HACCPにおける管理基準とは
HACCPとは、危害要因を分析し、その危害要因を除去するための管理点を、管理基準 を設けてコントロールする衛生管理の手法のことです。しかし、一言で言ってしまっても「よくわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は、HACCPの中でも重要なキーワードである管理基準(CL)について解説していきたいと思います。
そもそもHACCP(ハサップ)とは
すでにご存知の方も多いかもしれませんが、改めてHACCPについておさらいしていきましょう。HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字を取った衛生管理手法の一つです。
もともとはNASAで宇宙食の衛生管理を行うために開発されたこの手法ですが、現在は全世界で活用されている衛生管理手法であり、日本でも2020年の6月から全食品事業者に対して義務化されることが決定しました。
HACCPは簡単に言ってしまえば、食品の安全を脅かす危害要因を分析し、その危害要因を除去あるいは低減していくために重要管理点と管理基準を設けて監視していくという流れで行う衛生管理の方法の一つです。
例えばインスタントの袋麺を製造する事業者の場合で考えてみましょう。食品の安全を脅かす危害要因は、以下のようなものがあることが想定することができます。(※実際にはもう少し細かく洗い出しますが、今回は一例として簡易的に列挙します。)
- 害虫などの混入
- 食中毒菌やウイルスなどによる汚染
- 製造機器の不良による破片などの混入
HACCPではこういった危害要因がどこから発生して、どの程度の危険性を持つのかということを分析していきます。そして、例えば食中毒菌を除去するために、「加熱殺菌する」という工程を重要管理点に設定したとしましょう。この管理点を適切に運用するために、「80度以上の温度で90秒間加熱殺菌する」というルールを決めるのです。
そして、このルールが適切に実行されているか、本当にそのルールで問題がないのかということを記録し、問題がある場合は適宜修正を加えていきます。
HACCPでは、このように「危害要因にはどのようなものがあるか」ということを洗い出し、「危害要因を取り除くためにはどの工程で何をする必要があるのか」ということを検討し、その中でも特に重要な工程を重要管理点として設定します。そして、その重要管理点を定数的に管理する明確な基準を設け、それを監視することでPDCAサイクルを回し、衛生水準の継続的な改善を図っていくのです。
管理基準とは
管理基準とは、危害要因を除去するための工程である「管理点」を定数的に管理するための基準のことを指します。先程のインスタント麺の例で言えば、「80度以上の温度で90秒以上加熱する」というものが管理基準になります。
この管理基準は可能な限り定量的なものであることが望ましいです。なぜでしょうか? 例えば皆さんがレシピを見ながら料理をするときのことを想定してみてください。
管理基準は定量的であるほうが望ましい
レシピに肉を焼くという工程があったとして、以下のように記載されていると皆さんはどう思うでしょうか?
「いい感じの色がつくまで加熱する」
おそらく多くの方が「いい感じってどれくらいなのかわからない」と感じたのではないでしょうか。おそらく下記のように記載されていれば、迷うことはないはずです。
「鉄製のフライパンで油を大さじ1入れてから強火で120秒加熱」
これと同じで、食品の製造などには多くの人が携わりますから、明確に誰もが実行できるような数値的な基準がなければ、それは有効な管理基準とならないのです。
また、HACCPでは、PDCAサイクルによる継続的な衛生水準の改善も求められます。PDCAサイクルとは、計画し、実行し、確認し、改善するという工程を繰り返し行うことでシステム的に何らかを改善を加えていくフレームワークのことですが、このPDCAサイクルを回す上で、確認する項目が定数的であることは必須です。
なぜなら、「何か問題がある」ということが発覚したときに、定数的な基準がなければ何をどのように改善すれば良いのかということが曖昧になってしまうからです。
まとめ
今回は、HACCPの中でも特に重要なキーワードである管理基準について解説してきました。まとめると、管理基準とは「管理点を管理するための基準」であり、その基準は「定量的なものであることが望ましい」ということです。
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