• SQFは、GFSIに認定されている食品安全マネジメントシステムに関する国際規格のこと
  • SQFを取得することで、食品安全に関するリスク管理の強化や取引先・顧客からの信頼醸成につながる

2018年に義務化が決まったHACCPによる衛生管理の導入を境にますます食の安全への関心が高まっています。

しかし、せっかくHACCPというマネジメントシステムを構築するのですから、PマークやISO 9001のように認証を受けたいと考える事業者の方も多いかもしれません。そうした認証基準の一つがSQFと呼ばれるものです。

そこで、この記事では、SQFの概要やメリット、要求事項、取得プロセスついて詳しく解説します。

関連記事:【2021年6月】HACCP完全義務化!事業者がすべきこと

SQFとは

SQF(Safe Quality Food:安全で高品質な食品)とは、オーストラリアで開発された食品安全マネジメントシステムに関する第三者認証スキームです。
SQF認証を取得することで、食品安全リスクの低減や食品の安全、品質に関する対外的な信頼の獲得などが見込めます。SQFの考え方は、HACCPやGMP(適正製造基準)に基づいており、各国の食品安全に関する法令・規制への適合を確保する体制の整備も可能です。

また、国際食品安全イニシアチブ(GFSI)によって承認されていることから、国際的な食品安全に関する基準として40か国において導入されています。

ここでは、SQFの基本的な概要や特徴について解説します。

関連記事:【図解】GFSI承認スキームとは?概要を簡潔に解説

3段階の認証レベルに区分されている

SQFでは、かつてレベル1~レベル3までの認証レベルに区分されていました。現在も認証制度を理解しやすくするための枠組みとして、以下のように分類されています。

旧分類現在の構成内容GFSI承認
レベル1ビジネス用途では、ほぼ使用されないレベル初歩的な衛生管理・食品安全対策の導入非承認
レベル2SQF食品安全コードHACCPに基づいた食品安全マネジメントシステムの構築・運用GFSI承認
レベル3SQF食品安全コード+品質コードレベル2に加え、製品の味や外観などの品質に関する管理体制が含まれるGFSI承認(食品安全コード部分のみで品質コードは対象外)

レベル2にある「SQF食品安全コード」を取得することで、製品にSQFマークの使用が許可されます。つまり、SQFマークを取得している製品は第三者機関から「食品の安全性」を認められているという証になるのです。

審査スコアで格付けされる

SQFの特徴の一つに、審査スコアで格付けされることが挙げられます。取得審査時に発見された不適合事項を元に計算され、スコアとランク(E/G/C/F)が決まります。

審査スコアは、以下のような減点方式が採用されています。

スコア評価審査結果再審査の必要
96~100優秀(E)認証取得/継続不要(年1回の再審査)
86~95良好(G)認証取得/継続不要(年1回の再審査)
70~85合格(C)認証取得/継続改善報告が必要
70未満不合格(F)認証停止/再審査必要(最大で60日以内など)

この格付けによって、「12か月ごとの再認証審査」もしくは「6か月ごとの継続審査」になるかが決まります。

関連記事:食品関連の認証規格の種類
累計ダウンロード5,000件突破!HACCP丸わかり説明資料

SQFの要求事項

ここでは、SQFの要求事項である「産業別要求事項」と「必須要素」について解説します。

産業別要求事項

SQFは、あらゆる食品業界の業種に対応するため、産業分野別の要求事項が設けています。そのため、企業は自社の業種の実態に合ったモジュールを選ぶことで、最適な食品安全の仕組みを実現できます。

