【基本】ISO13485とは?メリットや要求事項をわかりやすく解説

- ISO13485は、医療機器に関する品質マネジメントシステム規格
- 世界の医療機器法令規制の整合性を促進することを目的に制定された
- ISO9001の2015年版とは要求事項の形式が異なっている
ISO 規格には、マネジメントシステムに関するさまざまな規格があります。代表的なものとしてはISO9001、ISO14001、ISO/IEC27001 などがありますが、ISO13485については一般的にはあまり知られていない規格かもしれません。
しかし、世界的な医療機器の法規制の整合性を高めるうえで、ISO13485は大きな役割を果たしている規格だといえるでしょう。そこで、この記事ではISO13485の概要や要求事項、メリットについて解説します。
ISO13485とは?
ISO13485とは、「医療機器に関する品質マネジメントシステムの規格」です。
この規格はその他の代表的な規格とは異なり、世界の医療機器法規制の整合性を促進することを目的として制定されました。
医療機器においては安全性が何よりも重視されるため、組織に適したマネジメントシステムの構築という観点よりも「法令を遵守する」という観点を最も重視しています。
ISO13485の対象となる医療機器
ISO13485の対象は、医療機器および体外診断用医療機器(IVD)の設計、製造、据付、保守、校正、ならびに使用者への支援を含む関連サービスを提供する組織です。ISO13485の適用対象となる製品・関連要素は以下のとおりです。
- 日本の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」で定義される医療機器および体外診断用医療機器(埋め込み型・能動型・診断用機器などを含む)
- 他国の法規制(例:EU MDR、FDA等)で規定される医療機器および体外診断用医療機器)
- 上記医療機器に組み込まれる、または機能的に関連する部品、材料、ソフトウェア、装置、試薬、消耗品等
ISO13485の取得企業が増加している背景
近年、ISO13485の認証を取得する企業が増加しています。その背景には、医療機器の国際展開にあたり、輸出先での規制適合や取引先からの取得要請が活発になっていることが挙げられます。
各国では、独自の医療機器規制が存在しており、これが医療機器の国際流通において障壁となることがあります。ISO13485は、そうした状況において、各国の規制要件との整合性を促進するために設計された医療機器に特化した品質マネジメントシステムの国際規格です。
ISO13485の認証は、法規制への直接的な適合を意味するものではありませんが、国際的に認知されたQMS基盤として、製造者の品質保証体制に対する信頼性を高める役割を果たします。
そのため、医療機器関連企業においては、輸出先や取引先の要求、あるいは自社の品質保証体制の強化を目的として、ISO13485認証の取得を戦略的に検討することが推奨されます。

ISO13485の要求事項
ここでは、ISO13485の規格要求事項について、規格の構成とISO13485特有の要求事項について解説します。
規格要求事項の構成
ISO規格は、2012年の改正により「附属書SL(Annex SL)」に基づいた共通構造で要求事項が策定されるようになりました。これにより、ISO9001、ISO14001、ISO/IEC 27001などの多くの管理規格が共通の章構成を持つようになっています。
しかし、ISO13485:2016は、医療機器に対する各国規制との整合性を優先する必要があるため、ISO9001:2008をベースにした独自の構成を採用しており、Annex SL形式には準拠していません。そのため、以下のような章構成になっています。
- 0:序文
- 1:適用範囲
- 2:引用規格
- 3:用語及び定義
- 4:品質マネジメントシステム
- 5:経営者の責任
- 6:資源の運用管理
- 7:製品実現
- 8:測定、分析及び改善
- 附属書A
- 附属書B
ISO 13485では、自社の製品や業務範囲に直接適用できない要求事項がある場合でも、その適用除外を行うには、明確な根拠と文書化された理由が必要です。単に「関連が薄い」という理由で要求事項への対応を省略することは認められておらず、監査時には適用の妥当性について説明責任が問われることになります。
