• QMS省令とは、医療機器や体外診断用医薬品における製造管理や品質管理を規定した省令
  • 承認や認証が必要な医療機器を製造販売する場合、QMS省令を遵守する必要がある

医療機器や体外診断用医薬品の製造・販売において、QMS省令への対応は欠かせません。QMS省令を遵守することで医療業界における製品の安全性や品質 が担保されます。

そのため、「QMS省令の内容が曖昧」「QMS省令とISO13485の違いがわからない」という場合には、まずQMS省令について理解したうえで、医療機器や体外診断用医薬品の製造・販売に取り組みましょう。

そこで、この記事ではQMS省令の概要や適用範囲、構成、ISO13485との違いについて解説します。

QMS省令とは

QMS(Quality Management System)省令とは、「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」の一般的な呼び方です。QMS省令は、ISO13485(医療機器向けの国際規格)と日本の薬機法をもとに制定されています。

医療機器のうち承認や認証が必要な製品を製造・販売する場合に、必ずQMS省令を遵守しなければなりません。
そのため医療機器や体外診断用医薬品の製造販売業者は、QMS省令に基づいた製造管理や品質管理体制を構築・運用することが求められます。

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QMS省令と関連する省令とは

ここではQMS省令と関係する「QMS体制省令」と「GVP省令」について解説します。

QMS体制省令とは

QMS体制省令とは、「QMS省令を遵守するための体制整備に関する省令」です。すべての医療機器製造販売業許可(第1種、第2種、第3種)の要件になっています。

QMS体制省令では、「組織の体制の整備」と「適切な人員の配置」が評価基準として示されています。

組織の体制の整備

QMS省令を遵守するために、体制整備における以下の3つの要求事項を満たすことが必要です。

  • 品質管理監督システムの文書化及びその実効性の維持並びにQMS省令で文書化することを求められているすべての要求事項、手順、活動又は実施要領の確立、実施及び維持(品質方針・品質目標等の作成については、限定第三種医療機器製造販売業を除く)【QMS省令第5条、第6条、第7条】
  • 品質管理監督文書の管理【QMS省令第8条、第67条】
  • 品質管理監督記録の管理【QMS省令第9条、第68条】

適切な人員の配置

QMS省令を遵守するために、以下の人員配置を行うことが求められています。

配置が必要な人員 資格要件 資格要件の規定条文
管理監督者 品質管理監督システムにおける業務を最上位で監督する役員 QMS省令第2条第10項
管理責任者 役員や管理職の地位にある者、その他これに相当する者 QMS省令第16条
医療機器等総括製造販売責任者 大学などで専門の課程を修了し、規定の実務経験がある者など※詳細:東京都健康安全研究センター(外部リンク) 医薬品医療機器等法施行規則第114条の49
国内品質業務運営責任者
  • 製造販売業者における品質保証部門の責任者
  • 品質管理業務その他これに類する業務の従事経験(3年以上)
  • 国内の品質管理業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有すること
  • 医療機器等の販売に係る部門に属する者でないことその他国内の品質管理業務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと
QMS省令第72条第1項

GVP省令とは

GVP(Good Vigilance Practice)省令とは、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」の一般的な呼び方です。

製造販売業者は、製造販売後の有効性、安全性などの安全管理のために、必要な情報の収集・検討・結果に基づいた適切な措置を実施することが求められています。

QMS省令の適用範囲

QMS省令の適用範囲は、すべての医療機器や体外診断用医薬品です。
そのため、基本的にはすべての医療機器や体外診断用医薬品の製造・販売業者はQMS省令に適合することが求められます。

ただし、以下の機器については、QMS省令の「設計開発」に関する規定が適用されません。

  • 一般医療機器
  • 承認または認証を要さない体外診断用医薬品

また、限定一般医療機器を取り扱う製造販売業者や製造業者は、「設計開発」だけでなく、一部の条項の適用が除外されています。

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QMS省令の構成

QMS省令は、第1章から第6章までで構成されています。
医療機器や体外診断用医薬品の品質の改善・向上のためのマネジメントシステムを構築・運用するうえでの要件です。

医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令

第1章 総則(第一条―第三条)
第2章 医療機器等の製造管理及び品質管理に係る基本的要求事項
第1節 通則(第四条)
第2節 品質管理監督システム(第五条―第九条)
第3節 管理監督者の責任(第十条―第二十条)
第4節 資源の管理監督(第二十一条―第二十五条の二)
第5節 製品実現(第二十六条―第五十三条)
第6節 測定、分析及び改善(第五十四条―第六十四条)
第3章 医療機器等の製造管理及び品質管理に係る追加的要求事項(第六十五条―第七十二条の三)
第4章 生物由来医療機器等の製造管理及び品質管理(第七十三条―第七十九条)
第5章 放射性体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理(第八十条・第八十一条)
第5章の2 再製造単回使用医療機器の製造管理及び品質管理(第八十一条の二―第八十一条の二の六)
第6章 医療機器等の製造業者等への準用等(第八十二条―第八十四条)
制定附則
改定附則

