HACCP義務化に伴って、個人経営の飲食店や中小規模の事業者までHACCPの導入をする必要が出てきました。このHACCPでは、温度管理という多くの食品を製造するにあたって重要管理点となるものがありますが、実はHACCPは温度管理だけではないのです。

今回は、HACCPと温度の関係について解説していきたいと思います。

そもそもHACCPとは

HACCPとは
HACCPとは、食品製造の工程を整理し、食中毒菌などによって食品が汚染される原因となる要因(ハザード)を分析し、そのハザードを工程管理によって除去・低減していく衛生管理 の手法のことです。

ハザードとは

ハザードとは、食品の安全を脅かす要因のことを指します。例えば、食中毒菌やガラス片などがハザードに当てはまります。HACCPでは、このハザードがどのようにして食品に紛れ込むのかということを、原材料の納品から出荷、あるいはお客様に食品が提供されるまでの工程を整理することで洗い出していきます。

ハザードの除去方法

HACCPでは、分析したハザードを工程管理によって取り除いていきます。具体的には例えば食中毒菌を取り除くために、加熱処理というものを重要管理点(CCP )として設定します。この設定したCCPを、管理基準を定めて管理します。例えばノロウイルスを取り除くために、90度以上で60秒間加熱するという定量的な基準を設定するのです。

そして、この管理基準が正しく実行されているのかどうかを監視、記録していき、もっと良い管理基準がないかうまくいっていない場合はどう改善すれば良いのかということを見直していくのです。

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HACCPで温度管理が重要であるといわれる要因

HACCPの義務化にあたって、情報が錯綜する中で、一部では「HACCPとは、温度管理を行うことである」という誤解が生じています。確かに、多くの食品関連事業者にとって、食中毒菌やノロウイルスが最も大きなハザードとなり得るためです。これらのハザードを科学的に低減・除去してくために必要なのが加熱処理です。――この加熱処理を重要管理点とみなし、「何度で、何秒間加熱するのか」という管理基準を設けることが多いため、温度管理がHACCPであるという誤解が生まれたのです。

しかし実際には、温度管理だけがHACCPというわけではありません。HACCPでは、当然加熱処理を行うことができない食品の安全も確保しなければならないからです。

重要管理点となるものを考えよう

CCP(重要管理点)
HACCPでは、加熱処理だけが重要管理点となるわけではありません。例えば原材料の納入時に従業員がノロウイルスに感染していた際に、食材に触れてしまうとノロウイルスによって食品が汚染されてしまうかもしれません。この場合、原材料の納品を重要管理点として運用することも十分にありえるでしょう。

HACCPにおいてCCPとは、「トドメ」とも言われるもので、「ここさえ守ればハザードを低減できる」ものがCCPとして設定されます。また、管理基準はできるだけ定量的なもの――つまり、何秒、何度という数値に基づくものを設定する必要があります。これらの要因を満たすものが、加熱処理や冷却処理であることが必然的に多くなってしまうのです。

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温度管理=HACCPではないことを認識しよう

温度管理を行ってはいけないというわけではありませんが、HACCPを導入して真に衛生管理水準を向上させようとするのであれば、しっかりとHACCPの考え方を理解する必要があります。今一度、HACCPについて整理すると、HACCPとは危害要因(ハザード)を分析して、そのハザードを工程管理によって取り除き、それを監視することで継続的に衛生水準の向上を目指すものです。

確かに加熱処理、温度管理は重要な工程ではありますが、HACCPによる衛生管理の真髄は、その管理基準が正しく運用されているかどうかをモニタリングし、継続的な改善を実行していくことが特徴です。温度管理ばかりがHACCPでないと認識した上でHACCPを運用するように心がけてみてください。

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