• ISO規格ではマニュアル作成は必須ではない
  • 業務における共通理解を促進するため、ほとんどの企業がマニュアルを作成している

ISO9001やISO14001の取得を検討している企業では、マニュアル作成の必要性について疑問を感じていることも多いでしょう。

マニュアル作成には、業務がスムーズに進行する側面もあれば、反対に管理に負担がかかる側面もあります。そのため、マニュアル作成のポイントを押さえることが大切です。

そこで、この記事ではISO9001やISO14001におけるマニュアル作成の必要性やポイントを解説します。また最後にサンプルも紹介しますので、作成時の参考にしてください。

ISO規格においてマニュアル作成は必須?

そもそもISO規格を取得するうえで、マニュアル作成は必須ではありません。

ISO9001では、以前のバージョンであるISO9001:2008の要求事項に「品質マニュアルの作成」を求める事項が存在しました。
しかし、義務として作成した品質マニュアルは、ただ取得審査に受かるためだけの内容になることもあり、形骸化しやすい傾向にありました。そうした背景から、最新のISO9001:2015からはマニュアルの記載は削除されたと考えられます。

完全にマニュアル作成が企業に委ねられたかというとそうではなく、代わりに「プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持する」ことが要求事項に盛り込まれています。そのため、多くの企業がマニュアルを作成しているのが現状です。

マニュアルの役割

ISO9001とISO14001においてマニュアル作成は必須ではないものの、事業活動のスムーズな進行においてマニュアルは非常に重要です。

マニュアルは、マネジメントシステムを運用する従業員に、企業の方針・目標や組織構造、業務プロセスなどの共通認識を与える役割をもっています。
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ISO規格におけるマニュアルの記載事項

ISO規格のマニュアルを作成する際、どのような内容を記載すれば良いのでしょうか。
各ISO規格の要求事項を満たすために、企業が取り組むことについて記載します。具体的には、以下のように要求事項の構成に沿って作成することがおすすめです。

1.適用範囲ISOマネジメントシステムを適用する事業所や工場などを記載する。
2.適用規格自社に適用する規格(ISO9001:2015など)を記載する。
3.用語の定義自社に適用する規格と同様の定義を適用することを記載する
4.組織の状況会社内外の課題や利害関係者からのニーズを明確化し、適用範囲を決める旨を記載する
5.リーダーシップ
  • 品質方針や環境方針などを記載する
  • 組織図などで組織の役割を記載する
6.計画
  • 品質目標や環境目標などを記載する
  • 目標達成のための計画やルールなどを記載する
7.支援
  • 必要な環境や資源、設備を記載する
  • 従業員に必要な力量を明確にし、教育訓練について記載する
  • 文書化した情報管理について記載する
8.運用品質目標や環境目標を達成するための日々の業務の運用についてのルールを記載する
9.パフォーマンス評価
  • 内部監査のプロセスや監査・測定に必要なものを記載する
  • マネジメントレビューに必要なインプット項目、アウトプット項目について記載する
10.改善不適合における是正処置の手順やマネジメントシステムの継続的改善について記載する

ただし、規格の構成どおりに作成すると、専門用語の多さや内容が細かく分類されることにより、マニュアルが分厚くなってしまうでしょう。

そのまま現場に配布したとしても、「よくわからない」という声も出ることも多くあります。規格の要求事項になぞらえるだけのマニュアルは、実際の現場で運用したとしても、使いやすさの点では期待できないため、注意が必要です。

ISOマニュアルを作成するポイント

ここでは、ISOマニュアルを作成するポイントを解説します。

リスク管理のための対策になっているか

ISO規格において、リスク管理はその規格の目的を達成するうえで非常に重要です。
例えば、ISO9001においては「不良品の発生」「品質の低下」など、ISO14001であれば「環境汚染」「資源枯渇」などのリスクが考えられます。

こうしたリスクに基づいたアプローチをマニュアルに取り入れることで、組織の目標達成につながります。そのため、潜在的なリスク要因を洗い出したうえで、その対策となる取り組みについてマニュアルを作成しましょう。

マニュアルの管理方法は適切か

作成したマニュアルを適切に管理することは、マニュアルの形骸化、ひいてはマネジメントシステムの形骸化を防ぐために重要です。
例えば、「最新バージョンがどのファイルかわからない」「最終更新者が誰かわからない」といった状態になると、マニュアルの役割である認識の共有が難しくなります。

