンスの喪失などにもつながるでしょう。

道路交通に関連する幅広い組織で導入できるため、対象範囲内の企業は一度取得を検討してみると良いでしょう。”

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