【2024年版】FSSC22000の要求事項とは?わかりやすく解説
- FSSC22000の要求事項は、ISO22000、前提条件プログラム、追加要求事項の3つから構成されている
- FSSC22000は2024年3月にver6.0に改訂された
FSSC22000は食品安全マネジメントシステムに関する国際規格です。日本だけでなく世界中の食品に関わる有名企業が、FSSC22000を取得しています。
しかしFSSC22000の要求事項は他の規格に比べても内容が多く、厳格であるといわれています。そのため、FSSC22000を取得するには、まず要求事項の理解が欠かせません。
そこで、この記事ではFSSC22000の要求事項について詳しく解説します。
目次
FSSC22000とは
FSSC22000とは、食品安全認証財団(FSSC)が開発した食品安全認証システムに関する国際規格です。
また国際食品安全イニシアチブ(GFSI :Global Food Safety Initiative)という非営利団体の基準を満たしたGFSI承認スキームの一つとして世界的に信頼性の高い認証として認識されています。
そのため、FSSC2200では食品工場での予期せぬ食品事故などもカバーすることが求められており、取得することでより確実な食品安全の実現を目指します。
食品安全を実現するための体制を整備することが必要であるため、中小企業よりも大規模な事業者向けの規格といえます。
FSSC22000の詳細は、以下の記事をご覧ください。
ISO22000・HACCPとの違い
FSSC22000と混同しやすいものにISO22000とHACCPがあります。ここでは、ISO22000、HACCPの概要やFSSC22000との違いをまとめました。
ISO22000
ISO22000とは、ISO(国際標準化機構)が発行する食品安全マネジメントシステムに関する国際規格です。FSSC22000と同様に食品の安全性向上を目指していますが、FSSC22000の方がISO22000よりも高度な食品安全の実現を目指しています。
また、のちほど詳しく解説しますがFSSC22000の要求事項には、ISO22000の要求事項も取り入れられています。
HACCP
HACCPとは、食品の安全性を確保するために国際的に認められている食品衛生管理手法のことです。そのためFSSC22000とは異なり、規格ではありませんがFSSC22000の要求事項に内包されています。
FSSC22000の取得メリット
FSSC22000を取得する主なメリットを以下にまとめました。
- 食品安全に関わるリスクの低減
- 業務の可視化による情報共有の円滑化や業務効率化
- 法令順守やコンプライアンスの強化
- 従業員の食品安全に関わるモラルの向上
- 取引先や顧客からの信頼度の向上
- 取引先からの要求の達成
- 海外展開の際に、スムーズな契約獲得につながる
FSSC22000を取得する過程で、自社の組織体制や作業工程、マニュアル・ルールなどを見直すことが求められます。そのため、対外的なアピールだけでなく事業体制の強化につながります。
FSSC22000の対象カテゴリ
FSSC22000の対象となるフードチェーンカテゴリを以下にまとめました。
- 植物製品の全工程の取り扱い
- 畜産・水産-第一次処理
- 傷みやすい動物性製品の加工
- 傷みやすい植物由来の製品の加工
- 傷みやすい動物性製品および物性製品の加工
- 常温保存製品の加工
- 飼料および動物食品の加工
- ケータリング/給食業務
- 小売/卸売/電子商取引
- 仲買業/取引/電子商取引
- 輸送および保管業務
- 包装資材の製造
- バイオ/化学製品の製造
2023年に改訂されたバージョン6からは変更されています。詳しい変更点はのちほど解説します。
FSSC22000の要求事項とは
FSSC22000の規格要求事項は、以下の3つから構成されています。
- ISO22000
- ISO/TS22002(前提条件プログラム)
- 追加要求事項
ここでは、FSSC22000を構成する3つの要素について詳しく解説します。
ISO22000
ISO22000の要求事項では、食品安全マネジメントシステム(FSMS)にHACCP、PRPの考え方を取り入れています。
食品安全マネジメントシステム(FSMS)
