HACCPの限界とISO22000との使い分け方法
食品製造業の衛生管理には、HACCPが活用されることがあります。しかしこの対策だけでは万全だとはいえないこともあるため、ISO22000を採用し使い分けたほうがいい場合もあります。それぞれの特徴と使い分け方を紹介します。
HACCP(ハサップ)の限界
食品の衛生管理で使用するHACCPの一番の目的は、微生物汚染から守ることです。原材料から出荷まで管理し、食品製造の際に入り込む危害をできるだけ取り除く考え方となっています。
その際には原材料の下処理、従業員の手洗い、機械の清掃、添加物や水分管理、PH管理、包装にいたるまで高いハードルを設けて、食品製造の段階で微生物を入り込まないよう対策します。
つまりHACCPとは、食品の安全対策のみに焦点を当てた対策であり、マネジメントシステムや購買工程が省かれた対策なのです。品質管理を徹底するための方針や目標が除かれており、消費者が求める美味しく、安全で、安心して食べられる食品の提供は後回しになっています。HACCPを導入して安全対策をしても、消費者が求める食品のひとつの要素を満たしたのに過ぎません。
HACCPができたのは、もともとNASAの宇宙食開発で100%に近い食品管理が必要だったからです。それが日本にも導入されることとなったのですが、重要となるマネジメントシステムや購買工程を除いたものとなってしまいました。
一方でISO9001は製品の品質保証を通じ、顧客満足向上と品質マネジメントシステムの継続な改善を実現するための国際規格 となります。仕事を見える化して、業務効率の改善や組織体制の強化を目的としています。
このシステムは自動車産業や飛行機産業、電気通信などで採用しています。そこでこれに近い形で食品製造業に特化した管理システムの必要性が高まり、ISO22000ができました。この規格は安全な食品提供を可能とする食品安全マネジメントシステムの国際規格となっており、食品製造で起こるさまざまなリスクを軽減し、顧客の満足度を高めるために使うことができます。
このようにHACCPだけでは食品安全マネジメントシステムを確立し、顧客に満足してもらえる食品加工の考え方が欠けています。一方でISO22000も完全ではなく、HACCPをマネジメントシステム化したものに過ぎません。
最終的に食品製造業で求められるのは、マネジメントシステム、食品の危害を取り除き管理するシステム、購買工程を考慮する必要があります。
ISO22000の特徴
食品安全のリスク低減を通じ顧客からの信頼を獲得でき、継続的な改善により企業価値が向上します。ISO22000で重要としているのは、食品安全ハザードを適切に管理し、許容が超えない仕組みづくりです。文書類で規定を作成し、それに基づいて現場で正しく業務がおこなわれているか審査があります。
また、構築された食品マネジメントシステムを運用し、定期的に改善されているか、結果から有効性を検証する必要があります。
ISO22000は食品安全マネジメントシステムの国際規格となっており、承認を受けることができれば、適切な安全対策ができている証にもなります。
対象となるのは、食品製造業に属するあらゆる組織で、飼料生産者、一次生産者、食品製造業者、食品の輸送や保管に関わる業者、小売業、装置や包装材料、洗浄、添加物の製造など、食品製造に関わるさまざまな企業、飲食店なども対象先となります。現在は組織の規模に関わらず、ISO22000の取得を目指す企業が増加しています。
ISO22000を取得するメリットは多数あります。食品製造の問題を予防でき、問題が起きても速やかに対処できるようになります。認証取得は公表することが可能で、取引先や消費者に安全対策をアピールすることが可能です。
安全方針を宣言し従業員すべてが教育を受けることで、組織全体の安全対策が高まります。対策は法令や規制要求事項に対応する内容となり、食品製造業が法律違反をするリスクが低下します。
HACCPとISO22000の使い分け方法
2つの要素の特徴を理解したら、次に気になるのはそれぞれの違いでしょう。ISO22000は国際規格であり承認を受けて取得し、取引先や消費者にアピールできます。HACCPは食品安全システムの構築のための指針となります。前者は食品安全対策の仕組み作りであるのに対し、後者は微生物汚染の危害を分析しリスクを排除することに特化したものです。
ISO22000はISO9001の考え方と、危害を排除するHACCPの両方を取り入れた国際規格となります。さらにISO22000は食品製造に関わる幅広い業界にも対応する食品安全対策となっています。
食品製造業であればHACCP導入でも対応できますが、食品製造に関連する企業の場合ISO22000の国際規格に対応しなければなりません。また、HACCPだけだと明確な基準が設けられず認証を受けることはできません。必ずしも食品製造業で国際規格の取得が必要とは限らず、そのための組織編成やコストの面もあるため、最適な方法を選択するようにしましょう。
食品製造に関する衛生管理対策は、 HACCPとISO22000があります。それぞれのメリットやデメリットを把握したうえで活用しましょう。コストや対策方法などを確認することをおすすめします。
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