要求事項はパートA、B、添付資料の3つのパートで構成されています。

  • パートA:SQF規定の実施と維持に関する全般
  • パートB:モジュール形式で産業分野別の要求事項

要求事項のモジュールは、共通の「モジュール2:SQFシステム要素」とモジュール3~15が産業別の要求事項に区分されています。

モジュール内容
2SQFシステム要素―産業分野共通
3動物飼料安全の基礎―動物飼料製造における適正製造規範
4ペットフード安全の基礎―ペットフード製造の適正製造規範
5食品安全の基礎―動物生産品の飼育における適正農業規範
6食品安全の基礎―魚養殖に関する適正養殖規範
7食品安全の基礎―植物製品の栽培における適正農業規範
7H食品安全の基礎―植物製品の栽培における適正農業規範
8食品安全の基礎―穀物・豆類栽培における適正農業規範
9食品安全の基礎ー動物生産品前処理における適正製造規範
10食品安全の基礎ー植物製品の前処理における適正製造規範
11食品安全の基礎ー食品加工における適正製造規範
12食品安全の基礎ー食品の輸送・流通における適正製造規範
13食品安全の基礎ー食品包装資材製造における適正製造規範
14食品安全の基礎ー食品仲介業者および代理業者の適正製造規範
15食品安全の基礎ー食品ケータリング業、卸売業、小売業の適正製造規範

必須要素

必須要素とは、SQFにおいてどの業種でも必ず満たすべき要素のことです。先ほどの産業別要求事項のうち、モジュール2の一部を指します。

具体的には、以下の20項目が挙げられます。

要求事項番号要求事項
2.1.1経営方針
2.1.2経営責任
2.1.3食品安全・品質管理システム
2.1.4マネジメントレビュー
2.2.1文書管理
2.2.2記録
2.4.1食品関連法規(規制)
2.4.2食品安全の基礎
2.4.3食品安全プラン(レベル2,3)
2.4.4.1食品品質プラン(レベル3)
2.4.8製品リリース
2.5.2妥当性確認および有効性
2.5.4モニタリング活動の検証
2.5.5是正処置および予防処置
2.5.7内部監査
2.6.1製品の識別
2.6.2製品トレース
2.6.3製品回収とリコール
2.7.1食品防御
2.9.2トレーニングプログラム

SQF認証を取得するメリット

SQF認証を取得することで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 食品安全に関するリスク管理の強化
  • 顧客や取引先からの信頼獲得
  • 新たな顧客獲得
  • 法規制遵守
  • 消費者の食品安全に関する不安解消

食品安全マネジメントシステムを構築・運用することで、食品安全を脅かすリスク発生の低下やさまざまな食品に関する法規制に対応できます。
またSQF認証はGFSIに承認されていることから、取得することで自社の食品安全マネジメントシステムが国際的な基準に達していることを証明できます。

こうしたメリットにおいて、まずSQF認証取得が消費者に与える影響を、20~50代の男女約1,000人に行った「食の安全への関心」に関するアンケート調査から見てみましょう。

「食品の安全についてあなたの関心度を教えてください」と質問したところ、以下のような結果が得られました。

  • とても関心がある(24.2%)
  • やや関心がある(51.4%)
  • あまり関心がない(16.1%)

このように、7割以上の方が食品の安全性を重視していることが判明しました。
特に加工業者や生産者、小売業者に対して安全性に不安を感じることが多いことから、これらの業種においてはSQF認証を取得することで、消費者の食の安全に対する不安を軽減できるでしょう。

さらにSQF認証取得が取引先に与える影響についても、2024年に行われた食品製造業・流通業のオーナー約1,000人に行った「食品安全」に関するアンケート調査から見ていきましょう。

ISO認証は、SQFとは異なる国際規格です。しかし、SQFと同様に食品安全を求める規格としてISO22000があります。そのためSQF認証と同等のメリットが得られると考えられます。

「納品先からISO認証を求められたことがありますか?」と質問したところ、8割以上の方「がある(80.7%)」と回答しました。
また、「仕入先に対して、ISO認証を求めていますか?」と質問したところ、7割以上の方が『全てに対して求めている(33.6%)』『一部にのみ求めている(42.5%)』と回答しました。

このように、食品安全に関する取引先からの信頼性を獲得するために、多くの食品製造業・流通業が国際規格(ISO22000、SQF認証など)の取得を重視していることが判明したのです。そのため、顧客や取引先、消費者からの信頼の醸成につながるだけでなく、新たな顧客の獲得も期待できるでしょう。

参考リリース:【食品製造業・流通業オーナー1,013人に調査】9割近くがISO認証は食品安全の保証に有効と回答!食品トラブルが事業に与える影響とその対策とは(外部リンク)
参考リリース:【食の安全に関する意識調査】約2人に1人が「食品事故を起こした企業やメーカーの食品は購入したくない」と回答。食品の安全に関して、加工業者に不安を感じる方が6割以上。(外部リンク)
累計ダウンロード5,000件突破!HACCP丸わかり説明資料