食品安全マネジメントシステム(FSMS)とは、食品の安全性を確保するための経営・運営管理システムです。
食品事故を防ぐために、食品に潜むリスクを洗い出し・評価したうえで、リスクを低減する仕組みをつくります。その実現のために、ISO22000では以下の10項目の要求事項を設けています。
要求事項の項番 | 概要 |
---|---|
1.適用範囲 | 適用可能な範囲について解説 |
2.引用規格 | なし |
3.用語及び定義 | 規格内の用語や定義について解説 |
4.組織の状況 | 組織内外の課題や状況、利害関係者からのニーズを理解したうえで、食品安全マネジメントシステムの適用範囲を決定することを求めている。 |
5.リーダーシップ及び働く人の参加 | 食品安全の達成に向けて、組織内部が積極的に取り組む状況をつくるために、リーダーシップの取り方や計画作成、組織体制の確立、権限の明確化などの要件について記載している。 |
6.計画 | 食品安全方針・食品安全目標の策定や食品リスクマネジメントの実施などに関する要件について記載している。 |
7.支援 | 食品安全方針や目標の達成に向けて、組織のリソースの整備や管理対象業務の文書化などに関する要件について記載している。 |
8.運用 | HACCPの7原則12手順の構築を中心に、製品や製造、サービスの計画や管理に関する要件、また不適合の製品が出た場合の仕組み化に関する要件について記載している。 |
9.パフォーマンス評価 | 食品安全を確保するための基準の明確化や運用状況が適切かどうかを確認する監査の実施、トップマネジメントによる運用結果の評価に関する要件について記載している。 |
10.改善 | 食品安全に関する改善点の決定、不適合や問題点があった場合の改善策の実施などに関する要件について記載している。 |
HACCP
HACCPでは、以下の2つの考え方を組み合わせた食品衛生管理手法です。
- HA(危害要因分析)
- 生物・科学・物理といった観点から食品安全における危害要因を分析すること。
- CCP(必須管理点)
- 危害要因を取り除くために管理する必要がある工程の管理ポイント(CCP)を明確にする。その場でモニタリングすることが可能な科学的な許容限界と即応の制御手段を用いて、ハザードを許容水準内に低減・除去する工程制御を行うこと。
ISO22000の要求事項の中でも、HACCPの7原則12手順の構築が求められています。
ISO/TS22002(前提条件プログラム:PRP)
ISO/TS22002とは、前提条件プログラム(PRP)の国際規格のことです。カテゴリ別に以下の6つの種類のシリーズがあります。
- ISO/TS22002-1(食品製造)
- ISO/TS22002-2(ケータリング)
- ISO/TS22002-3(農業)
- ISO/TS22002-4(食品容器包装の製造)
- ISO/TS22002-5(転送・保管)
- ISO/TS22002-6(飼料及び動物用の食品の製造)
そもそも前提条件プログラム(PRP)とは、食品安全衛生上におけるハザードを減少させるために前提となるルールのことです。
代表的なルールには、5S活動 (整理、整頓、清潔、清掃、躾)や7S活動(5S活動に加え、洗浄、殺菌)、低温保存や加熱調理などが挙げられます。こうした活動は、他の管理方法に取り組むうえで欠かせない役割を担っています。
またISO22000の要求事項にもPRPは含まれていますが、内容が具体的に明記されていないため、ISO22000を補強するために業種毎に合わせた前提条件を定めた規格です。
追加要求事項
追加要求事項とは、食品偽装や悪意をもった第三者による食品事故などを防ぎ、より強固な食品安全を確保するために追加されたFSSC22000独自の要求事項です。
追加要求事項は、ざっくり分類すると以下の3つに分けられます。
- ISO22000を補強するための事項
- 最新の食品安全やニーズに適合するための事項
- 食品事故や事件などをきっかけに追加された事項
追加要求事項は、項目によっては全カテゴリ共通ではなく、一部に有効なものもあります。ここでは各要求事項の概要について解説します。詳細については要求事項を確認するかコンサルタントに相談することがおすすめです。
全フードチェーンカテゴリ共通
- 2.5.1 サービスと購入資材の管理
