国や地方公共団体などが発注する公共工事を請け負いたいと考えている企業は、入札参加を希望し、経営事項審査を受けなければなりません。競合他社との競争に勝つためには、経営事項審査において高い評価を受けることが必要です。
そのためには、経審についての理解を深めることが欠かせません。そこで、経審の基本的な知識や、経審の点数を高めるポイントについて解説します。

経営事項審査とは?


経営事項審査とは、「国や地方自治体などが公共工事を発注した際に、入札参加希望した建設業者に対して行われる資格審査」です。この審査は、建設業者の経営状態や技術力といった要素を客観的に評価し、発注の合理性を保つために行うことが義務付けられています。

そのため、入札参加を希望するにあたり、企業は経営事項審査を受けて総合評定値通知を取得し、国や地方自治体などの発注者に提出しなければなりません。
提出された総合評定値通知に記された評価点をもとに、発注者は企業のランク付けを行い、発注する工事の条件に適した企業かどうかを確認するのです。

経営事項審査を受けるには、建設業許可を受けていることが前提となっています。また、経営事項審査が必要となる公共工事の基準は、「発注者が国・地方公共団体・法人税別表第一に掲げる公共法人、国土交通省令で定める法人が発注している建設工事」かつ「建設工事1件あたりの請負代金額が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)」となっています。

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経審点はどのように計算されるの?

資格審査では、「主観的事項」と「客観的事項」にあたる項目をそれぞれ審査し、その結果が点数化されますが、経営事項審査では「客観的事項」を審査します。

点数化する方法としては、以下の計算式から評価点が導き出されます。計算式には、評価の対象となる5つの項目が設けられ、それらの項目と掛け数から評価点が割り出されるようにできています。


(X1):工事の種類別年間平均完成工事高に関する評点
(X2):自己資本額および平均利益額に関する評点
(Y) :経営状況分析評点
(Y) :技術職員および元請完成工事高に関する評点
(W) :その他審査項目(社会性)に関する評点

経審点を構成する項目

以下の計算式を構成している5つの項目について解説します。

完成工事高(X1)

完成工事高は、次に紹介する自己資本額とともに経営規模を計るための項目です。評価全体の割合のうち、25%を占めているため、重要な項目といえます。

評点は、許可を受けた建設業の種類ごとの完成工事高から算出します。完成工事高は、直前の2年または3年から選択することができます。ただし、業種ごとにどちらの年数にするのかを選択することはできません。

1,000万円未満~1,000億円以上の42区分に分けられた区分表から選択し、その区分に割り当てられている計算式に沿って計算することで算出されます。
例えば、完成工事高が1,000万円の場合には、41番目の区分が適用されるため、11×(年間平均完成工事高)÷2,000+473の式を使用して計算するのです。

自己資本額(X2)

自己資本額は、上記で紹介した完成工事高とともに経営規模を計るための項目です。2008年4月に実施された改正により、評価全体の割合が10%から15%に引き上げられたため、重要度が増しています。

自己資本額の計算は、以下の計算式で割り出すことができます。

そのため、自己資本額を求めるためには、2つの点数を先に計算することが必要です。

まず、自己資本額点数(X21)は、純資産合計額または2期平均の平均自己資本額から選択して選出します。1,000万円未満~3,000億円以上の47区分に分けられた区分表から選択し、その区分に割り当てられている計算式から求めます。

ただし、自己資本額が0円に満たない場合は0円とみなします。

次に、平均利益額点数(X22)は、自社の利払前税引前償却前利益(営業利益+滅価償却費)の2年平均額から算出します。1,000万円未満~300億円以上の37区分に分けられた区分表から選択し、その区分に割り当てられている計算式から求めます。

経営状況(Y)

経営状況評点(Y)は、経営状況を以下の8つの指標から算出し、審査される評点です。経営状況評点(Y)を求めるには、以下の計算式から算出します。

まず、8つの指標の値をそれぞれの算出式から求めてください。

指標 記号 経営状況分析の指標 算出式 上限値 下限値
負債抵抗力 X1 純支払利息比率 (支払利息―受取利息配当金)/売上高×100 5.1% -0.3%
X2 負債回転期間 (流動負債+固定負債)/(売上高÷12) 18.0カ月 0.9カ月
収益性・効率性 X3 総資本売上総利益率 売上総利益/総資本(2期平均)×100 63.6% 6.5%
X4 売上高経常利益率 経常利益/売上高×100 5.1% -8.5%
財務健全性 X5 自己資本対固定資産比率 自己資本/固定資産×100  350.0% -76.5%
X6 自己資本比率 自己資本/総資本×100 68.5% -68.6%
絶対的力量 X7 営業キャッシュ・フロー(絶対額) 営業キャッシュ・フロー(2年平均)/1億 15.0億円 -10.0億円
X8 利益剰余金(絶対額) 利益剰余金/1億 100.0億円 -3.0億円