SQFとHACCP(ハサップ)との違い

HACCPとSQFの最も大きな違いは、「SQFにはCCP重要管理点)だけでなく、CQP(重要品質点)が求められる点」です。(品質コードを追加した際にCQPが求めれます)
SQFで求められるCQPとは、食品の品質を維持するために重要な管理点のことを指します。一方、CCPとは、食品のリスクを低減するために管理すべき重要な製造工程です。

CCPは例えば、食品を加工する段階でノロウイルスを取り除くために、「90℃以上の温度で90秒間加熱する」といった管理点のことを言いますが、CQPは品質における管理基準です。CQPは「ここを管理できなければ、食品の品質が著しく低下してしまう」というポイントのことを指します。

こうした違いから、SQFプログラムは、「食の安全」だけでなく、「食の品質」についても求められることになるため、HACCPよりも高次の食品衛生管理システムであるといえるでしょう。

また、HACCPは市区町村や企業が認証を与えることがあったとしても、国際的な第三者認証プログラムではありません。
一方、SQFは国際的な規格として第三者による定期的な検査が義務付けられており、1年に1度再登録が行われます。
このため、SQF認証を取得することで、「第三者機関が食品の安全と品質を認めた」ということがみなされるため、大きなマーケティング的なメリットがあるのです。

SQF認証の取得プロセス

ここでは、SQF認証の取得プロセスについて解説します。

  1. SQF規定を入手する
  2. SQF評価データベースに登録する
  3. プロジェクトチームを編成し、SQFプラクティショナー(内部責任者)を選任する
  4. HACCPの前提条件プログラムであるGMP(適正製造規範:衛生管理、従業員の衛生ルールなど)・SSOP(衛生標準作業手順:清掃・殺菌・点検手順の標準化)を整備する
  5. HACCPを構築する
  6. SQF食品安全コードに沿って必要な文書を整備し、運用する
  7. 内部監査・マネジメントレビューを実施する
  8. 任意でプレアセスメント審査を実施する
  9. 認証機関による取得審査を受ける
  10. 認証取得を得て、SQFマークの使用が許可される
関連記事:GMP(適正製造規範)とは?わかりやすく解説します!

企業の状況によって異なりますが、SQF認証の取得にかかる期間は、約半年~1年が目安となります。自社に食品安全に関する文化を根付かせられるように取り組みましょう。

累計ダウンロード5,000件突破!HACCP丸わかり説明資料

まとめ

SQFはHACCPの衛生管理手法とISO9001のような品質管理システムの要素を組み合わせたようなマネジメントシステムです。SQFでは食品の安全性と同じレベルの品質の維持を求められることになります。

これだけ聞くと、認証取得の敷居は高く感じてしまいますが、マネジメントシステムとは常にPDCAサイクルを回し、改善していくものです。つまり一度SQFシステムを構築して運用していくことで、食品の品質や安全性は導入以前に比べて格段に改善されていくことになるはずです。

累計ダウンロード5,000件突破!HACCP丸わかり説明資料
  • 無料資料 | HACCP導入 徹底解説
  • 『HACCPを網羅的に分かりやすく』をコンセプトに、食品安全の規格に精通したISOコンサルタント監修のもとHACCPについて図解などを交え詳細に解説しています。分かりやすいというお声も多くいただいていますので、ぜひ御社でご活用ください。
  • 必須ご担当者様名
  • 必須電話番号
  • 任意会社名
  • 任意メールアドレス
  • 必須個人情報の取り扱い
    (個人情報保護方針を読む)

ISOプロでは御社に合わせたHACCP・ISO22000取得・運用支援を実施中

ISOプロではHACCP、ISO22000、FSSC22000、JFSなどの各種食品安全規格の認証取得から運用まで幅広くサポートしております。

また、マニュアル作成など御社に合わせたムダのない運用を心がけており、既に認証を取得しているお客様においてもご提案しております。ぜひご相談ください。

HACCP、最短3か月で作業工数ほぼ0実現!HACCP導入・取得運用完全サポートならISOプロ