- ISO22000の要求事項「7.1.6 外部から提供されるプロセス、製品またはサービスの管理」に加えて、食品安全の検証や妥当性確認に試験所分析サービスを利用する場合、正確かつ再現性のある結果をつくる能力をもった試験所によって実施されることを確実にすることを求めています。
ただし、フードチェーンカテゴリによっては異なる管理を求めているため、詳細を確認してください。
- 2.5.2 製品のラベリング及び印刷物
- ISO22000の要求事項「8.5.1.3 最終製品の特性」に加えて、製品を販売予定の国で、該当するすべてのアレルゲンや顧客固有要求事項を含む法令・規制要求事項に従ってラベルを貼付されることを確実にすることを求めています。
またラベル貼付されていない製品の場合には、顧客や消費者が食品の安全な利用を確実にするためにすべての情報を入手できるように工夫することが必要です。
- 2.5.3 食品防御
- 製品に関する潜在的脅威を特定し評価することや、評価をもとに脅威を軽減する方法や検証手順を食品防御計画書に規定することを求めています。
- 2.5.4 食品偽装の軽減
- 組織は食品偽装における潜在的脆弱性を特定し評価することや、評価をもとに脆弱性を軽減する方法や検証手順を食品偽装軽減計画書に規定することを求めています。
- 2.5.5 ロゴの使用
- 認証された組織が活用できるロゴの使用範囲や色が規定されており、遵守するように求めています。
- 2.5.6 アレルゲン管理
- 原材料や最終製品を含むすべてのアレルゲンのリストや交差汚染のリスクを低減、または排除するための管理措置の特定や実施などについて記載したアレルゲン管理計画書を作成することを求めています。
- 2.5.8 食品の安全と品質の文化
- ISO22000の要求事項「5.1 リーダーシップ及びコミットメント」に加えて、食品安全と品質の文化を育成する組織の取り組みとして、トップマネジメントはコミュニケーション能力や教育訓練、従業員の関与などに関する目標を達成し、実施・維持することを求めています。
- 2.5.9 品質管理
- 組織は、ISO22000の要求事項「5.2 方針」「6.2 人的資源」に加えて、それらに沿った品質方針や品質目標を確立し、実施・維持することを求めています。
- 2.5.10 輸送、保管及び倉庫管理
- 組織は、先入れ先出し法(FIFO)要求事項と合わせて手順や先出し(FEFO)原則を含む指定の在庫回転システムを確立し、実施・維持することを求めています。
またカテゴリC0やFI、輸送タンクを使用する場合などには、さらに別の要件を定めているため、詳細は確認してください。
- 2.5.17 コミュニケーションの要求事項
- ISO22000の「8.4.2 緊急事態及びインシデントの処理」に加えて、組織は天災や人災などの食品安全性や認証の完全性を脅かす状況が発生してから3営業日以内に、認証機関に通知し、適切な対応を実施することを求めています。
一部のカテゴリに適用される要件
- 2.5.7 環境モニタリング(フードチェーンカテゴリBIII、C、I、K)
- 組織は、関連する病原体や腐敗物、指標生物に関するリスクにもとづく環境モニタリングプログラムや、製造現場における汚染防止のための管理手段の有効性を評価するための手順書などを整備することを求めています。
- 2.5.11 ハザード管理及び交差汚染防止手段(FIIを除く全フードチェーンカテゴリ)
- フードチェーンカテゴリごとに、ハザード管理や交差汚染防止手段における要件が異なります。
FIIを除くフードチェーンカテゴリに共通する要件は、ISO22000の「8.2.4(h) PRP(s)の確立時に考慮する項目(h:交差汚染の予防手段)」に加えて、異物管理に関する要求事項について示しています。
- 2.5.12 PRP検証(フードチェーンカテゴリBIII、C、D、G、I、K)
- ISO22000の「8.8.1 PRP(S)検証」に加えて、内外部サイトや製造環境、処理設備が食品安全性のために適切な状態に維持されていることを検証するために、定期的な検査を確立し、実施・維持することを求めています。
- 2.5.13 製品設計及び開発(フードチェーンカテゴリBIII、C、D、E、F、I、K)
- 安全で合法な製品の製造を確実にするため、新製品や製品、製品プロセスの変更のための製品設計・開発の手順を確立し、実施・維持することを求めています。