※小数点第4位を四捨五入
以下、注意点をまとめたものです。

  • Ⅹ1・Ⅹ2:数値が小さいほど評点に対して、プラスの影響を及ぼす指標。
  • Ⅹ3:総資本を 2 期平均とし、さらにその平均の額が 3000 万円未満の場合は 3000 万円とみなして計算する。また、個人の場合は、売上総利益を完成工事総利益とする。
  • Ⅹ4:個人の場合は、経常利益を事業主利益とする。
  • Ⅹ7:営業キャッシュ・フローの額を 1 億で除した数値の 2 年平均とする。
  • Ⅹ8:個人の場合は、利益剰余金を純資産合計とする。

次に、求めた数値をもとに以下の計算をして、経営状況点数(A)を求めます。

最後に、以下の計算をして、経営状況評点(Y)を求めます。

より詳しく計算式を確認したい方は、下記からご覧になれます。こちらで区分表などもご確認いただけます。

外部リンク:国土交通省関東地方整備局申請書等作成の手引き

技術者の点数(Z)

技術者評点(Z)は、自社が保有している技術力の高さにおける評点です。技術力評点(Z)を求めるには、以下の計算式から算出する必要があります。

まず、技術職員(Z1)を求めるには、自社の技術職員数値をもとに、区分表に記載された計算式から算出します。

区分表にある計算式には技術職員数値という項目があるため、以下から技術職員数値を求めてから算出してください。

次に、元請完成工事高の点数(Z2)を求めます。直前2年または3年の年間平均元請完成工事高から選んで算出しますが、完成工事高(X1)と同じ平均年数にしなければなりません。
1,000万円未満~1,000億円以上の42区分に分けられた区分表から選択し、その区分に割り当てられている計算式から求めます。

最後に、以下の計算をして技術者評点(Z)を求めましょう。

その他(W)

その他の審査項目は、社会性等の観点からつくられた10個の指標をもとに以下の計算式から計算します。

  • 労働福祉の状況の点数 (W1)
  • 建設業の営業年数の点数 (W2)
  • 防災協定締結有無の点数 (W3)
  • 法令遵守の状況の点数 (W4)
  • 建設業の経理状況の点数 (W5)
  • 研究開発の状況の点数 (W6)
  • 建設機械の保有状況の点数 (W7)
  • 国際標準化機構が定めた規格による登録の状況の点数(W8)
  • 若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況の点数 (W9)
  • 知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況の点数 (W10)

一つ一つの項目における審査内容が大きく異なるため、詳細は国土交通省関東地方整備局の申請書等作成の手引きから点数を算出してください。

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点数を高めるポイント


経営事項審査の点数を高めるポイントを解説します。その前提として、ここまでに解説した経営事項審査の構造について理解しておくことが大切です。まだ理解が浅いと感じている方は、繰り返し読みこんでいただくことをおすすめします。

完成工事高の算出方法が適切か見直す

完成工事高の算出は、直前の2年または3年から選択することができますが、業種ごとに変更することができません。
そのため、どちらを選択するかは評点を上げるためには考慮すべきポイントのひとつとなりますが、業種ごとに変更できないことから悩まれる企業の方も少なからずいるでしょう。その場合、どの業種における点数を上げることが自社にとって有益なのかというポイントや、それぞれの点差を比較検討してより有益な方はどちらかというポイントを考慮して選択するとよいでしょう。

その他の審査項目の点数の底上げを目指す

その他の項目は、10個の指標の合計値から計算されるため、それぞれの項目を満たすように対策を行うことで加点が期待できます。また、対策できていないと減点されてしまう可能性があるため、注意が必要です。例えば、「労働福祉の状況」における雇用保険などの保険加入ができていない場合には減点されてしまいます。

加点を目指すには、ISO 規格 を取得することも有効な手段の一つです。建設業において評価につながるISO規格には、ISO9001品質 マネジメントシステム)とISO14001(環境 マネジメントシステム)の2つがあります。自社の取り組みを証明してくれる国際的な規格であるため、検討する価値は大いにあるでしょう。

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関連記事:公共工事を請け負う時の経営事項審査とISOについて詳しく解説します

まとめ

経営事項審査について解説しました。公共工事を受けるためには欠かせない審査であるため、公共工事の入札参加を希望する建築業の方は、しっかりと内容を確認しておきましょう。
また、経営事項審査を受けるための準備を行うことで、自社の状況を明確に把握することができたり、自社の取り組みをアピールすることにつながったりと、工事を受注できること以外にもメリットがあります。
経営事項審査での点数を上げるための対策を行うと、自社の価値を高めることにもつながります。ぜひ自社の状況と解説した内容を照らし合わせて、経営状況を振り返ってみるとよいでしょう。

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