• 公共工事の入札に参加するには、建設業許可の取得や経営事項審査を受けることが必須
  • 入札参加時は、提示された資格や条件をクリアしているか確認することが大切

公共工事を受注するために行っているのが「入札制度」です。公共工事の場合には、特に透明性と公平性を確保するため、国や自治体は厳格なルールを設けています。

しかし、建設業界に新しく参入した企業や、公共工事の受注を目指す中小企業にとって、入札の流れはわかりにくいかもしれません。

そこで、この記事では公共工事の入札の流れや参加資格、落札のポイントをわかりやすく解説します。これから公共工事に挑戦する企業の方はぜひ役立ててください。

公共工事の入札に参加するための条件

公共工事の入札に参加するためには、一定の法的条件や資格要件を満たす必要があります。ここでは、基本的な5つの条件について解説します。

建設業許可の取得

公共工事に参加するには、建設業許可の取得が必要です。
建設業許可とは、建設工事を施工する際に必要な許可のことです。工事の種類や規模によって必要な許可区分が異なります。

建設業許可の種類や申請手続きの詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:建設業許可の種類一覧!業種や申請方法をわかりやすく解説

経営事項審査を受ける

経営事項審査(経審)とは、「企業の経営状況・技術力・社会性などを総合的に評価する制度」です。公共工事に参加する際は、事前に経審を受けることが必須です。

審査結果は点数(総合評定値)として公開され、この評価が高いほど入札時の信頼性が高まります。

経営事項審査の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:経審(経営事項審査)とは?点数の上げ方や仕組みを解説

入札参加資格審査(指名願い)を受ける

入札参加資格審査(指名願い)とは、各自治体や発注機関ごとに定められた資格審査のことです。企業の経営規模や施工実績などをもとに、入札への参加資格を判断されます。

審査を通過すると、一定期間有効な「入札参加資格者名簿」に登録され、指名競争入札や一般競争入札への参加が可能となります。

欠格要件に該当しない

公共工事の入札に参加するためには、前提として、一定の社会的信用と法令遵守体制を維持していることが不可欠です。健全に事業活動を行っている企業かどうかを確認するために、入札ごとに欠格要件が設定されています。

以下のような欠格要件に該当する場合、入札に参加できなくなります。欠格要件に該当しないかどうか、入札に参加する前に確認しましょう。

欠格要件の主な例内容
建設業法違反建設業法に基づく監督処分(営業停止・許可取消)を受けた場合や、虚偽申請を行った場合
暴力団関係者の関与暴力団、またはその関係者が経営に関与している、あるいは資金提供などを受けている場合
破産・倒産中破産・民事再生など法的整理中の企業、もしくはその手続きを開始している場合
不正入札への関与談合や入札妨害など、過去に不正行為を行い、処分を受けた企業やその代表者
税金・社会保険料の滞納法人税・消費税・社会保険料・労働保険料などを一定期間滞納している場合
その他の行政処分歴労働安全衛生法や下請代金支払遅延防止法など、関連法令に違反した経歴がある場合

各税金の滞納・未納がない

税金の滞納や未納がないことも重要な条件です。
法人税、消費税、地方税などの納税状況は、入札参加資格審査の際に提出する書類(納税証明書など)で確認されます。

税金の滞納・未納がある企業は、公共事業の信頼性を損なう可能性があるため、入札に参加できなくなります。

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公共工事の入札前にやるべき準備

入札に参加するための条件を満たしたら、次に入札前の準備を行いましょう。ここでは、公共工事の入札前にやるべき準備について解説します。

電子入札システムの利用登録を行う

入札方法には、会場での入札・電子入札・郵便入札などの方法があり、公共工事における多くの案件が電子入札システムでの入札可能になってきました。

オンラインで申請できるため、申請にかかる手間を減らせる一方、事前の登録や機器の準備が必要です。はじめて電子入札を利用する場合は、まず「利用者登録」を行い、ICカードの取得や電子証明書の申請を済ませておきましょう。
特にICカードの発行には、約数週間~1か月かかることもあるため、余裕をもって早めに準備することが大切です。

