海外におけるHACCPの動きとは
日本でも義務化が決定したHACCPですが、そもそも義務化がされたのは「日本の食品の安全水準を国際レベルに引き上げる」という政府の意向があったからです。
では、世界ではHACCPがすでに導入されているということなのでしょうか? その「国際レベル」とはどの程度の水準のことなのでしょうか? もし貴社が将来的に世界の市場で食品を販売しようとしている場合は、ぜひとも知っておきたいですよね。
ということで、今回は、海外ではHACCPという食品衛生の手法がどの程度広まっているのかということについてご紹介していきたいと思います。
そもそもHACCP(ハサップ)とは
そもそもですが、HACCPとはどのようなものでしょうか。すでにご存知の方も多いかもしれませんが、おさらいしていきましょう。
HACCPとは、1960年代にアメリカで開発された食品の衛生管理
方式のことで、Hazard Analysis Critical Control
Pointの頭文字をとったものです。「危害要因」と呼ばれる食品の安全を脅かす様々な原因を「
重要管理点
」を管理することで低減させるという意味合いを持っており、この
マネジメントシステム
を構築するために7原則12手順というものを実行していきます。
HACCPはISO のマネジメントシステム規格 であるISO22000やFSSC22000のような認証規格と関連付けて語られることが多いため、HACCPも認証規格であると思われることも多いですが、HACCPはあくまで衛生管理の手法であり、世界中の食品マネジメントシステム規格がこのHACCPの衛生管理手法を採用しているに過ぎません。
HACCP(ハサップ)の各国の導入状況
さて、そんなHACCPは海外ではどの程度普及しているものなのでしょうか。各国の状況を以下ではチェックしていきましょう。
アメリカ
HACCPが開発された国であるアメリカでは、1997年より水産・食肉及びその加工品、飲料について順次HACCPによる衛生管理の義務付けが行われてきました。2011年には
- 米国内で消費される食品を製造、加工、包装、保管する全ての施設のFDAへの登録とその更新を義務付け
- 対象施設においてHACCPの概念を取り入れた措置の計画・実行を義務付け
が行われており、2018年に義務化が決まった日本よりも相当早くHACCPが常識になっています。
EU
イギリスを始めとするヨーロッパのほとんどの国が加盟するEUでは、2006年に一次生産事業者を除く全ての食品・加工流通業者へのHACCP義務化が行われました。
EUの一部の地域では、伝統的な食品製造方法が行われており、そういった事業を行う食品関連事業者に対しては、柔軟性の高いHACCP要件の導入が認められているものの、2006年時点で高レベルの衛生管理が求められていたことがわかります。
カナダ
カナダではアメリカよりも先んじてHACCPの義務化が行われており、1992年から水産・食肉といった影響範囲の大きく食品事故が発生しやすい業態ではHACCPの義務化が行われてきました。
オーストラリア
日本でも食品輸入が多いオーストラリアは、乳製品・食肉・水産に関しては1992年から義務化が始まっていました。
中国
中国では国外に輸出する食料品に関してはHACCPによる衛生管理が義務付けされており、これはインドやタイに関しても同様です。
韓国
日本の隣国である韓国は2012年から様々な食品関連事業者にHACCPによる衛生管理の義務化がされており、順次適応中です。
こうして見てみると、ヨーロッパやアメリカでは20年前からHACCPの動きがあったにも関わらず、日本は2020年から義務化とかなり乗り遅れている感じがありますね。
日本ではあまり認知されていないHACCPですが、海外に市場展開をしていこうとする場合には、HACCPはほぼ必須であると言えるのではないで
しょうか。
また、加えて諸外国ではISO22000やFSSC22000といった認証規格の取得をしている事業者も多いです。食品加工事業者や販売事業者は、こういった認証規格を取得していない食品事業者とは取引をしてくれない可能性もありますし、国単位でHACCPを導入していない事業者の製品の輸入規制を敷いていることもあります。
海外市場に展開するなら認証規格を取得しておこう
今後海外の市場に展開することを考えている場合は、上記のような理由からISO22000のような国際的な食品安全マネジメントシステム規格を取得するほうが有利に働くことが多いでしょう。
特に日本ではHACCPの導入が遅れていたために、「食品安全後進国」というイメージがついてしまうことは否めません。——そんな場合も自主的に食品安全マネジメントシステムの導入に取り組んでいることをアピールできる国際規格の認証取得は、マーケティング的なメリットが大きいと考えることができるのです。
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