【食品関連業必見】ISO9001とISO22000の違いを徹底解説

- ISO9001とISO22000は、どちらもISO規格であるが「目的」や「対象」が異なる
- 食品製造業であればISO22000を、それ以外であればISO9001の取得が多い
昨今、食品安全性に関する社会的ニーズはますます高まっています。食品安全への取り組みを怠って食中毒などの食品事故を発生させてしまうと、社会的な信用が失墜して企業経営は難しくなるでしょう。
そのため、食品に関わる企業の多くが、国際標準規格であるISOの導入を進めています。国際化の波が押し寄せていることから、中小企業や下請けの食品製造業などにおいても、スムーズに取引を行うためにISOの認証を進める時代です。
そこで、ISO認証のうち食品関連企業の取得が多いISO9001とISO22000について、両者の違いやどちらを取得すべきかについて解説します。
目次
ISO9001とISO22000の違いとは
ISO9001とISO22000の違いについて解説します。
ISO9001とは
ISO9001とは、品質マネジメントシステムに関する国際規格です。製品・サービスの品質を管理することで、最終的に顧客満足度の達成を目指します。
ISO9001は世界中で最も取得されているISO規格であり、日本では製造業や建設業を中心に取得されています。食品製造業においても、「適切な品質管理システムの構築・運用=安全性の向上」につながるとしてISO9001を取得する企業が多くあります。
ISO9001の詳細は、以下の記事をご確認ください。
ISO22000とは
ISO22000とは、食品安全マネジメントシステムに関する国際規格です。食品の安全性を確保するために、食品に潜むリスクを把握して適切に管理することを目指します。
ISO22000は、フードチェーンに関わるすべての業種が取得できます。特に食品製造業者や食品を販売する小売業、添加物などの製造を行う食品関連業者などで取得されています。
ISO22000の詳細は、以下の記事をご覧ください。
ISO9001とISO22000の違い
ISO9001とISO22000は、どちらもISO規格ではありますが、両者は「目的」や「対象」、「要求事項」に違いがあります。
ISO9001 | ISO22000 | |
---|---|---|
目的 | 製品・サービスの品質向上による顧客満足度の達成 | 食品事故を未然防止し、食品の安全性を向上 |
対象 | ほぼすべての業種 | フードチェーンに関わる業種 |
要求事項 | 品質管理システム構築・運用についての要件 | ISO9001+HACCP(食品製造の安全性確保の管理手法) |
ISO22000の要求事項は、以下の3つの要素を組み合わせて構築されています。
- HACCPによる食の安全と食品安全の確保を会社の仕組みで請け負うシステムマネジメント
- 適正に管理するために相互連絡を取り合う相互コミュニケーション
- 衛生的で安全な状態を維持管理するための基本事項をまとめた前提条件プログラム
こうした要求事項が求めているのは、「会社の施設や作る食品自体を変えること」ではなくて、「その商品の安全を守るためのプロセスを構築すること」です。
つまり、ISO22000は安全な食品を製造・流通し、消費者への提供を達成するために、食品関連業に特化した規格なのです。

ISO22000とISO9001それぞれの要求事項のポイント
ISO22000とISO9001のそれぞれの要求事項のポイントについて解説します。
規格要求事項の構成
ISO22000とISO9001の要求事項の構成は、どちらもISOマネジメントシステム規格の共通基本構造(HLS:上位構造)に則った10項目から成り立っています。項番は、PDCAサイクルに合わせて順序だてられています。
- 適用範囲
- 引用規格
- 用語及び定義
- 組織の状況
- リーダーシップ
- 計画
- 支援
- 運用
- パフォーマンス評価
- 改善
このうち、「1.適用範囲~3.用語及び定義」は規格の説明をしている部分です。「4.組織の状況~10.改善」までの項番は変わらないものの、細かな内容はISO9001とISO22000に沿ったものがそれぞれ設定されています。
要求事項のポイントの違い
ここでは、ISO9001とISO22000、それぞれの要求事項のポイントを解説します。
ISO9001
ISO9001の目的は、製品・サービスの品質向上による顧客満足度の達成です。そのため、食品製造においては「食品の不良品や食中毒などの発生を防ぐ」「食品の味や見た目をより良くする」といった点が重視されます。
こうした点からISO9001における要求事項のポイントには、プロセスアプローチが挙げられます。製造プロセスを明確にし、各プロセスを合理的に管理することで、各工程のつながりと相互作用を把握し、品質に影響する要素を明確にすることが重要です。
ISO22000
ISO22000の目的は、食品の安全性を向上させることです。そのため、「品質不良はもちろん、食中毒や異物混入など発生を防ぐ」ことが何よりも重視されます。
こうした点からISO22000における要求事項のポイントには、ハザード分析が挙げられます。ハザード分析とは、食品の原材料の製造~顧客に提供されるまでの危害要因を洗い出すことです。危害要因を管理するために、製造工程の管理レベルを分けたうえで各工程それぞれ対策を実施します。
ISO22000とISO9001のどちらを取得すべきか
ここでは、ISO22000とISO9001のどちらを取得すべきかについて、以下にまとめました。
ISO9001の取得がおすすめの企業
基本的に、食品に関わる企業以外であればISO9000の取得がおすすめです。
ISO9001は製品・サービスの品質管理に取り組む要求事項となっていることから、幅広い業種に対応できます。
ISO22000の取得がおすすめの企業
フードチェーンに関わる業種であれば、ISO22000の取得がおすすめです。さきほど解説したようにISO22000の要求事項には、HACCPの考え方が取り入れられています。
2021年6月から食品を取り扱う事業者は、HACCPの導入と運用が完全義務化されています。そのため、ISO22000であればHACCPの義務化にも対応が可能です。
ただし、食品に関わる企業であればISO22000とISO9001のどちらを取得する場合もあります。