そのため、バージョン管理や管理責任者の設定、アクセス権限の制御などを行うことが欠かせません。

わかりやすい文章・内容になっているか

マニュアルが従業員にとってわかりやすい内容になっているかどうかは、マニュアルの効果を高めるとともに形骸化リスクを低減するために重要です。

新入社員やベテラン社員、他部署の関係者であっても、マニュアルを読めば業務プロセスがわかるような内容を目指しましょう。
そのためには、専門用語はなるべく避け、一文の長さはなるべく短くすることを意識してください。また図やフローチャート、チェックリストなどを活用することで、直感的な理解を促進できます。

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【サンプル】ISO9001・ISO14001マニュアルの具体例

それでは、最後にISO9001・ISO14001マニュアルのサンプルとして、一部分を紹介します。マニュアル作成時の参考にしてください。

ISO9001

ISO9001マニュアルのサンプルとして、「4.組織の状況」に関して紹介します。

4.組織の状況
4.1組織及びその状況の理解
当社は、組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する当社の能力に影響を与える、外部及び内部の課題をISO事務局の議論により明確し、経営計画書で文書化にする。
当社は、これらの外部及び内部に関する情報をISO事務局で監視し、経営会議でレビューを実施する。

4.2利害関係者のニーズおよび期待の理解
当社は、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する組織の能力に影響又は潜在的影響を与えるため、以下の事項を経営計画書で明確にする。

  • 品質マネジメントシステムに関連する利害関係者
  • 品質マネジメントシステムに関連する利害関係者の要求事項

また、これらの利害関係者及びその関連する要求事項に関する情報をISO事務局で監視し、レビューを実施する。

4.3品質マネジメントシステムの適用範囲の決定
当社は、品質マネジメントシステムの適用範囲を決定するために、以下の事項を考慮して、適用範囲を決定する。

  • 4.1に規定する外部及び内部の課題
  • 4.2に規定する、密接に関連する利害関係者の要求事項
  • 組織の製品及びサービス

また、決定した適用範囲は、「品質マニュアル」に明記し、利用可能な状態に維持する。

4.4品質マネジメントシステム及びそのプロセス
当社は、ISO9001:2015の要求事項に従って、必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む、品質マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、かつ、継続的に改善を行う。

当社は、品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織全体にわたる適用を品質マニュアルで決定し、以下の事項を実施する。

  • プロセスに必要なインプット、及びこれらのプロセスから期待されるアウトプットを明確にする。
  • プロセスの順序及び相互関係を明確にする。
  • プロセスの効果的な運用及び管理を確実にするために必要な判断基準及び方法(監視、測定及び関連するパフォーマンス指標を含む。)を経営計画書で決定し、適用する。
  • プロセスに必要な資源を明確にし、及びそれが利用できることを確実にする。
  • プロセスに関する責任及び権限を経営計画書で割り当てる。
  • 6.1の要求事項に従って決定したとおりにリスク及び機会に取り組む。
  • プロセスを内部監査や経営会議で評価し、これらのプロセスの意図した結果の達成を確実にするために必要な変更を実施する。
  • プロセス及び品質マネジメントシステムを改善する。

ISO14001

ISO14001マニュアルのサンプルとして、「1.適用範囲」に関して紹介します。

1.適用範囲
当社は「環境マネジメントシステム要求事項」に準拠した環境マネジメントシステムを構築する
本マニュアルは、当社の環境マネジメントシステムの確立、導入、運用、監視、見直し、維持および改善の枠組みを規定する

(1)運用事業
・産業機械の部品製作および組み立て
・取付具、金型の製作設計

(2)適用組織
別紙、組織図で示す組織

(3)適用事務所
事務所名:株式会社サンプル製作所
事務所所在地:東京都港区芝浦○丁目○番○号XXXXビル

まとめ

この記事では、ISO9001・ISO14001のマニュアル作成のポイントを解説し、サンプルを紹介しました。

ISO規格では、マニュアルの作成は義務ではないものの、従業員が共通認識をもつことが可能であることから、ほとんどの企業がマニュアルを作成しています。現場が使いやすいマニュアルを意識することで、形骸化を防ぎ、業務の進行やマネジメントシステムの運用をサポートしてくれる存在になるでしょう。

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