2020年のHACCP義務化に向けて、食品関連事業者がHACCPの導入を進めています。しかし今回のHACCPの制度化には複数の誤解が広がっており、「間違った義務化への対応」を行っている企業も見受けられます。

その誤解の一つが、「2020年までにHACCPの認証を受けなければならない」というものです。今回は、一体何が誤解なのか、また、HACCP認証とはどのようなものなのかということについてご紹介していきたいと思います。

HACCP認証とは

HACCP認証とは、HACCPに基づいた衛生管理を対象の食品関連事業者が実施していることを第三者が認める、所謂企業に対して与えられる資格のようなものです。つまり、第三者によって審査された結果、「この会社はちゃんとHACCPを実施しています。」ということが認められた証なのです。

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普通のHACCPとは何が違うのか?

では、私達が一般的にHACCPと呼ぶものと、HACCP認証は何が違うのでしょうか?――それは、HACCP認証は「認証」であるのに対して、HACCPは「衛生管理の手法」という点で大きな違いがあります。

2020年6月までに食品関連事業者が実施する必要があるのは、衛生管理の手法としてのHACCPであり、わざわざ認証を受ける必要などないのです。つまり、2020年の6月までに(厳密には2021年の6月までに)実施する必要があるのは、HACCPに基づく衛生管理であって、「第三者にHACCPを実施していることを認証されること」ではないのです。

HACCP認証の種類

では、HACCP認証は全く意味のないものなのでしょうか?そんなことはありません。

HACCP認証を取得することは、対外的に「しっかりとうちの会社は厚生労働省が求める基準をクリアしていますよ。」ということをアピールするものであるため、取り急ぎ日本においてはマーケティング的なメリットを受けることができます。

ただし注意しなければならないのが、「どのような団体・組織から認証を受けるか」ということです。HACCPの認証には様々な種類があり、それぞれの認証によって特徴が異なります。以下ではHACCP認証の種類について整理してみましたので、どのような認証があるのか、また、それぞれどのような特徴があるのかチェックしてみましょう。

認証の種類 認証団体 特徴
地域HACCP 地方自治体 地方自治体が独自に定めた基準で審査を行うものであるため、取得のしやすさ、厳密さにはばらつきがある。公的な団体からの認証であるため、対外的なアピールのためには効果的(?)
業界団体HACCP 日本惣菜協会、全国製麺協同組合連合 等 製麺、製菓、食肉加工などの専門的な団体による認証。
総合衛生管理製造過程 厚生労働省 HACCPの普及を推進する厚生労働省による認証であり、義務化の基準を満たすものであるため信用力は高い。
民間HACCP 民間企業 企業独自のHACCP認証。審査基準や審査員のレベルは認証を提供する企業によって異なるため、ばらつきが大きい。

大きく分けると上記4種類のHACCPが存在しますが、現時点では「この認証が良い」とは言い切れない状況にあります。なぜなら、以下のような理由があるためです。

自治体や業界もHACCP(ハサップ)に関して精通していない

HACCPは世界的に義務化がされているスタンダードな衛生管理手法であるとはいえ、日本ではまだまだ普及が進んでおらず、自治体などでも「HACCPの考え方に基づく衛生管理」について正しく理解できていない状況です。

このため、「認証を取得した結果厚生労働省が求める義務化の要件を満たしていなかった」なんてことも考えられるのです。

海外ではHACCP認証の意味がない

HACCPの認証を取得することで、海外の企業に対して「国際基準の衛生管理」を行っていることをアピールしようとする企業もいらっしゃるかもしれません。――しかし、特に先進国ではHACCPによる衛生管理は当然のように行われており、日本は衛生管理に関してかなり後進国となってしまっている状況です。

例えばアメリカ、カナダ、オーストラリアでは1990年台からHACCPの義務化が開始しており、EUでは2006年に完全義務化が開始しています。隣国の韓国でも2012年から順次HACCPを義務化している状態で、2020年になってようやく義務化を開始した日本は圧倒的に遅れている状況なのです。

このように海外ではHACCPは当然のように行われている衛生管理手法であるため、海外進出を目指すあるいは実施している場合はそれよりも高度な食品安全管理システムの規格であるISO22000やSQFのような認証を受けることをおすすめします。

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