- 2.5.14 健康状態(フードチェーンカテゴリD)
- ISO/TS22002-6(飼料及び動物用の食品の製造)の4.10.1に加えて、組織は飼料製造業務が人の健康に悪影響を与えないことを確実にする手順を用意することを求めています。
- 2.5.15 設備管理(FIIを除く全フードチェーンカテゴリ)
- ISO22000の「8.2.4 PRP(s)の確立時に考慮する項目」に加えて、衛生的な設計や法的要求事項・顧客要求事項、取り扱う製品も含めた設備の使用目的に対応する文書化された購入仕様書をもつことなどを求めています。
- 2.5.16 食品ロス及び廃棄物(Iを除く全フードチェーンカテゴリ)
- ISO22000の「8 運用」に加えて、食品ロスや廃棄物削減のための組織としての戦略を示した方針や目標を文書化してもつことなどを求めています。
- 2.5.18 多サイト認証を行う組織での要求事項(フードチェーンカテゴリE、F、G)
- 中央の業務管理において十分なリソースが用意されていることを確実にすることについて求めています。
また内部監査に関しても示しており、内部監査の手順やプログラムは、管理システムや中央の業務、全サイトを網羅する中央の業務によって確立することなどを求めています。
以下の記事でも、追加要求事項について詳しく解説しています。
FSSC22000要求事項のver.6.0への改訂内容とは
ここでは、2023年4月に改訂されたバージョン6.0について解説します。すでに取得している場合、2025年3月末までにバージョン6.0に移行することが求められているため、早めに内容を確認することが大切です。
改訂の目的
FSSC22000の改訂の主な目的は、以下の3つが挙げられています。
- ISO22003-1:2022(食品安全マネジメントシステムの審査および認証を行う機関に対する要求事項)の要求事項の取り込み
- 国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する組織を支援するための要求事項の強化
- 継続的改善の一環としての編集上の変更および修正
改訂による変更点
改訂によって、フードチェーンカテゴリや追加要求事項に変更がありました。
- フードチェーンカテゴリの変更点
-
- 動物生産(カテゴリA):削除
- 作物の加工前の取り扱い(サブカテゴリBⅢ):追加
- 畜産・水産一次処理(サブカテゴリC0):追加
- ペットフード(サブカテゴリDIIa、DIIb):食品製造(サブカテゴリCI~CⅣ)に統合
- 輸送および保管(サブカテゴリGI、GII):カテゴリGとして統合
- 仲介業/取引/電子商取引(サブカテゴリFII):追加
- 追加要求事項の変更点
-
項目が追加された要求事項 - 2.5.1 サービスと購入資材の管理
- 2.5.2 製品のラベリングおよび印刷物
- 2.5.3.2/2.5.4.2 食品防御/食品偽装の軽減
- 2.5.10 輸送、保管および倉庫
- 2.5.11 ハザード管理および考査汚染防止手段
- 2.5.13 製品設計および開発
詳細化された要求事項 - 2.5.5 ロゴの使用
- 2.5.6 アレルゲンの管理
- 2.5.7 環境モニタリング
新たに追加された要求事項 - 2.5.8 食品安全および品質文化
- 2.5.9 品質管理
- 2.5.15 設備管理
- 2.5.16 食品ロスおよび廃棄
- 2.5.17 コミュニケーションの要求事項
一つひとつの変更内容については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にしてください。
まとめ
この記事では、FSSC22000の要求事項について詳しく解説しました。
FSSC22000の要求事項は、「ISO22000+ISO/TS22002(前提条件プログラム)+追加要求事項」という3つの要素で構成されています。FSSC22000を取得するには、これらすべての要求事項を満たす食品安全マネジメントシステムを構築・運用することが必要です。
そのため、ISO22000よりも要求事項が厳格な規格といえます。ノウハウや知識が不足していると感じる場合には、コンサルタントに取得サポートを依頼することがおすすめです。
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