ISO13485特有の要求事項
本項では、ISO13485:2016の中でも、他のISO規格(例:ISO9001, ISO14001)には見られない、医療機器業界特有の規制対応を反映した要求事項を中心に解説します。ISO13485は、医療機器の安全性・有効性を担保するため、QMS(品質マネジメントシステム)の観点から、設計、製造、据付、保守、クレーム対応までの全ライフサイクルを対象とした規格であり、以下に示す項目は、各国の医療機器規制とも密接に関係しています。
4.2.3:医療機器ファイルの作成・維持
組織は、各医療機器の型式ごとに、設計・製造・設置・保守・ラベリングなどの情報を体系的にまとめた「医療機器ファイル」を作成・維持する必要があります。このファイルは、製品の要求事項への適合性を文書で示し、各国の規制当局に対する証明資料にもなります。
医療機器ファイルに記載すべき主な内容を以下にまとめました。
- 医療機器の意図する用途や目的、すべての使用説明を含むラベリング・添付文書
- 医療機器の製品仕様・図面
- 製造、保管、取扱い及び配送の仕様または手順
- 測定及び監視手順
- 設置手順
- サービス手順(設置支援、保守など)
6.4:作業環境の衛生管理及び要員の健康や清潔さなどの管理と汚染管理
6.4項は、「6.4.1:作業環境」と「6.4.2:汚染管理」から構成されている項目です。
「6.4.1:作業環境」では、医療機器の品質を確保するために、作業環境を管理することが求められています。そのために、作業環境を監視し、管理するための手順を文書化することが必要です。具体的には、作業員の健康状態や清潔さ、衣類に関する要求事項、医療機器を扱う作業員の力量について規定しています。
「6.4.2:汚染管理」では、医療機器が外部要因(粒子、微生物、化学物質等)によって汚染されることを防ぐため、作業者、作業環境、設備に対して汚染予防計画を策定し、文書化・実施・記録管理が必要です。
※「医療製品の管理」ではなく、「医療機器やそれを扱う環境の汚染制御」のことを指します。
7.5.1:製品及びサービス提供の管理
医療機器および付帯サービス(例:設置・保守)は、意図した使用目的・性能を満たすことが確実になるように、提供前に明確な計画を立て、適切な方法で管理・記録を行うことが求められます。
これには、工程手順の標準化、作業指示書、検査基準、供給者管理なども含まれます。
7.5.2:製品の清浄性及び汚染管理
組織は、製品の使用において清浄性が重要な要因となる場合、医療機器の清浄性および汚染管理に関する手順を確立し、文書化し、実施し、必要に応じて記録する必要があります。特に、以下のいずれかの条件に該当する製品においては、清浄性確保のための制御が求められます。
- 製品を滅菌または使用前に組織によって清浄する場合
- 製品を非滅菌で供給し、滅菌または使用前に清浄する場合
- 製品は滅菌または使用前に清浄できないが、使用時の清浄性が重要である場合
- 製品は滅菌されずに使用されるが、使用時の清浄性が重要である場合
- 製造工程内で製品に残留してはいけない薬剤を使用している場合
また、これらに該当しないと判断する場合でも、その判断の根拠を明確にし、必要に応じてリスク評価等の記録を保持することが求められます。
7.5.5:滅菌医療機器に対するトレーサビリティの確保
滅菌医療機器を製造・供給する場合には、各バッチごとの滅菌パラメータ(時間、温度、圧力など)の記録を残し、バッチ単位でのトレースが可能でなければなりません。
製品に問題が発生した場合には、どのバッチに属し、どの条件下で滅菌されたかを迅速に特定することが求められます。このような詳細なロット追跡は、ISO9001では要求されません。
7.5.7:滅菌プロセスなどのバリデーション
組織は、滅菌や無菌バリアシステムなど、完成後に検証が困難または不適切とされる特殊プロセスについて、プロセスバリデーションを実施するための手順を文書化し、実施結果を記録・維持する必要があります。
バリデーションには、以下の内容が含まれなければなりません。
- バリデーションの計画と目的
- 合否判定基準
- 使用機器・装置・環境条件
- 試験方法と結果