加点対象となりえる資格・認証の取得

公共工事の入札では、価格だけでなく「技術力・信頼性・社会的評価」も審査の対象となります。
そのため、企業の評価を高めるために、加点対象となる資格や認証を取得しておくことで、企業の評価が向上し、落札される可能性を高められます。

案件によって異なりますが、加点対象となる可能性がある資格・認証についてまとめました。

ISO認証(ISO9001やISO14001など)
企業の品質や環境などに関する管理体制が、国際的な基準に達していることを示す認証
健康経営優良法人
社員の健康管理を重視し、働きやすい職場環境を整備している企業に与えられる認定
BCP(事業継続計画)認定
災害時でも継続的に事業を行える体制を持つ企業に与えられる認定

特にISO認証(ISO9001やISO14001など)は、多くの自治体で加点や評価対象となることがあります。品質環境への取り組みを第三者機関が認めた証明になるため、公共事業を請け負う企業としての信頼性を高められる可能性があります。

ただし、健康経営優良法人・BCP(事業継続計画)認定は、国交省の直轄事業では加点の対象外です。地方自治体レベルの入札であれば、任意加点されるケースがあります。

公共工事の入札参加時に、ISO規格の取得がおすすめの理由については、以下の記事をご覧ください。

関連記事:【建設業者必見】公共工事の入札にISO規格を取得すべき理由を解説

公共工事の入札の流れ

ここでは、公共工事の入札の流れを6つのステップに分けて解説します。

1.入札公告・案件情報の収集

国や自治体は、公共工事の発注予定を「入札公告」として公式サイトや入札情報システムで公開しています。公告には、工事内容・場所・工期・予定価格・入札参加条件などが記載されているので、自社の条件に合う案件を選定しましょう。

以下に、公共工事の公告情報が確認できる主なWebサイトについてまとめましたので、参考にしてください。

  • 国土交通省:国土交通省電子入札システム
  • 各都道府県・市区町村:各自治体の「入札情報サービス」ページ
  • 民間企業:入札情報プラットフォーム

案件選びの段階で、自社の経審点数や施工実績と条件が合致しているかどうかを確認することが重要です。

2.入札参加資格の確認

希望する案件が見つかったら、公告に記載された「入札参加資格」を満たしているか確認します。

入札参加資格を満たしていないと、入札に参加できません。案件によっては入札参加資格とは別に特定の認証や国家資格、一定の実績などが求められる可能性もあるため、よく確認しましょう。

3.仕様書の受領・入札説明会への参加

参加資格を確認したら、入札に必要な手続きや提出書類などについて記載されている入札説明書を入手します。
また、案件が公示された発注機関もしくはWebサイトにて、仕様書を確認できる場合があります。仕様書に記載された案件の背景や目的、入札方法などは、入札金額を検討するうえでの重要な情報源となります。

案件によっては、入札説明会が開催されることもあります。説明会では、発注者から直接説明が行われ、質問の機会も設けられるため、積極的に参加して不明点を解消しておきましょう。

4.入札の検討・準備

情報を収集したら、実際に入札に参加するかどうかを社内で検討します。
「工事内容が自社の技術力や人員体制に適しているか」「採算がとれるか」などの観点から入札参加を決定しましょう。

入札を決めたら、入札説明書に記載されている必要書類を準備します。期間内にすべて準備できるように、スケジュール管理を徹底してください。

5.入札価格を決定する

公共工事の入札においては、「価格の妥当性と競争性」が落札のポイントです。
ただし、最安値を提示すれば良いわけではなく、「予定価格の範囲内で最も有利な価格」を提示することが求められます。

入札方式によって、判断基準も異なるため、各入札方式の特徴を理解することも大切です。近年では、「価格+技術点」で評価する総合評価落札方式が主流となっています。価格だけでなく技術力や社会的評価(ISO認証など)も審査対象になるため、落札されるには事前の準備が欠かせません。