ISO22000とISO9001の両方を取得できる?
ここでは、ISO22000とISO9001を両方取得する必要性や両方取得する方法を解説します。
ISO22000とISO9001を両方取得する必要性
ISO22000の要求事項には、HACCPの手法やISO9001と同じマネジメントシステム構造(HLS)が採用されています。そのため、ISO22000とISO9001を両方取得する必要性がわからないという企業の方もいるでしょう。
しかし、実は両方のマネジメントシステムを構築することで、自社が提供する食品のクオリティーをより高めることが可能です。
その理由は、ISO22000とISO9001のゴールがまったく違い、規格としても認証される内容も異なるためです。
ISO22000の取得は、あくまで「食の安全を守る保証」を認証されたことを意味します。一方でISO9001の取得は、「食品の品質を継続的に改善できる仕組みであること」を認証されたことを意味します。
つまり、ISO22000とISO9001の両方を取得すると、「食の安全+顧客に満足されるような品質の食品製造」を実現できるのです。
そのため、両者の併用を考えてマネジメントする企業もあります。ISO22000とISO9001の両方を取得する必要性は、こうした規格ごとで強化できるものを意識することで見えてくるでしょう。
ISO22000とISO9001を両方取得する方法
ISO22000とISO9001を両方取得するおすすめの方法として、「統合マネジメントシステム」の構築が挙げられます。
統合マネジメントシステムとは、複数のマネジメントシステムの整合性を高め、規格や手順などを統一化することです。
ISOマネジメントシステム規格の要求事項は、ある程度共通化されているために重複する部分も多いため、統一化することでムリのない運用を実現します。
統合マネジメントシステムの詳細は、以下の記事をご覧ください。
FSSC22000・ISO14001との関連性
ここでは、ISO22000やISO9001とよく混同しやすいFSSC22000・ISO14001との関連性についても解説します。
FSSC22000との関連性
FSSC22000とは、食品安全認証財団(FSSC)が開発した食品安全認証システムに関する国際規格です。ISO22000と同様に食品の安全性向上を目指しています。
FSSC22000では、ISO22000の対象範囲外となっている食品工場での予期せぬ食品事故などについても対処することが求められているため、より確実な食品安全につながります。
ただし、そのためには設備や体制などの構築に人手や資金が必要であることから、大規模な事業者向けの規格です。
FSSC22000の詳細は、以下の記事をご覧ください。
ISO14001との関連性
ISO14001とは、環境マネジメントシステムに関する国際規格です。
自社の事業活動が、組織を取り巻く環境に及ぼす影響についてリスクを分析し、低減することを目指します。
特に
自然環境に影響を及ぼすイメージが強い製造業や建設業において、ISO9001とISO14001を同時取得することが多くあります。
ISO14001の詳細は、以下の記事をご覧ください。

【食品関連業】ISO22000とISO9001の取得事例
最後に、食品関連業におけるISO22000とISO9001の取得事例を紹介します。どちらを取得するか、もしくは両方を取得するか検討中の企業は、ぜひ参考にしてください。
【ISO9001】サンシーズ株式会社
サンシーズ株式会社は、食品油の瓶詰などの食品製造を行う企業です。
ISO9001を取得後、現在はISO22000の構築に取り組まれています。以下に、取得目的や取得後の成果について紹介します。
ISO9001の取得理由 | 取引先からの品質要求の水準が高まり、そのニーズに自信をもって対応できる会社になるため。 |
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ISO9001の取得効果 |
|
ISO22000に移行するきっかけ | プライベートブランドを引き受けている内の1社からISO22000の取得を求められたため。先方からの要求をきっかけに、食品安全のための管理体制をさらに強化するためにISO22000を新規取得する決断した。 |
サンシーズ株式会社の取得事例の詳細は、以下の記事をご覧ください。
【ISO22000】株式会社ヒロプラス
株式会社ヒロプラスは、金属製缶パーツの全国シェアNo.1である株式会社ヒロハマから、樹脂部門を分社化して創業された製造業の会社です。以下に、ISO22000の取得目的や取得後の成果について紹介します。
ISO22000の取得理由 | 衛生面を強化した工場を竣工したことで、食品・医療関係の問い合わせが増えたため。外部機関から認証されることが対外的な信用につながると思い、安心・安全を担保するISO22000の取得を決めた。 |
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ISO22000の取得効果 |
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株式会社ヒロプラスの取得事例の詳細は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、ISO9001とISO22000の違いやどちらの規格を取得すべきか、両方を取得すべきかどうかについて解説しました。
ISO9001とISO22000はよく似た要求事項をもつISO規格ではあるものの、「品質管理による顧客満足度の達成」と「食品の安全性の保証」という異なるゴールをもっているため、要求事項や対象組織が異なります。
そのため、両方を取得すべき場合も、どちらか片方のみ取得することで問題ない場合もあります。自社の方針に迷ったら、プロのISOコンサルタントに相談することがおすすめです。

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