- 結果の評価と結論
また、プロセス条件の変更、設備の更新、逸脱の発生時には再バリデーションを実施し、その都度記録を更新する必要があります。
これらの文書は、製品の安全性と有効性を保証する証拠として、規制要求に基づく期間(例:製品寿命+2年など)保管される必要があります。
8.2.3:苦情などの規制当局への報告
医療機器に関する顧客からの苦情や不具合が発生した場合、組織はそれを文書化された手順に従って調査・処置し、必要に応じて各国の規制当局に報告する義務があります。
たとえば以下の場合に報告義務が生じます(例:日本):
- 使用者が死亡・重篤な障害を負った場合(医薬品医療機器等法 第68条)
- 異物混入・誤使用を引き起こす表示不備があった場合
- リコール等の是正処置を必要とする場合
このような法的報告義務は、ISO9001では存在しないISO13485特有の要求です。
ISO13485認証の取得メリット
ISO13485を取得することで、受けられるメリットについて解説します。
製品の品質向上や組織体制の強化につながる
ISO13485の「6.資源の運用管理」「7.製品実現」「8.測定、分析及び改善」では、医療機器の安全性および品質の一貫性を確保するために、製造工程の標準化、作業者の力量管理、作業環境の整備、モニタリング等が求められています。
これにより、製品のばらつきや人的ミスを低減し、結果として品質の安定や組織的な管理体制の整備につながります。
法令遵守を確実にできる
ISO13485では、医療機器に関わる法規制への適合を前提とした品質マネジメントシステム(QMS)の構築が求められています。認証を取得することで、製品の設計・製造・販売に関連する各業務プロセスが文書化・監視・記録管理される体制が整い、法令順守のための基盤づくりに貢献します。
また、ISO13485はISO14971(医療機器リスクマネジメント)との整合性を要求しており、QMSを通じて製品のライフサイクル全体におけるリスクの特定・分析・制御が行えるようになります。これにより、重大な不具合や患者リスクの発生を未然に防止する管理体制の構築が可能になります。
顧客からの信頼獲得や新たな顧客獲得につながる
ISO13485の認証は、医療機器に特化した品質マネジメントシステム(QMS)が構築・運用されていることを第三者機関が確認した証明書であり、製品の品質管理体制や規制対応能力に対して顧客や取引先に信頼感を与えることができます。
特に、欧州(CEマーキング)や北米(FDA対応)などの地域においては、ISO13485認証が取引先評価や委託製造契約の要件として提示されるケースもあり、新たな顧客や海外市場への参入機会の創出に寄与します。
また、国際的な規制整合(例:MDSAP制度)において、ISO13485の枠組みがベースとして活用されているため、取得しておくことで将来的な法令対応の準備としても有効です。
調査にかかる手間や費用の低減
医療機器の開発・製造・流通においては、外部業者へのアウトソーシングが活用される機会が増えています。こうした場合、日本国内では**薬機法に基づく「QMS適合性調査(製造管理・品質管理調査)」**が実施され、対象事業者の管理体制がQMS省令に適合しているかが確認されます。
ISO 13485認証を取得している場合、その管理体制がQMS省令と一定の整合性を持つものとして評価されることがあり、書類審査の円滑化や、場合によっては実地調査の一部省略などが判断されることもあります。
ただし、実地調査の有無や範囲は厚生労働省・PMDAがリスクベースで個別に判断するものであり、ISO13485認証があっても免除が確約されるわけではありません。
よって、ISO13485取得はQMS適合性調査における負担軽減の一助となる可能性があるものの、調査対応が不要になるとは限らない点に留意が必要です。

ISO13485を取得する流れ
ここでは、ISO13485を取得する流れを解説します。
1.ISO13485取得の準備を行う
まずはISO13485取得の準備を行いましょう。
取得準備に際しては、まず自社が扱う医療機器の分類(クラスI~III/IV)、事業スコープ(製造/販売/設計等)を明確にし、ISO13485が要求する品質マネジメントの適用範囲を決定することが重要です。