出典:医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令

2021年の法改正後、QMS省令の要求事項はより詳細になったため、よく理解することが必要です。なお、改正後のQMS省令への対応のために、3年間の経過措置が設けられていましたが、2024年3月で終了しています。

以下に、それぞれの章の概要を解説します。

第1章:総則

総則については、QMS省令における趣旨や定義、適用範囲について記載されています。

第2章:医療機器等の製造管理及び品質管理に係る基本的要求事項

第2章は、ISO13485との整合性をもった内容となっています。しかし、完全一致しているわけではないため、それぞれの要求事項を確認することが必要です。

第2章は、以下の6つの項目から成り立っています。

  • 第1節 通則
  • 第2節 品質管理監督システム
  • 第3節 管理監督者の責任
  • 第4節 資源の管理監督
  • 第5節 製品実現
  • 第6節 測定、分析及び改善

品質管理監督システムを文書化するとともに、その実効性を維持しなければならないことを示しています。また品質管理監督システムに関する要求事項を満たすうえで必要な手順や活動、実施要領の確立・実施・維持についての要件が記載されています。

第3章:医療機器等の製造管理及び品質管理に係る追加的要求事項

第3省は、品質管理監督システムにかかる追加的要求事項です。

品質管理監督文書や記録の保管期限、医療機器等総括製造販売責任者の業務、国内品質業務運営責任者の配置などの要件について記載されています。

第4章:生物由来医療機器等の製造管理及び品質管理

第4章は、厚生労働大臣の指定した医療機器及び細胞組織医療機器にかかる製品の製造販売業者等向けの製造管理や品質管理に関する内容です。

業務運営基盤や文書、工程管理などの要件について記載されています。

第5章:放射性体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理

第5章は、放射性体外診断用医薬品にかかる製品の製造販売業者等向けの製造管理や品質管理に関する内容です。

業務運営基盤や規則の遵守などに関する要件が記載されています。

第5章の2:再製造単回使用医療機器の製造管理及び品質管理

第5章の2は、再製造単回使用医療機器にかかる製品の製造販売業者等向けの製造管理や品質管理に関する内容です。

業務運営基盤や試験結果、教育訓練、文書・記録の管理などに関する要件が記載されています。

第6章:医療機器等の製造業者等への準用等

第6章は、適用対象として明文化されていないものの、類似するものとしてQMS省令が適用されることをまとめています。

輸出用の医療機器等の製造業者や、登録製造所にかかる製造業者などの製造管理と品質管理について記載されています。

QMS省令とISO13485の違いとは

ここまでISO13845について簡単に触れてきましたが、最後にQMS省令とISO13485との違いについて解説します。

そもそもISO13485とは、「医療機器に関する品質マネジメントシステムの規格」です。
ISOとは国際標準化機構が運営する国際規格のことで、数えきれないほどのISO規格を発行している非営利団体です。

ISO13485を取得することで、法令遵守や内部統制の強化、顧客からの信頼獲得といったメリットが期待できます。特に海外進出する際には、ISO13485の取得が求められることが多くあります。

QMS省令とISO13485はどちらも医療機器などにおける品質管理を目指しているという共通事項はあるものの、どのような違いがあるのでしょうか。QMS省令とISO13845との違いを以下にまとめました。

QMS省令 ISO13485
運営団体 厚生労働省 国際標準化機構(ISO)
概念 命令(義務) 規格(任意)
有効範囲 日本国内で有効 国内外で有効
目的 医療機器や体外診断用医薬品の「製造管理」と「品質管理」の基準を定めること 世界の医療機器法令規制の整合性を促進すること

QMS省令とISO13485の違いについてまとめましたが、 QMS省令はISO13485:2003をもとに制定されています。そのため、ISO13485を取得することで、QMS省令の遵守にもつながります。

ISO13485の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:ISO13485とは?ISO9001との違いや要求事項を解説
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まとめ

この記事では、QMS省令の概要や適用範囲、構成について解説しました。

QMS省令は、医療機器や体外診断用医薬品の製造管理・品質管理における基準を定めたものです。原則として、すべての医療機器や体外診断用医薬品の製造・販売を行う事業者が対象となっています。QMS省令を遵守するには、要求事項をよく理解したうえで取り組むことが必要です。

QMS省令はISO13485をベースに制定されています。ISO13485を取得することで、QMS省令の遵守にもつながるため、ISO13485の取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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