6.落札した場合、契約締結

入札の結果、最も有利な提案と判断された企業が「落札者」として選定されます。
落札後は、契約書の締結を行ったのち、発注機関との正式な手続きを経て着工へと進みます。

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公共工事を落札するためのポイント

現在、公共工事における入札方式は、価格・技術力・信頼性・実績のすべてを総合的に評価する「総合評価落札方式」が主流となっています。そのため、適切な戦略をもって入札に臨むことが重要です。

ここでは、入札を有利に進めるための4つのポイントを解説します。

詳細に情報収集を行う

入札公告の段階から、工事の種類・発注機関の傾向・予定価格・競合企業など、あらゆる情報を分析することで、入札の成功率が大きく変わります。

以下のポイントを押さえて、詳細な情報収集を行いましょう。

  • 告知情報:発注機関、予定価格、工期、場所などを確認できる
  • 過去の落札結果:同種工事の落札価格、落札業者名などを確認できる
  • 仕様書・設計図書:技術条件、材料、施工方法などを確認できる
  • 評価基準:技術点の配点、加点条件などを確認できる

正確かつ詳細な情報を入手できれば、適切な入札価格の決定につながります。また、発注者のニーズを知ることで、アピールすべき自社の強みも見えてくるでしょう。

不明点があれば、入札仕様書にて質問することも可能です。積極的に活用し、曖昧な部分や思い込みといった部分をできる限りなくしておきましょう。

適切な入札価格を決定する

入札価格は、落札結果を大きく左右する重要な要素です。
しかし、「最低価格」で勝負すると、たとえ落札されたとしても自社の評価を落とす可能性があります。というのも、いざ工事を施工したところ、採算が取れなくなったり、品質低下につながったりするリスクがあるためです。

逆に、高額すぎる場合も落札されません。適切な入札価格を決定するには、細やかな情報収集が欠かせないのです。

技術力や施工実績をアピールする

総合評価落札方式では、入札金額に加えて「技術点」が重視されます。
発注機関は、企業の施工体制・技術力・過去の実績などをもとに加点評価を行うため、具体的にアピールすることが不可欠です。

また、発注者との信頼関係を築くために、工事成績評定点の向上を意識することも大切です。
施工中に安全・品質・納期をしっかり守ることが、次回以降の入札で有利に働きます。

ISO認証を取得して信頼性を高める

公共工事の入札において、ISO認証の有無が評価対象や加点要素となるケースが増えています。
ISOは、品質・環境・安全などの分野で、企業が国際基準に基づく管理体制を整備していることを証明する国際規格です。

特に以下の認証が評価されやすい傾向にあります。

ISO規格対応分野入札における評価傾向
ISO9001品質マネジメントシステム品質に関する信頼性が評価されやすい
ISO14001環境マネジメントシステム環境配慮への姿勢を評価されやすい
ISO45001労働安全衛生マネジメントシステム安全管理を徹底する企業として評価されやすい
ISO22301事業継続マネジメントシステム災害・緊急時でも事業継続できる体制を示せる

ISO認証の取得により、発注者に対して「信頼できる企業である」という印象を強く与えることができます。
特にISO9001やISO14001は、自治体の評価項目や加点基準に含まれていることも多く、落札率を高める効果が期待できます。

ISOの詳細については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

関連記事:【入門】ISOとは?基礎知識や種類・取得方法までをわかりやすく解説

まとめ

この記事では公共工事の入札の流れや参加資格、落札のポイントを解説しました。

公共工事の入札では、建設業許可や経営事項審査などの法的要件を満たすことが前提です。そのうえで、適正な入札価格や技術力のアピールを行うことが重要です。ISO認証などの加点要素を活用すれば、信頼性の向上にもつながります。

また公共工事の入札に参加し、落札するには、適切な情報収集を行うことが欠かせません。Webサイトや説明会、仕様書などの情報から、適切な入札を行えるように準備しましょう。

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