取得に向けたプロジェクトチームを発足するとともに、自社だけで取得を目指すのか、コンサルに取得サポートを依頼するのかどうかを決定します。
ISO規格の取得に関するノウハウがない場合には、プロのコンサルに依頼することで取得にかかる自社の工数や期間、コストの削減につながります。
2.品質マネジメントシステムを構築する
要求事項を満たす品質マネジメントシステムを構築します。
その際には自社の現在の取り組みや品質管理体制を、ISO13485の規格要求事項と照らし合わせて、不足している部分を明確にすることが大切です。
自社の業務プロセスとISO13485の要求事項との間にある差異を文書・運用・記録の観点から評価し、リスクマネジメント、バリデーション、文書管理など医療機器特有の要件が確実に盛り込まれるよう整備する必要があります。
3.品質マネジメントシステムを運用する
品質マネジメントシステムを構築したら、実際に運用します。運用開始後は、内部監査とマネジメントレビューを少なくとも1回以上実施し、システムの有効性をトップマネジメントが評価した記録を残す必要があります。
4.登録審査を受ける
登録審査は、通常2段階で構成されます。
- 第一段階審査(Stage 1)では、品質マニュアルや主要文書の整合性、申請範囲、運用記録の有無などを確認します。
- 第二段階審査(Stage 2)では、実際の運用現場において、文書と実務が整合しているか、トレーサビリティ・記録・力量管理などがISO13485に従って実施されているかを審査員が現場確認とインタビューを通じて評価します。
この2段階審査を通過し、不適合が是正されたことが確認されると、ISO13485認証が付与されます。
ISO13485とISO9001・QMS省令の違い
ISO13485とISO9001、QMS省令の違いがよくわからないという方もいるかもしれません。そのため、ここではISO9001、QMS省令との関係性を解説します。
ISO9001との違い
ISO9001は「顧客満足と継続的改善」を目的とした汎用的な品質マネジメントシステムの国際規格であり、製造業・サービス業などあらゆる業種に適用される柔軟な構造を持っています。
一方、ISO13485は医療機器のライフサイクル全体にわたるリスク管理、文書管理、トレーサビリティ、是正処置などをより厳格に要求する産業特化型の品質規格であり、「継続的改善」よりも製品の安全性と法令遵守の維持管理に重きが置かれています。
それは、ISO13485が医療機器における規制目的のための要求事項であるためです。実際にヨーロッパやカナダなどの多くの国で、医療機器の規制についての法律はISO13485の要求事項に基づいています。日本においても同様に、2005年の改正薬事法によって、ISO13485に準拠した制度へと改訂されたのです。
QMS省令との違い
QMS省令とは、「薬機法やISO13485を基準に、日本独自の規制を追加したQMSに特化した品質管理の基準」です。
ISO13485は国際的な医療機器QMSの標準であり、各国の法規制(例:EU MDR、カナダCMDR、FDA QSR)に対する準拠手段として広く採用されています。ただし、ISO13485が各国の法令そのものを構成しているわけではなく、あくまで「参考にされている規格」として活用されている点に注意が必要です。
日本では、薬機法に基づき、医療機器の製造業・製造販売業に対してQMS省令(医療機器・体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準)が定められています。QMS省令はISO13485を一部参考にしつつ、日本独自の文書様式・報告体系などの要求事項が追加されています。

まとめ
ISO13485は、医療機器に関する国際的な品質マネジメントシステムの規格であり、ISO9001をベースとしつつも、医療機器の安全性・有効性を担保するために必要なプロセスの厳格な管理を求める内容になっています。
この規格に基づいたマネジメントシステムを構築・運用することで、自社の法令遵守体制の強化、製品安全リスクの軽減、取引先・審査機関への信頼性向上といった多面的な効果が期待されます。

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