HACCP導入で飲食店にはどのような影響がある?
HACCPとは、食品に関わる業務を行う業者の衛生管理手法の一種であり、1970年代にアメリカで始まったものです。
1993年に国連機関がHACCPのガイドラインを示してから、HACCPは食品衛生管理の国際基準となり、先進国を中心としてHACCP導入が義務化されている国が増えています。
日本でのHACCP導入率は業者の規模に左右しており、大企業では8割以上が導入しているものの、小規模な業者の導入率は2割に満たないのが現状です。
しかし、食の安全性が重視される昨今において、国際基準であるHACCPの導入は食品貿易の場で求められることも多くなり、国内外に日本の食の安全性を示すためにも必須となりつつあるため、政府は2020年を目標にHACCPの義務化を段階的に行う計画を立てているのです。
義務化の対象は、食品を製造する業者だけでなく、飲食店も含まれます。
今回は、HACCP導入によって飲食店にどのようなメリットがあるのかを詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
HACCPとは?これまでの衛生管理とはどう違うのか
HACCPは元々、アポロ計画の中で宇宙食の安全性を確保するために生まれた衛生管理手法であり、今では食品衛生管理の世界基準になっています。
従来、広く行われていた衛生管理は「抜き取り検査」を基にしたものでした。抜き取り検査とは、最終的に出来上がった出荷前の製品をランダムに抜き取り、汚染の有無や品質について検査を行うものです。
抜き取り検査は簡便に行うことができるものの、検査の対象にならなかった製品に汚染が生じていた場合には、それが見過ごされて流通してしまう危険があったため、安全管理としては未熟な方法と言わざるを得ませんでした。
一方、HACCPは原材料の搬入から製造、梱包、出荷の全ての工程で起こりうる食品汚染の危険因子を分析し、その一つひとつの危険を回避するための管理を科学的根拠に基づいた方法で行うという手法です。
そのため、全ての工程を網羅的に監視することが可能であり、管理基準に満たなかった製造品は汚染の可能性があると考えられ、事前に出荷を止めることができるという利点を持ちます。
HACCPは広く普及した衛生管理手法ですが、これまでは製造業者の導入がほとんどでした。
しかし、義務化の対象には飲食店も含まれており、飲食店では食材の搬入、保管、調理、盛り付け、提供など、全ての段階についての危険因子を予測して対策を立てる必要があります。
HACCPの義務化で飲食店にはどのような影響があるのか
現段階でHACCPを導入している飲食店は大企業がほとんどであり、小規模の飲食店ではHACCPの考え方自体が浸透していないのが現状です。
しかし、日本の食中毒は6割以上が飲食店で発生しているものであり、飲食店は厳格な衛生管理が要される業種でもあります。HACCPは導入するために必要なHACCP計画書の作成や承認を受けるための費用がかかり、計画から承認までに50~100万円ほどかかるのが相場です。
そして、飲食店であれば毎年承認を更新しなければならず、更新費用は10万円ほどです。そのため、HACCPはコストが高く、経営の妨げになるというイメージが根強く残っているのです。
また、HACCPや一般的な衛生管理の知識を持つ従業員を養成する必要もあり、実際に行われた衛生管理を記録する従業員も必要となるため、人手が増える可能性も考えられます。
飲食店でHACCPを導入するメリットは?
HACCPは、食品汚染を大幅に軽減することが可能であるばかりでなく、従業員の衛生管理意識を高める効果も期待できます。
また、一度形式化した衛生管理マニュアルは、それを確実に守れば良いため、結果として全ての従業員がマニュアルに慣れてくると低コストで徹底した衛生管理を行えると考えられます。
食品汚染は飲食店にとって命取りになるため、このリスクを軽減できることは、大きな経済的利益があるといって良いでしょう。
また、従業員への衛生管理教育のきっかけともなり、飲食店全体の衛生管理意識が高まる効果も期待できるのです。
さらに、HACCPは日本でも徐々に認識が広まりつつあるため、国政基準に則った衛生管理を行っている優良店として大きなアピールポイントになることも考えられます。
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